81章
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姫様が着るはずだったウエディングドレスに袖を通し、私の髪が綺麗に結い上げられる。
そうして丁寧にお化粧を施されれば、私はどこに出しても恥ずかしくないご令嬢のように、見違えた姿になった。
……ウエディングドレスを着る時は、エイトと結婚する時だって、思ってたんだけどな。
「お綺麗ですよ」
準備を手伝ってくれた侍女たちがそう褒めそやしてくれるけど、私の心の中は大荒れだ。
それでも笑顔を作ることはできていたから、何とかこの場は切り抜けられそうだった。
姫様付きの女性文官がやってきて、鏡越しに私を見つめる。
「副隊長は素材が良いと常々思っていましたのよ。私の目に狂いはなかったようです」
「……そうかもしれませんね」
「本当に惜しいですね。この姿を一番見て頂きたい方と、もうお会いすることもないのですから……」
「……」
エイト、怒ってるかな。
ククールたちは理解してくれているだろうけど、エイトは頑固だから、きっと怒ってるだろうな。
相談もなしにこんなことしてって、きっといつか会ったらめちゃくちゃ怒られるんだろうな、私。
でも、相談したら間違いなく反対されるって分かっていたから、相談なんか出来なかった。
両王家を裏切るのは、私だけで十分。
──私は今日、姫様の代わりとなって、チャゴス王子へ嫁ぐ。
「剣や槍を振り回し、勇敢に戦い抜いたお主も、着飾れば年頃の娘じゃな。わしに言われても嬉しくないじゃろうが、綺麗になったもんじゃわい」
「陛下に褒めて頂けるなら、嬉しいですよ」
「そうか。……お主には最後まで、酷なことを押し付けてしまったのう」
「私が望んでしたことですから。ちゃんとトロデーンに戻ったら、姫様とエイトの結婚式をしてあげてくださいね?」
「う、うむ……そうじゃな。姫がそれでよいと言うのであれば、そうするとしよう」
陛下の手を取って椅子から立ち上がり、控え室だった法皇の館を出る。
あの連絡通路で大聖堂へと降りて、裏手から正面へと歩いていくと……正面には、ヤンガス、ゼシカ、ククールと、姫様が私の服を来て立っていた。
その横で聖堂騎士団員がひとり伸びている。
何があったんだここで、と口の端がひくつくと、ヤンガスがやり切った顔で親指をグッ! と立てた。
お前か、お前がやったのか!?
いったいなんてことをしてくれたんだ!!
「すまんかったのう、こんなことになってしもうて」
「いいえ。最後まで陛下と姫様のお力になれたのなら、私はそれで本望です。後のことは、よろしく頼みます」
大聖堂の扉が、音を立ててゆっくりと開く。
一礼した私たちは、ゆっくりと中へ足を踏み入れた。
腹を括ったこととはいえ、気分はそれでも最悪。
俯き気味にバージンロードを歩いていると、不意に陛下が足を止めた。
同時に息を呑む音が聞こえてきて、私も足を止め、陛下の視線の先を見やる。
そうして──私は言葉を失った。
大聖堂のバージンロードの、その先に。
クラビウス王に肩を抱かれた、エイトが立っている。
なんで、と私の唇が問うけど、喉が開いてくれなくて、声にならなかった。
エイトは全てを知っているみたいに微笑んでいる。
鼻の奥がツンとして、涙が溢れてくる。
嗚咽が漏れそうになるから手で口を隠して、滲む視界をどうにかしようと瞬きをするけど、エイトの姿は滲むばっかりだ。
クラビウス王だって笑っている。
なんだか、私のほうが裏切られた気分だ。
でもそれは嫌な裏切りじゃない。
この上もなく嬉しくて……今すぐにでも駆け出してエイトを抱き締めたいくらい、幸せな裏切りだった。
バージンロードを歩いて、エイトの隣でトロデ王と繋いでいた手が解ける。
そうして差し出されたエイトの腕に自分の腕を絡ませて、私たちは残り少しのバージンロードを歩いた。
「綺麗だよ」
誰にも聞こえないように囁かれたその言葉。
嬉しくて馬鹿みたいに幸せで、私は頷くのが精一杯だった。
形式的な祝福の言葉を受け取り、指輪に祝福を受ける。
そうしてその指輪を交換するときになって、左手の薬指にスーパーリングが嵌められた。
こんなもの、いつの間に錬金してたんだ……。
私もエイトの指にスーパーリングを嵌める。
お揃いの結婚指輪がこれだなんて、私たちらしくて最高だ。
「幸せになるんじゃぞ」
儀式に則ったやり取りをした最後に、ニノ大司教……いや、ニノ法皇は私たちへその言葉を送ってくれた。
幸せになります。
今度こそこの人と、何があっても離れない。
勝手に手を離しても必ず最後には私の手を掴むんだから、私がエイトから離れられる日なんて一生来ないんだと思う。
エイトのエスコートでバージンロードを引き返し、大聖堂の外へと出る。
花嫁である私の隣にいる男性がチャゴス王子ではないことに気付いた観衆たちが、口々に何かを囁き合った。
その中で最前列を陣取っていた私の仲間たちはというと、私とエイトが手を取り合って出てきたことに気付いた瞬間、パカッと全員の口が開き。
そうして嬉しそうに顔を見合わせると、男二人は拳を上げて歓声を上げ、ゼシカと姫様は手を叩いてきゃあきゃあと声を上げた。
ククールがあんなに喜んでるところなんて、初めて見たぞ……。
四人の歓声は少しずつ広がっていき、ちらほらと拍手が沸き起こる。
やがてそれは大きな歓声と拍手の嵐となって、ついには紙吹雪が降って来るまでになっていった。
鳴り止まない拍手と歓声と降り注ぐ紙吹雪の中で、エイトと見つめ合い、そして──。
この場にいる全員を証人のようにして、私とエイトはキスをした。
私たちの後ろにいたクラビウス王とトロデ王が目を背け、観客からは別の意味で歓声が上がる。
頭の先からつま先まで幸福に満たされた心地で、私とエイトは長いことそうしていた。
私たちの頭上で祝福の鐘が鳴る。
それは私たちの明るい未来を表すかのごとく、軽やかに、どこまでも澄んだ音色を響かせた。
そうして丁寧にお化粧を施されれば、私はどこに出しても恥ずかしくないご令嬢のように、見違えた姿になった。
……ウエディングドレスを着る時は、エイトと結婚する時だって、思ってたんだけどな。
「お綺麗ですよ」
準備を手伝ってくれた侍女たちがそう褒めそやしてくれるけど、私の心の中は大荒れだ。
それでも笑顔を作ることはできていたから、何とかこの場は切り抜けられそうだった。
姫様付きの女性文官がやってきて、鏡越しに私を見つめる。
「副隊長は素材が良いと常々思っていましたのよ。私の目に狂いはなかったようです」
「……そうかもしれませんね」
「本当に惜しいですね。この姿を一番見て頂きたい方と、もうお会いすることもないのですから……」
「……」
エイト、怒ってるかな。
ククールたちは理解してくれているだろうけど、エイトは頑固だから、きっと怒ってるだろうな。
相談もなしにこんなことしてって、きっといつか会ったらめちゃくちゃ怒られるんだろうな、私。
でも、相談したら間違いなく反対されるって分かっていたから、相談なんか出来なかった。
両王家を裏切るのは、私だけで十分。
──私は今日、姫様の代わりとなって、チャゴス王子へ嫁ぐ。
「剣や槍を振り回し、勇敢に戦い抜いたお主も、着飾れば年頃の娘じゃな。わしに言われても嬉しくないじゃろうが、綺麗になったもんじゃわい」
「陛下に褒めて頂けるなら、嬉しいですよ」
「そうか。……お主には最後まで、酷なことを押し付けてしまったのう」
「私が望んでしたことですから。ちゃんとトロデーンに戻ったら、姫様とエイトの結婚式をしてあげてくださいね?」
「う、うむ……そうじゃな。姫がそれでよいと言うのであれば、そうするとしよう」
陛下の手を取って椅子から立ち上がり、控え室だった法皇の館を出る。
あの連絡通路で大聖堂へと降りて、裏手から正面へと歩いていくと……正面には、ヤンガス、ゼシカ、ククールと、姫様が私の服を来て立っていた。
その横で聖堂騎士団員がひとり伸びている。
何があったんだここで、と口の端がひくつくと、ヤンガスがやり切った顔で親指をグッ! と立てた。
お前か、お前がやったのか!?
いったいなんてことをしてくれたんだ!!
「すまんかったのう、こんなことになってしもうて」
「いいえ。最後まで陛下と姫様のお力になれたのなら、私はそれで本望です。後のことは、よろしく頼みます」
大聖堂の扉が、音を立ててゆっくりと開く。
一礼した私たちは、ゆっくりと中へ足を踏み入れた。
腹を括ったこととはいえ、気分はそれでも最悪。
俯き気味にバージンロードを歩いていると、不意に陛下が足を止めた。
同時に息を呑む音が聞こえてきて、私も足を止め、陛下の視線の先を見やる。
そうして──私は言葉を失った。
大聖堂のバージンロードの、その先に。
クラビウス王に肩を抱かれた、エイトが立っている。
なんで、と私の唇が問うけど、喉が開いてくれなくて、声にならなかった。
エイトは全てを知っているみたいに微笑んでいる。
鼻の奥がツンとして、涙が溢れてくる。
嗚咽が漏れそうになるから手で口を隠して、滲む視界をどうにかしようと瞬きをするけど、エイトの姿は滲むばっかりだ。
クラビウス王だって笑っている。
なんだか、私のほうが裏切られた気分だ。
でもそれは嫌な裏切りじゃない。
この上もなく嬉しくて……今すぐにでも駆け出してエイトを抱き締めたいくらい、幸せな裏切りだった。
バージンロードを歩いて、エイトの隣でトロデ王と繋いでいた手が解ける。
そうして差し出されたエイトの腕に自分の腕を絡ませて、私たちは残り少しのバージンロードを歩いた。
「綺麗だよ」
誰にも聞こえないように囁かれたその言葉。
嬉しくて馬鹿みたいに幸せで、私は頷くのが精一杯だった。
形式的な祝福の言葉を受け取り、指輪に祝福を受ける。
そうしてその指輪を交換するときになって、左手の薬指にスーパーリングが嵌められた。
こんなもの、いつの間に錬金してたんだ……。
私もエイトの指にスーパーリングを嵌める。
お揃いの結婚指輪がこれだなんて、私たちらしくて最高だ。
「幸せになるんじゃぞ」
儀式に則ったやり取りをした最後に、ニノ大司教……いや、ニノ法皇は私たちへその言葉を送ってくれた。
幸せになります。
今度こそこの人と、何があっても離れない。
勝手に手を離しても必ず最後には私の手を掴むんだから、私がエイトから離れられる日なんて一生来ないんだと思う。
エイトのエスコートでバージンロードを引き返し、大聖堂の外へと出る。
花嫁である私の隣にいる男性がチャゴス王子ではないことに気付いた観衆たちが、口々に何かを囁き合った。
その中で最前列を陣取っていた私の仲間たちはというと、私とエイトが手を取り合って出てきたことに気付いた瞬間、パカッと全員の口が開き。
そうして嬉しそうに顔を見合わせると、男二人は拳を上げて歓声を上げ、ゼシカと姫様は手を叩いてきゃあきゃあと声を上げた。
ククールがあんなに喜んでるところなんて、初めて見たぞ……。
四人の歓声は少しずつ広がっていき、ちらほらと拍手が沸き起こる。
やがてそれは大きな歓声と拍手の嵐となって、ついには紙吹雪が降って来るまでになっていった。
鳴り止まない拍手と歓声と降り注ぐ紙吹雪の中で、エイトと見つめ合い、そして──。
この場にいる全員を証人のようにして、私とエイトはキスをした。
私たちの後ろにいたクラビウス王とトロデ王が目を背け、観客からは別の意味で歓声が上がる。
頭の先からつま先まで幸福に満たされた心地で、私とエイトは長いことそうしていた。
私たちの頭上で祝福の鐘が鳴る。
それは私たちの明るい未来を表すかのごとく、軽やかに、どこまでも澄んだ音色を響かせた。
