16章
夢小説設定
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なんて声を掛けたらいいか分からない。
私とエイトは顔を見合わせて、それからそっと王様の近くに歩み寄った。
こんなに至近距離にいるのに、私達には見向きもしない。
「……なぜだ?」
嗚咽の中で、パヴァン王は呟いた。
「どうして……シセル、君は僕をひとり置いて天国へ行ってしまったんだ。あれから二年。僕の時計は止まったままだ。何ひとつ心が動かない。せめて、もう一度だけ……夢でもいいんだ。もう一度、君に会いたい」
エイトは悲しそうに首を振ると、私の背を押してパヴァン王の元からそっと立ち去った。
パヴァン王は、王妃様がお亡くなりになってから、二年間ずっとあの調子だってことだ。
どんなに愛していたんだろう、王妃様のことを。
「……戻りましょう。これ以上いても……どうしようもないもの」
ゼシカの一言で、私達は玉座の間から三階へと階段を降りた。
どうしたらいいんだろう、と思い悩んでいると、二階から階段を上がってくる小さな足音が聞こえてきて。
階段から姿を見せたのは、昼間に会った小間使いのキラさんだった。
「……あっ!」
小さな声を上げて、キラさんが私達へと駆け寄ってくる。
「もしや、玉座の間で王様とお会いになられたのですか!?」
「はい。ただ、僕らの事には気付いておられなくて、お声をかけても何の反応も……」
エイトが申し訳なさそうにそう言うと、キラさんは、やっぱり、という顔をして力なく頷いた。
私達も小間使いを経験しているから分かる。
自分がお世話をしている主君が二年もあの調子では、心配にもなる。
「旅の方。我がアスカンタ王は、今は誰の言葉も耳に入らぬのです。ご無礼はどうぞお許しを」
「あの……シセルという人の名前を呟いておられたんですけど、もしかしてその人が……?」
おずおずと尋ねると、キラさんは私を見て小さく頷いた。
「ええ。シセルというのは、二年前に亡くなられた王妃様のお名前です。もし、死んだ人に会えるなら……。シセル王妃が再び目の前に現れたなら、王様も元気になってくださるのに」
そう呟いて、キラさんがハッと目を見開いた。
まるで、何かを思い出したみたいに。
解決する手立てがあるかもしれないなら、ぜひ私達にも一枚噛ませてほしい。
まだここに来て一日しか経っていないけど、この状況を見捨ててはおけない。
「……そういえば、わたくしの祖母が、昔、たくさんお話をしてくれました。不思議な話をたくさん。その中に、どんな願いも叶える方法があると聞いたような気がするけれど……だめだわ。思い出せない。祖母に会いに行けば簡単に分かるでしょうけれど、わたくしにはお城の仕事が……」
そう呟いて、けれど次の瞬間、キラさんは私達に縋るような眼差しを向けた。
それは私達に助けを求める瞳だった。
「旅の方、お願いがあります。この城より西。橋の側の家に住むわたくしの祖母に、願いを叶える昔話のことを詳しく聞いてきて頂きたいのです」
「キラさんのおばあさんに?」
「はい。ただのおとぎ話かもしれませんが、もしそれが本当なら、わたくしは王様の願いを叶えて差し上げたい。自分で聞きに行きたくても、わたくしにはお城の仕事があります。勝手に抜け出すわけにはまいりません。わたくしの祖母の家は、このアスカンタより西、橋の傍に。どうか、どうかお願いします。わたくしは王様がお元気になられるよう、教会で祈っております。旅の方。どうかお願いします……」
そう言い残して、キラさんは階段を降りていった。
その背中は小さく俯いていて、何とかしてあげたいって、強く思った。
「……エイト」
「兄貴、どうしやしょう?」
「……とりあえず一度、トロデ王にお伺いを立てよう」
「それで、こんな国なんて捨て置けって言われたらどうするんだ?」
「大丈夫だよ、ククール。陛下はそんな冷たい人じゃないから!」
「大丈夫、ねぇ……」
やれやれ、というように肩を竦めて、ククールが階段を降りていく。
私達も同じように階段をおりて、アスカンタ城を出た。
城下町を抜けて外へと出ると、陛下はまだ起きておられるようで、馬車の御者台にお姿が見えた。
「陛下、まだ起きておられましたか! ちょうど良かったです!」
「む? 何かあったのか」
「アスカンタの事情について、詳細が分かりましたのでご報告に上がりました」
そう言ってエイトがこれまでのことを陛下に説明した。
この国は二年間、喪に服していふこと。
国王であるパヴァン王に元気を取り戻してもらいたいという、小間使いのキラさんの願い。
そのために私達で力になってやりたいがどうか、というお伺いを立てると、陛下はうんうんと頷いた。
「ふむふむ、そういう事情があったとはな……」
隣でヤンガスが耳を塞いだ。
なぜ? と思うまでもなく、理由はすぐに判明した。
「えっ、えらい!!」
「うわうるさッ!」
「なんと主君思いのメイドじゃ! わしは感動したぞ!」
私を無視して感動に打ち震えないでくださらないだろうか!
急に大声を出されるとびっくりするんだぞ!
ほらエイトだってめっちゃびっくりしてる!!
「よい家臣は国の宝。しかもそのメイド、ミーティアと同じ年頃の娘というではないか。よしっ! これは命令じゃ! そのメイドさんの力になってやれ!」
「ですがトロデ王、お言葉を返すようですが、ドルマゲスがこの国に立ち寄った形跡はありませんでした。先を急いでいる最中では、寄り道になってしまうのでは?」
「なに? そんなもん、お前が急いでぱぱっと片付ければ問題ないわい。さぁ行くぞ! その優しいメイドさんのために、一肌脱ぐのじゃ!」
「──承知しました。ご命令を拝受します」
「ありがとうございます、陛下!」
「ふん。わしがどう答えるかなど、お前達ならばお見通しじゃろうに、律儀なことじゃ」
「えへへ、そうかもしれませんけど、必要なやり取りでしたから。陛下から直々のご命令だし、張り切っておばあさんの家に向かおう!」
「そうだね」
エイトが微笑んで頷いて、地図を取り出す。
キラさんいわく、おばあさんの家はここから西の、橋の近くって言っていた。
……つまりそれって、川沿いの教会の向かいにある家ってことじゃない?
「とりあえず、向かうのは明日の朝にしようぜ。こんな夜中に押しかけても、ばあさんも迷惑だろ」
「それもそうね。私もなんだかんだで眠いし、そうしてもらえると嬉しいわ」
ククールとゼシカの意見が採用され、おばあさんの家に向かうのは明日になった。
正直に言えば、私も眠いと言えば眠いので、今から向かうと言われたら駄々を捏ねてでも泊まる気でいたのは内緒だ。
伊達に昔から「寝る子は育つ」と言われてきてはいない。
睡眠は大事なんだぞ!
私とエイトは顔を見合わせて、それからそっと王様の近くに歩み寄った。
こんなに至近距離にいるのに、私達には見向きもしない。
「……なぜだ?」
嗚咽の中で、パヴァン王は呟いた。
「どうして……シセル、君は僕をひとり置いて天国へ行ってしまったんだ。あれから二年。僕の時計は止まったままだ。何ひとつ心が動かない。せめて、もう一度だけ……夢でもいいんだ。もう一度、君に会いたい」
エイトは悲しそうに首を振ると、私の背を押してパヴァン王の元からそっと立ち去った。
パヴァン王は、王妃様がお亡くなりになってから、二年間ずっとあの調子だってことだ。
どんなに愛していたんだろう、王妃様のことを。
「……戻りましょう。これ以上いても……どうしようもないもの」
ゼシカの一言で、私達は玉座の間から三階へと階段を降りた。
どうしたらいいんだろう、と思い悩んでいると、二階から階段を上がってくる小さな足音が聞こえてきて。
階段から姿を見せたのは、昼間に会った小間使いのキラさんだった。
「……あっ!」
小さな声を上げて、キラさんが私達へと駆け寄ってくる。
「もしや、玉座の間で王様とお会いになられたのですか!?」
「はい。ただ、僕らの事には気付いておられなくて、お声をかけても何の反応も……」
エイトが申し訳なさそうにそう言うと、キラさんは、やっぱり、という顔をして力なく頷いた。
私達も小間使いを経験しているから分かる。
自分がお世話をしている主君が二年もあの調子では、心配にもなる。
「旅の方。我がアスカンタ王は、今は誰の言葉も耳に入らぬのです。ご無礼はどうぞお許しを」
「あの……シセルという人の名前を呟いておられたんですけど、もしかしてその人が……?」
おずおずと尋ねると、キラさんは私を見て小さく頷いた。
「ええ。シセルというのは、二年前に亡くなられた王妃様のお名前です。もし、死んだ人に会えるなら……。シセル王妃が再び目の前に現れたなら、王様も元気になってくださるのに」
そう呟いて、キラさんがハッと目を見開いた。
まるで、何かを思い出したみたいに。
解決する手立てがあるかもしれないなら、ぜひ私達にも一枚噛ませてほしい。
まだここに来て一日しか経っていないけど、この状況を見捨ててはおけない。
「……そういえば、わたくしの祖母が、昔、たくさんお話をしてくれました。不思議な話をたくさん。その中に、どんな願いも叶える方法があると聞いたような気がするけれど……だめだわ。思い出せない。祖母に会いに行けば簡単に分かるでしょうけれど、わたくしにはお城の仕事が……」
そう呟いて、けれど次の瞬間、キラさんは私達に縋るような眼差しを向けた。
それは私達に助けを求める瞳だった。
「旅の方、お願いがあります。この城より西。橋の側の家に住むわたくしの祖母に、願いを叶える昔話のことを詳しく聞いてきて頂きたいのです」
「キラさんのおばあさんに?」
「はい。ただのおとぎ話かもしれませんが、もしそれが本当なら、わたくしは王様の願いを叶えて差し上げたい。自分で聞きに行きたくても、わたくしにはお城の仕事があります。勝手に抜け出すわけにはまいりません。わたくしの祖母の家は、このアスカンタより西、橋の傍に。どうか、どうかお願いします。わたくしは王様がお元気になられるよう、教会で祈っております。旅の方。どうかお願いします……」
そう言い残して、キラさんは階段を降りていった。
その背中は小さく俯いていて、何とかしてあげたいって、強く思った。
「……エイト」
「兄貴、どうしやしょう?」
「……とりあえず一度、トロデ王にお伺いを立てよう」
「それで、こんな国なんて捨て置けって言われたらどうするんだ?」
「大丈夫だよ、ククール。陛下はそんな冷たい人じゃないから!」
「大丈夫、ねぇ……」
やれやれ、というように肩を竦めて、ククールが階段を降りていく。
私達も同じように階段をおりて、アスカンタ城を出た。
城下町を抜けて外へと出ると、陛下はまだ起きておられるようで、馬車の御者台にお姿が見えた。
「陛下、まだ起きておられましたか! ちょうど良かったです!」
「む? 何かあったのか」
「アスカンタの事情について、詳細が分かりましたのでご報告に上がりました」
そう言ってエイトがこれまでのことを陛下に説明した。
この国は二年間、喪に服していふこと。
国王であるパヴァン王に元気を取り戻してもらいたいという、小間使いのキラさんの願い。
そのために私達で力になってやりたいがどうか、というお伺いを立てると、陛下はうんうんと頷いた。
「ふむふむ、そういう事情があったとはな……」
隣でヤンガスが耳を塞いだ。
なぜ? と思うまでもなく、理由はすぐに判明した。
「えっ、えらい!!」
「うわうるさッ!」
「なんと主君思いのメイドじゃ! わしは感動したぞ!」
私を無視して感動に打ち震えないでくださらないだろうか!
急に大声を出されるとびっくりするんだぞ!
ほらエイトだってめっちゃびっくりしてる!!
「よい家臣は国の宝。しかもそのメイド、ミーティアと同じ年頃の娘というではないか。よしっ! これは命令じゃ! そのメイドさんの力になってやれ!」
「ですがトロデ王、お言葉を返すようですが、ドルマゲスがこの国に立ち寄った形跡はありませんでした。先を急いでいる最中では、寄り道になってしまうのでは?」
「なに? そんなもん、お前が急いでぱぱっと片付ければ問題ないわい。さぁ行くぞ! その優しいメイドさんのために、一肌脱ぐのじゃ!」
「──承知しました。ご命令を拝受します」
「ありがとうございます、陛下!」
「ふん。わしがどう答えるかなど、お前達ならばお見通しじゃろうに、律儀なことじゃ」
「えへへ、そうかもしれませんけど、必要なやり取りでしたから。陛下から直々のご命令だし、張り切っておばあさんの家に向かおう!」
「そうだね」
エイトが微笑んで頷いて、地図を取り出す。
キラさんいわく、おばあさんの家はここから西の、橋の近くって言っていた。
……つまりそれって、川沿いの教会の向かいにある家ってことじゃない?
「とりあえず、向かうのは明日の朝にしようぜ。こんな夜中に押しかけても、ばあさんも迷惑だろ」
「それもそうね。私もなんだかんだで眠いし、そうしてもらえると嬉しいわ」
ククールとゼシカの意見が採用され、おばあさんの家に向かうのは明日になった。
正直に言えば、私も眠いと言えば眠いので、今から向かうと言われたら駄々を捏ねてでも泊まる気でいたのは内緒だ。
伊達に昔から「寝る子は育つ」と言われてきてはいない。
睡眠は大事なんだぞ!
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