終章
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──ふと目が覚めたとき、隣にいるはずの彼女がいなかった。
「……レイラ……?」
ドクリと心臓が嫌な脈を打った。
上着を掴んで外へと駆け出る。
清廉な朝の空気とは裏腹に、焦りが足を急かした。
「どこ……どこにいるんだよ……!?」
ああ、僕はここまで余裕のない男だっただろうか。
少しレイラが傍を離れただけで、冷静ではいられなくなるほどに──。
ふと上を見上げると、よろず屋のある高台に、見覚えのあるワンピースが見えた。
急いで高台へ向かうと、レイラがそこにいて。
けれど……そこにいるのに、いないような錯覚に陥った。
レイラの瞳は、里の下にある雲海の流れを見つめていた。
朝日に照らされた横顔が、人間離れしているかのように美しくて……儚くて。
「……ん、エイト?」
ふと名前を呼ばれて我に返る。
こちらを見つめる両の瞳は、いつも通りにあたたかさを湛えていた。
もう儚さなんてどこにもなくて……。
僕のよく知る、元気いっぱいのレイラなのに。
「……行かないで」
思わず溢れた言葉に自分で目を丸くした。
行かないで、なんて、言うつもりもなかったのに。
「……どこにも行かないよ」
苦笑いで首を振るレイラがこちらへと歩いてくる。
そうしてまた雲海を長めたけれど、その横顔が消えそうな儚さを見せることはなかった。
「お屋敷の人がね、朝は雲海が綺麗に見えるって教えてくれたから」
「うん」
「早起きできたら見ようと思ってたの」
「……うん」
「嫌な夢でも見た?」
「……見た」
「私がいなくなる夢?」
「……置いていかれる夢、だった。待ってって言っても、待ってくれなくて……」
ため息をついて前髪をぐしゃりと掻き毟る。
何をやっているんだ、これじゃまるで──依存してるみたいじゃないか。
僕はレイラと一緒にいたいと思っているけど、レイラを僕に縛りつけたいわけじゃないのに。
「……待ってって言いたいのは、私だよ」
「えっ」
「エイトは、いつでも私の先を行くから。いつか置いていかれるんじゃないかって、不安だよ」
「そんなこと……」
「もちろん、待ってって言う前に追い付いてやるけどね?」
「え……あ、はは……っ、追い付いてやるなんて……。ははっ……レイラらしいな」
「あ、馬鹿にしてる?」
「してないよ、そういうところは変わらないんだなって安心した」
「褒められてない気がする……」
唇を尖らせるレイラの、赤いそこにキスをする。
驚いたレイラが目を瞠って、なんだかそれが無性に愛おしくて。
「……おはよう、レイラ」
「もう……っ! おはよう、エイト!」
抱き着いてくるレイラを受け止める。
そして、今度はちゃんと、レイラが目を閉じて。
愛しさを籠めて、もう一度キスをした。
「……えへへ、朝から幸せだ」
「身体は大丈夫?」
「ん、ちょっとだけだるいけど平気。さてと……新婚旅行二日目はどうする?」
「そうだなぁ……」
手を繋いで高台から家に戻りながら、今日一日の予定を考える。
そうは言っても、したいことなんて何も浮かばない。
何をしていても……何もしていなくても、隣にレイラが居てくれるなら、それだけで楽しいと思えるから。
「レイラがしたいことは?」
「えっ、私? うーん……っとね、怒らない?」
「何しようとしてるの!?」
「エイトと剣の稽古」
「えっ? 稽古……あ、うん……別に……怒らないけど……」
「あはは、拍子抜けって顔してる」
「いや、あんな前置きされたら、誰だって身構えるだろ!?」
「それもそうか……」
「僕はいいけど、それでいいの? せっかく新婚旅行……一応、新婚旅行なのに」
「……正直に言っていい? エイトと一緒なら、何しても楽しいの。でもそんな答えじゃ、エイトは納得しないよなーって思って」
的確に僕の性格を見抜いた一言に、思わず言葉が詰まる。
……そりゃそうだ、もう十年の付き合いなんだから。
「手加減はしてね?」
「稽古に手加減はしない主義なんだよね」
「鬼じゃん!! 昨日の夜に散々、私を抱き潰しておいて!!」
「うっ……昨日はほんっとうに歯止めが効かなかった……。ごめん、反省してる」
「いやぁ……反省はしなくていいよ……」
「えっ?」
「……その、あの……私自身、あの……すっごく幸せだったから……」
耳の赤いレイラが消え入りそうな声で呟く。
──決めた、今夜も抱き潰そう。
そういうのが男の劣情を煽るんだって、言っても分かってくれないレイラには、身体で教えないといけないんだと思う。
悪いのは忍耐力のない僕じゃなくて、男心がいつまで経っても理解できないレイラだ。
「今っ! 今絶対に変なこと考えた!!」
「変なことって?」
「へ、変なことは変なことでしょ!!」
「例えば?」
「たっ……例えば、私を今夜も……とか……?」
「今夜も……何?」
わざとそう問えば、レイラが顔を真っ赤にして、「あうあう」と言葉にならない声を上げる。
そんなところも可愛くて……大好きで。
「ふっ……はは……!」
「え、な、なっ……! あー!? 私のことからかって遊んだー!!」
「あははっ! ごめんごめん、可愛いからつい……!」
「ついじゃなーい!」
レイラがむくれたまま手を離す。
その手を掴んで、引き寄せた。
「だめ、離れないで」
「エイト……」
「僕、意外と独占欲が強いらしくて……」
「意外とも何も、誰が見たって独占欲が強いよ……?」
「えっ!?」
「そうじゃなかったら、私に付けまくった痕はどう説明するつもりなんですかね、エイトさん!?」
「あっ」
「エイトのばかー!!」
レイラの文句に思わず笑ってしまった。
そうだよ、僕は馬鹿だ。
レイラのことになると、余裕なんて全部なくなって、いつだって君しか目に入らない。
──そんな馬鹿な僕と結婚した君。
馬鹿な僕なりに、精一杯幸せにしてみせるから。
どうか、末長く──これからも、隣にいてください。
本気で、離してやれそうにないから。
朝の爽やかな風が頬を撫でる。
いつまでも、隣で愛しい笑顔が咲きますように。
そんな願いを籠めて、そっと繋いだ手を握り締めた──。
「……レイラ……?」
ドクリと心臓が嫌な脈を打った。
上着を掴んで外へと駆け出る。
清廉な朝の空気とは裏腹に、焦りが足を急かした。
「どこ……どこにいるんだよ……!?」
ああ、僕はここまで余裕のない男だっただろうか。
少しレイラが傍を離れただけで、冷静ではいられなくなるほどに──。
ふと上を見上げると、よろず屋のある高台に、見覚えのあるワンピースが見えた。
急いで高台へ向かうと、レイラがそこにいて。
けれど……そこにいるのに、いないような錯覚に陥った。
レイラの瞳は、里の下にある雲海の流れを見つめていた。
朝日に照らされた横顔が、人間離れしているかのように美しくて……儚くて。
「……ん、エイト?」
ふと名前を呼ばれて我に返る。
こちらを見つめる両の瞳は、いつも通りにあたたかさを湛えていた。
もう儚さなんてどこにもなくて……。
僕のよく知る、元気いっぱいのレイラなのに。
「……行かないで」
思わず溢れた言葉に自分で目を丸くした。
行かないで、なんて、言うつもりもなかったのに。
「……どこにも行かないよ」
苦笑いで首を振るレイラがこちらへと歩いてくる。
そうしてまた雲海を長めたけれど、その横顔が消えそうな儚さを見せることはなかった。
「お屋敷の人がね、朝は雲海が綺麗に見えるって教えてくれたから」
「うん」
「早起きできたら見ようと思ってたの」
「……うん」
「嫌な夢でも見た?」
「……見た」
「私がいなくなる夢?」
「……置いていかれる夢、だった。待ってって言っても、待ってくれなくて……」
ため息をついて前髪をぐしゃりと掻き毟る。
何をやっているんだ、これじゃまるで──依存してるみたいじゃないか。
僕はレイラと一緒にいたいと思っているけど、レイラを僕に縛りつけたいわけじゃないのに。
「……待ってって言いたいのは、私だよ」
「えっ」
「エイトは、いつでも私の先を行くから。いつか置いていかれるんじゃないかって、不安だよ」
「そんなこと……」
「もちろん、待ってって言う前に追い付いてやるけどね?」
「え……あ、はは……っ、追い付いてやるなんて……。ははっ……レイラらしいな」
「あ、馬鹿にしてる?」
「してないよ、そういうところは変わらないんだなって安心した」
「褒められてない気がする……」
唇を尖らせるレイラの、赤いそこにキスをする。
驚いたレイラが目を瞠って、なんだかそれが無性に愛おしくて。
「……おはよう、レイラ」
「もう……っ! おはよう、エイト!」
抱き着いてくるレイラを受け止める。
そして、今度はちゃんと、レイラが目を閉じて。
愛しさを籠めて、もう一度キスをした。
「……えへへ、朝から幸せだ」
「身体は大丈夫?」
「ん、ちょっとだけだるいけど平気。さてと……新婚旅行二日目はどうする?」
「そうだなぁ……」
手を繋いで高台から家に戻りながら、今日一日の予定を考える。
そうは言っても、したいことなんて何も浮かばない。
何をしていても……何もしていなくても、隣にレイラが居てくれるなら、それだけで楽しいと思えるから。
「レイラがしたいことは?」
「えっ、私? うーん……っとね、怒らない?」
「何しようとしてるの!?」
「エイトと剣の稽古」
「えっ? 稽古……あ、うん……別に……怒らないけど……」
「あはは、拍子抜けって顔してる」
「いや、あんな前置きされたら、誰だって身構えるだろ!?」
「それもそうか……」
「僕はいいけど、それでいいの? せっかく新婚旅行……一応、新婚旅行なのに」
「……正直に言っていい? エイトと一緒なら、何しても楽しいの。でもそんな答えじゃ、エイトは納得しないよなーって思って」
的確に僕の性格を見抜いた一言に、思わず言葉が詰まる。
……そりゃそうだ、もう十年の付き合いなんだから。
「手加減はしてね?」
「稽古に手加減はしない主義なんだよね」
「鬼じゃん!! 昨日の夜に散々、私を抱き潰しておいて!!」
「うっ……昨日はほんっとうに歯止めが効かなかった……。ごめん、反省してる」
「いやぁ……反省はしなくていいよ……」
「えっ?」
「……その、あの……私自身、あの……すっごく幸せだったから……」
耳の赤いレイラが消え入りそうな声で呟く。
──決めた、今夜も抱き潰そう。
そういうのが男の劣情を煽るんだって、言っても分かってくれないレイラには、身体で教えないといけないんだと思う。
悪いのは忍耐力のない僕じゃなくて、男心がいつまで経っても理解できないレイラだ。
「今っ! 今絶対に変なこと考えた!!」
「変なことって?」
「へ、変なことは変なことでしょ!!」
「例えば?」
「たっ……例えば、私を今夜も……とか……?」
「今夜も……何?」
わざとそう問えば、レイラが顔を真っ赤にして、「あうあう」と言葉にならない声を上げる。
そんなところも可愛くて……大好きで。
「ふっ……はは……!」
「え、な、なっ……! あー!? 私のことからかって遊んだー!!」
「あははっ! ごめんごめん、可愛いからつい……!」
「ついじゃなーい!」
レイラがむくれたまま手を離す。
その手を掴んで、引き寄せた。
「だめ、離れないで」
「エイト……」
「僕、意外と独占欲が強いらしくて……」
「意外とも何も、誰が見たって独占欲が強いよ……?」
「えっ!?」
「そうじゃなかったら、私に付けまくった痕はどう説明するつもりなんですかね、エイトさん!?」
「あっ」
「エイトのばかー!!」
レイラの文句に思わず笑ってしまった。
そうだよ、僕は馬鹿だ。
レイラのことになると、余裕なんて全部なくなって、いつだって君しか目に入らない。
──そんな馬鹿な僕と結婚した君。
馬鹿な僕なりに、精一杯幸せにしてみせるから。
どうか、末長く──これからも、隣にいてください。
本気で、離してやれそうにないから。
朝の爽やかな風が頬を撫でる。
いつまでも、隣で愛しい笑顔が咲きますように。
そんな願いを籠めて、そっと繋いだ手を握り締めた──。
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