10章
夢小説設定
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酒場の中の喧騒とは打って変わって、酒場の外はとても静かだ。
いつの間にか日が傾いていたようで、外は夕日でオレンジ色だった。
酒場から手を引っ張られたかと思いきや、外に出た瞬間、エイトの手がお兄さんの手を叩き落とした。
ゼシカはゼシカで、お兄さんの手を振り払って睨み付けている。
「あんたら何なんだ? ここら辺じゃ見かけない顔だが……。ま、いいや。とりあえず、イカサマがバレずに済んだ。一応、礼を言っとくか」
そう言ってお兄さんとエイトが握手をする。
そうしてお兄さんが右手にかかるマントを上げた瞬間、脇からバラバラと音を立ててトランプが落ちていった。
「うわ、あくどい……」
「あんまり良いカモだったから、ついやりすぎちまった」
瞬間、酒場から派手に何かが割れる音が聞こえてきた。
いったい中がどうなっているのか、覗く勇気は私には無い。
「おっと。グズグズしてたら、あいつらに見つかっちまう」
そう言ってお兄さんは私達に背を向けかけ――。
私とゼシカを見やった。
なんとはなしにゾワッとした私と違って、ゼシカはお兄さんを睨んだままだ。
「……何か?」
「俺のせいで怪我をさせてないか心配でね。大丈夫かい?」
「あいにく平気よ。ジロジロ見ないでくれる?」
ゼシカの冷たい物言いも何のその。
お兄さんはおもむろに歯で右手の手袋を脱ぐと、中指につけていた指輪を外した。
「助けてもらったお礼と、今日の出会いの記念に」
そう言ってゼシカの手を取り、指輪を握らせた。
大事そうなものに見えるけど、ホイホイ渡していいものなのか、それ。
「俺の名前はククール。マイエラ修道院に住んでる」
ゼシカが勢いよくククールの手を振り払う。
けれど指輪は返せなかったようだった。
「その指輪を見せれば、俺に会える。……会いに来てくれるよな? じゃ、また。マイエラ修道院のククールだ。忘れないでくれよ!」
そう言い残して、ククールは裏側の道から走り去っていった。
な、なんだったんだ、あの男……。
ろくでもない奴の匂いがプンプンしたぞ。
「おぉ〜い! 兄貴、姉貴! ここにいたんでげすか!? 随分探しましたでがす」
入口のほうからヤンガスが回ってきて、私達へと手を振っている。
それに手を振り返すと、ヤンガスは誇らしげな顔で走り寄ってきた。
「あいつら、こてんぱんにとっちめてやりましたでがす。へへへっ」
「殺してないよね?」
「安心してくだせぇ、気絶してるだけでがすよ」
「う、うーん……?」
ヤンガスに気を取られている間に、いつの間にか指輪はゼシカからエイトの手に渡っていた。
見たところ、聖堂騎士団のマークが彫られている。
そんなものを人に渡すなんて、とんでもない奴だな。
「いーい? エイト! そんな指輪、受け取っちゃ駄目。マイエラ修道院まで行って、あのケーハク男に叩き返してやるんだから!」
「そ、そうだね……」
勢いに圧されたエイトが頷いて、指輪を袋に仕舞う。
とりあえず今日はドニの宿で一夜を明かすことにした。
今から行っても、もう入れてもらえないだろうから。
「まーたあのムカつく騎士に会わなきゃいけないわけかぁ……」
「どいつもこいつも、修道院にいる奴はろくな奴じゃないわね! 何が世界三大聖地よ!」
「ゼシカ、どうどう」
はは……と苦笑いのエイトが、宿屋へ向かって歩き出す。
その背中へ、慌てて駆け寄った。
「エイト! さっきはククールさんの手、離してくれてありがと」
「ううん、気にしないで。あんな男がレイラに触れてるなんて許せなかっただけだから」
「うん……うん? よく分かんないけど、ありがとね?」
「うん、どういたしまして」
ニコニコとしたエイトが、宿屋へ入っていく。
私もそれに続こうとして、背後からの視線が刺さった。
「……な、なに?」
「あなた……相当、鈍いのね……」
「何の話?」
「なんでもないでげすよ。……青い、春でがすな」
「……?」
ヤンガスの言っていることまで分からなくて、首を傾げたまま宿屋へ入る。
宿泊客は私達だけみたいなので、合法的に貸切だ。
「レイラ、今日は念入りに手を洗っておいてね」
「いやどういうこと?」
「そういうことだよ」
「全然分かんないけど、分かった」
「どっちなのよ」
ゼシカの冷静なツッコミが入りつつ、ベッドルームへと向かっていく。
やーれやれ、血の気が多いのはうちも同じだったな。
明日もこんな調子だと嫌だなぁ。
もっとこう、穏便に話が進めばいいのに……。
いつの間にか日が傾いていたようで、外は夕日でオレンジ色だった。
酒場から手を引っ張られたかと思いきや、外に出た瞬間、エイトの手がお兄さんの手を叩き落とした。
ゼシカはゼシカで、お兄さんの手を振り払って睨み付けている。
「あんたら何なんだ? ここら辺じゃ見かけない顔だが……。ま、いいや。とりあえず、イカサマがバレずに済んだ。一応、礼を言っとくか」
そう言ってお兄さんとエイトが握手をする。
そうしてお兄さんが右手にかかるマントを上げた瞬間、脇からバラバラと音を立ててトランプが落ちていった。
「うわ、あくどい……」
「あんまり良いカモだったから、ついやりすぎちまった」
瞬間、酒場から派手に何かが割れる音が聞こえてきた。
いったい中がどうなっているのか、覗く勇気は私には無い。
「おっと。グズグズしてたら、あいつらに見つかっちまう」
そう言ってお兄さんは私達に背を向けかけ――。
私とゼシカを見やった。
なんとはなしにゾワッとした私と違って、ゼシカはお兄さんを睨んだままだ。
「……何か?」
「俺のせいで怪我をさせてないか心配でね。大丈夫かい?」
「あいにく平気よ。ジロジロ見ないでくれる?」
ゼシカの冷たい物言いも何のその。
お兄さんはおもむろに歯で右手の手袋を脱ぐと、中指につけていた指輪を外した。
「助けてもらったお礼と、今日の出会いの記念に」
そう言ってゼシカの手を取り、指輪を握らせた。
大事そうなものに見えるけど、ホイホイ渡していいものなのか、それ。
「俺の名前はククール。マイエラ修道院に住んでる」
ゼシカが勢いよくククールの手を振り払う。
けれど指輪は返せなかったようだった。
「その指輪を見せれば、俺に会える。……会いに来てくれるよな? じゃ、また。マイエラ修道院のククールだ。忘れないでくれよ!」
そう言い残して、ククールは裏側の道から走り去っていった。
な、なんだったんだ、あの男……。
ろくでもない奴の匂いがプンプンしたぞ。
「おぉ〜い! 兄貴、姉貴! ここにいたんでげすか!? 随分探しましたでがす」
入口のほうからヤンガスが回ってきて、私達へと手を振っている。
それに手を振り返すと、ヤンガスは誇らしげな顔で走り寄ってきた。
「あいつら、こてんぱんにとっちめてやりましたでがす。へへへっ」
「殺してないよね?」
「安心してくだせぇ、気絶してるだけでがすよ」
「う、うーん……?」
ヤンガスに気を取られている間に、いつの間にか指輪はゼシカからエイトの手に渡っていた。
見たところ、聖堂騎士団のマークが彫られている。
そんなものを人に渡すなんて、とんでもない奴だな。
「いーい? エイト! そんな指輪、受け取っちゃ駄目。マイエラ修道院まで行って、あのケーハク男に叩き返してやるんだから!」
「そ、そうだね……」
勢いに圧されたエイトが頷いて、指輪を袋に仕舞う。
とりあえず今日はドニの宿で一夜を明かすことにした。
今から行っても、もう入れてもらえないだろうから。
「まーたあのムカつく騎士に会わなきゃいけないわけかぁ……」
「どいつもこいつも、修道院にいる奴はろくな奴じゃないわね! 何が世界三大聖地よ!」
「ゼシカ、どうどう」
はは……と苦笑いのエイトが、宿屋へ向かって歩き出す。
その背中へ、慌てて駆け寄った。
「エイト! さっきはククールさんの手、離してくれてありがと」
「ううん、気にしないで。あんな男がレイラに触れてるなんて許せなかっただけだから」
「うん……うん? よく分かんないけど、ありがとね?」
「うん、どういたしまして」
ニコニコとしたエイトが、宿屋へ入っていく。
私もそれに続こうとして、背後からの視線が刺さった。
「……な、なに?」
「あなた……相当、鈍いのね……」
「何の話?」
「なんでもないでげすよ。……青い、春でがすな」
「……?」
ヤンガスの言っていることまで分からなくて、首を傾げたまま宿屋へ入る。
宿泊客は私達だけみたいなので、合法的に貸切だ。
「レイラ、今日は念入りに手を洗っておいてね」
「いやどういうこと?」
「そういうことだよ」
「全然分かんないけど、分かった」
「どっちなのよ」
ゼシカの冷静なツッコミが入りつつ、ベッドルームへと向かっていく。
やーれやれ、血の気が多いのはうちも同じだったな。
明日もこんな調子だと嫌だなぁ。
もっとこう、穏便に話が進めばいいのに……。
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