74章
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ヤンガスと視線で火花を散らしていたトロデ王は、けれど急に何かに気付いて、はっと周囲を見渡した。
「そ、そうじゃ! アホに構っている場合ではなかった! ひ、姫は!? わしの可愛いミーティア……」
「こっちだぜ、トロデ王」
垣根の向こうをみんなで指差してやると、ヤンガスとトロデ王が同じポーズでそちらを覗き込んだ。
うん、やっぱり二人とも実は気が合うんじゃないかな。
そんなことはさておき、僕らの視線の先には、あの泉で見たミーティアの姿がある。
「みんな……」
「お、おお……。ミーティア、ミーティアや……」
涙を浮かべてお二人が駆け寄り、今度こそ人の姿に戻った親子が抱き合った。
この光景を、レイラと一緒に見られたら良かったけど……。
それはもう少し後の話になりそうだ。
「よかった! よかった! ついに呪いが解けたんじゃ!! これでもう、何もかもが元通りじゃ!」
「お父様……」
その様子を達成感とその他色んな感情で見守っていると、今度は城全体が眩しく輝き始めた。
至る所から光が溢れて、辺りを見回していると。
「ね、ねぇ!! あれ見て!!」
ゼシカが城を指差す。
茨に覆われてボロボロになった城が──眩しく光って、そうして、とうとう元の美しい城に戻った。
……城が、僕たちの故郷──祖国トロデーンが、復活したんだ。
「おお……。城が……。城が、元の姿に……」
二階のバルコニーから人が飛び出してきて、僕の同僚や先輩、小間使い時代の仲間たちが大勢、城から飛び出してくる。
みんなが「王様!」「姫様!」「エイト!!」と口々に叫びながら、僕らを囲んで──。
「たった今より、トロデーン城は復活じゃ! 皆の者! 宴じゃ! 宴の準備じゃ!!」
トロデ王が嬉しそうにそう宣言する。
けれど大臣が僕らを見渡して、それから僕に尋ねた。
「エイト。レイラはどうした? 一緒ではなかったのか? 姿が見えぬが……」
「おお、そうじゃ! エイトよ、レイラを早く呼び戻すのじゃ! 一番の立役者がまだ戻っておらんではないか!」
「そうだわ!! 早くレイラを蘇らせないと! それってどこでやればいいの?」
「城の最上階にある、封印の間だ。急ごう、みんな!」
僕たちがバタバタと城の中に駆け込んでいくから、トロデ王やミーティアも、城の人たちもみんなして僕らの後を追いかけてきた。
階段をいくつも駆け上がって、封印の間の扉を開け放つ。
そうしてあの長い階段を昇って──その先にある魔法陣へと辿り着いた。
かつては僕の手の中にある神鳥の杖を封印していた魔法陣。
今はそこに何もなく、ただ白い結界だけが作動している。
「兄貴。アッシにも何か手伝わせてくだせえ」
「ありがとう。それじゃあ僕を支えていて。吹き飛ばされるかもしれないから。出来ればククールも」
「仕方ねぇな、頼まれてやるよ」
「私は? 私はどうしたらいい?」
「ゼシカは周りの人達に被害が及ばないように、遠ざけておいて」
神鳥の杖を、魔法陣の描かれた床の中央に置く。
それからレイラが遺したネックレスを、竜神王の剣の剣身に巻き付けた。
剣を抜き放ったまま魔法陣に入ると、ネックレスが魔法陣に反応して、強い輝きを放った。
その光は、剣身すべてを覆うほど強くなっていく。
袋から魂呼びの宝珠を取り出す。
やり方はレティスと竜神王に教えてもらった。
「レイラ。帰っておいで」
魂呼びの宝珠を上に投げ、それを剣で貫く。
割れた宝珠から光が轟々と溢れて、それは魔法陣の中に突風を生み出した。
僕の足が風に煽られて、後ろへと下がる。
「うおっ!!」
「しっかり支えていて!!」
「承知したでがす!!」
逆巻く風の中をゆっくりと歩んでいって、押し戻されないように足を踏ん張る。
そうして神鳥の杖のすぐ傍にたどり着いて──宝珠の力と霊導の力が絡み合った剣を、杖に突き立てた。
硬く守られた杖と、それを破壊する剣。
力の反動は凄まじくて、少しでも気を抜けば弾き返されそうになる。
「くっ……う……!!」
剣に全体重を乗せて、杖の力に負けないよう歯を食いしばる。
駄目だ……押し戻される……!
ぐっと目を閉じて、膝をつきかけた時。
僕の手の上に、誰かの手が載せられた。
はっとそちらを見やると、ゼシカが両手で僕の手を押さえつけている。
「ゼシカ……!」
「絶対に離さないでよ!! レイラを、取り戻すんだから!!」
「……うん!!」
「アッシも手伝うでがすよ!!」
「これで失敗なんてされちゃ、全部台無しだからな!!」
ヤンガスとククールの手が更に載せられる。
じゃあ僕のことは誰が支えて──と後ろを見やると、そこには近衛兵の同僚達がいて、僕を必死になって支えていた。
「頑張れエイト!!」
「俺たちだってなぁ……!! レイラがいないと、楽しくないんだよぉっ!!」
同僚達に頷いて、もう一度腕に力を込める。
パキ、と音がして、杖の結界にヒビが入った。
ふぬぬぬ、とヤンガスが顔を真っ赤にして押さえてくれるし、ククールもゼシカも全身全霊をかけてくれている。
パキパキ、と乾いた音を立てていたそれが、バキ、と鈍い音を立てた。
あと少し、あと少しで……レイラの魂を導く光が……!!
「おぉぉぉおお──ッ!!」
全員の口から、気合の声が漏れた。
最後の力を振り絞って、剣にすべてを載せる。
そうして──壮絶な力比べは、決着の時を迎えた。
バキン!! と砕け散る音が聞こえて、瞬間、目が眩むほどの鋭い光が弾ける。
「きゃあ!」
「目、目が見えねぇでがす!!」
「……っ!!」
剣の先にある、硬い感触が消えていく。
光の波動に全員が弾き飛ばされる中、薄く目を開けて、真っ白な視界を覗き込む。
その中に──人の姿が、見えた気がした。
光はゆっくりと収束して、吹き荒れていた風も収まっていく。
僕ら全員が、床に手をついて大きく息をしていると。
不意に、小さな声が聞こえた。
「……エイト……」
弾かれたように顔を上げる。
そうして誰もが大きく息を呑んだ。
夢かと錯覚してしまいそうになるけど、肺の痛みがこれは現実だと教えてくれる。
魔法陣の中央には──最愛のレイラが横たわっていた。
「そ、そうじゃ! アホに構っている場合ではなかった! ひ、姫は!? わしの可愛いミーティア……」
「こっちだぜ、トロデ王」
垣根の向こうをみんなで指差してやると、ヤンガスとトロデ王が同じポーズでそちらを覗き込んだ。
うん、やっぱり二人とも実は気が合うんじゃないかな。
そんなことはさておき、僕らの視線の先には、あの泉で見たミーティアの姿がある。
「みんな……」
「お、おお……。ミーティア、ミーティアや……」
涙を浮かべてお二人が駆け寄り、今度こそ人の姿に戻った親子が抱き合った。
この光景を、レイラと一緒に見られたら良かったけど……。
それはもう少し後の話になりそうだ。
「よかった! よかった! ついに呪いが解けたんじゃ!! これでもう、何もかもが元通りじゃ!」
「お父様……」
その様子を達成感とその他色んな感情で見守っていると、今度は城全体が眩しく輝き始めた。
至る所から光が溢れて、辺りを見回していると。
「ね、ねぇ!! あれ見て!!」
ゼシカが城を指差す。
茨に覆われてボロボロになった城が──眩しく光って、そうして、とうとう元の美しい城に戻った。
……城が、僕たちの故郷──祖国トロデーンが、復活したんだ。
「おお……。城が……。城が、元の姿に……」
二階のバルコニーから人が飛び出してきて、僕の同僚や先輩、小間使い時代の仲間たちが大勢、城から飛び出してくる。
みんなが「王様!」「姫様!」「エイト!!」と口々に叫びながら、僕らを囲んで──。
「たった今より、トロデーン城は復活じゃ! 皆の者! 宴じゃ! 宴の準備じゃ!!」
トロデ王が嬉しそうにそう宣言する。
けれど大臣が僕らを見渡して、それから僕に尋ねた。
「エイト。レイラはどうした? 一緒ではなかったのか? 姿が見えぬが……」
「おお、そうじゃ! エイトよ、レイラを早く呼び戻すのじゃ! 一番の立役者がまだ戻っておらんではないか!」
「そうだわ!! 早くレイラを蘇らせないと! それってどこでやればいいの?」
「城の最上階にある、封印の間だ。急ごう、みんな!」
僕たちがバタバタと城の中に駆け込んでいくから、トロデ王やミーティアも、城の人たちもみんなして僕らの後を追いかけてきた。
階段をいくつも駆け上がって、封印の間の扉を開け放つ。
そうしてあの長い階段を昇って──その先にある魔法陣へと辿り着いた。
かつては僕の手の中にある神鳥の杖を封印していた魔法陣。
今はそこに何もなく、ただ白い結界だけが作動している。
「兄貴。アッシにも何か手伝わせてくだせえ」
「ありがとう。それじゃあ僕を支えていて。吹き飛ばされるかもしれないから。出来ればククールも」
「仕方ねぇな、頼まれてやるよ」
「私は? 私はどうしたらいい?」
「ゼシカは周りの人達に被害が及ばないように、遠ざけておいて」
神鳥の杖を、魔法陣の描かれた床の中央に置く。
それからレイラが遺したネックレスを、竜神王の剣の剣身に巻き付けた。
剣を抜き放ったまま魔法陣に入ると、ネックレスが魔法陣に反応して、強い輝きを放った。
その光は、剣身すべてを覆うほど強くなっていく。
袋から魂呼びの宝珠を取り出す。
やり方はレティスと竜神王に教えてもらった。
「レイラ。帰っておいで」
魂呼びの宝珠を上に投げ、それを剣で貫く。
割れた宝珠から光が轟々と溢れて、それは魔法陣の中に突風を生み出した。
僕の足が風に煽られて、後ろへと下がる。
「うおっ!!」
「しっかり支えていて!!」
「承知したでがす!!」
逆巻く風の中をゆっくりと歩んでいって、押し戻されないように足を踏ん張る。
そうして神鳥の杖のすぐ傍にたどり着いて──宝珠の力と霊導の力が絡み合った剣を、杖に突き立てた。
硬く守られた杖と、それを破壊する剣。
力の反動は凄まじくて、少しでも気を抜けば弾き返されそうになる。
「くっ……う……!!」
剣に全体重を乗せて、杖の力に負けないよう歯を食いしばる。
駄目だ……押し戻される……!
ぐっと目を閉じて、膝をつきかけた時。
僕の手の上に、誰かの手が載せられた。
はっとそちらを見やると、ゼシカが両手で僕の手を押さえつけている。
「ゼシカ……!」
「絶対に離さないでよ!! レイラを、取り戻すんだから!!」
「……うん!!」
「アッシも手伝うでがすよ!!」
「これで失敗なんてされちゃ、全部台無しだからな!!」
ヤンガスとククールの手が更に載せられる。
じゃあ僕のことは誰が支えて──と後ろを見やると、そこには近衛兵の同僚達がいて、僕を必死になって支えていた。
「頑張れエイト!!」
「俺たちだってなぁ……!! レイラがいないと、楽しくないんだよぉっ!!」
同僚達に頷いて、もう一度腕に力を込める。
パキ、と音がして、杖の結界にヒビが入った。
ふぬぬぬ、とヤンガスが顔を真っ赤にして押さえてくれるし、ククールもゼシカも全身全霊をかけてくれている。
パキパキ、と乾いた音を立てていたそれが、バキ、と鈍い音を立てた。
あと少し、あと少しで……レイラの魂を導く光が……!!
「おぉぉぉおお──ッ!!」
全員の口から、気合の声が漏れた。
最後の力を振り絞って、剣にすべてを載せる。
そうして──壮絶な力比べは、決着の時を迎えた。
バキン!! と砕け散る音が聞こえて、瞬間、目が眩むほどの鋭い光が弾ける。
「きゃあ!」
「目、目が見えねぇでがす!!」
「……っ!!」
剣の先にある、硬い感触が消えていく。
光の波動に全員が弾き飛ばされる中、薄く目を開けて、真っ白な視界を覗き込む。
その中に──人の姿が、見えた気がした。
光はゆっくりと収束して、吹き荒れていた風も収まっていく。
僕ら全員が、床に手をついて大きく息をしていると。
不意に、小さな声が聞こえた。
「……エイト……」
弾かれたように顔を上げる。
そうして誰もが大きく息を呑んだ。
夢かと錯覚してしまいそうになるけど、肺の痛みがこれは現実だと教えてくれる。
魔法陣の中央には──最愛のレイラが横たわっていた。
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