10章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
宿場町とヤンガスが言うだけあって、ドニの町は小ぢんまりしていた。
見える建物は宿屋と小さな教会、そして二階建ての大きな酒場だけだ。
「酒場だけでこんなに大きい建物になってるの、初めて見たや……」
「世界一の酒場って言うだけあるなぁ。これだけ大きいなら、情報も集まりそうだ」
「そうね。今のところ、ドルマゲスの手がかりはゼロだもの。何でもいいから、手がかりが欲しいわ」
「んじゃあ、早速入ってみるでがすよ」
ヤンガスが酒場の扉を開く。
中に入って様子を見る――までもなく、酒場の全員がある方向を見つめていた。
なんだなんだ? と私達もその方向を見ると。
赤い騎士団の隊服を着た銀髪のお兄さんが、なんと酒場でポーカーをやっているではないか。
聖職者って、酒とか賭博とか、駄目なんじゃなかったっけ?
「……聖堂騎士団だからセーフってこと?」
「聖堂騎士団だって立派な聖職者だからアウトよ」
ゼシカが不快そうに眉をひそめて言った。
ここにもゼシカの嫌いな男がまた一人。
この大陸に来てから、私達ってまともな男に出会ってないな。
「あ、あの……」
それでも声を掛けに行くエイト、すごいな!?
もしかして心臓が毛むくじゃらなのか!?
私だったらこの勝負が終わるまで見守ることしか出来ない!
「……おっと。今は真剣勝負の最中でね。後にしてくれないか?」
「は、はぁ……」
なるほど、ポーカーと言えどゲームはゲーム。
真剣勝負なら水を差すわけにはいかないな。
ところが、お兄さんがそう言った途端、向かい側に座る荒くれの男が手札から顔を上げた。
「真剣勝負だとぉ〜!?」
「あっ違うっぽい」
「おいっ! このクサレ僧侶! てめぇイカサマやりやがったな!」
「しかもやってる事が詐欺師のそれ」
「まあまあ、あんたもそう興奮すんなよ。負けて悔しいのは分かるけどよ」
同じ元荒くれ者同士で通じるものがあったのか、ヤンガスがそう言って荒くれの肩に手を置く。
同情するところなんだ、これ。
まあ、こういうところでやってるあたり、何かしらを賭けてたんだろうけど……。
ちなみに当の本人であるお兄さんは、やれやれと言ったように肩を竦めてワインを飲んでいた。
「なんだとぉ!? ……そうか、分かったぞ」
荒くれがそう言った瞬間、ヤンガスが思いっきり突き飛ばされて、後ろにあるテーブルごとひっくり返った。
「や、ヤンガスー!?」
「大丈夫、ヤンガス!?」
「てめぇら、こいつの仲間だな!!」
「違います!!」
「違うわよ!!」
私とゼシカの声が重なる。
しかし荒くれはそんなことなど聞いちゃいないようだった。
なんでだよ、聞けよ人の話を。
すると今度は、自分の上に乗っかっていたテーブルを投げ飛ばして、ヤンガスが完全に頭に来た顔で荒くれへと大股で歩いてきた。
「いい加減にしやがれ! 妙な言いがかりを付けると、タダじゃおかねぇ……」
ヤンガスと荒くれが一触即発の雰囲気になった瞬間、二人が頭から水を浴びた。
掛けたのは私の隣にいたはずのゼシカだ。
手にはバケツを持っている。
いや、いつの間に?
「いい加減にして! 頭を冷やしなさいよ、この単細胞!」
「火に油を注がなかったかな、今ー!?」
背後でお兄さんがヒュウ、と口笛を吹いて囃し立てる。
元はと言えばお前のせいでは? と言いたいのをグッと堪えた。
まずはこの場をどうにかするのが先だ。
「兄貴に何しやがる!?」
「女だからって承知しねぇぞ!?」
ゼシカに詰め寄った荒くれの子分二人に対して、お兄さんが席を立って腰のレイピアを抜こうと構えて――。
次の瞬間、お兄さんは素早い身のこなしで壁際へと避けた。
お兄さんがいた場所へ、テーブルがぶっ飛んでいく。
「女ひとりに二人がかりとは、格好が悪いんじゃあねぇのかい?」
そう言って椅子を抱えるヤンガス。
ちなみに椅子には客が座ったままだ。
客ごとぶん投げるつもりか、馬鹿か、バカなのかヤンガス!
しかし男気を見せたヤンガスへ、酒場の客からは賞賛の声が寄せられた。
……よし!
収拾つかないな、これ!
「うるせぇ! よくも子分達をやってくれたな!!」
そう怒鳴った親分の荒くれへ、本当に客ごとヤンガスが椅子をぶん投げた。
お客さん、可哀想に……。
怪我してないことを祈ろう……。
ゼシカへ飛びかかった子分は、ゼシカがさっと身を避けたためにテーブルへ頭から突っ込んだ。
壁際へ避けた私とエイトの目の前を、酒瓶やらスキレットやらが飛び交い、果てには樽が転がっていく始末だ。
「うわぁ、大乱闘だね……」
「うん……」
完全に怒り心頭のゼシカが、ヤンガスと荒くれに向かってメラをぶち込もうとする。
さすがにそれはまずいと私が止めに入るより先に、ゼシカと私の手を誰かが引いていった。
よく見るとそれは、あの騎士団の服を着たお兄さんだ。
エイトに目線で合図をして、私達は酒場の裏口から外へと出た。
ちなみにヤンガスは気絶している子分を片手で抱えて盾にしながら、親分と殴り合いの真っ最中。
その様子を陛下が楽しそうに眺めていた。
見える建物は宿屋と小さな教会、そして二階建ての大きな酒場だけだ。
「酒場だけでこんなに大きい建物になってるの、初めて見たや……」
「世界一の酒場って言うだけあるなぁ。これだけ大きいなら、情報も集まりそうだ」
「そうね。今のところ、ドルマゲスの手がかりはゼロだもの。何でもいいから、手がかりが欲しいわ」
「んじゃあ、早速入ってみるでがすよ」
ヤンガスが酒場の扉を開く。
中に入って様子を見る――までもなく、酒場の全員がある方向を見つめていた。
なんだなんだ? と私達もその方向を見ると。
赤い騎士団の隊服を着た銀髪のお兄さんが、なんと酒場でポーカーをやっているではないか。
聖職者って、酒とか賭博とか、駄目なんじゃなかったっけ?
「……聖堂騎士団だからセーフってこと?」
「聖堂騎士団だって立派な聖職者だからアウトよ」
ゼシカが不快そうに眉をひそめて言った。
ここにもゼシカの嫌いな男がまた一人。
この大陸に来てから、私達ってまともな男に出会ってないな。
「あ、あの……」
それでも声を掛けに行くエイト、すごいな!?
もしかして心臓が毛むくじゃらなのか!?
私だったらこの勝負が終わるまで見守ることしか出来ない!
「……おっと。今は真剣勝負の最中でね。後にしてくれないか?」
「は、はぁ……」
なるほど、ポーカーと言えどゲームはゲーム。
真剣勝負なら水を差すわけにはいかないな。
ところが、お兄さんがそう言った途端、向かい側に座る荒くれの男が手札から顔を上げた。
「真剣勝負だとぉ〜!?」
「あっ違うっぽい」
「おいっ! このクサレ僧侶! てめぇイカサマやりやがったな!」
「しかもやってる事が詐欺師のそれ」
「まあまあ、あんたもそう興奮すんなよ。負けて悔しいのは分かるけどよ」
同じ元荒くれ者同士で通じるものがあったのか、ヤンガスがそう言って荒くれの肩に手を置く。
同情するところなんだ、これ。
まあ、こういうところでやってるあたり、何かしらを賭けてたんだろうけど……。
ちなみに当の本人であるお兄さんは、やれやれと言ったように肩を竦めてワインを飲んでいた。
「なんだとぉ!? ……そうか、分かったぞ」
荒くれがそう言った瞬間、ヤンガスが思いっきり突き飛ばされて、後ろにあるテーブルごとひっくり返った。
「や、ヤンガスー!?」
「大丈夫、ヤンガス!?」
「てめぇら、こいつの仲間だな!!」
「違います!!」
「違うわよ!!」
私とゼシカの声が重なる。
しかし荒くれはそんなことなど聞いちゃいないようだった。
なんでだよ、聞けよ人の話を。
すると今度は、自分の上に乗っかっていたテーブルを投げ飛ばして、ヤンガスが完全に頭に来た顔で荒くれへと大股で歩いてきた。
「いい加減にしやがれ! 妙な言いがかりを付けると、タダじゃおかねぇ……」
ヤンガスと荒くれが一触即発の雰囲気になった瞬間、二人が頭から水を浴びた。
掛けたのは私の隣にいたはずのゼシカだ。
手にはバケツを持っている。
いや、いつの間に?
「いい加減にして! 頭を冷やしなさいよ、この単細胞!」
「火に油を注がなかったかな、今ー!?」
背後でお兄さんがヒュウ、と口笛を吹いて囃し立てる。
元はと言えばお前のせいでは? と言いたいのをグッと堪えた。
まずはこの場をどうにかするのが先だ。
「兄貴に何しやがる!?」
「女だからって承知しねぇぞ!?」
ゼシカに詰め寄った荒くれの子分二人に対して、お兄さんが席を立って腰のレイピアを抜こうと構えて――。
次の瞬間、お兄さんは素早い身のこなしで壁際へと避けた。
お兄さんがいた場所へ、テーブルがぶっ飛んでいく。
「女ひとりに二人がかりとは、格好が悪いんじゃあねぇのかい?」
そう言って椅子を抱えるヤンガス。
ちなみに椅子には客が座ったままだ。
客ごとぶん投げるつもりか、馬鹿か、バカなのかヤンガス!
しかし男気を見せたヤンガスへ、酒場の客からは賞賛の声が寄せられた。
……よし!
収拾つかないな、これ!
「うるせぇ! よくも子分達をやってくれたな!!」
そう怒鳴った親分の荒くれへ、本当に客ごとヤンガスが椅子をぶん投げた。
お客さん、可哀想に……。
怪我してないことを祈ろう……。
ゼシカへ飛びかかった子分は、ゼシカがさっと身を避けたためにテーブルへ頭から突っ込んだ。
壁際へ避けた私とエイトの目の前を、酒瓶やらスキレットやらが飛び交い、果てには樽が転がっていく始末だ。
「うわぁ、大乱闘だね……」
「うん……」
完全に怒り心頭のゼシカが、ヤンガスと荒くれに向かってメラをぶち込もうとする。
さすがにそれはまずいと私が止めに入るより先に、ゼシカと私の手を誰かが引いていった。
よく見るとそれは、あの騎士団の服を着たお兄さんだ。
エイトに目線で合図をして、私達は酒場の裏口から外へと出た。
ちなみにヤンガスは気絶している子分を片手で抱えて盾にしながら、親分と殴り合いの真っ最中。
その様子を陛下が楽しそうに眺めていた。