14章
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「ククール。今、修道院を離れても問題ない者は、お前しかいないのだ」
マルチェロさんがククールさんへとそう言う。
私でも分かるくらい、それは事実上の追放宣言だ。
ククールさんが分からないはずがない。
驚いたように目を丸くしているククールさんは、反論する言葉を見失ったらしい。
「他の者にはそれぞれ、この修道院で果たすべき役目がある。その点、お前は身軽だろう」
「……つまり役立たずだと。そう言いたいわけだ」
「あの、ククールさん――」
「なるほど。分かりました。それほどおっしゃるなら、こいつらについて出ていきます。院長の仇はお任せを」
座っているマルチェロさんを見下ろす瞳は、憤りを隠そうともしない。
形式的に騎士の礼をして見せたけれど、マルチェロさんはドアをやや乱暴に開けると、閉めることもなく出て行った。
「姫と一緒に馬車で待っとるからな〜!」
空気を読んでか読まずか、そう言って陛下も部屋を出ていく。
やはり国王ともなると、あれくらいの図太さが必要なのかもしれない。
さてら私達もそろそろお暇するかという流れになったとき、マルチェロさんが一枚の羊皮紙を差し出してきた。
「……これはこの世界の地図。ドルマゲスを追う旅に、きっと役立つことでしょう。皆さんにあらぬ疑いをかけた、そのお詫びの印です。どうぞお受け取りください」
「あ、ありがとうございます」
エイトが世界地図を受け取って、小さく頭を下げる。
何はともあれ、これで迷子とはおさらばだ。
……まだ迷ったことはないけど。
マルチェロさんが席を立ち、パン、と手を叩く。
「では! みなさん! ククールをどうぞ宜しく。旅の無事をお祈りしております」
そう言って彼が騎士の礼をとり、マルチェロさんとの会話は終わった。
もう一度お礼を言って、部屋を出る。
なんとも言えない複雑な気持ちのまま、宿舎から修道院へと戻ると、外への扉の前にククールさんが立っていた。
「あ……ククールさん」
「……よう。まあ、そういうわけだ。俺も旅に加えてもらうぜ? マルチェロ団長殿に命令されたからじゃない。院長は俺の親代わりだったんだ。あいつ……ドルマゲスは絶対に許さない。必ず仇は討つさ。それに……こんな所。頼まれたって居たくないね。追い出されて清々するさ」
それはどこか、自分に言い聞かせているような言葉だった。
だって彼は、出ようと思えばこんなところはいつでも出て行けた。
それでもここで、複雑な関係のマルチェロさんと生活を共にしていたのは、この場所への彼なりの愛着があったからじゃないのか――なんてのは、私が論ずる話ではないだろうけど。
そこで言葉を切り、ククールさんがゼシカを見る。
もはや私には見向きもしないときた。
……そりゃあゼシカよりは色気も素っ気もないけどさ!
一応まだうら若き乙女だと思うんだけどな!
「それと、約束してたよな? 色々世話になった礼はいずれ必ずするって」
女を口説く色男の顔になって、ククールさんが恭しく胸に手を当てて微笑む。
思わず私の口から「うわ」とドン引きする声が出てしまった。
「ゼシカ。これから俺は片時も離れず、君を守るよ。君だけを守る騎士になる」
「はいはい。どうもありがとうございますー」
対するゼシカはこの反応だ。
申し訳ないけど、もしかしてゼシカとククールさん、いいコンビになるのでは?
「さあ! 行こうぜ!」
こうして私達の旅に、ククールさんが加わった。
聖職者らしく、僧侶が得意とする回復系の魔法が得意と聞くので、遠慮なく頼らせてもらおう。
修道院をドニ側に出て、陛下と合流する。
さて、五人になって最初の目的地は、どこがいいだろう。
そもそもがドルマゲスの狙いも何も分からないで追いかけているから、私達の予想が外れてしまう可能性は大いにあるんだけど……。
「改めて自己紹介するよ。僕がエイト、この子がレイラ」
「レイラです、宜しくお願い……よろしくね、ククール」
「ああ、あんたら二人、このおっさんの部下……みたいな感じなんだろ。まあ適当によろしくな」
「はは……。あ、それでこの人がヤンガス。元山賊で、ちょっと訳あって一緒に旅をしてるんだ」
「エイトの兄貴とレイラの姉貴の子分、ヤンガスでがす。よろしくでがすよ」
「……あんたらの方が上なのか?」
「そこはツッコまない方向でお願いします」
「それからこの子がゼシカ……は、いいか、いいね、はい、飛ばします」
ゼシカの目が「話すことは無い」と語っていたので、ゼシカの紹介はそれだけで終わることにした。
さて、残るは……。
「それから、この魔物の姿をしている方が、僕とレイラの主君であるトロデ王。白い馬は、トロデーン国の王女であるミーティア姫だよ」
「私とエイト、それから陛下と姫様は、ドルマゲスによって呪いをかけられた城と、お二人の姿を元に戻すため。ゼシカはドルマゲスに殺されたお兄さんの仇を討つために旅をしてる。ヤンガスは……子分だからついてきてくれてる!」
「勿論でがす! 不肖ヤンガス、兄貴と姉貴のためならたとえ火の中、水の中でも、お供するでげすよ」
「頼りにしてるよ、ヤンガス」
エイトがそう言って笑う。
さて、自己紹介も終わったところで、次の目的地をどうするか問題に議題が移った。
どうもこの道に沿って真っ直ぐ行けば、お城があるようなんだけど。
「奴の狙いが何なのかは皆目見当もつかねぇが、とりあえずはそこを目指すしかなさそうだな」
「そうだね。それじゃあ、お城へ向かって出発だ!」
「おーでがす!」
目的地も決まったことで、私達は修道院へ背を向けて歩き出した。
ククールさんも一緒に歩き始める。
彼は修道院を振り返ることもしなかった。
マルチェロさんがククールさんへとそう言う。
私でも分かるくらい、それは事実上の追放宣言だ。
ククールさんが分からないはずがない。
驚いたように目を丸くしているククールさんは、反論する言葉を見失ったらしい。
「他の者にはそれぞれ、この修道院で果たすべき役目がある。その点、お前は身軽だろう」
「……つまり役立たずだと。そう言いたいわけだ」
「あの、ククールさん――」
「なるほど。分かりました。それほどおっしゃるなら、こいつらについて出ていきます。院長の仇はお任せを」
座っているマルチェロさんを見下ろす瞳は、憤りを隠そうともしない。
形式的に騎士の礼をして見せたけれど、マルチェロさんはドアをやや乱暴に開けると、閉めることもなく出て行った。
「姫と一緒に馬車で待っとるからな〜!」
空気を読んでか読まずか、そう言って陛下も部屋を出ていく。
やはり国王ともなると、あれくらいの図太さが必要なのかもしれない。
さてら私達もそろそろお暇するかという流れになったとき、マルチェロさんが一枚の羊皮紙を差し出してきた。
「……これはこの世界の地図。ドルマゲスを追う旅に、きっと役立つことでしょう。皆さんにあらぬ疑いをかけた、そのお詫びの印です。どうぞお受け取りください」
「あ、ありがとうございます」
エイトが世界地図を受け取って、小さく頭を下げる。
何はともあれ、これで迷子とはおさらばだ。
……まだ迷ったことはないけど。
マルチェロさんが席を立ち、パン、と手を叩く。
「では! みなさん! ククールをどうぞ宜しく。旅の無事をお祈りしております」
そう言って彼が騎士の礼をとり、マルチェロさんとの会話は終わった。
もう一度お礼を言って、部屋を出る。
なんとも言えない複雑な気持ちのまま、宿舎から修道院へと戻ると、外への扉の前にククールさんが立っていた。
「あ……ククールさん」
「……よう。まあ、そういうわけだ。俺も旅に加えてもらうぜ? マルチェロ団長殿に命令されたからじゃない。院長は俺の親代わりだったんだ。あいつ……ドルマゲスは絶対に許さない。必ず仇は討つさ。それに……こんな所。頼まれたって居たくないね。追い出されて清々するさ」
それはどこか、自分に言い聞かせているような言葉だった。
だって彼は、出ようと思えばこんなところはいつでも出て行けた。
それでもここで、複雑な関係のマルチェロさんと生活を共にしていたのは、この場所への彼なりの愛着があったからじゃないのか――なんてのは、私が論ずる話ではないだろうけど。
そこで言葉を切り、ククールさんがゼシカを見る。
もはや私には見向きもしないときた。
……そりゃあゼシカよりは色気も素っ気もないけどさ!
一応まだうら若き乙女だと思うんだけどな!
「それと、約束してたよな? 色々世話になった礼はいずれ必ずするって」
女を口説く色男の顔になって、ククールさんが恭しく胸に手を当てて微笑む。
思わず私の口から「うわ」とドン引きする声が出てしまった。
「ゼシカ。これから俺は片時も離れず、君を守るよ。君だけを守る騎士になる」
「はいはい。どうもありがとうございますー」
対するゼシカはこの反応だ。
申し訳ないけど、もしかしてゼシカとククールさん、いいコンビになるのでは?
「さあ! 行こうぜ!」
こうして私達の旅に、ククールさんが加わった。
聖職者らしく、僧侶が得意とする回復系の魔法が得意と聞くので、遠慮なく頼らせてもらおう。
修道院をドニ側に出て、陛下と合流する。
さて、五人になって最初の目的地は、どこがいいだろう。
そもそもがドルマゲスの狙いも何も分からないで追いかけているから、私達の予想が外れてしまう可能性は大いにあるんだけど……。
「改めて自己紹介するよ。僕がエイト、この子がレイラ」
「レイラです、宜しくお願い……よろしくね、ククール」
「ああ、あんたら二人、このおっさんの部下……みたいな感じなんだろ。まあ適当によろしくな」
「はは……。あ、それでこの人がヤンガス。元山賊で、ちょっと訳あって一緒に旅をしてるんだ」
「エイトの兄貴とレイラの姉貴の子分、ヤンガスでがす。よろしくでがすよ」
「……あんたらの方が上なのか?」
「そこはツッコまない方向でお願いします」
「それからこの子がゼシカ……は、いいか、いいね、はい、飛ばします」
ゼシカの目が「話すことは無い」と語っていたので、ゼシカの紹介はそれだけで終わることにした。
さて、残るは……。
「それから、この魔物の姿をしている方が、僕とレイラの主君であるトロデ王。白い馬は、トロデーン国の王女であるミーティア姫だよ」
「私とエイト、それから陛下と姫様は、ドルマゲスによって呪いをかけられた城と、お二人の姿を元に戻すため。ゼシカはドルマゲスに殺されたお兄さんの仇を討つために旅をしてる。ヤンガスは……子分だからついてきてくれてる!」
「勿論でがす! 不肖ヤンガス、兄貴と姉貴のためならたとえ火の中、水の中でも、お供するでげすよ」
「頼りにしてるよ、ヤンガス」
エイトがそう言って笑う。
さて、自己紹介も終わったところで、次の目的地をどうするか問題に議題が移った。
どうもこの道に沿って真っ直ぐ行けば、お城があるようなんだけど。
「奴の狙いが何なのかは皆目見当もつかねぇが、とりあえずはそこを目指すしかなさそうだな」
「そうだね。それじゃあ、お城へ向かって出発だ!」
「おーでがす!」
目的地も決まったことで、私達は修道院へ背を向けて歩き出した。
ククールさんも一緒に歩き始める。
彼は修道院を振り返ることもしなかった。