17章
夢小説設定
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窓の中の世界は、一言でいえば神秘的だった。
夜のように暗い世界は、淡い光で照らされている。
地面は全て水で覆われていて、底が見えない。
点々と浮かんでいる足場は、中央に月の満ち欠けが一つずつ描かれていた。
足場同士を繋ぐのは、透明な橋……のような何か。
「夢でも見てるみたい……」
「こんなところがあるなんて知らなかった……」
ゼシカと二人で周囲を見渡して、呆気に取られたまま呟く。
壁となっている岩の隙間からは滝が流れ落ちて、それは下を覆う水へと注いでいた。
足場を渡った向こうには、小さな家がひとつ。
「すごい世界だね……」
「うん……。こんなところがあるなんて、聞いたこともないよ」
「ふぅん。なかなかいい場所だな。修道院も追い出されてみるもんだね」
「またろくでもないこと企んでるようでがすな」
ククールはヤンガスの辛辣な一言に黙って肩を竦めた。
私の中でククールの株がさらにひとつ下がった気がする。
足場を渡り終えた私の前には、家の中へと続くドアがある。
全員が渡り終えたことを確認して、エイトが扉を開けた。
小さな家の中は、外に負けず劣らず不思議な空間だった。
色んな楽器が所狭しと並んで、それらは弾き手もいないのに勝手に音を鳴らしている。
不思議なメロディーだ。
でも、不快ではなくて、どちらかと言うと心が落ち着くような……。
想像していなかった光景の連続で、圧倒されながら家の中へと足を踏み入れた私達の耳に、ハープを爪弾く音が聞こえた。
音の出処は上だ。
小さなステージのようなそこには、人影がひとつ。
手にはハープを持っていて、ロイヤルブルーの長い髪がサラリと揺れた。
片腕だけを通したローブといい、風貌と言い、どうも人間ではなさそうだ。
「私はイシュマウリ。月の光のもとに生きる者。私の世界へようこそ」
そう言って、イシュマウリは上品に一礼した。
なんて優雅な人だろう……と感動したのも束の間。
「へちま売り?」
「馬鹿ヤンガス!!」
慌ててヤンガスを思いっ切り叩いた。
見るからに人智を超えた存在に対して、命知らずか!!
イシュマとへちまって、そもそも響きもあんまり似てないような……。
気を取り直して、私達は目の前にある階段を登って、イシュマウリの元へ。
「ここに人間が来るのは随分久しぶりだ。……月の世界へようこそ、お客人。さて、いかなる願いが月影の窓を開いたのか? 君達の靴に聞いてみよう……」
意味深な言葉と共に、イシュマウリがハープを鳴らす。
その途端、エイトの足元が光った。
慌てたように足をジタバタさせるエイトと……思わず飛び退く我々四人。
すまない……悪気はないんだ……。
「え、なんで離れたんだよ!? 別に危険はなかったと思うんだけど……」
我々は愛想笑いのようなものを浮かべて頷いた。
ちょっとあまりにも超常現象が続いて、理解が追いつかなくてな……。
「もしかして怖いとか……」
「まさか、そんなわけないだろ?」
「そ、そうよ! 怖くなんかないわよ」
「なーにを言ってるんでがすか兄貴!」
「そ、そそ、そうだそうだ! べ、べべ別にこここ怖いとかおおおお思ってないし!!」
「レイラはビビり散らかしてるのがバレバレだけどな」
「なんだと、このバカリスマ!!」
「……そのバカリスマってのは、俺のことか?」
「いいわねそれ、採用よ」
「マジかよ」
ククールの微笑みが引きつった。
日頃の言動を考えれば、バカリスマと呼ばれるのも仕方ないんじゃ無いだろうか。
これを機に心を入れ替えるといいぞ。
ククールに限って心を入れ替えたりはしなさそうだけど。
「……アスカンタの王が、生きながら死者に会いたいと、そう願っていると? ふむ……」
「「!!」」
イシュマウリの一言で、騒がしくなりかけた私達は一斉に目を見開いた。
……驚いた。
まだ何も話してないのに。
「おや、驚いた顔をしている。ああ、説明をしていなかったね。昼の光のもと生きる子よ。記憶は、人だけのものとお思いか? その服も、家々も、家具も、この空も大地も、みな過ぎてゆく日々を覚えている。物言わぬ彼等は、じっと抱えた思いを夢見ながら、微睡んでいるのだ。その夢……記憶を、月の光は形にすることができる。死んだ人間を生き返らせることはできないが、君達の力にはなるだろう。さあ、私を城へ。嘆く王の元へ連れて行っておくれ」
わけの分からない話を、恐らく半分も理解できていないけど、とりあえずここから出て、アスカンタのパヴァン王の元へ連れていけばいいらしい。
私たちはイシュマウリを連れて、月の世界を出て元の世界へと戻った。
──光が収まると、そこはアスカンタ城の中だった。
「えぇぇえ!?」とヤンガスが大声を上げて、私とエイトが同時にヤンガスの口を手で塞いだ。
そりゃあもう、私達全員、しっかり驚いている。
今度は丘を降りて行かなきゃいけないのか……とうんざりしていたのは認めよう。
……陛下達、さすがに麓に置き去りにはなってないよね?
門兵も使用人もみんな寝てしまっていて、お城の中は静まり返っている。
……眠っているだけだよね?
呪われて二度と目覚めないわけじゃないよね?
これもイシュマウリの力なのかな。
月の世界の力ってすごいんだな……。
パヴァン王がいるであろう玉座の間まで、あと少し。
どうかキラさんの願いが叶いますように。
そして……この国に、再び光が差し込みますように。
夜のように暗い世界は、淡い光で照らされている。
地面は全て水で覆われていて、底が見えない。
点々と浮かんでいる足場は、中央に月の満ち欠けが一つずつ描かれていた。
足場同士を繋ぐのは、透明な橋……のような何か。
「夢でも見てるみたい……」
「こんなところがあるなんて知らなかった……」
ゼシカと二人で周囲を見渡して、呆気に取られたまま呟く。
壁となっている岩の隙間からは滝が流れ落ちて、それは下を覆う水へと注いでいた。
足場を渡った向こうには、小さな家がひとつ。
「すごい世界だね……」
「うん……。こんなところがあるなんて、聞いたこともないよ」
「ふぅん。なかなかいい場所だな。修道院も追い出されてみるもんだね」
「またろくでもないこと企んでるようでがすな」
ククールはヤンガスの辛辣な一言に黙って肩を竦めた。
私の中でククールの株がさらにひとつ下がった気がする。
足場を渡り終えた私の前には、家の中へと続くドアがある。
全員が渡り終えたことを確認して、エイトが扉を開けた。
小さな家の中は、外に負けず劣らず不思議な空間だった。
色んな楽器が所狭しと並んで、それらは弾き手もいないのに勝手に音を鳴らしている。
不思議なメロディーだ。
でも、不快ではなくて、どちらかと言うと心が落ち着くような……。
想像していなかった光景の連続で、圧倒されながら家の中へと足を踏み入れた私達の耳に、ハープを爪弾く音が聞こえた。
音の出処は上だ。
小さなステージのようなそこには、人影がひとつ。
手にはハープを持っていて、ロイヤルブルーの長い髪がサラリと揺れた。
片腕だけを通したローブといい、風貌と言い、どうも人間ではなさそうだ。
「私はイシュマウリ。月の光のもとに生きる者。私の世界へようこそ」
そう言って、イシュマウリは上品に一礼した。
なんて優雅な人だろう……と感動したのも束の間。
「へちま売り?」
「馬鹿ヤンガス!!」
慌ててヤンガスを思いっ切り叩いた。
見るからに人智を超えた存在に対して、命知らずか!!
イシュマとへちまって、そもそも響きもあんまり似てないような……。
気を取り直して、私達は目の前にある階段を登って、イシュマウリの元へ。
「ここに人間が来るのは随分久しぶりだ。……月の世界へようこそ、お客人。さて、いかなる願いが月影の窓を開いたのか? 君達の靴に聞いてみよう……」
意味深な言葉と共に、イシュマウリがハープを鳴らす。
その途端、エイトの足元が光った。
慌てたように足をジタバタさせるエイトと……思わず飛び退く我々四人。
すまない……悪気はないんだ……。
「え、なんで離れたんだよ!? 別に危険はなかったと思うんだけど……」
我々は愛想笑いのようなものを浮かべて頷いた。
ちょっとあまりにも超常現象が続いて、理解が追いつかなくてな……。
「もしかして怖いとか……」
「まさか、そんなわけないだろ?」
「そ、そうよ! 怖くなんかないわよ」
「なーにを言ってるんでがすか兄貴!」
「そ、そそ、そうだそうだ! べ、べべ別にこここ怖いとかおおおお思ってないし!!」
「レイラはビビり散らかしてるのがバレバレだけどな」
「なんだと、このバカリスマ!!」
「……そのバカリスマってのは、俺のことか?」
「いいわねそれ、採用よ」
「マジかよ」
ククールの微笑みが引きつった。
日頃の言動を考えれば、バカリスマと呼ばれるのも仕方ないんじゃ無いだろうか。
これを機に心を入れ替えるといいぞ。
ククールに限って心を入れ替えたりはしなさそうだけど。
「……アスカンタの王が、生きながら死者に会いたいと、そう願っていると? ふむ……」
「「!!」」
イシュマウリの一言で、騒がしくなりかけた私達は一斉に目を見開いた。
……驚いた。
まだ何も話してないのに。
「おや、驚いた顔をしている。ああ、説明をしていなかったね。昼の光のもと生きる子よ。記憶は、人だけのものとお思いか? その服も、家々も、家具も、この空も大地も、みな過ぎてゆく日々を覚えている。物言わぬ彼等は、じっと抱えた思いを夢見ながら、微睡んでいるのだ。その夢……記憶を、月の光は形にすることができる。死んだ人間を生き返らせることはできないが、君達の力にはなるだろう。さあ、私を城へ。嘆く王の元へ連れて行っておくれ」
わけの分からない話を、恐らく半分も理解できていないけど、とりあえずここから出て、アスカンタのパヴァン王の元へ連れていけばいいらしい。
私たちはイシュマウリを連れて、月の世界を出て元の世界へと戻った。
──光が収まると、そこはアスカンタ城の中だった。
「えぇぇえ!?」とヤンガスが大声を上げて、私とエイトが同時にヤンガスの口を手で塞いだ。
そりゃあもう、私達全員、しっかり驚いている。
今度は丘を降りて行かなきゃいけないのか……とうんざりしていたのは認めよう。
……陛下達、さすがに麓に置き去りにはなってないよね?
門兵も使用人もみんな寝てしまっていて、お城の中は静まり返っている。
……眠っているだけだよね?
呪われて二度と目覚めないわけじゃないよね?
これもイシュマウリの力なのかな。
月の世界の力ってすごいんだな……。
パヴァン王がいるであろう玉座の間まで、あと少し。
どうかキラさんの願いが叶いますように。
そして……この国に、再び光が差し込みますように。
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