15章
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「ほんと、寝耳に水の話でさ? 幼く純真なククール少年の心は、こっぴどく傷ついたね」
一通りを話し終えたククールは、空を見上げてそう言って――それでも、彼の中には恨みだ何だって感情はないみたいだった。
本人はそんなつもりないだろうけど、ククールはきっと、根が優しい人間なんだろうと思う。
「でもまあ……ね。クソ親父は、したい放題やってさっさと死んじまった。奴には、恨める相手は俺しか残ってないんだ」
「……」
「……分からないでもないんだ。だから、いい機会だったと思うよ。近くにいるから余計、苛立たせる。ちょうど、マイエラ修道院の窮屈な暮らしにも飽き飽きしてた頃だったし」
「ククール。君は……」
エイトが何かを言おうとした時、夜明けの空に一番鶏が鳴いた。
そういえば空が少し明るい。
結局ほとんど眠れなかったな……。
「随分、長話になっちまった。ほら、そろそろ夜明けだぜ?」
「あ、うん……」
「なんだよ、そんな暗い顔して。同情ならいらねぇぜ」
「訳ありなんだろうなとは思ってたけど、予想以上に複雑な事情で驚いてるだけだよ」
「……ま、訳ありなのは間違いないさ」
そうだね、と呟いて、ククールを見上げる。
うーん、こうして見ればイケメンなんだけどなぁ、なんて。
「ククールは両親の顔とか覚えてる?」
「いいや。俺がかなり小さかったときに、二人とも死んじまったからな。もう浮かんですら来ねぇよ。けどまぁ、どういう人だった……っていうのは、何となく覚えてるな」
「そっか……」
夜風がふわりと私たちを包んだ。
何かが残っているだけでも、羨ましいと思えるものなんだな。
私には……エイトにも、両親のことは何一つ残っていないから。
「そういうレイラはどうなんだ?」
「何が?」
「親の顔とか、どういう人だった、とか」
「……分かんない。私達、捨て子だったからさ。親はいただろうけど、育ててもらった記憶はないし」
「たち……って」
「うん。私とエイト」
ククールの表情が気まずいものになる。
聞いてはいけないことを聞いたと思ったんだろう。
ゼシカといいククールといい、そこまで気にすることでもないのに。
「悪かった。嫌なこと思い出させちまったな」
「別にいいよ。だって親みたいな人は、今ここにいるんだし」
「……トロデ王か?」
「うん」
「トロデ王と姫様には感謝しきれないんだ。僕達のことを我が子のように育ててくれたのは陛下だし、僕らをただの小間使いから近衛兵にしてくれたのは、姫様だから」
「エイトにとって、姫様は初恋の相手だしねー?」
「ほお? やるなあエイト」
左腕でちょいちょいとエイトをつついてやれば、ククールも便乗してニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
エイトは揶揄い甲斐があるぞ、いじられ役としては優秀だ。
がしかし、エイト本人はと言うと、不思議そうな顔をして首を傾げた。
「……いや、違うよ?」
「違うの!? じゃあ誰? ちょっと教えてよ、ほら、幼馴染みのよしみでさぁ!」
「なんで教えなきゃいけないんだよ」
「えー、だって、気になるんだもん」
「気にならなくていいから!」
こんな話をするうちに東の空が明るみ始めた。
私とエイトにとっては起床時間だ。
まあ、ちゃんと寝られたうちだし、これなら大丈夫かな。
「じゃあ、そろそろ寝直すか」
「そうだね……」
ククールと一緒に教会の中に戻って、男子共がベッドに入り込んでいく。
二度寝が許された非番の日の朝みたいだ。
バンザイ、見張り番のない夜!
私もゼシカとのベッドに入ろうとして――そのベッドがもぬけの殻であることに気がついた。
「あれ、ゼシカがいない」
ま、すぐ戻ってくるよね。
とりあえず私はベッドの端ギリギリで寝ておけば大丈夫だろう。
この寝相が保たれているうちに帰ってきてくれ、ゼシカ……!
そんなことを考えているうちに、気がつけばぐっすり眠ってしまっていて、いつの間にかゼシカがベッドに戻ってきたことには、全く気付かなかった。
――翌日。
ぱっと目が覚めると、既にエイトもゼシカもククールも起きていた。
窓の外はとっくに明るくなっていて、誰がどう見ても朝だ。
「あら、起きたのね。おはようレイラ」
「おはようゼシカ……。ふぁ、ふ……」
「眠そうだね。顔、洗っておいで」
「ん、そうする……」
眠い目をこすりながらベッドを降りて、外にある井戸へ向かう。
桶で水を汲んで顔を洗うと、冷たい水でしゃっきりと目が覚めた。
……二日連続で睡眠時間が足りていないから、根本的に寝不足ではあるけど。
「目も覚めたみたいだね。はいこれ、レイラの分」
「ありがとエイト」
私の分のパンとスープを受け取って朝食を食べる。
宿屋と違って教会だからか、スープの味付けは素朴だし、具材も少ない。
……いや、文句は言うまい。
タダで泊めてもらっているんだから。
「今日はエイトもレイラも、起きるのが遅かったのね」
「あー、スイッチ切っちゃうとこんな感じだね、私もエイトも」
「明日も任務だって思えば、夜明け頃には起きられるんだけどね。二度寝したのが良くなかったかな」
「だね。あれで完全にスイッチ切れたもん」
二度寝するということは、すなわち非番ということ。
そうなると早起きの必要もないから、ついつい日が完全に昇るまで寝てしまう。
非番だから怒られたりもしなかったしね。
「今日からはしっかり気を引き締めていこうか」
「だね。トロデーンが復活した後、また教官の世話になるのは嫌すぎるし……」
そう呟くと、エイトも神妙な顔つきで頷いた。
鬼教官は全ての兵士達のトラウマなのだ。
あのスパルタ教育のおかげで強くなれたのは間違いないけど、獅子が子を谷底へ落とすのと同じような理屈を感じた。
できることなら二度とあの訓練は受けたくない。
冗談抜きで命がおしまいになると思った。
教会で朝のお祈りも済ませて、私達は川沿いの教会を出発することにした。
ドルマゲスの手がかりを求めて、目指すはアスカンタ城だ。
「よーっし!
それじゃあ出発!!」
「おうでがす!」
カラカラと馬車の車輪が回り、私達五人は道なりに進み始めた。
一晩休んだので、気力も充分だ。
道中の敵もさほど苦労することなく倒して、道端にある宝箱を開けていく。
なぜダンジョンでもないこんなところに宝箱があるのかは、旅人達の永遠の謎だ。
ありがたく貰うに限るんだけども。
「しかし姉貴は妙にテンションが高いでがすなぁ」
「普通だよ、普通! 元気に行こうよ! ねえ、みんな!」
「う、うん!!」
「そうだな、おう!!」
「そっ、そうよね!」
無理矢理に腹から声を出したような返事が三人分。
実はヤンガス以外の四人は全員、目の下にクマを作っている。
最初は「なぜゼシカまで?」と不思議だったけれど、道中でゼシカから、昨日のククールと私とエイトの身の上話を聞いてしまったと告げられた。
私やエイトは聞かれて困ることでもないから気にしなかったけれど、ククールはほんの少しだけ気まずそうな顔をしていた。
けれど一応はゼシカを口説いている最中なので、それすらも口説き落とすための手札にしたようだ。
したたかというか何と言うか。
そんなこんなで、休憩を何度か挟みつつアスカンタ城を目指して進み。
夕日が傾いて来た頃。
海に面している開けた土地に、城壁とお城が姿を現した。
「みんなー!
アスカンタ城が見えたよ!!」
「兄貴、あとちょっとでがすよ!」
「そうね! 頑張りましょう!」
「俺は一刻も早く宿屋で休みたい」
「それには僕も同意……」
アスカンタ城を目の前にして、それぞれが思い思いの言葉を呟いて、そして心の中で全員が叫んだ
眠ーい!!
一通りを話し終えたククールは、空を見上げてそう言って――それでも、彼の中には恨みだ何だって感情はないみたいだった。
本人はそんなつもりないだろうけど、ククールはきっと、根が優しい人間なんだろうと思う。
「でもまあ……ね。クソ親父は、したい放題やってさっさと死んじまった。奴には、恨める相手は俺しか残ってないんだ」
「……」
「……分からないでもないんだ。だから、いい機会だったと思うよ。近くにいるから余計、苛立たせる。ちょうど、マイエラ修道院の窮屈な暮らしにも飽き飽きしてた頃だったし」
「ククール。君は……」
エイトが何かを言おうとした時、夜明けの空に一番鶏が鳴いた。
そういえば空が少し明るい。
結局ほとんど眠れなかったな……。
「随分、長話になっちまった。ほら、そろそろ夜明けだぜ?」
「あ、うん……」
「なんだよ、そんな暗い顔して。同情ならいらねぇぜ」
「訳ありなんだろうなとは思ってたけど、予想以上に複雑な事情で驚いてるだけだよ」
「……ま、訳ありなのは間違いないさ」
そうだね、と呟いて、ククールを見上げる。
うーん、こうして見ればイケメンなんだけどなぁ、なんて。
「ククールは両親の顔とか覚えてる?」
「いいや。俺がかなり小さかったときに、二人とも死んじまったからな。もう浮かんですら来ねぇよ。けどまぁ、どういう人だった……っていうのは、何となく覚えてるな」
「そっか……」
夜風がふわりと私たちを包んだ。
何かが残っているだけでも、羨ましいと思えるものなんだな。
私には……エイトにも、両親のことは何一つ残っていないから。
「そういうレイラはどうなんだ?」
「何が?」
「親の顔とか、どういう人だった、とか」
「……分かんない。私達、捨て子だったからさ。親はいただろうけど、育ててもらった記憶はないし」
「たち……って」
「うん。私とエイト」
ククールの表情が気まずいものになる。
聞いてはいけないことを聞いたと思ったんだろう。
ゼシカといいククールといい、そこまで気にすることでもないのに。
「悪かった。嫌なこと思い出させちまったな」
「別にいいよ。だって親みたいな人は、今ここにいるんだし」
「……トロデ王か?」
「うん」
「トロデ王と姫様には感謝しきれないんだ。僕達のことを我が子のように育ててくれたのは陛下だし、僕らをただの小間使いから近衛兵にしてくれたのは、姫様だから」
「エイトにとって、姫様は初恋の相手だしねー?」
「ほお? やるなあエイト」
左腕でちょいちょいとエイトをつついてやれば、ククールも便乗してニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
エイトは揶揄い甲斐があるぞ、いじられ役としては優秀だ。
がしかし、エイト本人はと言うと、不思議そうな顔をして首を傾げた。
「……いや、違うよ?」
「違うの!? じゃあ誰? ちょっと教えてよ、ほら、幼馴染みのよしみでさぁ!」
「なんで教えなきゃいけないんだよ」
「えー、だって、気になるんだもん」
「気にならなくていいから!」
こんな話をするうちに東の空が明るみ始めた。
私とエイトにとっては起床時間だ。
まあ、ちゃんと寝られたうちだし、これなら大丈夫かな。
「じゃあ、そろそろ寝直すか」
「そうだね……」
ククールと一緒に教会の中に戻って、男子共がベッドに入り込んでいく。
二度寝が許された非番の日の朝みたいだ。
バンザイ、見張り番のない夜!
私もゼシカとのベッドに入ろうとして――そのベッドがもぬけの殻であることに気がついた。
「あれ、ゼシカがいない」
ま、すぐ戻ってくるよね。
とりあえず私はベッドの端ギリギリで寝ておけば大丈夫だろう。
この寝相が保たれているうちに帰ってきてくれ、ゼシカ……!
そんなことを考えているうちに、気がつけばぐっすり眠ってしまっていて、いつの間にかゼシカがベッドに戻ってきたことには、全く気付かなかった。
――翌日。
ぱっと目が覚めると、既にエイトもゼシカもククールも起きていた。
窓の外はとっくに明るくなっていて、誰がどう見ても朝だ。
「あら、起きたのね。おはようレイラ」
「おはようゼシカ……。ふぁ、ふ……」
「眠そうだね。顔、洗っておいで」
「ん、そうする……」
眠い目をこすりながらベッドを降りて、外にある井戸へ向かう。
桶で水を汲んで顔を洗うと、冷たい水でしゃっきりと目が覚めた。
……二日連続で睡眠時間が足りていないから、根本的に寝不足ではあるけど。
「目も覚めたみたいだね。はいこれ、レイラの分」
「ありがとエイト」
私の分のパンとスープを受け取って朝食を食べる。
宿屋と違って教会だからか、スープの味付けは素朴だし、具材も少ない。
……いや、文句は言うまい。
タダで泊めてもらっているんだから。
「今日はエイトもレイラも、起きるのが遅かったのね」
「あー、スイッチ切っちゃうとこんな感じだね、私もエイトも」
「明日も任務だって思えば、夜明け頃には起きられるんだけどね。二度寝したのが良くなかったかな」
「だね。あれで完全にスイッチ切れたもん」
二度寝するということは、すなわち非番ということ。
そうなると早起きの必要もないから、ついつい日が完全に昇るまで寝てしまう。
非番だから怒られたりもしなかったしね。
「今日からはしっかり気を引き締めていこうか」
「だね。トロデーンが復活した後、また教官の世話になるのは嫌すぎるし……」
そう呟くと、エイトも神妙な顔つきで頷いた。
鬼教官は全ての兵士達のトラウマなのだ。
あのスパルタ教育のおかげで強くなれたのは間違いないけど、獅子が子を谷底へ落とすのと同じような理屈を感じた。
できることなら二度とあの訓練は受けたくない。
冗談抜きで命がおしまいになると思った。
教会で朝のお祈りも済ませて、私達は川沿いの教会を出発することにした。
ドルマゲスの手がかりを求めて、目指すはアスカンタ城だ。
「よーっし!
それじゃあ出発!!」
「おうでがす!」
カラカラと馬車の車輪が回り、私達五人は道なりに進み始めた。
一晩休んだので、気力も充分だ。
道中の敵もさほど苦労することなく倒して、道端にある宝箱を開けていく。
なぜダンジョンでもないこんなところに宝箱があるのかは、旅人達の永遠の謎だ。
ありがたく貰うに限るんだけども。
「しかし姉貴は妙にテンションが高いでがすなぁ」
「普通だよ、普通! 元気に行こうよ! ねえ、みんな!」
「う、うん!!」
「そうだな、おう!!」
「そっ、そうよね!」
無理矢理に腹から声を出したような返事が三人分。
実はヤンガス以外の四人は全員、目の下にクマを作っている。
最初は「なぜゼシカまで?」と不思議だったけれど、道中でゼシカから、昨日のククールと私とエイトの身の上話を聞いてしまったと告げられた。
私やエイトは聞かれて困ることでもないから気にしなかったけれど、ククールはほんの少しだけ気まずそうな顔をしていた。
けれど一応はゼシカを口説いている最中なので、それすらも口説き落とすための手札にしたようだ。
したたかというか何と言うか。
そんなこんなで、休憩を何度か挟みつつアスカンタ城を目指して進み。
夕日が傾いて来た頃。
海に面している開けた土地に、城壁とお城が姿を現した。
「みんなー!
アスカンタ城が見えたよ!!」
「兄貴、あとちょっとでがすよ!」
「そうね! 頑張りましょう!」
「俺は一刻も早く宿屋で休みたい」
「それには僕も同意……」
アスカンタ城を目の前にして、それぞれが思い思いの言葉を呟いて、そして心の中で全員が叫んだ
眠ーい!!
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