18章
夢小説設定
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すっかり朝日が昇りきった頃、私は目が覚た。
明け方になってようやく眠りに就いたせいで、かなり寝入っていたようだ。
太陽は真上付近まで来ている。
もはや午前中も終わりかけだな、こりゃ。
起き上がって背伸びをしながら、身体の違和感に首を傾げた。
なんとはなしに、いつもより体がだるくて重い気がする。
睡眠時間が足りなかったかな。
でも、これ以上寝ている時間はないだろうし。
「ふぁ……」
あくびを一つして、それから隣のベッドで未だに爆睡中のエイトを見やる。
仰向けになって寝相よく眠るエイトの枕元には、トーポが丸くなって眠っていた。
しっかし、トーポも不思議なネズミだよなぁ。
私達がトロデーンに来てから、だいたい十年は過ぎたはずなのに、めちゃくちゃ元気だもん。
「本当にただのネズミじゃない気がするな……」
好物がチーズなのは、まぁ……理解できるとして。
ネズミにしてはやけに知恵が回るし、エイトの指示をちゃんと聞いているし。
……ネズミってそこまでの知能があるんだっけ?
周囲を改めて見てみると、ククールとゼシカは既に起きているようで、部屋の中に姿はなかった。
ヤンガスはしばらく起きる気配がなさそう。
置いていこうかとも思ったけど、なんとなくこのまま二人が起きるのを待っていたくて。
ベッドに座ったままぼんやりとエイトを見ていると、なんとヤンガスが先に目を覚ました。
「姉貴、おはようございやす。ゼシカの姉ちゃんとククールは先に行っちまったんでがすか」
「そうみたい。私が起きたときには、二人ともいなかった。起こしてくれればいいのにねー」
「ま、寝かせておいてくれた事に感謝しときましょうや。しっかし、兄貴は随分とお疲れだったようでがすなぁ」
「エイトは昔っからお寝坊さんだもん。ギリギリになっても起きなかったら、私が叩き起して連れてくよ」
「んじゃあ、兄貴のことは姉貴にお任せするでげすよ。先に行ってやすぜ」
ヤンガスがぶんぶんと腕を振って、部屋を出ていく。
私とエイトだけの室内は、外に比べてずっと静かだ。
随分と遠いところに来てしまったな。
東の大陸の北方にあるトロデーンから、西の大陸の西方にあるアスカンタまでは、決して楽な距離じゃない。
「いろんなことがあったよね。私達、どこまで行くんだろ」
私の声が目覚ましになったのか、トーポがぱちっと目を覚ます。
おはよ、と声を掛けて小さく笑うと、トーポはチチ、と鳴き声を上げてから、エイトの上着にあるポケットに潜った。
その動きがエイトを起こしたらしく、エイトがぼんやりと瞼を開け、むくりと起き上がった。
「う……ん? ……おはよう、レイラ」
「あ、起きた。おはようエイト」
朝起きてエイトが見せる、この柔らかな微笑みが、私は好きだ。
シセル王妃が言っていた、優しくて賢い人がパヴァン王なら。
エイトは優しくて強い人かなーと考えてみたりする。
まあそれ以上に、からかい甲斐がある人って感じだけど。
「みんなは?」
「もう起きてるんじゃないかな。エイトが最後だよ」
「そっか。……あのさ、レイラ。僕は、ずっとレイラのことが……」
「──失礼致します」
コンコンとドアがノックされ、次いで聞こえてきたキラさんの声で、エイトは慌てて口をつぐんだ。
エイトの代わりに「どうぞー」と言ってあげると、キラさんが部屋へと入ってくる。
そのお仕着せは、喪服の黒ではなく、普段のお仕着せであるらしい、黄色のワンピースだった。
「おはようございます。隣の食事会場で、王様が待っておられます。お食事で皆様に感謝の意をお伝えしたいとのことです。あの……それと、本当にありがとうございました!」
キラさんが深々と頭を下げて、部屋を出て行った。
一番ほっとしているのは、小間使いのキラさんだよね。
頑張ってよかったなぁ……山登りならぬ丘登り。
「だってさ、行こっか。多分、みんなもう先に食べ始めてるんじゃない?」
「ああ、うん。そうだね」
曖昧に笑ったエイトに首を傾げて、ベッドを降りる。
先に部屋を出ようとして、くるりとエイトの方を振り向いた。
そのまま、顔を覗き込むように見上げる。
「え、な、何だよ?」
「んー。なんか、願いの丘でも何か言いかけてたなーって思って。さっき、何言おうとしたの?」
何の気なしに尋ねてみると、なぜかエイトの顔が赤くなっていった。
何を言うつもりだったんだろう。
どうしてそう、怪しい反応を……。
「なんでもない」
「なんでもないようには見えなかったんだけど」
「い、いいんだよ、別に! ほら、早く行こう! パヴァン王をお待たせするわけにはいかないし!」
「なんで照れてるの?」
「何でもいいだろっ!」
ずんずんと先を歩くエイトを追いかけて部屋を出る。
頭の上に疑問符が三つほど並んだまま、私は食事会場へと入った。
何なんだろう、エイトってば、なんか変だな。
でもまあいいか、と疑問を放り投げて、席へと座る。
目の前の料理があまりにも豪華で、疑問が吹っ飛んでしまった。
でも、何だろう。
体が随分と重たいような……?
「気のせい、かな」
「レイラ、食べないの?」
「え! 食べる食べる!」
朝食兼昼食は、アスカンタのコックが腕によりをかけて作ったフルコースだ。
ヤンガスなんか肉ばっかりにがっついているし、ククールは優雅にワインを傾けている。
そんな中、生粋のお嬢様であるゼシカは、上品にナイフとフォークを使いこなしてみせた。
私とエイトは緊張しっぱなしだ。
一介の近衛兵に完璧なテーブルマナーは求めないでほしい。
「シセルが僕に教えてくれたこと。もう二度と忘れない。夢のような出来事だが、僕は信じます。ありがとう。ありがとう……」
天国の王妃様へ約束するように言って、パヴァン王は私達へと視線を移した。
約一名、テーブルマナーもクソもない食べ方をしていて申し訳ない。
しかし無礼講ということなのか、パヴァン王がヤンガスに苦言を呈すことはなかった。
「皆さんとキラのおかげで、僕はようやく、長い悪夢から覚めた。これからは王の務めに励みます。……本当にありがとう。もしこの先、なにか困ったことがあったら、いつでも言ってください。必ずその時は僕があなた方の力になります。約束します。必ずお役に立ちましょう。では、皆さん。どうぞこれからの旅も、お気を付けて。またいつでも遊びに来てください」
まさか国王陛下直々に助力を約束していただけるとは思わなかった。
だけどこれは心強い。
この先、私達だけではどうにもならないことがあったら、パヴァン王とアスカンタ王国を頼らせてもらおう。
それにしても、王様が立ち直ってくれて良かった。
キラさんの力になれたのも嬉しいし、なかなか良い滞在だったんじゃないかな。
さて、これからまた、ドルマゲスを追う旅が再開だ。
どうやらこの国には立ち寄っていないらしいし、どこに行ったのやら。
「ごちそうさまでした!」
「ちょっとレイラ、もう食べないの!?」
「いつもならもっと食べてるのに……」
「さ、さすがにこんな場でがっついたりしないよ……!?」
最低限のマナーは身につけてるんだぞ!
これでも近衛兵だから!
あとでこっそりパンを食べるからいいんだもん……!
明け方になってようやく眠りに就いたせいで、かなり寝入っていたようだ。
太陽は真上付近まで来ている。
もはや午前中も終わりかけだな、こりゃ。
起き上がって背伸びをしながら、身体の違和感に首を傾げた。
なんとはなしに、いつもより体がだるくて重い気がする。
睡眠時間が足りなかったかな。
でも、これ以上寝ている時間はないだろうし。
「ふぁ……」
あくびを一つして、それから隣のベッドで未だに爆睡中のエイトを見やる。
仰向けになって寝相よく眠るエイトの枕元には、トーポが丸くなって眠っていた。
しっかし、トーポも不思議なネズミだよなぁ。
私達がトロデーンに来てから、だいたい十年は過ぎたはずなのに、めちゃくちゃ元気だもん。
「本当にただのネズミじゃない気がするな……」
好物がチーズなのは、まぁ……理解できるとして。
ネズミにしてはやけに知恵が回るし、エイトの指示をちゃんと聞いているし。
……ネズミってそこまでの知能があるんだっけ?
周囲を改めて見てみると、ククールとゼシカは既に起きているようで、部屋の中に姿はなかった。
ヤンガスはしばらく起きる気配がなさそう。
置いていこうかとも思ったけど、なんとなくこのまま二人が起きるのを待っていたくて。
ベッドに座ったままぼんやりとエイトを見ていると、なんとヤンガスが先に目を覚ました。
「姉貴、おはようございやす。ゼシカの姉ちゃんとククールは先に行っちまったんでがすか」
「そうみたい。私が起きたときには、二人ともいなかった。起こしてくれればいいのにねー」
「ま、寝かせておいてくれた事に感謝しときましょうや。しっかし、兄貴は随分とお疲れだったようでがすなぁ」
「エイトは昔っからお寝坊さんだもん。ギリギリになっても起きなかったら、私が叩き起して連れてくよ」
「んじゃあ、兄貴のことは姉貴にお任せするでげすよ。先に行ってやすぜ」
ヤンガスがぶんぶんと腕を振って、部屋を出ていく。
私とエイトだけの室内は、外に比べてずっと静かだ。
随分と遠いところに来てしまったな。
東の大陸の北方にあるトロデーンから、西の大陸の西方にあるアスカンタまでは、決して楽な距離じゃない。
「いろんなことがあったよね。私達、どこまで行くんだろ」
私の声が目覚ましになったのか、トーポがぱちっと目を覚ます。
おはよ、と声を掛けて小さく笑うと、トーポはチチ、と鳴き声を上げてから、エイトの上着にあるポケットに潜った。
その動きがエイトを起こしたらしく、エイトがぼんやりと瞼を開け、むくりと起き上がった。
「う……ん? ……おはよう、レイラ」
「あ、起きた。おはようエイト」
朝起きてエイトが見せる、この柔らかな微笑みが、私は好きだ。
シセル王妃が言っていた、優しくて賢い人がパヴァン王なら。
エイトは優しくて強い人かなーと考えてみたりする。
まあそれ以上に、からかい甲斐がある人って感じだけど。
「みんなは?」
「もう起きてるんじゃないかな。エイトが最後だよ」
「そっか。……あのさ、レイラ。僕は、ずっとレイラのことが……」
「──失礼致します」
コンコンとドアがノックされ、次いで聞こえてきたキラさんの声で、エイトは慌てて口をつぐんだ。
エイトの代わりに「どうぞー」と言ってあげると、キラさんが部屋へと入ってくる。
そのお仕着せは、喪服の黒ではなく、普段のお仕着せであるらしい、黄色のワンピースだった。
「おはようございます。隣の食事会場で、王様が待っておられます。お食事で皆様に感謝の意をお伝えしたいとのことです。あの……それと、本当にありがとうございました!」
キラさんが深々と頭を下げて、部屋を出て行った。
一番ほっとしているのは、小間使いのキラさんだよね。
頑張ってよかったなぁ……山登りならぬ丘登り。
「だってさ、行こっか。多分、みんなもう先に食べ始めてるんじゃない?」
「ああ、うん。そうだね」
曖昧に笑ったエイトに首を傾げて、ベッドを降りる。
先に部屋を出ようとして、くるりとエイトの方を振り向いた。
そのまま、顔を覗き込むように見上げる。
「え、な、何だよ?」
「んー。なんか、願いの丘でも何か言いかけてたなーって思って。さっき、何言おうとしたの?」
何の気なしに尋ねてみると、なぜかエイトの顔が赤くなっていった。
何を言うつもりだったんだろう。
どうしてそう、怪しい反応を……。
「なんでもない」
「なんでもないようには見えなかったんだけど」
「い、いいんだよ、別に! ほら、早く行こう! パヴァン王をお待たせするわけにはいかないし!」
「なんで照れてるの?」
「何でもいいだろっ!」
ずんずんと先を歩くエイトを追いかけて部屋を出る。
頭の上に疑問符が三つほど並んだまま、私は食事会場へと入った。
何なんだろう、エイトってば、なんか変だな。
でもまあいいか、と疑問を放り投げて、席へと座る。
目の前の料理があまりにも豪華で、疑問が吹っ飛んでしまった。
でも、何だろう。
体が随分と重たいような……?
「気のせい、かな」
「レイラ、食べないの?」
「え! 食べる食べる!」
朝食兼昼食は、アスカンタのコックが腕によりをかけて作ったフルコースだ。
ヤンガスなんか肉ばっかりにがっついているし、ククールは優雅にワインを傾けている。
そんな中、生粋のお嬢様であるゼシカは、上品にナイフとフォークを使いこなしてみせた。
私とエイトは緊張しっぱなしだ。
一介の近衛兵に完璧なテーブルマナーは求めないでほしい。
「シセルが僕に教えてくれたこと。もう二度と忘れない。夢のような出来事だが、僕は信じます。ありがとう。ありがとう……」
天国の王妃様へ約束するように言って、パヴァン王は私達へと視線を移した。
約一名、テーブルマナーもクソもない食べ方をしていて申し訳ない。
しかし無礼講ということなのか、パヴァン王がヤンガスに苦言を呈すことはなかった。
「皆さんとキラのおかげで、僕はようやく、長い悪夢から覚めた。これからは王の務めに励みます。……本当にありがとう。もしこの先、なにか困ったことがあったら、いつでも言ってください。必ずその時は僕があなた方の力になります。約束します。必ずお役に立ちましょう。では、皆さん。どうぞこれからの旅も、お気を付けて。またいつでも遊びに来てください」
まさか国王陛下直々に助力を約束していただけるとは思わなかった。
だけどこれは心強い。
この先、私達だけではどうにもならないことがあったら、パヴァン王とアスカンタ王国を頼らせてもらおう。
それにしても、王様が立ち直ってくれて良かった。
キラさんの力になれたのも嬉しいし、なかなか良い滞在だったんじゃないかな。
さて、これからまた、ドルマゲスを追う旅が再開だ。
どうやらこの国には立ち寄っていないらしいし、どこに行ったのやら。
「ごちそうさまでした!」
「ちょっとレイラ、もう食べないの!?」
「いつもならもっと食べてるのに……」
「さ、さすがにこんな場でがっついたりしないよ……!?」
最低限のマナーは身につけてるんだぞ!
これでも近衛兵だから!
あとでこっそりパンを食べるからいいんだもん……!