11章
夢小説設定
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階段を降りた先にある空間は、絵に描いたような廃墟だった。
廃墟コンテストがあろうものなら、ぶっちぎり優勝だ。
つまり何が言いたいか。
「怖い!!!」
「怖くないわよ、何も出てきてないじゃない」
「帰る!!!」
「姉貴、何言ってるんでげすか。院長を助けるでがしょう!?」
「無理!!!」
旧修道院の中に、私の悲鳴が響き渡る。
頼むから帰らせてほしい、帰らせてください。
ガクブルと震える私の首筋を、ひゅうっと冷たい風が通り過ぎた。
「ひぎゃぁぁぁ!!!」
絶叫ついでに隣を歩くエイトに思いっきりしがみつく。
格好の悪さはスルーしてほしい、こちらはそれどころでは無いのだ。
「今なんか通った? 通ったよね!?」
「何も通ってないわよ」
「嘘だ! 今だってひやって……首筋がひやってした!!」
「隙間風じゃないでげすか?」
「絶対いる……。ここ絶対なんかいる……!」
「レイラ、大丈夫だよ。何が出てきても、僕らなら倒せるだろ?」
「物理が通用しない相手だったらどうするんですか!!」
「そんな奴いないよ。メタルキングだって殴れば倒せるのに」
「そういう! ことを! 聞いてるんじゃ! なくて!!」
バシバシとエイトの肩を叩いて泣き叫ぶ。
こちとら本当に心の底から恐怖心を抱いているというのに、なんだお前、メタキンなんか知るか!!
「痛い痛い、レイラ痛いよ」
「うわぁぁぁん!! エイトのばかぁぁぁ!!」
「そう言いながらエイトの手は離さないのね」
「離したらほんとに死ぬ!! 絶対死ぬ!!」
「死なねぇでがすよ、魔物に襲われてるわけでもないんでげすし」
「エイト、ちょっと役得とか思ってないわよね?」
「……ん?」
にっこりと笑ってエイトがゼシカへ首を傾げる。
ゼシカは何かを察したような顔をして、口を閉ざした。
へっぴり腰の私の手を引っ張りながら、エイトが奥に奥にと進んでいく。
「っ! みんな、戦闘準備!」
「魔物ね!」
「承知でがす!」
「な、なに? なに!?」
エイトの手が離れていく。
半泣きで剣を抜くと、不意にミイラ男が現れた。
しかも一体ではなく、四体も引き連れている。
これが恐怖でなければ何なのか。
「ミイラーッ!!」
「ミイラ男は大丈夫だろ!? 物理攻撃ちゃんと効くよ!?」
「ギャーッ!! ウワーッ!! こっち来んなーッ!!」
「すげぇでがす、姉貴! 会心の一撃を連発なんて!」
「……力加減が出来てないだけなんだけどね」
「そうね……。しっちゃかめっちゃかに振り回してるのに、しっかりと攻撃が当たってるんだから、レイラってすごいわね……」
ミイラ男が全て倒れ、ゼェゼェと肩で息をする。
震える手で剣を鞘に納めようとするけど、ガチガチとぶつかるだけで、全然納められない。
なんで私がこんな怖い思いをしなきゃいけないんだ。
不意にそんなことを思った。
(帰りたい、帰りたいよぅ……)
恐怖心が限界に達して、ぼたっと涙が落ちる。
ヤンガスとゼシカがぎょっとしているのが見えて、私はずびっと鼻をすすって手の甲で涙を拭いた。
「レイラ、大丈夫?」
「もうやだぁぁぁ!! 帰る〜!!」
腰が抜けて座り込んだまま、私はそれはもう泣いた。
大人になって初めてこんなに大泣きしたってくらい泣いた。
本当はこんなことで足を止めているわけにはいかないのは分かってるし、先に進まなきゃいけないのも分かっている。
だけどどうしたって怖いものは怖い。
みんなに迷惑をかけているのも知っていたけれど、心は限界だった。
「……うん、そうだね。レイラは怖がりだから、こんなところ嫌だよね。怖いに決まってるよね」
エイトが優しい声でそう言って、私の前にしゃがんだ。
ぽんぽんと頭を撫でたエイトが、そのままぎゅっと抱き締めてくる。
「エイト……」
「大丈夫だよ。僕らが一緒なんだ。絶対に一人にしないよ、レイラと一緒にいる」
「……絶対?」
「絶対。仲間なんだから。当たり前だろ?」
「……魔物と戦ってる時以外、手ぇ繋いでもいい?」
「もちろん。さっきだってそうしてたじゃないか」
「……分かった。頑張る……」
「うん、一緒に頑張ろう。ね?」
顔を覗き込まれて、小さく頷く。
背中を優しく撫でられて、それからエイトの手を握って立ち上がった。
床に落ちたままの剣を拾って、鞘に納める。
それから、ヤンガスとゼシカに頭を下げた。
「……あの、迷惑かけてごめんなさい……」
「迷惑だなんて思ってねぇでげすよ! 姉貴がそこまで怖がりだとはアッシも思ってなかったでがすし、無理をさせちまいやしたでがすね」
「そうね。誰にだって得手不得手はあるもの。……でも、今は一刻を争うわ。レイラ、怖いなら尚更、急いでこんなところを出て、院長の部屋に向かいましょう!」
「……うん」
二人の励ましが素直に嬉しい。
そうだ、こんなところ、さっさと出てしまおう。
ビビってる暇があるなら、敵を倒して先に進むほうが、怖い時間は減る!
「じゃあ、気を取り直して、先を急ごう!」
「そうね!」
エイトに頷いて見せると、そのエイトが笑って左手を差し出してきた。
その手をしっかり握って、旧修道院の中を駆け抜ける。
まだまだ怖いけど、でも……。
守れたはずの誰かの命が奪われることのほうが、もっと怖いから。
廃墟コンテストがあろうものなら、ぶっちぎり優勝だ。
つまり何が言いたいか。
「怖い!!!」
「怖くないわよ、何も出てきてないじゃない」
「帰る!!!」
「姉貴、何言ってるんでげすか。院長を助けるでがしょう!?」
「無理!!!」
旧修道院の中に、私の悲鳴が響き渡る。
頼むから帰らせてほしい、帰らせてください。
ガクブルと震える私の首筋を、ひゅうっと冷たい風が通り過ぎた。
「ひぎゃぁぁぁ!!!」
絶叫ついでに隣を歩くエイトに思いっきりしがみつく。
格好の悪さはスルーしてほしい、こちらはそれどころでは無いのだ。
「今なんか通った? 通ったよね!?」
「何も通ってないわよ」
「嘘だ! 今だってひやって……首筋がひやってした!!」
「隙間風じゃないでげすか?」
「絶対いる……。ここ絶対なんかいる……!」
「レイラ、大丈夫だよ。何が出てきても、僕らなら倒せるだろ?」
「物理が通用しない相手だったらどうするんですか!!」
「そんな奴いないよ。メタルキングだって殴れば倒せるのに」
「そういう! ことを! 聞いてるんじゃ! なくて!!」
バシバシとエイトの肩を叩いて泣き叫ぶ。
こちとら本当に心の底から恐怖心を抱いているというのに、なんだお前、メタキンなんか知るか!!
「痛い痛い、レイラ痛いよ」
「うわぁぁぁん!! エイトのばかぁぁぁ!!」
「そう言いながらエイトの手は離さないのね」
「離したらほんとに死ぬ!! 絶対死ぬ!!」
「死なねぇでがすよ、魔物に襲われてるわけでもないんでげすし」
「エイト、ちょっと役得とか思ってないわよね?」
「……ん?」
にっこりと笑ってエイトがゼシカへ首を傾げる。
ゼシカは何かを察したような顔をして、口を閉ざした。
へっぴり腰の私の手を引っ張りながら、エイトが奥に奥にと進んでいく。
「っ! みんな、戦闘準備!」
「魔物ね!」
「承知でがす!」
「な、なに? なに!?」
エイトの手が離れていく。
半泣きで剣を抜くと、不意にミイラ男が現れた。
しかも一体ではなく、四体も引き連れている。
これが恐怖でなければ何なのか。
「ミイラーッ!!」
「ミイラ男は大丈夫だろ!? 物理攻撃ちゃんと効くよ!?」
「ギャーッ!! ウワーッ!! こっち来んなーッ!!」
「すげぇでがす、姉貴! 会心の一撃を連発なんて!」
「……力加減が出来てないだけなんだけどね」
「そうね……。しっちゃかめっちゃかに振り回してるのに、しっかりと攻撃が当たってるんだから、レイラってすごいわね……」
ミイラ男が全て倒れ、ゼェゼェと肩で息をする。
震える手で剣を鞘に納めようとするけど、ガチガチとぶつかるだけで、全然納められない。
なんで私がこんな怖い思いをしなきゃいけないんだ。
不意にそんなことを思った。
(帰りたい、帰りたいよぅ……)
恐怖心が限界に達して、ぼたっと涙が落ちる。
ヤンガスとゼシカがぎょっとしているのが見えて、私はずびっと鼻をすすって手の甲で涙を拭いた。
「レイラ、大丈夫?」
「もうやだぁぁぁ!! 帰る〜!!」
腰が抜けて座り込んだまま、私はそれはもう泣いた。
大人になって初めてこんなに大泣きしたってくらい泣いた。
本当はこんなことで足を止めているわけにはいかないのは分かってるし、先に進まなきゃいけないのも分かっている。
だけどどうしたって怖いものは怖い。
みんなに迷惑をかけているのも知っていたけれど、心は限界だった。
「……うん、そうだね。レイラは怖がりだから、こんなところ嫌だよね。怖いに決まってるよね」
エイトが優しい声でそう言って、私の前にしゃがんだ。
ぽんぽんと頭を撫でたエイトが、そのままぎゅっと抱き締めてくる。
「エイト……」
「大丈夫だよ。僕らが一緒なんだ。絶対に一人にしないよ、レイラと一緒にいる」
「……絶対?」
「絶対。仲間なんだから。当たり前だろ?」
「……魔物と戦ってる時以外、手ぇ繋いでもいい?」
「もちろん。さっきだってそうしてたじゃないか」
「……分かった。頑張る……」
「うん、一緒に頑張ろう。ね?」
顔を覗き込まれて、小さく頷く。
背中を優しく撫でられて、それからエイトの手を握って立ち上がった。
床に落ちたままの剣を拾って、鞘に納める。
それから、ヤンガスとゼシカに頭を下げた。
「……あの、迷惑かけてごめんなさい……」
「迷惑だなんて思ってねぇでげすよ! 姉貴がそこまで怖がりだとはアッシも思ってなかったでがすし、無理をさせちまいやしたでがすね」
「そうね。誰にだって得手不得手はあるもの。……でも、今は一刻を争うわ。レイラ、怖いなら尚更、急いでこんなところを出て、院長の部屋に向かいましょう!」
「……うん」
二人の励ましが素直に嬉しい。
そうだ、こんなところ、さっさと出てしまおう。
ビビってる暇があるなら、敵を倒して先に進むほうが、怖い時間は減る!
「じゃあ、気を取り直して、先を急ごう!」
「そうね!」
エイトに頷いて見せると、そのエイトが笑って左手を差し出してきた。
その手をしっかり握って、旧修道院の中を駆け抜ける。
まだまだ怖いけど、でも……。
守れたはずの誰かの命が奪われることのほうが、もっと怖いから。