16章
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アスカンタ城の前で、私達は足を止めた。
やっと着いた、とエイトが呟く。
さて、ここがアスカンタ城なわけだけど……。
「お城の規模としては、小さめだね」
城壁を見上げながら私が呟くと、エイトが頷いた。
「そうだね。内側を見ていないけど、敷地面積から言っても、そう広くはなさそうだ」
「アスカンタは三国の中で一番小さい国だ。それに応じた城の規模ってことだろうさ」
「これで小せぇってんでがすか。なら兄貴や姉貴のいた城であるトロデーン城は、もっと大きいんでがしょうなぁ」
「とにかく、中に入りましょ。今日はここで片っ端から聞き込みよ」
陛下と姫様はいつも通り、お城の外だ。
申し訳ない気持ちはあるけど、中に入ってしまうと、トラペッタやマイエラ修道院の時みたいなことになるから、仕方ない。
陛下に聖水を持たせ、私達はアスカンタ城へと足を踏み入れた。
小国でも国王の住まう城だ。
それなりに活気溢れる城下町を想像していた私達は、一歩足を踏み入れたその瞬間、絶句した。
──その王国は、異質だった。
「なに、この重苦しい雰囲気……」
ゼシカが二の腕をさすって呟く。
眠気もどこかへ飛んで行ってしまうほどの衝撃だった。
もっと活気があると思っていたのに、外を歩く人はまばらで、誰もが黒い服を着ている。
「あ……。レイラ、あれ」
エイトが指差す方向には、城の塔。
そこから垂れ下がった幕は、真っ黒だった。
「ああ……そういうことか。誰かが亡くなったんだろうね……」
「どうして分かるんでがすか?」
「塔から黒い幕が下がってるでしょ? あれって、この国が今、喪に服してることを表してるの」
「ってことは、あんまり騒がしくはできねえな」
「動きづらいのは仕方ないだろうね……」
みんなで顔を見合わせて、どうしよう、という空気になる。
一晩をここで過ごして、別の町に向かうほうがいいのかな。
とんだタイミングで来てしまったのは確かだ。
「あ、でも多分、国王には会えると思う」
「そうなの?」
「さっき、人が入っていったのが見えたんだ。王城は封鎖されてないみたいだ」
さすがエイト、城の中に人が入ったのを見逃さなかったらしい。
となれば、とりあえず国王様にご挨拶だけでもしたほうがいいな。
「せっかく立ち寄ったんだし、挨拶くらいはしていこうよ」
「そうね。一度、王様に会いに行ってみましょう」
ゼシカの言葉で、王様に謁見することが決まった。
この国の王様は、どんな人なんだろうな。
……などと、私達は呑気なことを考えていた。
この時までは。
女神像の手にある水瓶から、水が流れ落ちる噴水。
紫の絨毯は、左右に分かれた階段へと続いていた。
その階段を上がって、カーペットが続く階段を上がり、三階へ。
そこから更にまたカーペットが続いて、四階までやってきた。
「横に幅を取れない分、高さを出した形みたいだね」
「階段をこんなに登ることになるとは思わなかったわ……」
エイトの後ろを歩きながら、若干お疲れ気味なゼシカと小声でそう話す。
小声じゃないと、自分達の声が響いて仕方ないのだ。
四階は玉座の間。
しかし、そこに王様の姿はなかった。
戸惑う私達を置いて、エイトが玉座の横にいる大臣の前へと進み出る。
私も慌ててエイトと一緒に、大臣へ挨拶しに行った。
「お初にお目にかかります」
「……ほほう。旅の者とは珍しい。我がアスカンタへ、よくぞ参った。我が国は、亡くなられた王妃の喪に服しておるため、王には会えんのだ。すまぬが、お引き取り願おう」
「王妃様の……。そうでしたか」
それでこの国は、こんなに暗い雰囲気だったのか。
これはいよいよ長居すべきではないな。
大臣にお礼を言って、皆の所へ戻る。
芳しくない答えだったのは察せられたようで、私達は王妃様がお亡くなりになったこと、喪に服しているため王様には会えないことを伝えた。
「王様に会えない?」
「喪に服してるからってか?」
ゼシカとククールの怪訝な声音に、私とエイトは小さく頷いた。
そりゃあ私も思うところはあるけれど、それがこの国の方針だと言われたら、何も言えない。
でもなんだかお城の人を見る限り、王妃様を失って悲しみに暮れている感じはしなくて。
「……この国の人達、どこか疲れてるように見えるわ。ねぇ、王妃様が亡くなったのって、いつの事なのかしら」
「そこまでは大臣様にも聞けなくて……」
「ま、会えねぇモンは仕方ねぇでがすよ。それより、この上、何があるんでがしょうね」
ヤンガスがそう言って、屋上に続く階段を見上げる。
とりあえず言ってみるか、という空気になって、私達は屋上へと階段を上っていった。
屋上からは、アスカンタ領が一望できた。
気持ちいい風が吹いて、この国が喪中でなければ、心からこの景色を楽しめただろう。
と、その時、小柄な女性が、塔の扉の前に立っていた。
ドアを三回ノックして、やきもきするように小さく地団駄を踏む。
「お加減は如何ですか? わたくしです。小間使いのキラです」
アスカンタ国王の小間使い……。
ふと昔のことを思い出した。
私とエイトも、王様と姫様の小間使いをやっていたな。
しかし国王様の返事はない。
お休み中なのか……それとも。
「お昼にお運びしたお食事も、召し上がられなかったようですね。夕食は、王様の好物を作りますので……」
切実な声が室内へと呼びかける。
それでも、国王様からの返事はなかった。
「……王様、お願いです。せめてお返事を。お元気かどうかだけでも……」
返事を待つキラさんを嘲笑うみたいに、風の音だけが木霊する。
やがてキラさんは「失礼致します」と呟き、俯いてとぼとぼと階段を降りていった。
……王様の小間使いなら、王様がどういう状況なのか知っているはず。
考えるより先に身体が動いて、階段を駆け降りる。
背後でみんなが慌てたように階段を降りてきて──降りた先の玉座の間に、大臣とキラさんがいた。
やっと着いた、とエイトが呟く。
さて、ここがアスカンタ城なわけだけど……。
「お城の規模としては、小さめだね」
城壁を見上げながら私が呟くと、エイトが頷いた。
「そうだね。内側を見ていないけど、敷地面積から言っても、そう広くはなさそうだ」
「アスカンタは三国の中で一番小さい国だ。それに応じた城の規模ってことだろうさ」
「これで小せぇってんでがすか。なら兄貴や姉貴のいた城であるトロデーン城は、もっと大きいんでがしょうなぁ」
「とにかく、中に入りましょ。今日はここで片っ端から聞き込みよ」
陛下と姫様はいつも通り、お城の外だ。
申し訳ない気持ちはあるけど、中に入ってしまうと、トラペッタやマイエラ修道院の時みたいなことになるから、仕方ない。
陛下に聖水を持たせ、私達はアスカンタ城へと足を踏み入れた。
小国でも国王の住まう城だ。
それなりに活気溢れる城下町を想像していた私達は、一歩足を踏み入れたその瞬間、絶句した。
──その王国は、異質だった。
「なに、この重苦しい雰囲気……」
ゼシカが二の腕をさすって呟く。
眠気もどこかへ飛んで行ってしまうほどの衝撃だった。
もっと活気があると思っていたのに、外を歩く人はまばらで、誰もが黒い服を着ている。
「あ……。レイラ、あれ」
エイトが指差す方向には、城の塔。
そこから垂れ下がった幕は、真っ黒だった。
「ああ……そういうことか。誰かが亡くなったんだろうね……」
「どうして分かるんでがすか?」
「塔から黒い幕が下がってるでしょ? あれって、この国が今、喪に服してることを表してるの」
「ってことは、あんまり騒がしくはできねえな」
「動きづらいのは仕方ないだろうね……」
みんなで顔を見合わせて、どうしよう、という空気になる。
一晩をここで過ごして、別の町に向かうほうがいいのかな。
とんだタイミングで来てしまったのは確かだ。
「あ、でも多分、国王には会えると思う」
「そうなの?」
「さっき、人が入っていったのが見えたんだ。王城は封鎖されてないみたいだ」
さすがエイト、城の中に人が入ったのを見逃さなかったらしい。
となれば、とりあえず国王様にご挨拶だけでもしたほうがいいな。
「せっかく立ち寄ったんだし、挨拶くらいはしていこうよ」
「そうね。一度、王様に会いに行ってみましょう」
ゼシカの言葉で、王様に謁見することが決まった。
この国の王様は、どんな人なんだろうな。
……などと、私達は呑気なことを考えていた。
この時までは。
女神像の手にある水瓶から、水が流れ落ちる噴水。
紫の絨毯は、左右に分かれた階段へと続いていた。
その階段を上がって、カーペットが続く階段を上がり、三階へ。
そこから更にまたカーペットが続いて、四階までやってきた。
「横に幅を取れない分、高さを出した形みたいだね」
「階段をこんなに登ることになるとは思わなかったわ……」
エイトの後ろを歩きながら、若干お疲れ気味なゼシカと小声でそう話す。
小声じゃないと、自分達の声が響いて仕方ないのだ。
四階は玉座の間。
しかし、そこに王様の姿はなかった。
戸惑う私達を置いて、エイトが玉座の横にいる大臣の前へと進み出る。
私も慌ててエイトと一緒に、大臣へ挨拶しに行った。
「お初にお目にかかります」
「……ほほう。旅の者とは珍しい。我がアスカンタへ、よくぞ参った。我が国は、亡くなられた王妃の喪に服しておるため、王には会えんのだ。すまぬが、お引き取り願おう」
「王妃様の……。そうでしたか」
それでこの国は、こんなに暗い雰囲気だったのか。
これはいよいよ長居すべきではないな。
大臣にお礼を言って、皆の所へ戻る。
芳しくない答えだったのは察せられたようで、私達は王妃様がお亡くなりになったこと、喪に服しているため王様には会えないことを伝えた。
「王様に会えない?」
「喪に服してるからってか?」
ゼシカとククールの怪訝な声音に、私とエイトは小さく頷いた。
そりゃあ私も思うところはあるけれど、それがこの国の方針だと言われたら、何も言えない。
でもなんだかお城の人を見る限り、王妃様を失って悲しみに暮れている感じはしなくて。
「……この国の人達、どこか疲れてるように見えるわ。ねぇ、王妃様が亡くなったのって、いつの事なのかしら」
「そこまでは大臣様にも聞けなくて……」
「ま、会えねぇモンは仕方ねぇでがすよ。それより、この上、何があるんでがしょうね」
ヤンガスがそう言って、屋上に続く階段を見上げる。
とりあえず言ってみるか、という空気になって、私達は屋上へと階段を上っていった。
屋上からは、アスカンタ領が一望できた。
気持ちいい風が吹いて、この国が喪中でなければ、心からこの景色を楽しめただろう。
と、その時、小柄な女性が、塔の扉の前に立っていた。
ドアを三回ノックして、やきもきするように小さく地団駄を踏む。
「お加減は如何ですか? わたくしです。小間使いのキラです」
アスカンタ国王の小間使い……。
ふと昔のことを思い出した。
私とエイトも、王様と姫様の小間使いをやっていたな。
しかし国王様の返事はない。
お休み中なのか……それとも。
「お昼にお運びしたお食事も、召し上がられなかったようですね。夕食は、王様の好物を作りますので……」
切実な声が室内へと呼びかける。
それでも、国王様からの返事はなかった。
「……王様、お願いです。せめてお返事を。お元気かどうかだけでも……」
返事を待つキラさんを嘲笑うみたいに、風の音だけが木霊する。
やがてキラさんは「失礼致します」と呟き、俯いてとぼとぼと階段を降りていった。
……王様の小間使いなら、王様がどういう状況なのか知っているはず。
考えるより先に身体が動いて、階段を駆け降りる。
背後でみんなが慌てたように階段を降りてきて──降りた先の玉座の間に、大臣とキラさんがいた。
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