10章
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マイエラ修道院は、川の中にできた中洲に建設されている。
カラカラと私達の後ろから馬車の車輪の音が聞こえてきていたのが、不意に途切れた。
目の前には、立派な建物がそびえ立っている。
「ここが、マイエラ修道院……」
「厳かな雰囲気ね。さすが世界三大聖地と呼ばれるだけあるわ」
「アッシはこういうところは苦手でがすよ。聞き込みを終えたら、さっさとトンズラしたいでげす」
「トンズラって。なんか悪いことやらかす予定あるの」
「おっといけねぇや。昔の口調がなかなか治らねぇんでげすよ」
陛下と姫様を入口付近に残して、修道院へと入っていく。
大きな扉を開けた先には女神像があって、その膝元で何人もの信者が祈っていた。
私達も一応……と目線で会話をして、女神像へと祈りを捧げた。
それから、修道院の更に内部へ。
止められるかと思ったけど、意外にも止められはしなかった。
どこまで入っていいんだろう、ここ。
分かんないから、中庭まで来ちゃったけど。
中庭には大きな噴水があって、その向こうには宿舎のようなものが見えた。
ひょっとして旅人を泊めてくれる感じだったりして?
なんて優しい、今日の宿はここで決まりだ。
そんな気持ちで宿舎へ近付くと、扉の前に立っていた、青い隊服の二人の男――これが聖堂騎士団らしい――が立ちはだかった。
「なんだ、お前たちは!」
「怪しい奴め。この奥に行って、何をする気だ?」
あ、あれ……?
思わず一歩下がると、代わりにエイトが私の前にそれとなく出た。
もしかして立ち入り禁止だったのかな。
だとしたらそう言ってくれればいいだけなのに、そんな言い方しなくても。
騎士団員がエイトに詰め寄って、無遠慮にジロジロと上から下までを睨みつける。
そうして、エイトの肩を押して突き飛ばした。
「エイト!」
「この先は許しを得た者しか入れてはならぬと決められている」
「この聖堂騎士団の刃にかかって命を落としたくなくば、早々に立ち去るが――」
剃髪の騎士がそう言って、剣に手を掛けた――その時。
宿舎の二階の窓が、音を立てて開いた。
私達がそちらを見上げるより早く、目の前の団員達がハッとした顔で二階を見上げた。
「入れるな、とは命じたが、手荒な真似をしろとは言っていない。我が聖堂騎士団の評判を落とすな」
聞こえてきたのは静かな、けれど威圧感のある男の声。
上に立つ者のそれだ。
「こ、これはマルチェロ様!? 申し訳ございません!」
騎士の二人が慌てて膝をつく。
私達は戸惑って二人を見やって、それから二階にいる男を見上げた。
「……私の部下が乱暴を働いたようで、すまない。だが、余所者は問題を起こしがちだ。この修道院を守る我々としては、見ず知らずの旅人を易々と通すわけにはゆかぬのだよ」
言っていることはごもとっともなんだけど、なんだろう。
言葉の端々から、私達のことを馬鹿にしている態度が見え隠れしている。
少なくとも、人に対してとっていい態度ではない。
「ただでさえ、内部の問題に手を焼いているというのに……。いや、話が逸れたな」
そう呟いてマルチェロは私達を見遣り、半分ほど踵を返すと、パチンと指を鳴らして、嫌味ったらしく口角を上げた。
「この建物は、修道士の宿舎。君達には無縁の場所ではないかね? さあ、行くがいい。部下達は血の気が多い。次は、私も止められるかどうか、分からんからな」
その言葉と共に、窓が閉まる。
何だったんだ……と思いつつ視線を二階から目の前に戻すと、あの二人が苦々しい顔で私達を見ていた。
「まったく……。お前らのせいで、マルチェロ様に叱られてしまったではないか!」
「は、はぁ!? 人のせいにするなんモガガ!」
「あー! すみませんでした! 以後近付きませんので!」
エイトに口を手で塞がれて、引っ張られるようにその場から離れる。
修道院を抜けて外に出たところで、ようやくエイトの手が離れてくれたので、思いっきり空気を吸った。
「レイラ、あなたね! 余計に火種を撒こうとしてどうするのよ!」
「だ、だってあいつら、エイトのこと突き飛ばした上に、怒られたのを人のせいにするんだよ!? 地獄に落ちろって思うじゃん!!」
「思っても言わない!」
エイトにまで怒られた。
はぁい、と項垂れて呟く。
でもエイトのことを突き飛ばしたあの二人は、末代まで祟らせてもらう。
私の大事な幼馴染みに乱暴なことをしたのは、絶対に許せない。
「しっかし、さっきのお偉いさん。物腰こそ穏やかなものの、油断ならねぇ目をしてたでげす……」
ヤンガスのそれには私とエイトも頷いた。
腹の立つ物言いだったけど、眼差しは鋭かったのだ。
なんていうか、野心のある目というか。
修道院という場所には似つかわしくない目、だった。
「そりゃあそうと、あれだけ警備が厳しきゃあ、ドルマゲスの奴もこの修道院には入れねぇでがすよ。そうなりゃ、今日のところは、今晩の宿でも探しに行きやしょう。ねっ、兄貴、姉貴!」
「当てでもあるの?」
「もちろんでがす。ここの近くにゃあ、世界一の酒場で有名な、ドニっつう宿場町があるでげすよ。ここいらよりも人は多いでがすし、行ってみる価値はあると思うでげす」
「……そうだね。トラペッタでも、情報収集は酒場でやったし……。ひとまず、そこに行こう」
エイトがそう言って、船着き場方向にいる陛下を振り返る。
呼びに行くエイトを見送りながら、私はムカムカした気持ちのやり場を探していた。
「せいどーきしだん様は、随分お偉い方々みたいだわね。なによ、馬鹿にしちゃって。やな感じ! 言われなくたってこんな所、すぐに出てくわよ」
とうとう我慢ならなかったのか、ゼシカが鼻を鳴らして橋を渡っていく。
……やっぱり気に食わなかったんだ、あの人のこと。
そりゃそうだよね。
ゼシカの嫌いなタイプだって、私でもすぐ分かったもん……。
修道院の外で待っていた陛下に手を振って、橋を渡ってもらう。
そうして私達は修道院を来た道と反対の方向に出て――すぐ近くにあるドニの町へと入った。
カラカラと私達の後ろから馬車の車輪の音が聞こえてきていたのが、不意に途切れた。
目の前には、立派な建物がそびえ立っている。
「ここが、マイエラ修道院……」
「厳かな雰囲気ね。さすが世界三大聖地と呼ばれるだけあるわ」
「アッシはこういうところは苦手でがすよ。聞き込みを終えたら、さっさとトンズラしたいでげす」
「トンズラって。なんか悪いことやらかす予定あるの」
「おっといけねぇや。昔の口調がなかなか治らねぇんでげすよ」
陛下と姫様を入口付近に残して、修道院へと入っていく。
大きな扉を開けた先には女神像があって、その膝元で何人もの信者が祈っていた。
私達も一応……と目線で会話をして、女神像へと祈りを捧げた。
それから、修道院の更に内部へ。
止められるかと思ったけど、意外にも止められはしなかった。
どこまで入っていいんだろう、ここ。
分かんないから、中庭まで来ちゃったけど。
中庭には大きな噴水があって、その向こうには宿舎のようなものが見えた。
ひょっとして旅人を泊めてくれる感じだったりして?
なんて優しい、今日の宿はここで決まりだ。
そんな気持ちで宿舎へ近付くと、扉の前に立っていた、青い隊服の二人の男――これが聖堂騎士団らしい――が立ちはだかった。
「なんだ、お前たちは!」
「怪しい奴め。この奥に行って、何をする気だ?」
あ、あれ……?
思わず一歩下がると、代わりにエイトが私の前にそれとなく出た。
もしかして立ち入り禁止だったのかな。
だとしたらそう言ってくれればいいだけなのに、そんな言い方しなくても。
騎士団員がエイトに詰め寄って、無遠慮にジロジロと上から下までを睨みつける。
そうして、エイトの肩を押して突き飛ばした。
「エイト!」
「この先は許しを得た者しか入れてはならぬと決められている」
「この聖堂騎士団の刃にかかって命を落としたくなくば、早々に立ち去るが――」
剃髪の騎士がそう言って、剣に手を掛けた――その時。
宿舎の二階の窓が、音を立てて開いた。
私達がそちらを見上げるより早く、目の前の団員達がハッとした顔で二階を見上げた。
「入れるな、とは命じたが、手荒な真似をしろとは言っていない。我が聖堂騎士団の評判を落とすな」
聞こえてきたのは静かな、けれど威圧感のある男の声。
上に立つ者のそれだ。
「こ、これはマルチェロ様!? 申し訳ございません!」
騎士の二人が慌てて膝をつく。
私達は戸惑って二人を見やって、それから二階にいる男を見上げた。
「……私の部下が乱暴を働いたようで、すまない。だが、余所者は問題を起こしがちだ。この修道院を守る我々としては、見ず知らずの旅人を易々と通すわけにはゆかぬのだよ」
言っていることはごもとっともなんだけど、なんだろう。
言葉の端々から、私達のことを馬鹿にしている態度が見え隠れしている。
少なくとも、人に対してとっていい態度ではない。
「ただでさえ、内部の問題に手を焼いているというのに……。いや、話が逸れたな」
そう呟いてマルチェロは私達を見遣り、半分ほど踵を返すと、パチンと指を鳴らして、嫌味ったらしく口角を上げた。
「この建物は、修道士の宿舎。君達には無縁の場所ではないかね? さあ、行くがいい。部下達は血の気が多い。次は、私も止められるかどうか、分からんからな」
その言葉と共に、窓が閉まる。
何だったんだ……と思いつつ視線を二階から目の前に戻すと、あの二人が苦々しい顔で私達を見ていた。
「まったく……。お前らのせいで、マルチェロ様に叱られてしまったではないか!」
「は、はぁ!? 人のせいにするなんモガガ!」
「あー! すみませんでした! 以後近付きませんので!」
エイトに口を手で塞がれて、引っ張られるようにその場から離れる。
修道院を抜けて外に出たところで、ようやくエイトの手が離れてくれたので、思いっきり空気を吸った。
「レイラ、あなたね! 余計に火種を撒こうとしてどうするのよ!」
「だ、だってあいつら、エイトのこと突き飛ばした上に、怒られたのを人のせいにするんだよ!? 地獄に落ちろって思うじゃん!!」
「思っても言わない!」
エイトにまで怒られた。
はぁい、と項垂れて呟く。
でもエイトのことを突き飛ばしたあの二人は、末代まで祟らせてもらう。
私の大事な幼馴染みに乱暴なことをしたのは、絶対に許せない。
「しっかし、さっきのお偉いさん。物腰こそ穏やかなものの、油断ならねぇ目をしてたでげす……」
ヤンガスのそれには私とエイトも頷いた。
腹の立つ物言いだったけど、眼差しは鋭かったのだ。
なんていうか、野心のある目というか。
修道院という場所には似つかわしくない目、だった。
「そりゃあそうと、あれだけ警備が厳しきゃあ、ドルマゲスの奴もこの修道院には入れねぇでがすよ。そうなりゃ、今日のところは、今晩の宿でも探しに行きやしょう。ねっ、兄貴、姉貴!」
「当てでもあるの?」
「もちろんでがす。ここの近くにゃあ、世界一の酒場で有名な、ドニっつう宿場町があるでげすよ。ここいらよりも人は多いでがすし、行ってみる価値はあると思うでげす」
「……そうだね。トラペッタでも、情報収集は酒場でやったし……。ひとまず、そこに行こう」
エイトがそう言って、船着き場方向にいる陛下を振り返る。
呼びに行くエイトを見送りながら、私はムカムカした気持ちのやり場を探していた。
「せいどーきしだん様は、随分お偉い方々みたいだわね。なによ、馬鹿にしちゃって。やな感じ! 言われなくたってこんな所、すぐに出てくわよ」
とうとう我慢ならなかったのか、ゼシカが鼻を鳴らして橋を渡っていく。
……やっぱり気に食わなかったんだ、あの人のこと。
そりゃそうだよね。
ゼシカの嫌いなタイプだって、私でもすぐ分かったもん……。
修道院の外で待っていた陛下に手を振って、橋を渡ってもらう。
そうして私達は修道院を来た道と反対の方向に出て――すぐ近くにあるドニの町へと入った。
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