11章
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ドニの町で一夜を明かして、翌朝。
私とゼシカの中で「女の敵ククール」と意見が一致して、私達は大股で修道院へ向かった。
昨日に引き続きまたもや現れた私達を前に、例の騎士団員二人は嫌そうに顔をしかめた。
「なんだお前は」
「ここにお住まいのククールさんに聖堂騎士団の指輪を突き返しに来ましたが何か!!」
「レイラ、喧嘩腰で挑まない!」
「……なに? ふん、また酒場の支払いをその指輪でツケにしてくれと頼んだのだな。しょうがない奴め。チッ……仕方ない。ククールは奥だ。さっさと通るがよい!」
勝手に一人で納得して、騎士団員が扉の前から立ち退いてくれた。
よく分からないけど、私達をドニの酒場の店員だと勘違いしてくれてるっぽい。
訂正すると面倒なので、そのまま通ることにした。
宿舎へ入って、その辺にいた修道士にククールの居場所を尋ねると、どうやら騎士団長のマルチェロさんに呼び出されたとの事だった。
あの人、騎士団長だったんだ。
とてもそうは見えなかった――なんて言ったら速攻で斬り捨てられそうなので、私はここに入ってから口を閉ざしたままだ。
二階にあるマルチェロさんのお部屋の前には、またもや騎士が二人。
マルチェロさんはここではなく、ククールさんと共に地下牢に向かったとのこと。
くそ、上ったら降りろと言われる!
これが人生か……!
地下牢へと降りると、奥から話し声が聞こえてきた。
私達はさっと目配せをして、音を立てないように近付いて聞き耳を立てた。
「……またドニの酒場で騒ぎを起こしたようだな。この恥さらしめ」
「随分、お耳が早いことで。さすがは聖堂騎士団の……」
「どこまで我がマイエラ修道院の名を落とせば気が済むんだ? まったく、お前は疫病神だ」
……確かにククールさんは、僧侶の戒律を破って酒に賭博にと好き勝手したけど、疫病神と呼ばれる程だろうか。
引っ掛かりを覚えた私の耳に、マルチェロさんの憎々しげな声が聞こえてくる。
「……そう、疫病神だよ。お前さえ生まれて来なければ、誰も不幸になぞならなかったのに」
「……」
「顔とイカサマだけが取り柄の、出来損ないめ。半分でも、この私にもお前と同じ血が流れているかと思うと、ぞっとする」
(……半分でも、同じ血が流れて……?)
言葉通りに受け取るなら、マルチェロさんとククールさんは、異母兄弟、もしくは異父兄弟ということになる。
だけど、どうやら兄弟仲は最悪みたいだ。
ククールさんからはそれほど嫌悪感は伝わってこないけど、マルチェロさんはククールさんのことをかなり嫌って……いや、憎んでいるとまで言っていい気がする。
「……ふん、まあいい。聖堂騎士団員ククール。団長の名において、お前に当分の間、謹慎を言い渡す。いかなる理由があろうとも、この修道院から外に出ることは許さん。いいか? 一歩たりともだ。それさえ守れぬようなら、いくら院長が庇おうと、修道院から追放だ。分かったな」
話は、そこで一区切りついたみたいだった。
二人と鉢合わせないように、そっとその場から立ち去る。
ククールさんが地下牢から出てきたところで、指輪を返すしかなさそうだ。
地下牢から宿舎の一階へ戻ると、明るい照明が目に痛かった。
「修道院なんて坊さんばっかで平和なとこだと思ってたんでがすが、いろいろ複雑でげすなぁ」
「そうだね……。なんだか、聞いててこう、胸がぎゅっとなっちゃった」
地下牢の入口を見やって、私達は眉尻を下げたまま顔を見合わせた。
ククールさんのやっていることは、確かに修道院の醜聞に繋がっているのかもしれないけど、マルチェロさんの内心では、それさえもククールさんへの恨みに繋がってしまっているのだろう。
「……よその家庭の事情に首を突っ込むのは野暮よ。深入りはやめておいたほうがいいわ」
「そうでがすな。それはそうと兄貴、姉貴。ここで一番偉いお人なら、ドルマゲスのことも知ってるはずでげす。オディロ院長って人に会いに行くでがすよ!」
「……まあ、それがいいか」
何か知っていればいいけど……。
偉い人は逆に、自分のいる場所から動かないから、外がどうなっているかを知らないことも、往々にしてよくあることだ。
ダメ元のつもりで院長様の館へ向かおうと、宿舎の扉を開けて外に出る。
院長様の館に繋がる橋は、真ん中で騎士団員が通せんぼしていた。
「あの、院長様にお会いすることは……」
「オディロ院長は今、ご趣味の時間を楽しんでおられる。お会いすることは叶わん」
「趣味でがすか? それってぇのはどんな……」
「ああ、院長様は公明正大で誰にでも手を差し伸べる慈悲深いお方だが、お笑いを愛する方でもあってな。今は道化師を招いてお楽しみの最中だ」
「ど、道化師……!? それってどういう格好の……」
「そいつならたった今ここを通って行ったが……。どうもひどく不気味な道化師だったな」
隣に立つ騎士がそう言って眉をひそめた。
間違いない、ドルマゲスだ。
私とエイトは、城でドルマゲスを一度見ているし、ヤンガスとゼシカもリーザス像の瞳に刻まれた記憶で、ドルマゲスの顔を知っている。
奴の足跡を辿ってここまで来たのだから、間違いない。
「すみません、その道化師に会わせてもらえませんか!?」
「院長様が危険な目に遭うかもしれないんです!」
「ならんならん! ここを通ることができるのは、あくまでマルチェロ団長の許可を得た者だけだ!」
「不気味だって分かってるのに!?」
「マルチェロ団長が院長への面会を許可されたのだ。問題などあるわけがなかろう」
「ぐ……」
あのアンポンタン、二階からイヤミ男!
野心を映す前に、怪しい奴を見分けるのが先だっての!!
が、やはりどうあっても通してはくれないようで、私達は歯噛みしながら引き下がることしか出来なかった。
どうしよう、次の犠牲者が出る前に、ドルマゲスをどうにかしなきゃいけないのに……。
私とゼシカの中で「女の敵ククール」と意見が一致して、私達は大股で修道院へ向かった。
昨日に引き続きまたもや現れた私達を前に、例の騎士団員二人は嫌そうに顔をしかめた。
「なんだお前は」
「ここにお住まいのククールさんに聖堂騎士団の指輪を突き返しに来ましたが何か!!」
「レイラ、喧嘩腰で挑まない!」
「……なに? ふん、また酒場の支払いをその指輪でツケにしてくれと頼んだのだな。しょうがない奴め。チッ……仕方ない。ククールは奥だ。さっさと通るがよい!」
勝手に一人で納得して、騎士団員が扉の前から立ち退いてくれた。
よく分からないけど、私達をドニの酒場の店員だと勘違いしてくれてるっぽい。
訂正すると面倒なので、そのまま通ることにした。
宿舎へ入って、その辺にいた修道士にククールの居場所を尋ねると、どうやら騎士団長のマルチェロさんに呼び出されたとの事だった。
あの人、騎士団長だったんだ。
とてもそうは見えなかった――なんて言ったら速攻で斬り捨てられそうなので、私はここに入ってから口を閉ざしたままだ。
二階にあるマルチェロさんのお部屋の前には、またもや騎士が二人。
マルチェロさんはここではなく、ククールさんと共に地下牢に向かったとのこと。
くそ、上ったら降りろと言われる!
これが人生か……!
地下牢へと降りると、奥から話し声が聞こえてきた。
私達はさっと目配せをして、音を立てないように近付いて聞き耳を立てた。
「……またドニの酒場で騒ぎを起こしたようだな。この恥さらしめ」
「随分、お耳が早いことで。さすがは聖堂騎士団の……」
「どこまで我がマイエラ修道院の名を落とせば気が済むんだ? まったく、お前は疫病神だ」
……確かにククールさんは、僧侶の戒律を破って酒に賭博にと好き勝手したけど、疫病神と呼ばれる程だろうか。
引っ掛かりを覚えた私の耳に、マルチェロさんの憎々しげな声が聞こえてくる。
「……そう、疫病神だよ。お前さえ生まれて来なければ、誰も不幸になぞならなかったのに」
「……」
「顔とイカサマだけが取り柄の、出来損ないめ。半分でも、この私にもお前と同じ血が流れているかと思うと、ぞっとする」
(……半分でも、同じ血が流れて……?)
言葉通りに受け取るなら、マルチェロさんとククールさんは、異母兄弟、もしくは異父兄弟ということになる。
だけど、どうやら兄弟仲は最悪みたいだ。
ククールさんからはそれほど嫌悪感は伝わってこないけど、マルチェロさんはククールさんのことをかなり嫌って……いや、憎んでいるとまで言っていい気がする。
「……ふん、まあいい。聖堂騎士団員ククール。団長の名において、お前に当分の間、謹慎を言い渡す。いかなる理由があろうとも、この修道院から外に出ることは許さん。いいか? 一歩たりともだ。それさえ守れぬようなら、いくら院長が庇おうと、修道院から追放だ。分かったな」
話は、そこで一区切りついたみたいだった。
二人と鉢合わせないように、そっとその場から立ち去る。
ククールさんが地下牢から出てきたところで、指輪を返すしかなさそうだ。
地下牢から宿舎の一階へ戻ると、明るい照明が目に痛かった。
「修道院なんて坊さんばっかで平和なとこだと思ってたんでがすが、いろいろ複雑でげすなぁ」
「そうだね……。なんだか、聞いててこう、胸がぎゅっとなっちゃった」
地下牢の入口を見やって、私達は眉尻を下げたまま顔を見合わせた。
ククールさんのやっていることは、確かに修道院の醜聞に繋がっているのかもしれないけど、マルチェロさんの内心では、それさえもククールさんへの恨みに繋がってしまっているのだろう。
「……よその家庭の事情に首を突っ込むのは野暮よ。深入りはやめておいたほうがいいわ」
「そうでがすな。それはそうと兄貴、姉貴。ここで一番偉いお人なら、ドルマゲスのことも知ってるはずでげす。オディロ院長って人に会いに行くでがすよ!」
「……まあ、それがいいか」
何か知っていればいいけど……。
偉い人は逆に、自分のいる場所から動かないから、外がどうなっているかを知らないことも、往々にしてよくあることだ。
ダメ元のつもりで院長様の館へ向かおうと、宿舎の扉を開けて外に出る。
院長様の館に繋がる橋は、真ん中で騎士団員が通せんぼしていた。
「あの、院長様にお会いすることは……」
「オディロ院長は今、ご趣味の時間を楽しんでおられる。お会いすることは叶わん」
「趣味でがすか? それってぇのはどんな……」
「ああ、院長様は公明正大で誰にでも手を差し伸べる慈悲深いお方だが、お笑いを愛する方でもあってな。今は道化師を招いてお楽しみの最中だ」
「ど、道化師……!? それってどういう格好の……」
「そいつならたった今ここを通って行ったが……。どうもひどく不気味な道化師だったな」
隣に立つ騎士がそう言って眉をひそめた。
間違いない、ドルマゲスだ。
私とエイトは、城でドルマゲスを一度見ているし、ヤンガスとゼシカもリーザス像の瞳に刻まれた記憶で、ドルマゲスの顔を知っている。
奴の足跡を辿ってここまで来たのだから、間違いない。
「すみません、その道化師に会わせてもらえませんか!?」
「院長様が危険な目に遭うかもしれないんです!」
「ならんならん! ここを通ることができるのは、あくまでマルチェロ団長の許可を得た者だけだ!」
「不気味だって分かってるのに!?」
「マルチェロ団長が院長への面会を許可されたのだ。問題などあるわけがなかろう」
「ぐ……」
あのアンポンタン、二階からイヤミ男!
野心を映す前に、怪しい奴を見分けるのが先だっての!!
が、やはりどうあっても通してはくれないようで、私達は歯噛みしながら引き下がることしか出来なかった。
どうしよう、次の犠牲者が出る前に、ドルマゲスをどうにかしなきゃいけないのに……。
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