19章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ふっと意識が浮上して、目が覚めた
薄汚い天井が見えている
「ここは……」
どこだろう。
陛下たちが言っていたパルミドだろうか。
ゆっくりと起き上がった時、首元でチャリ、と金属の音が聞こえた。
「ん?」
手で首元を触ってみると、そこには付けた覚えのないアクセサリーがある。
ベッドから降りて鏡台の鏡で見てみると、それは夢でヨシュアからもらったものと同じものだった。
「霊導のネックレス……?」
十字架のアクセサリーがついた、純銀製のシンプルなネックレス。
だけど清浄な力を感じるし、私の中にある何かが抑えられている感覚もあった。
肌身離さず身につけろと言われた手前、外すのは気が引ける。
結局、ネックレスは首から提げたままにして、飾りをシャツの下に隠すことにした。
「……さて、と」
体調も随分と良くなったし、みんなのところに行こうかな。
「って思ったけど、あの四人、どこにいるんだろう……」
ベッドの枕元を見やると、エイトの時でメモが残してあった。
なになに、とメモを覗き込む。
『ヤンガスの知り合いの、情報屋のところに行ってきます。目が覚めたら、隣の酒場にトロデ王がいるから、そっちに向かって。エイト』
「……え、陛下、本当に町に入っても大丈夫だったんだ。すごいとこだな、パルミド……」
メモをちぎって、燭台の火にかける。
んー、とりあえず宿屋を出るか。
酒場で待っていれば、エイト達も戻ってくるだろうし。
そう思って、武器と防具をしっかり装備してから、宿屋を出た。
宿屋を出ると、酒場との間に姫様がいた。
私の姿を見るや否や、姫様が立ち上がって足踏みをするから、私も足早に姫様へと近付いた。
「姫様、ご心配をお掛けしました。近衛兵レイラ、このとおり復活です!」
「ヒヒン!」
「ああう、怒っておられるんですか!? た、確かに、皆にも多大なご迷惑をお掛けしましたもんね……! そうだ姫様、エイト達をご存じありませんか?」
姫様の首を撫でながらそう言うと、姫様の視線は目の前の建物に向けられた。
「……酒場?」
そう言えば、陛下が美味しいもの食べたいって言ってたなあ……。
エイト達も酒場にいるってことは、情報屋から何か情報を聞き出せたのかな。
姫様をその場に残して、私も酒場に入ろうとドアに手を伸ばした、その時だった。
突然、背後で姫様が暴れ出したのだ。
「えっ!?」
慌てて振り返ると、姫様には風体の悪い男がしがみついていた。
う、馬泥棒……人攫い、どっちだ!?
いやどっちでもいいけど、このままでは姫様が拐かされる!!
「貴様、その手を離せ! このお方が高貴なるご身分と知っての狼藉か!!」
「馬相手に何言ってんだ、テメー!」
「い、痛いところを突くなーッ!」
でもその方がトロデーン王国の姫様なのは間違いない話だし!
追い払うために剣を抜こうと、柄に手をかけて引き抜く。
……が、剣が重すぎて、まったく言うことを聞かなかった。
「おっ……重い……!?」
「へっ! なんだか知らねぇがチャンスだ! この馬は貰っていくぜ!」
「こうなったら素手で!」
体術の構えを取って、男へと向かって拳を突き出す。
しかし、病み上がりの身体では、男相手に勝てるはずもなく。
「邪魔だこのアマ、どいてろ!」
私の予想を遥かに超えた素早い身のこなしで、男の蹴りが避けきれずに鳩尾に入った。
瞬間、息がヒュッと詰まる。
「かはっ……!!」
「そらよ!」
脇腹への追撃をもろに受け、木の板でできた壁に背中からぶち当たった。
衝撃で頭が揺れて、身体の力が一瞬で抜けていく。
「あ……っ、げほっ、ごほっ!!」
倒れ込んだまま咳き込む私をよそに、男は姫様を馬車ごと持ち去ってしまった。
しまった、姫様が……!
「ひめ、さま……!!」
こめかみに脂汗がにじむ。
とにかく、エイトに知らせなきゃ……!
立ち上がろうと体に力を入れると、強打した腹部と背中に鈍い痛みが走った。
「……ぅ、く、この……っ!」
「姫!!」
酒場からトロデ王が飛び出してきて、その後ろからエイト達も現れる。
は、と安堵で視界が滲んでしまった。
「レイラ!!」
「エイト、姫様が……!!」
「た、大変じゃ! 姫が……ミーティアの姿がどこにも見当たらんのじゃ」
周囲を見て回ったらしい陛下の焦りにまみれた一言が響く。
ああくそ、私がもっとしっかりしていれば……。
「……こいつはいけねぇ。アッシとしたことが、ウッカリしてたでがす。この町の連中は、人の過去や事情には無関心だけど、人の持ち物には関心ありまくりでがすよ」
「……そ、それはつまり、我が愛しの姫が、この町の住人に拐かされたという意味なのかっ!?」
「おっさん、落ち着けよ。攫われたにしても、まだそう遠くには……。少なくとも町の外にゃ行ってねぇはずだ」
「お、おお……そうじゃな。今は姫を見つけることが何よりじゃ。エイト、レイラよ、聞いての通りじゃ。一刻も早く、攫われた姫を探し出して、犯人の魔の手から救うのじゃっ!」
「かしこまりました……!」
エイトの肩を借りて、何とか立ち上がる。
ふらつく頭を振って視界を戻すと、エイトに「行こう」と声を掛けた。
「待てエイト、闇雲に探しても効率が悪い。レイラ、お姫様はどっちに行ったんだ?」
「左手側、だと思う」
「分かった、ありがとう。それじゃあ、レイラは宿屋で休んでて。僕たちで探しに行ってくる」
「やだ、私も行く!」
「でもレイラは病み上がりじゃない!」
「そうでがすよ! それに、さっきも盗っ人から怪我を負わされたんでがしょう?」
「もう体調だって治ったから平気だし、怪我も大したことないから大丈夫だよ! 元はと言えば、私が姫様から目を離したせいだし……」
「そうは言うが、あれだけの熱を出してたんだぞ。立って歩けているのが不思議なくらいだ」
「あ、兄貴、どうしやすか?」
エイトのため息が聞こえて、思わず小さく肩が跳ね上がった。
怒られるかも、怒ったらエイト、面倒くさいんだよなぁ……なんて思いつつ、恐る恐るとエイトの顔を見上げる。
エイトは私の顔をじっと見つめた後、ややあって「分かった」と頷いた。
薄汚い天井が見えている
「ここは……」
どこだろう。
陛下たちが言っていたパルミドだろうか。
ゆっくりと起き上がった時、首元でチャリ、と金属の音が聞こえた。
「ん?」
手で首元を触ってみると、そこには付けた覚えのないアクセサリーがある。
ベッドから降りて鏡台の鏡で見てみると、それは夢でヨシュアからもらったものと同じものだった。
「霊導のネックレス……?」
十字架のアクセサリーがついた、純銀製のシンプルなネックレス。
だけど清浄な力を感じるし、私の中にある何かが抑えられている感覚もあった。
肌身離さず身につけろと言われた手前、外すのは気が引ける。
結局、ネックレスは首から提げたままにして、飾りをシャツの下に隠すことにした。
「……さて、と」
体調も随分と良くなったし、みんなのところに行こうかな。
「って思ったけど、あの四人、どこにいるんだろう……」
ベッドの枕元を見やると、エイトの時でメモが残してあった。
なになに、とメモを覗き込む。
『ヤンガスの知り合いの、情報屋のところに行ってきます。目が覚めたら、隣の酒場にトロデ王がいるから、そっちに向かって。エイト』
「……え、陛下、本当に町に入っても大丈夫だったんだ。すごいとこだな、パルミド……」
メモをちぎって、燭台の火にかける。
んー、とりあえず宿屋を出るか。
酒場で待っていれば、エイト達も戻ってくるだろうし。
そう思って、武器と防具をしっかり装備してから、宿屋を出た。
宿屋を出ると、酒場との間に姫様がいた。
私の姿を見るや否や、姫様が立ち上がって足踏みをするから、私も足早に姫様へと近付いた。
「姫様、ご心配をお掛けしました。近衛兵レイラ、このとおり復活です!」
「ヒヒン!」
「ああう、怒っておられるんですか!? た、確かに、皆にも多大なご迷惑をお掛けしましたもんね……! そうだ姫様、エイト達をご存じありませんか?」
姫様の首を撫でながらそう言うと、姫様の視線は目の前の建物に向けられた。
「……酒場?」
そう言えば、陛下が美味しいもの食べたいって言ってたなあ……。
エイト達も酒場にいるってことは、情報屋から何か情報を聞き出せたのかな。
姫様をその場に残して、私も酒場に入ろうとドアに手を伸ばした、その時だった。
突然、背後で姫様が暴れ出したのだ。
「えっ!?」
慌てて振り返ると、姫様には風体の悪い男がしがみついていた。
う、馬泥棒……人攫い、どっちだ!?
いやどっちでもいいけど、このままでは姫様が拐かされる!!
「貴様、その手を離せ! このお方が高貴なるご身分と知っての狼藉か!!」
「馬相手に何言ってんだ、テメー!」
「い、痛いところを突くなーッ!」
でもその方がトロデーン王国の姫様なのは間違いない話だし!
追い払うために剣を抜こうと、柄に手をかけて引き抜く。
……が、剣が重すぎて、まったく言うことを聞かなかった。
「おっ……重い……!?」
「へっ! なんだか知らねぇがチャンスだ! この馬は貰っていくぜ!」
「こうなったら素手で!」
体術の構えを取って、男へと向かって拳を突き出す。
しかし、病み上がりの身体では、男相手に勝てるはずもなく。
「邪魔だこのアマ、どいてろ!」
私の予想を遥かに超えた素早い身のこなしで、男の蹴りが避けきれずに鳩尾に入った。
瞬間、息がヒュッと詰まる。
「かはっ……!!」
「そらよ!」
脇腹への追撃をもろに受け、木の板でできた壁に背中からぶち当たった。
衝撃で頭が揺れて、身体の力が一瞬で抜けていく。
「あ……っ、げほっ、ごほっ!!」
倒れ込んだまま咳き込む私をよそに、男は姫様を馬車ごと持ち去ってしまった。
しまった、姫様が……!
「ひめ、さま……!!」
こめかみに脂汗がにじむ。
とにかく、エイトに知らせなきゃ……!
立ち上がろうと体に力を入れると、強打した腹部と背中に鈍い痛みが走った。
「……ぅ、く、この……っ!」
「姫!!」
酒場からトロデ王が飛び出してきて、その後ろからエイト達も現れる。
は、と安堵で視界が滲んでしまった。
「レイラ!!」
「エイト、姫様が……!!」
「た、大変じゃ! 姫が……ミーティアの姿がどこにも見当たらんのじゃ」
周囲を見て回ったらしい陛下の焦りにまみれた一言が響く。
ああくそ、私がもっとしっかりしていれば……。
「……こいつはいけねぇ。アッシとしたことが、ウッカリしてたでがす。この町の連中は、人の過去や事情には無関心だけど、人の持ち物には関心ありまくりでがすよ」
「……そ、それはつまり、我が愛しの姫が、この町の住人に拐かされたという意味なのかっ!?」
「おっさん、落ち着けよ。攫われたにしても、まだそう遠くには……。少なくとも町の外にゃ行ってねぇはずだ」
「お、おお……そうじゃな。今は姫を見つけることが何よりじゃ。エイト、レイラよ、聞いての通りじゃ。一刻も早く、攫われた姫を探し出して、犯人の魔の手から救うのじゃっ!」
「かしこまりました……!」
エイトの肩を借りて、何とか立ち上がる。
ふらつく頭を振って視界を戻すと、エイトに「行こう」と声を掛けた。
「待てエイト、闇雲に探しても効率が悪い。レイラ、お姫様はどっちに行ったんだ?」
「左手側、だと思う」
「分かった、ありがとう。それじゃあ、レイラは宿屋で休んでて。僕たちで探しに行ってくる」
「やだ、私も行く!」
「でもレイラは病み上がりじゃない!」
「そうでがすよ! それに、さっきも盗っ人から怪我を負わされたんでがしょう?」
「もう体調だって治ったから平気だし、怪我も大したことないから大丈夫だよ! 元はと言えば、私が姫様から目を離したせいだし……」
「そうは言うが、あれだけの熱を出してたんだぞ。立って歩けているのが不思議なくらいだ」
「あ、兄貴、どうしやすか?」
エイトのため息が聞こえて、思わず小さく肩が跳ね上がった。
怒られるかも、怒ったらエイト、面倒くさいんだよなぁ……なんて思いつつ、恐る恐るとエイトの顔を見上げる。
エイトは私の顔をじっと見つめた後、ややあって「分かった」と頷いた。