16章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
キラさんに話を聞こうと、お二人の側へと歩み寄る。
話題はやはり、王様のことであるらしかった。
「──お食事もほとんど手つかず。夕べも一晩中、玉座の間で泣き明かしていらしたご様子。王妃様がご存命の時は、あれほどお優しくて賢い王様でしたのに。お側仕えでありながら、なんのお役にも立てず、申し訳ございません……」
「そうか……。王は今日も。ご苦労だったな、キラ。だがなんとしても王に元気を取り戻して頂かなければ。このままでは国が傾く。……しかし、いったいどうすればいいのだ」
頭を抱えて嘆く大臣に同情してしまう。
どうも、王妃様が亡くなられたのは、ここ最近の出来事ではなさそうだ。
私達で力になれるなら、喜んで協力するところなんだけど……。
「……あの」
会話が一段落したところで、エイトがキラさんに声を掛けた。
はっとして振り向いたキラさんが、驚いたように目を丸くしている。
「まあ、旅のお方!? もしや、我がアスカンタの王にお会いにいらしたのですか? 残念ですが、我が王はこの二年というもの、どなたにも会おうとはなさいません。夜にはこの玉座の間へ降りていらっしゃいますが、今の王には、誰の言葉も耳に入らないのです。……信じられぬと言うのなら、日が暮れたあと、この玉座の間に来て、ご自分の目でお確かめください」
そう言ったきり、キラさんは口を閉ざしてしまった。
……予想外の事態で、私達も困惑している。
二年……って言ったよね、キラさん。
つまり王妃様が亡くなったのは二年前で、この国はそれからずっとこんな調子ってこと?
二年間も喪に服しているなら、そりゃみんな疲れるに決まってる。
だからこの国の人達から、悲しみではなく怒りや不満げな雰囲気を感じるんだ。
何を言ったらいいか分からないまま、私達はアスカンタ城を出た。
閑散とした城下町は、出歩いているのなんて私達くらい。
「まったく、とんだ引きこもり王ね!」
「落ち着いてゼシカ、気持ちは分かるけど!」
ゼシカなら絶対に言うと思った。
思ったけどせめてもう少し小声で言ってくれると助かったな!
ともあれ、キラさんに「夜に来てみろ」と言われた手前、そうするしかないかな……。
「二年……二年かぁ。よっぽど王妃様のことが大好きだったんだろうね」
「……きっとそうなんだと思う。今でも忘れられなくて、王妃様のいない世界が信じられなくて……。だから閉じ篭っているんだろうね」
塔を見上げて、エイトが呟く。
その横顔はどこか寂しそうだった。
……そう言えば、エイトがトロデーン城に来た時、ちょうど王妃様を亡くされたばかりだったはず。
私が来た頃には喪も明けていたから、当時の様子は知らないけど、エイトはあの頃のことを思い出しているのかもしれない。
「……夜、行ってみる?」
「そうだね……」
それで何か解決の糸口が掴めたらいいんだけど……。
ドルマゲスの足取りを追うのはもちろん大事だけど、この国のことを放っておくのは、なんだか違う気がする。
「……あんたら、とんだお人好しだな」
「兄貴と姉貴は義理人情に篤いお方でがすよ。アッシのような人間を助けてくれるくらいでがすからね」
やれやれ、というように肩を竦めて、ククールは宿屋へと歩いていった。
疲労が限界らしい。
まあ私達ほぼ全員、寝不足と言えば寝不足だもんね。
宿屋へと入って、フロントにベッドの空きを確認すると、当たり前だけど全部空いていた。
「じゃあ一晩……」
「五人、夜まで休憩で」
「えっ」
隣にいるククールがそう言って、人数分の宿代を払う。
ゴールドの入った袋をしまったククールは、私に向かってニヤリと微笑んで。
「行くんだろ、城。付き合ってやるよ」
「ククール……!」
「あのレディの笑顔のために、一肌脱いでやるか」
「ククール……」
私の中のククールの株が、急上昇して急降下した。
国や王様のためじゃなくて、キラさんのためだったか……。
背後に立っているエイトを振り向く。
エイトは曖昧に微笑んで首を振った。
そうだね、ククールのこれは治らないって私の勘も言ってる。
かくして私達は、この静かで陰鬱な雰囲気漂う城下町の宿屋で、夜まで爆睡した。
びっくりするくらいストンと寝落ちたことにも驚いたけど、まだ日没でもない時間帯に眠れることにも驚いた。
──夜になって、私達は宿屋を出た。
真っ黒の空には星が瞬き、月が世界を淡く照らしている。
さて、夜になって城に行こうという話だったので、私達は再び城内へ入ったわけだけど。
「思ったんだけどさ……」
「うん……。言いたいことはすごく分かるよ、僕」
噴水の前で腕を組み、私はとうとう、ずっと疑問に思っていたことを言った。
「なんで夜なのにお城に入れるの?」
「僕に聞かれても困るよ……。そういう方針なんじゃないかな?」
「いやでも普通は夜って、門を堅ーく閉めて、アリ一匹すら入らせないようにするんじゃないの? ここの人たち、警戒心なさすぎない?」
「警戒心はあると思うよ。だってほら、まだお城の中は明かりがついてるし」
「そうでがすね。こんだけ明るかったら、強盗なんてできねぇでがす」
「そんなもんかなあ?」
少々納得がいかないけど、それもこの国のお国柄なのか……?
よく言えば開放的、悪く言えば危機感なさすぎ。
夜でも入れる城って初めてだよ、トロデーンだって夜は城門を閉めるのに。
「それよりも、今回の目的は、王様の姿を確かめることなんでしょ。いちいちお城がどうなんてこだわってる場合じゃないわ」
ゼシカに怒られた。
見事にド正論で返す言葉もない。
「分かってるってば……」
なるべく音を立てないよう、静かに歩いて、階段を上がる。
四階の玉座の間に着いた私達は、王の椅子に倒れ込む人影を見た。
「──」
全員が、口をつぐんだ。
「シセル……」
私達には気付いていない。
ただ、王妃が座っていたであろう玉座で、泣き伏せるパヴァン王の姿があった。
話題はやはり、王様のことであるらしかった。
「──お食事もほとんど手つかず。夕べも一晩中、玉座の間で泣き明かしていらしたご様子。王妃様がご存命の時は、あれほどお優しくて賢い王様でしたのに。お側仕えでありながら、なんのお役にも立てず、申し訳ございません……」
「そうか……。王は今日も。ご苦労だったな、キラ。だがなんとしても王に元気を取り戻して頂かなければ。このままでは国が傾く。……しかし、いったいどうすればいいのだ」
頭を抱えて嘆く大臣に同情してしまう。
どうも、王妃様が亡くなられたのは、ここ最近の出来事ではなさそうだ。
私達で力になれるなら、喜んで協力するところなんだけど……。
「……あの」
会話が一段落したところで、エイトがキラさんに声を掛けた。
はっとして振り向いたキラさんが、驚いたように目を丸くしている。
「まあ、旅のお方!? もしや、我がアスカンタの王にお会いにいらしたのですか? 残念ですが、我が王はこの二年というもの、どなたにも会おうとはなさいません。夜にはこの玉座の間へ降りていらっしゃいますが、今の王には、誰の言葉も耳に入らないのです。……信じられぬと言うのなら、日が暮れたあと、この玉座の間に来て、ご自分の目でお確かめください」
そう言ったきり、キラさんは口を閉ざしてしまった。
……予想外の事態で、私達も困惑している。
二年……って言ったよね、キラさん。
つまり王妃様が亡くなったのは二年前で、この国はそれからずっとこんな調子ってこと?
二年間も喪に服しているなら、そりゃみんな疲れるに決まってる。
だからこの国の人達から、悲しみではなく怒りや不満げな雰囲気を感じるんだ。
何を言ったらいいか分からないまま、私達はアスカンタ城を出た。
閑散とした城下町は、出歩いているのなんて私達くらい。
「まったく、とんだ引きこもり王ね!」
「落ち着いてゼシカ、気持ちは分かるけど!」
ゼシカなら絶対に言うと思った。
思ったけどせめてもう少し小声で言ってくれると助かったな!
ともあれ、キラさんに「夜に来てみろ」と言われた手前、そうするしかないかな……。
「二年……二年かぁ。よっぽど王妃様のことが大好きだったんだろうね」
「……きっとそうなんだと思う。今でも忘れられなくて、王妃様のいない世界が信じられなくて……。だから閉じ篭っているんだろうね」
塔を見上げて、エイトが呟く。
その横顔はどこか寂しそうだった。
……そう言えば、エイトがトロデーン城に来た時、ちょうど王妃様を亡くされたばかりだったはず。
私が来た頃には喪も明けていたから、当時の様子は知らないけど、エイトはあの頃のことを思い出しているのかもしれない。
「……夜、行ってみる?」
「そうだね……」
それで何か解決の糸口が掴めたらいいんだけど……。
ドルマゲスの足取りを追うのはもちろん大事だけど、この国のことを放っておくのは、なんだか違う気がする。
「……あんたら、とんだお人好しだな」
「兄貴と姉貴は義理人情に篤いお方でがすよ。アッシのような人間を助けてくれるくらいでがすからね」
やれやれ、というように肩を竦めて、ククールは宿屋へと歩いていった。
疲労が限界らしい。
まあ私達ほぼ全員、寝不足と言えば寝不足だもんね。
宿屋へと入って、フロントにベッドの空きを確認すると、当たり前だけど全部空いていた。
「じゃあ一晩……」
「五人、夜まで休憩で」
「えっ」
隣にいるククールがそう言って、人数分の宿代を払う。
ゴールドの入った袋をしまったククールは、私に向かってニヤリと微笑んで。
「行くんだろ、城。付き合ってやるよ」
「ククール……!」
「あのレディの笑顔のために、一肌脱いでやるか」
「ククール……」
私の中のククールの株が、急上昇して急降下した。
国や王様のためじゃなくて、キラさんのためだったか……。
背後に立っているエイトを振り向く。
エイトは曖昧に微笑んで首を振った。
そうだね、ククールのこれは治らないって私の勘も言ってる。
かくして私達は、この静かで陰鬱な雰囲気漂う城下町の宿屋で、夜まで爆睡した。
びっくりするくらいストンと寝落ちたことにも驚いたけど、まだ日没でもない時間帯に眠れることにも驚いた。
──夜になって、私達は宿屋を出た。
真っ黒の空には星が瞬き、月が世界を淡く照らしている。
さて、夜になって城に行こうという話だったので、私達は再び城内へ入ったわけだけど。
「思ったんだけどさ……」
「うん……。言いたいことはすごく分かるよ、僕」
噴水の前で腕を組み、私はとうとう、ずっと疑問に思っていたことを言った。
「なんで夜なのにお城に入れるの?」
「僕に聞かれても困るよ……。そういう方針なんじゃないかな?」
「いやでも普通は夜って、門を堅ーく閉めて、アリ一匹すら入らせないようにするんじゃないの? ここの人たち、警戒心なさすぎない?」
「警戒心はあると思うよ。だってほら、まだお城の中は明かりがついてるし」
「そうでがすね。こんだけ明るかったら、強盗なんてできねぇでがす」
「そんなもんかなあ?」
少々納得がいかないけど、それもこの国のお国柄なのか……?
よく言えば開放的、悪く言えば危機感なさすぎ。
夜でも入れる城って初めてだよ、トロデーンだって夜は城門を閉めるのに。
「それよりも、今回の目的は、王様の姿を確かめることなんでしょ。いちいちお城がどうなんてこだわってる場合じゃないわ」
ゼシカに怒られた。
見事にド正論で返す言葉もない。
「分かってるってば……」
なるべく音を立てないよう、静かに歩いて、階段を上がる。
四階の玉座の間に着いた私達は、王の椅子に倒れ込む人影を見た。
「──」
全員が、口をつぐんだ。
「シセル……」
私達には気付いていない。
ただ、王妃が座っていたであろう玉座で、泣き伏せるパヴァン王の姿があった。
