15章
夢小説設定
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あ、と思う前にその人と目が合う。
教会から出てきたのはエイトだった。
「エイト?」
「ああ……やっぱり起きてた」
そう言って微笑むエイトが、私の肩にふわりと上着を掛けた。
ほんのりとした暖かさが包んでくる。
「風邪ひくよ。外は冷えてるんだから」
「ごめん。ちょっと寝れなくて……」
「そっか」
エイトが微笑んだまま頷く。
そこでエイトは、ククールに気付いたみたいだった。
向こうではククールと陛下が秘密の会話をしている最中だ。
邪魔しないほうがいいだろう。
「何の会話だろう?」
「陛下とククールの、秘密の話」
「何それ?」
「ふふ、なんだろね」
私も気になるけど、ククール本人がおいそれと話したくないことでもあるだろうし。
気になるなら、ククールに聞けってことだ。
空を見上げると、満天の星空だった。
こうして夜空をエイトと二人で見上げるのは、いつ以来だろう。
ふと脳裏に、ある言葉が浮かんだ。
「……命は芽生え、限りある時の中で輝き続ける。その命が尽きるとき、空には一筋の光が瞬く。尽きた命は流れた星に代わって、星空の中で新たな輝きを見せる……か」
「それは?」
「分からない。何かの詩かもしれないし、歌かもしれない。誰に聞いたわけでもないのに、城に流れ着いた時から知ってるの」
だから私にとって、夜空に輝く星々は亡くなった人達の墓標であり、顔も名前も知らない両親の生きた証でもある。
たとえ随分昔に亡くなった人でも、誰かが覚えてくれているなら、きっと星として輝いているはずだから。
夜空に一筋の流れ星がきらめく。
「誰かが亡くなったんだね……」
小さく呟いて目を閉じ、魂の安寧を願った。
近衛兵と言えど、それくらいの教養はあるのだ。
……人を弔うより、人を殺すことのほうが多かったけれど。
「……旧修道院跡地で戦った、修道院長の亡霊、覚えてる?」
「……? そりゃあもちろんだけど……」
急に話題に上がったそれに首を傾げる。
あの亡霊がどうかしただろうか。
あの場所、本当の本当に怖かったから、できれば思い出したくないんだけどな……。
「あの人……人? が言ってただろ、霊導者ヨシュアって」
「あ、うん、そんなことも言ってたっけ。それがどうかしたの?」
「レイラはヨシュアさんの子孫なのかもしれないと思って」
「……?」
うん? と首を傾げ、それから慌てて首を振る。
そんなことがあっていいわけなかろうに。
「いやいや、それはありえないでしょ。私はあの人みたいに神聖な存在じゃないもん。……たくさんの命を奪ってきた、汚れた人間だもん……」
「それは……そうだけど。でもそれは仕方ないよ。僕たちの務めは、陛下や姫様の警護だったんだから。それにレイラは……あの役目も負っていたわけだし」
「……分かってる。だから違うと思ってるの。それに、私がそんな大物だったら、ルイネロさんが見逃してるはずないだろうし」
酒場で顔を合わせたとき、ルイネロさんは私達の顔を見て驚いたような反応をした。
結局その後、何も言われなかったから、まあ、あれも一種のパフォーマンスだったんだろう。
たしかにああいう反応されたら気になるから、占ってもらいたくなるもんね。
そのまま二人で何となく夜空を見上げていると、陛下がこちらへ向かってくるのが見えた。
「お前達、こんなところで何しとるんじゃ」
「立ち話です」
「それは見りゃ分かるわい」
「あはは……。ただの昔話ですよ」
エイトがそう言って、教会の扉を開ける。
陛下はまだ何か言いたげだったけど、エイトの「おやすみなさいませ」に見送られて、教会へと入っていった。
そうして私達も戻ろっか、と顔を見合わせたとき、ククールがこちらに歩いてきた。
「おっと……邪魔したか」
「邪魔?」
意味深な微笑みが浮かべられて、エイトの隣で首を傾げる。
エイトは苦笑いを浮かべたものの、何も言わなかった。
「もっとかかるかと思った」
「ま、そんな長話って程でもないしな。……ひょっとして聞こえてたか?」
「いや、聞いてはないけど……」
エイトの視線がククールをじっと見つめる。
ククールは肩を竦めて、それから先程までと同じように空を見上げた。
「……まあ、あれだ。俺の身の上話……ってやつだよ。聞いても面白くなんかないぜ」
「ククールの?」
ああ、と頷いて、ククールが自嘲気味に口の端を持ち上げる。
ククールとマルチェロさんの間に、どうにもならない溝があるのは、何となく私やエイトも察してはいるところだけど。
そうなってしまったきっかけについては、分からないままだ。
「……なんだろうね。こう、上手くいかねぇんだよな。あいつ……マルチェロとは。いっそ、ほんとに血が繋がってなきゃあ、お互い幸福だったのかもな」
そう言ってククールは、教会の壁に背を預けた。
空はまだ暗くて、虫の音も鳴り止まないまま。
ククールは何かを思い出すかのように、少しだけ目を細めた。
教会から出てきたのはエイトだった。
「エイト?」
「ああ……やっぱり起きてた」
そう言って微笑むエイトが、私の肩にふわりと上着を掛けた。
ほんのりとした暖かさが包んでくる。
「風邪ひくよ。外は冷えてるんだから」
「ごめん。ちょっと寝れなくて……」
「そっか」
エイトが微笑んだまま頷く。
そこでエイトは、ククールに気付いたみたいだった。
向こうではククールと陛下が秘密の会話をしている最中だ。
邪魔しないほうがいいだろう。
「何の会話だろう?」
「陛下とククールの、秘密の話」
「何それ?」
「ふふ、なんだろね」
私も気になるけど、ククール本人がおいそれと話したくないことでもあるだろうし。
気になるなら、ククールに聞けってことだ。
空を見上げると、満天の星空だった。
こうして夜空をエイトと二人で見上げるのは、いつ以来だろう。
ふと脳裏に、ある言葉が浮かんだ。
「……命は芽生え、限りある時の中で輝き続ける。その命が尽きるとき、空には一筋の光が瞬く。尽きた命は流れた星に代わって、星空の中で新たな輝きを見せる……か」
「それは?」
「分からない。何かの詩かもしれないし、歌かもしれない。誰に聞いたわけでもないのに、城に流れ着いた時から知ってるの」
だから私にとって、夜空に輝く星々は亡くなった人達の墓標であり、顔も名前も知らない両親の生きた証でもある。
たとえ随分昔に亡くなった人でも、誰かが覚えてくれているなら、きっと星として輝いているはずだから。
夜空に一筋の流れ星がきらめく。
「誰かが亡くなったんだね……」
小さく呟いて目を閉じ、魂の安寧を願った。
近衛兵と言えど、それくらいの教養はあるのだ。
……人を弔うより、人を殺すことのほうが多かったけれど。
「……旧修道院跡地で戦った、修道院長の亡霊、覚えてる?」
「……? そりゃあもちろんだけど……」
急に話題に上がったそれに首を傾げる。
あの亡霊がどうかしただろうか。
あの場所、本当の本当に怖かったから、できれば思い出したくないんだけどな……。
「あの人……人? が言ってただろ、霊導者ヨシュアって」
「あ、うん、そんなことも言ってたっけ。それがどうかしたの?」
「レイラはヨシュアさんの子孫なのかもしれないと思って」
「……?」
うん? と首を傾げ、それから慌てて首を振る。
そんなことがあっていいわけなかろうに。
「いやいや、それはありえないでしょ。私はあの人みたいに神聖な存在じゃないもん。……たくさんの命を奪ってきた、汚れた人間だもん……」
「それは……そうだけど。でもそれは仕方ないよ。僕たちの務めは、陛下や姫様の警護だったんだから。それにレイラは……あの役目も負っていたわけだし」
「……分かってる。だから違うと思ってるの。それに、私がそんな大物だったら、ルイネロさんが見逃してるはずないだろうし」
酒場で顔を合わせたとき、ルイネロさんは私達の顔を見て驚いたような反応をした。
結局その後、何も言われなかったから、まあ、あれも一種のパフォーマンスだったんだろう。
たしかにああいう反応されたら気になるから、占ってもらいたくなるもんね。
そのまま二人で何となく夜空を見上げていると、陛下がこちらへ向かってくるのが見えた。
「お前達、こんなところで何しとるんじゃ」
「立ち話です」
「それは見りゃ分かるわい」
「あはは……。ただの昔話ですよ」
エイトがそう言って、教会の扉を開ける。
陛下はまだ何か言いたげだったけど、エイトの「おやすみなさいませ」に見送られて、教会へと入っていった。
そうして私達も戻ろっか、と顔を見合わせたとき、ククールがこちらに歩いてきた。
「おっと……邪魔したか」
「邪魔?」
意味深な微笑みが浮かべられて、エイトの隣で首を傾げる。
エイトは苦笑いを浮かべたものの、何も言わなかった。
「もっとかかるかと思った」
「ま、そんな長話って程でもないしな。……ひょっとして聞こえてたか?」
「いや、聞いてはないけど……」
エイトの視線がククールをじっと見つめる。
ククールは肩を竦めて、それから先程までと同じように空を見上げた。
「……まあ、あれだ。俺の身の上話……ってやつだよ。聞いても面白くなんかないぜ」
「ククールの?」
ああ、と頷いて、ククールが自嘲気味に口の端を持ち上げる。
ククールとマルチェロさんの間に、どうにもならない溝があるのは、何となく私やエイトも察してはいるところだけど。
そうなってしまったきっかけについては、分からないままだ。
「……なんだろうね。こう、上手くいかねぇんだよな。あいつ……マルチェロとは。いっそ、ほんとに血が繋がってなきゃあ、お互い幸福だったのかもな」
そう言ってククールは、教会の壁に背を預けた。
空はまだ暗くて、虫の音も鳴り止まないまま。
ククールは何かを思い出すかのように、少しだけ目を細めた。