後日譚1
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パタン、と近衛隊長の部屋のドアが閉まった。
エイトだけ個室なの、やっぱりズルい気がする。
「レイラ?」
「はい……」
「別に怒ってるわけじゃないんだよ」
「嘘だぁ……」
「本当だよ、怒ってない。ただ、無茶をしてないかどうかは、確認しておかないとね」
そう言ってエイトの手が私の体を触っていく。
なんだかなぁ、というのが正直な気持ちだ。
大事にされるのは嫌じゃないけど、兵士に向かって「怪我をするな」は無茶苦茶じゃないか。
「……ねえ、エイト」
「うん?」
「私、近衛兵、辞めようか」
「えっ」
「こんなふうにエイトに心労をかけるのは本意じゃないし。本当は続けたいけど、エイトに心配かけてまでやることじゃないしさ」
俯いたエイトが、私の手を離す。
それから私をそっと抱き締めた。
「……ごめん、そんなことを言わせるつもりじゃなかったんだ。ただレイラは、自分を犠牲にすることを、選択肢に入れる人だから……」
「……」
「本当はそんなのを選択肢に入れてほしくないけど、レイラの言う通り、僕らは近衛兵だ。陛下や姫を守ることが仕事だから、もしかしたらこの先、僕もその選択をすることがあるかもしれない。……でも、それは他に手の打ちようがなかった時の、最後の手段だろ? 最初から自己犠牲を選択肢には入れないでほしい。そんなことをしなくても、僕らは大事なものを守ってこられたんだから」
ね、と微笑まれて、静かに頷く。
……竜神族の里でも、エイトに言われたことだった。
自己犠牲が過ぎるって。
「約束したじゃん。もうそんな事しないって。約束したことは守らないとさ」
エイトの顔を両手で挟んで、むに、と押し込む。
変な顔、と笑って手を離した。
心配性なのはいいけど、過保護なのはご勘弁だ。
「私達は近衛兵だからさ、陛下や姫様を狙う不届き者が現れたら、戦わなきゃいけない。でも危ない戦い方はしないから。これだけは絶対って言える」
「……」
「エイト、私ここにいるよ。みんなが助けてくれたから、ここにいるじゃん。もうどこにも行かないよ。ずっとエイトと一緒にいるって約束したでしょ?」
「……うん」
エイトが頷いて顔を伏せる。
それから、それはそれはでっかいため息を吐き出した。
「本当は色々、本っ当に色々言いたいことがあるけど……でも、もういいや。レイラと一緒にこの仕事を続けたいって言ったのは僕だから」
「そーだそーだ! わがまま言って現役続行させた責任は取ってくださいよ、隊長!」
「なんだよ、それ」
へにゃりとエイトが笑って、ぽんと頭を撫でる。
へへへ、と私も笑って、エイトに抱き着いた。
「ねーエイト」
「ん?」
「いつも私達のためにありがとう」
「どうしたの、殊勝なこと言って」
「隊長の代わりをやったわけだけどさ、一日でも大変だなって思ったんだもん。これを毎日やってるエイトはすごいよ」
「あはは、そうでもないよ。僕には優秀な右腕が付いてるからね」
思わず顔を上げてエイトを見つめる。
……優秀、いまエイトは、私のことを優秀って言った?
全然そんな気はしなかったけど、私ってもしかして、思ってる以上にエイトの助けになれてるのか?
「これからもよろしく頼むよ、副隊長」
「……うん! こちらこそよろしくね、隊長!」
「レイラに隊長って呼ばれると、ちょっと擽ったいや。さて……ここから先は夫婦の会話をしてもいい?」
「ていうか帰ろうよ、今日もう非番でしょ、私達」
隊長と副隊長が同時に非番でいいのかという問題はあるけれど、それはそれだ。
だって祭典の護衛、頑張ったんだもん!
隊長室を出て、そのまま廊下を歩いて外へ出る。
ぐっと背伸びをして、それからエイトを見上げた。
さっき思ったけど、なんというか……いつもよりも目線を上にあげないと、エイトと目が合わないというか……。
「……んん?」
「どうしたの?」
「いや、うーん……? ねえエイト、もしかしてだけどさぁ……。背、伸びたんじゃない?」
「……あ、やっぱりそうだったんだ」
「やっぱりって何!?」
「防具が合わなくなってきた気がしてたけど、気のせいじゃなかったんだなって。この歳になってもまだ、身長って伸びるもんなんだ……」
不思議そうに首を傾げるエイトを見上げて、私も同じように首を傾げる。
それから、はたと気付いた。
「もしかしてだけどさ、それって、エイトが竜神族の血を半分引いてるからじゃない?」
「えっ?」
「だって明らかに長寿の種族だったじゃん? てことは、エイトも竜神族までは行かなくても、そこそこ寿命長いんじゃないの?」
「それに合わせて体も成長するから、僕はまだ成長期ってこと?」
「根拠は無いけど、そうなのかなーって。まあ夢があるってことだよ! 私はもう伸びないだろうし」
「レイラは女の子の中では身長が高い方だから、伸びないでくれると嬉しいけど……。でもたしかに、言われてみれば、レイラの目線がいつもより下にある気がする」
嬉しそうに言ってエイトが笑う。
私と身長差に開きが出たのがそんなに嬉しいか。
城門を出て、家のある方──つまりトラペッタへ歩いていく。
私たちの家は、トラペッタの宿屋の隣。
マスター・ライラスの家があった跡地に建てた。
お城へはルーラで行って、気まぐれにキラーパンサーに乗って帰ったり、やっぱりルーラで帰ったりしている。
今日は非番なので、のんびりキラーパンサーに乗って帰ることにした。
バウムレンの鈴を鳴らせば、キラーパンサーが二頭、颯爽と現れて、私達はその背に跨った。
「いやあ、吊り橋が直った恩恵を一番受けているのは私達かもしれないなぁ」
「はは、確かにそうかも。懐かしいなぁ、ヤンガスに初めて会ったのもここで……」
「私とエイトで、川に落ちそうだったヤンガスを助けたら、なぜか姉貴、兄貴って呼ばれるようになってねえ」
「それから、トラペッタに着いたら着いたで、王様は怪物だって石を投げられて……」
「災難だったね、あれは……」
とてとてとキラーパンサーを歩かせて、吊り橋を渡り終える。
それから先は、トラペッタの町までキラーパンサーに走ってもらった。
「楽しみだね、結婚式」
「成り行きに任せちゃった部分はあるけど、僕としてもちょっと後悔はあったから……。レイラと僕の結婚式が出来るのは、素直に嬉しいよ。ヤンガス達もちゃんと呼ばないとね」
「ククール、どこで何してるんだろうね……」
不自然に降りた沈黙が雄弁に語っていた。
ヤンガスよりもゼシカよりも、ククールの行方のほうが全然見当もつかない。
本当にどこで何をしているんだ、あのバカリスマは……。
エイトだけ個室なの、やっぱりズルい気がする。
「レイラ?」
「はい……」
「別に怒ってるわけじゃないんだよ」
「嘘だぁ……」
「本当だよ、怒ってない。ただ、無茶をしてないかどうかは、確認しておかないとね」
そう言ってエイトの手が私の体を触っていく。
なんだかなぁ、というのが正直な気持ちだ。
大事にされるのは嫌じゃないけど、兵士に向かって「怪我をするな」は無茶苦茶じゃないか。
「……ねえ、エイト」
「うん?」
「私、近衛兵、辞めようか」
「えっ」
「こんなふうにエイトに心労をかけるのは本意じゃないし。本当は続けたいけど、エイトに心配かけてまでやることじゃないしさ」
俯いたエイトが、私の手を離す。
それから私をそっと抱き締めた。
「……ごめん、そんなことを言わせるつもりじゃなかったんだ。ただレイラは、自分を犠牲にすることを、選択肢に入れる人だから……」
「……」
「本当はそんなのを選択肢に入れてほしくないけど、レイラの言う通り、僕らは近衛兵だ。陛下や姫を守ることが仕事だから、もしかしたらこの先、僕もその選択をすることがあるかもしれない。……でも、それは他に手の打ちようがなかった時の、最後の手段だろ? 最初から自己犠牲を選択肢には入れないでほしい。そんなことをしなくても、僕らは大事なものを守ってこられたんだから」
ね、と微笑まれて、静かに頷く。
……竜神族の里でも、エイトに言われたことだった。
自己犠牲が過ぎるって。
「約束したじゃん。もうそんな事しないって。約束したことは守らないとさ」
エイトの顔を両手で挟んで、むに、と押し込む。
変な顔、と笑って手を離した。
心配性なのはいいけど、過保護なのはご勘弁だ。
「私達は近衛兵だからさ、陛下や姫様を狙う不届き者が現れたら、戦わなきゃいけない。でも危ない戦い方はしないから。これだけは絶対って言える」
「……」
「エイト、私ここにいるよ。みんなが助けてくれたから、ここにいるじゃん。もうどこにも行かないよ。ずっとエイトと一緒にいるって約束したでしょ?」
「……うん」
エイトが頷いて顔を伏せる。
それから、それはそれはでっかいため息を吐き出した。
「本当は色々、本っ当に色々言いたいことがあるけど……でも、もういいや。レイラと一緒にこの仕事を続けたいって言ったのは僕だから」
「そーだそーだ! わがまま言って現役続行させた責任は取ってくださいよ、隊長!」
「なんだよ、それ」
へにゃりとエイトが笑って、ぽんと頭を撫でる。
へへへ、と私も笑って、エイトに抱き着いた。
「ねーエイト」
「ん?」
「いつも私達のためにありがとう」
「どうしたの、殊勝なこと言って」
「隊長の代わりをやったわけだけどさ、一日でも大変だなって思ったんだもん。これを毎日やってるエイトはすごいよ」
「あはは、そうでもないよ。僕には優秀な右腕が付いてるからね」
思わず顔を上げてエイトを見つめる。
……優秀、いまエイトは、私のことを優秀って言った?
全然そんな気はしなかったけど、私ってもしかして、思ってる以上にエイトの助けになれてるのか?
「これからもよろしく頼むよ、副隊長」
「……うん! こちらこそよろしくね、隊長!」
「レイラに隊長って呼ばれると、ちょっと擽ったいや。さて……ここから先は夫婦の会話をしてもいい?」
「ていうか帰ろうよ、今日もう非番でしょ、私達」
隊長と副隊長が同時に非番でいいのかという問題はあるけれど、それはそれだ。
だって祭典の護衛、頑張ったんだもん!
隊長室を出て、そのまま廊下を歩いて外へ出る。
ぐっと背伸びをして、それからエイトを見上げた。
さっき思ったけど、なんというか……いつもよりも目線を上にあげないと、エイトと目が合わないというか……。
「……んん?」
「どうしたの?」
「いや、うーん……? ねえエイト、もしかしてだけどさぁ……。背、伸びたんじゃない?」
「……あ、やっぱりそうだったんだ」
「やっぱりって何!?」
「防具が合わなくなってきた気がしてたけど、気のせいじゃなかったんだなって。この歳になってもまだ、身長って伸びるもんなんだ……」
不思議そうに首を傾げるエイトを見上げて、私も同じように首を傾げる。
それから、はたと気付いた。
「もしかしてだけどさ、それって、エイトが竜神族の血を半分引いてるからじゃない?」
「えっ?」
「だって明らかに長寿の種族だったじゃん? てことは、エイトも竜神族までは行かなくても、そこそこ寿命長いんじゃないの?」
「それに合わせて体も成長するから、僕はまだ成長期ってこと?」
「根拠は無いけど、そうなのかなーって。まあ夢があるってことだよ! 私はもう伸びないだろうし」
「レイラは女の子の中では身長が高い方だから、伸びないでくれると嬉しいけど……。でもたしかに、言われてみれば、レイラの目線がいつもより下にある気がする」
嬉しそうに言ってエイトが笑う。
私と身長差に開きが出たのがそんなに嬉しいか。
城門を出て、家のある方──つまりトラペッタへ歩いていく。
私たちの家は、トラペッタの宿屋の隣。
マスター・ライラスの家があった跡地に建てた。
お城へはルーラで行って、気まぐれにキラーパンサーに乗って帰ったり、やっぱりルーラで帰ったりしている。
今日は非番なので、のんびりキラーパンサーに乗って帰ることにした。
バウムレンの鈴を鳴らせば、キラーパンサーが二頭、颯爽と現れて、私達はその背に跨った。
「いやあ、吊り橋が直った恩恵を一番受けているのは私達かもしれないなぁ」
「はは、確かにそうかも。懐かしいなぁ、ヤンガスに初めて会ったのもここで……」
「私とエイトで、川に落ちそうだったヤンガスを助けたら、なぜか姉貴、兄貴って呼ばれるようになってねえ」
「それから、トラペッタに着いたら着いたで、王様は怪物だって石を投げられて……」
「災難だったね、あれは……」
とてとてとキラーパンサーを歩かせて、吊り橋を渡り終える。
それから先は、トラペッタの町までキラーパンサーに走ってもらった。
「楽しみだね、結婚式」
「成り行きに任せちゃった部分はあるけど、僕としてもちょっと後悔はあったから……。レイラと僕の結婚式が出来るのは、素直に嬉しいよ。ヤンガス達もちゃんと呼ばないとね」
「ククール、どこで何してるんだろうね……」
不自然に降りた沈黙が雄弁に語っていた。
ヤンガスよりもゼシカよりも、ククールの行方のほうが全然見当もつかない。
本当にどこで何をしているんだ、あのバカリスマは……。
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