11章
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やっぱり手が震えている私を見て、エイトが私を腕で制した。
エイトの背を見上げると、エイトは既に剣を抜いている。
「レイラ、平気?」
「まったく平気ではないです!」
「だ、だよね。……よし、ヤンガス、ゼシカ! 僕らでこいつを倒そう。レイラは回復を主体に、僕らのサポートをお願いできる?」
「う、うん! 頑張る!」
三人に向かって頷いた、その時。
嘆きの亡霊が、おぞましい唸り声を上げた。
「おおおヲ……おヲォォォおオ……! 苦しイ……くるしい、苦シイ……!」
「あばばば……」
「あ、姉貴ィ!?」
まさか喋るとは思わなかったなァ……。
もう恐怖が限界突破して、悲鳴さえ上げられなくなってしまった。
あとはもう、泡を吹いて倒れるしかない。
「神ハいずコにおらレル? こノ苦しみハ、イツマデ続く? おヲォぉお……! 死ンだ死んダ死ンダのだ! ミナ苦しミながら死んデ行ッた!」
この嘆きの亡霊は……もしかして、旧修道院の、元院長の魂?
ここは流行病のせいで閉鎖された場所。
当時の修道院長は、彼らを救えなかったことをここで悔いていたのかな……。
「あノ恐ろシぃ病ガ、我ラを、コの修道院ノすべテを死に包ンだ! 苦シイ、くるシイ、クルシイ……。……く、クククッ」
「……っ?」
嘆きの亡霊の様子が変わった。
苦しいともがく様から、突然、狂ったように笑い出したのだ。
嫌な予感がする。
こういう時の予感は当たるんだ。
「我が苦シみぃッ! 我等ガ苦シミっ! おマエにも味わワセてやるゥゥゥッ!!」
「なんでェ!?」
「レイラ、下がって! ヤンガス、ゼシカ! いくよ!」
「いくでげすよ、兄貴!」
「任せて!」
私を守るように、三人が嘆きの亡霊と対峙する。
嘆きの亡霊は地面から腐った死体と骸骨を呼び出した。
「ミ゚」と私の喉から出たそれは、もはや悲鳴の形にすらなっていない。
「ピオリム!」
ゼシカが私達の素早さを上げて、エイトが速攻のように腐った死体へ斬り込む。
ヤンガスもエイトに続いて、腐った死体へ一撃を食らわせた。
骸骨は攻撃するだけで、攻撃の手数自体は少ない。
それよりは、嘆きの亡霊を先に倒したほうがいい。
「エイト、ヤンガス! 先に亡霊を倒して!」
「骸骨は後回しってことでげすか?」
「そいつは放っておいても大丈夫だと思う! むしろ亡霊の攻撃の方が、手数も多いし威力も高い!」
「……なるほど。みんな、亡霊を先に倒そう!」
「分かったわ! メラ!」
ゼシカのメラが嘆きの亡霊へ向かっていく。
ヤンガスの兜割りが決まって、エイトが火炎斬りで攻撃する。
(……私も、力にならなきゃ!)
ここで三人に任せているわけにはいかない!
私だってみんなの仲間だもん!
王族付きの近衛兵が、こんなことでつまずくわけにはいかないんだ!
「や……やぁっ!!」
エイトが退いたタイミングで、私も嘆きの亡霊に火炎斬りを食らわせた。
三人が驚いたように私を見て……。
それからエイトが嬉しそうに笑った。
「頼りにしてるよ」
「期待はしないで!」
まだそこそこ恐怖心は残っているけど、ちゃんと動ける――戦える!
覚えたばかりのベホイミを唱えて、エイトの傷を回復してあげる。
それに「ありがとう」と言って、エイトが火炎斬りを放った。
「アッシも続くでげすよ! 兜割り!」
「あと少しだ! レイラ、合わせて!」
「了解!」
エイトが右から、私が左から攻め込む。
剣に炎を宿して、エイトが先に一撃を嘆きの亡霊に浴びせて、私も続こうとした時。
『待て……!』
聞こえるはずのない声が聞こえた。
誰のものか分からない、初めて聞く声だ。
凛とした気品ある女性の声がそう聞こえて、私の身体を一瞬だけ止めた。
「レイラ!? どうしたの、とどめを!」
驚いたようにエイトが私を見ている。
ヤンガスもゼシカも。
私も自分がどうなっているのか分からない。
……ただ、悪いようにはならないと、それだけは何故か分かっていた。
「……旧マイエラ修道院の修道院長。もう良い、それ以上は己を責めるな。もう、良いだろう」
私の口が勝手に動いて、そんな言葉を嘆きの亡霊にかける。
なんじゃこりゃあ、と心の中で叫ぶけれど、それは私の口から出てくれなかった。
まさか私、誰かに乗っ取られてる?
それにしては不浄な気配とかは感じないけど……。
「姉貴が姉貴らしくねぇこと言ってるでがす」
「今の戦いの最中で、何か悪いものでも食べたのかしら……」
「いや、流石にそんなはしないと思うけど……」
外野、うるさいぞ!
そうツッコミを入れたいのに、まるで体が言うことを聞かない。
どころか私の手は勝手に剣を鞘に納めて、ゆっくりと嘆きの亡霊へと近付いていく。
「そのようなことをしても、神の御許には帰れん。皆の元へ逝きたいのなら、そう強く願うといい」
「オ前……いヤ、あナタ様ハ……。霊導者ヨシュア様……」
「霊導者……?」
「ヨシュア?」
「って、誰でげすかい?」
三人が怪訝な顔で私を見つめている。
いや、それは私も知りたい。
霊導者ヨシュアって誰なんだ、知り合いにそんな凄そうな人はいないぞ。
私の身体が淡く光り、そうして私の体から透けて出るみたいに、半透明な人影が現れた。
焦茶色の、長い髪の女性の姿をしている。
着ている服は、シスターのような……それとも違う、けれど神に仕える聖職者だと、すぐに分かる格好だった。
『お前がいるべきはここではない。さあ、こちらへ来い。神の御許へ、私が導こう……』
嘆きの亡霊が、女の人へ手を伸ばす。
瞬間、嘆きの亡霊に聖なる光が降り注いだ。
「おおヲぉお……神ヨ。神よぉおぉぉオ……! 今、御許に参りマす……」
光は嘆きの亡霊を浄化して、魂を現世からあの世へ連れて行ったように見えた。
嘆きの亡霊の姿が消える。
そうして女の人は私達を見やって、微かに微笑むと、何かを唱えた。
「……傷が、癒えて……!」
「魔力も元通りだわ!」
「な、何者なんでがすか、あの姉ちゃん……」
「私の体から出てきたよね……」
女の人と目が合う。
……どうしてだろう、初めて会ったはずなのに。
その人の眼差しは、私を見守るように温かい。
『レイラ。お前の旅路に、神の加護があらんことを――』
祝福めいた言葉を残して、女の人が消える。
残された私達は、一様に顔を見合わせて。
それから、キラリと光ったそれを、私が拾い上げた。
「金のロザリオ……。あの亡霊が残したのかな」
「一応、拾っておきましょう」
「そうでがすな」
私も頷いて、袋へと入れる。
不思議な光景だったな、あの人は誰だったんだろう。
嘆きの亡霊は、霊導者ヨシュアと呼んでいた。
でも、そんな人の名前は聞いたことがない。
「……あの女の人のことは気になるけど、今はそれどころじゃない。先を急ごう」
「そうね! ドルマゲスを逃がすわけにはいかないもの!」
頷きあって、壁をぶち抜いた先に伸びている道を走る。
穴ぼこのようにあちこちにある毒の沼地を避けて、その一番奥には、長い梯子があった。
きっとこの先が、院長様のお部屋に繋がってるんだ。
エイトが上っていって、私達もそれに続く。
どうか間に合いますようにと、私達はそれだけを祈っていた。
エイトの背を見上げると、エイトは既に剣を抜いている。
「レイラ、平気?」
「まったく平気ではないです!」
「だ、だよね。……よし、ヤンガス、ゼシカ! 僕らでこいつを倒そう。レイラは回復を主体に、僕らのサポートをお願いできる?」
「う、うん! 頑張る!」
三人に向かって頷いた、その時。
嘆きの亡霊が、おぞましい唸り声を上げた。
「おおおヲ……おヲォォォおオ……! 苦しイ……くるしい、苦シイ……!」
「あばばば……」
「あ、姉貴ィ!?」
まさか喋るとは思わなかったなァ……。
もう恐怖が限界突破して、悲鳴さえ上げられなくなってしまった。
あとはもう、泡を吹いて倒れるしかない。
「神ハいずコにおらレル? こノ苦しみハ、イツマデ続く? おヲォぉお……! 死ンだ死んダ死ンダのだ! ミナ苦しミながら死んデ行ッた!」
この嘆きの亡霊は……もしかして、旧修道院の、元院長の魂?
ここは流行病のせいで閉鎖された場所。
当時の修道院長は、彼らを救えなかったことをここで悔いていたのかな……。
「あノ恐ろシぃ病ガ、我ラを、コの修道院ノすべテを死に包ンだ! 苦シイ、くるシイ、クルシイ……。……く、クククッ」
「……っ?」
嘆きの亡霊の様子が変わった。
苦しいともがく様から、突然、狂ったように笑い出したのだ。
嫌な予感がする。
こういう時の予感は当たるんだ。
「我が苦シみぃッ! 我等ガ苦シミっ! おマエにも味わワセてやるゥゥゥッ!!」
「なんでェ!?」
「レイラ、下がって! ヤンガス、ゼシカ! いくよ!」
「いくでげすよ、兄貴!」
「任せて!」
私を守るように、三人が嘆きの亡霊と対峙する。
嘆きの亡霊は地面から腐った死体と骸骨を呼び出した。
「ミ゚」と私の喉から出たそれは、もはや悲鳴の形にすらなっていない。
「ピオリム!」
ゼシカが私達の素早さを上げて、エイトが速攻のように腐った死体へ斬り込む。
ヤンガスもエイトに続いて、腐った死体へ一撃を食らわせた。
骸骨は攻撃するだけで、攻撃の手数自体は少ない。
それよりは、嘆きの亡霊を先に倒したほうがいい。
「エイト、ヤンガス! 先に亡霊を倒して!」
「骸骨は後回しってことでげすか?」
「そいつは放っておいても大丈夫だと思う! むしろ亡霊の攻撃の方が、手数も多いし威力も高い!」
「……なるほど。みんな、亡霊を先に倒そう!」
「分かったわ! メラ!」
ゼシカのメラが嘆きの亡霊へ向かっていく。
ヤンガスの兜割りが決まって、エイトが火炎斬りで攻撃する。
(……私も、力にならなきゃ!)
ここで三人に任せているわけにはいかない!
私だってみんなの仲間だもん!
王族付きの近衛兵が、こんなことでつまずくわけにはいかないんだ!
「や……やぁっ!!」
エイトが退いたタイミングで、私も嘆きの亡霊に火炎斬りを食らわせた。
三人が驚いたように私を見て……。
それからエイトが嬉しそうに笑った。
「頼りにしてるよ」
「期待はしないで!」
まだそこそこ恐怖心は残っているけど、ちゃんと動ける――戦える!
覚えたばかりのベホイミを唱えて、エイトの傷を回復してあげる。
それに「ありがとう」と言って、エイトが火炎斬りを放った。
「アッシも続くでげすよ! 兜割り!」
「あと少しだ! レイラ、合わせて!」
「了解!」
エイトが右から、私が左から攻め込む。
剣に炎を宿して、エイトが先に一撃を嘆きの亡霊に浴びせて、私も続こうとした時。
『待て……!』
聞こえるはずのない声が聞こえた。
誰のものか分からない、初めて聞く声だ。
凛とした気品ある女性の声がそう聞こえて、私の身体を一瞬だけ止めた。
「レイラ!? どうしたの、とどめを!」
驚いたようにエイトが私を見ている。
ヤンガスもゼシカも。
私も自分がどうなっているのか分からない。
……ただ、悪いようにはならないと、それだけは何故か分かっていた。
「……旧マイエラ修道院の修道院長。もう良い、それ以上は己を責めるな。もう、良いだろう」
私の口が勝手に動いて、そんな言葉を嘆きの亡霊にかける。
なんじゃこりゃあ、と心の中で叫ぶけれど、それは私の口から出てくれなかった。
まさか私、誰かに乗っ取られてる?
それにしては不浄な気配とかは感じないけど……。
「姉貴が姉貴らしくねぇこと言ってるでがす」
「今の戦いの最中で、何か悪いものでも食べたのかしら……」
「いや、流石にそんなはしないと思うけど……」
外野、うるさいぞ!
そうツッコミを入れたいのに、まるで体が言うことを聞かない。
どころか私の手は勝手に剣を鞘に納めて、ゆっくりと嘆きの亡霊へと近付いていく。
「そのようなことをしても、神の御許には帰れん。皆の元へ逝きたいのなら、そう強く願うといい」
「オ前……いヤ、あナタ様ハ……。霊導者ヨシュア様……」
「霊導者……?」
「ヨシュア?」
「って、誰でげすかい?」
三人が怪訝な顔で私を見つめている。
いや、それは私も知りたい。
霊導者ヨシュアって誰なんだ、知り合いにそんな凄そうな人はいないぞ。
私の身体が淡く光り、そうして私の体から透けて出るみたいに、半透明な人影が現れた。
焦茶色の、長い髪の女性の姿をしている。
着ている服は、シスターのような……それとも違う、けれど神に仕える聖職者だと、すぐに分かる格好だった。
『お前がいるべきはここではない。さあ、こちらへ来い。神の御許へ、私が導こう……』
嘆きの亡霊が、女の人へ手を伸ばす。
瞬間、嘆きの亡霊に聖なる光が降り注いだ。
「おおヲぉお……神ヨ。神よぉおぉぉオ……! 今、御許に参りマす……」
光は嘆きの亡霊を浄化して、魂を現世からあの世へ連れて行ったように見えた。
嘆きの亡霊の姿が消える。
そうして女の人は私達を見やって、微かに微笑むと、何かを唱えた。
「……傷が、癒えて……!」
「魔力も元通りだわ!」
「な、何者なんでがすか、あの姉ちゃん……」
「私の体から出てきたよね……」
女の人と目が合う。
……どうしてだろう、初めて会ったはずなのに。
その人の眼差しは、私を見守るように温かい。
『レイラ。お前の旅路に、神の加護があらんことを――』
祝福めいた言葉を残して、女の人が消える。
残された私達は、一様に顔を見合わせて。
それから、キラリと光ったそれを、私が拾い上げた。
「金のロザリオ……。あの亡霊が残したのかな」
「一応、拾っておきましょう」
「そうでがすな」
私も頷いて、袋へと入れる。
不思議な光景だったな、あの人は誰だったんだろう。
嘆きの亡霊は、霊導者ヨシュアと呼んでいた。
でも、そんな人の名前は聞いたことがない。
「……あの女の人のことは気になるけど、今はそれどころじゃない。先を急ごう」
「そうね! ドルマゲスを逃がすわけにはいかないもの!」
頷きあって、壁をぶち抜いた先に伸びている道を走る。
穴ぼこのようにあちこちにある毒の沼地を避けて、その一番奥には、長い梯子があった。
きっとこの先が、院長様のお部屋に繋がってるんだ。
エイトが上っていって、私達もそれに続く。
どうか間に合いますようにと、私達はそれだけを祈っていた。
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