72章
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光に包まれて目を開けると、そこは祭壇の間で、目の前には竜神王がいた。
……戻ってきた、僕はこの世界に。
戦うために、戻ってきた。
「やっとお目覚めか! お前、ザオリクでも蘇生できないところまでいくなよな!!」
「悪い、腑抜けた真似した」
剣をしっかりと握り締めて、竜神王を睨みつける。
さっさと正気に戻して、僕の秘密を暴かないといけないんだ。
こんなところで手間取ってたまるか!
「ククールはタンバリンで援護! ゼシカは効果をなくした補助呪文をかけ直して! ヤンガス、僕に合わせて!」
「承知でげす、兄貴!!」
「言われなくてもタンバリンしか振ってねーよ!!」
「わかってるわよ! ピオリム!」
竜神王の攻撃を避けて、気合の声と共にはやぶさ斬りを叩き込む。
ヤンガスが蒼天魔斬を食らわせて、間合いを取ると、灼熱の炎が吐き出された。
熱い──けど、ここで怯む僕じゃない!
竜神王が僕を見下ろした、次の狙いはまた僕だ。
無茶だ、とヤンガスが叫ぶ。
いや、無茶じゃない。
僕には見えている──竜神王の隙が!
ククールがタンバリンを鳴らす、その勢いのままに──。
「ギガブレイク!!」
赤い雷光刃が竜神王を貫く。
グォォォ──と絶叫を残して、竜神王が倒れた。
呼吸を整えながら様子を伺っていると、竜神王の体から光が溢れ出て……。
咄嗟に閉じた目を開けると、そこには錫杖を支えに膝をついて蹲る、人の姿があった。
頭を振って立ち上がったその人が、自身の手を見つめて呆然と呟く。
「……私は、何をやっていた? 人の姿を封じる儀式からずっと……まるで長い悪夢を見ていたようだ」
「あなたが竜神王……ですか?」
武器を納めて尋ねると、は、と竜神王が目を見開く。
「……人間だと? 人間が何故ここにいる!? ……いや、覚えているぞ。そうだ。お前たちが、正気を失った私を救ってくれたのだ。勇敢なる人間たちよ、礼を言おう。お前たちが止めてくれなければ、私は我が一族を滅ぼすところであった。人間の姿を捨てようとして、人間に助けられるとは……。私の行いは誤りであったということか」
どうやら正気を取り戻しているようだ。
これで竜神族の人たちも元気になるだろうか。
なんだかどっと疲れがやってきて、足の力が抜けそうになる。
疲れた、と無意識に零してしまった僕を見た竜神王が、今度はこれ以上ないくらい目を見開いた。
「お前はっ……!? お前はもしかしてエイト? エイトなのだな!? お前が私を……竜神族を救ったと? なんと宿命的な……」
「な、なんでアンタが、エイト兄貴のことを知ってんでがす? それに宿命的って……?」
「……そうか。エイトはまだ、自らの出生の秘密を知らぬのだな。いや、思い出していないと言うべきか……」
「僕の……出生の、秘密」
心臓がドッと音を立てる。
どうしよう、いや薄々ちょっと勘づいてはいるけど、ひょっとして僕は人間じゃなくて──。
「エイトよ。お前は竜神族の里で生まれ育った、竜神族と人間、双方の血を引く者なのだ」
「え……え!?」
「詳しい話は……そうだな。お前の祖父から聞くのがよかろう。グルーノよ。そこにいるのは分かっているぞ。観念して出てくるがよい」
「……へ? グルーノのじいさん?」
僕らがキョロキョロと周囲を見渡すうちに、ポケットに隠れていたトーポがひょっこりと顔を出した。
そうしてトーポがポケットから飛び降りる。
……いや、まさか?
そりゃあ僕もうっすら、本当にうっすらそんな気はしてなくもなかったけど!?
ボワン、と煙が立って、そこに立っていたのは……グルーノさんだ。
「ええぇぇ!?」
「やはり竜神王様の目は誤魔化せませんな。まったくお恥ずかしい限りで……」
「え!? ってことは、え!? グルーノおじいさんって……!?」
「エイトよ。今までずっと黙っていて、すまなんだな。わしがお前の祖父……。そしてお前と共にずっと旅をしてきたネズミのトーポの正体なのじゃ」
「……」
いやもう、空いた口が塞がらない。
なんなら誰の口も塞がっていないし、みんな驚きすぎて言葉すら出なくなっている。
だって普通、トーポの正体がグルーノさんだってところまでは、ちょっとくらい予感があっても、それが僕の祖父だとは思わないだろ!?
「ふむ……。どうやら驚かせてしまったようじゃな。まあ、無理もないことじゃが。ともかく先日の約束通り、お前の出生と竜神族の関わり。その全てを語らねばなるまい。……そうじゃな。長い話になる。まずはわしの家に戻り、それから話すとしようか」
「それがよかろうな。どれ。里へ戻るならば、我が力で送ってやろう」
竜神王が錫杖を構える。
その竜神王へ向かって、グルーノさん──おじいさんが、「お待ちを」と声をかけた。
「竜神王様、不躾ながらお願いが」
「ほう、申してみよ」
「霊導者の末裔が、暗黒神の力を封じております」
「前回の歴史を繰り返したというわけか」
「その者を蘇らせるため、お力を」
「……名は」
竜神王がおじいさんではなく、僕にそう問う。
「レイラ・ロアナスです」
「なるほど……。己が魂を犠牲にした場合、消滅する確率は九九パーセント……。仮に魂呼びの儀式を行ったとしても、成功する確率は僅か一パーセント、といったところ。エイトよ、お前はその末裔をどう思っている?」
竜神王が僕を見下ろす。
まるで僕の意志を試すような視線だ。
その問いに対する僕の答えは、決まりきっていた。
「心の底から、想っています」
「……ふ。そうか、ならばよい。私に考えがある。ともあれまずは里へ戻り、私と戦った傷を癒すとよい」
竜神王が再び錫杖を構え、シャン、と地面を突いて音を鳴らす。
僕たちの足元に、不思議な魔法陣が広がった。
里まで送ってくれるようだから、きっとこれがワープのようなものなんだろう。
おじいさんが竜神王へ向かって頭を下げる。
「エイトよ。全ての事実を知ったら、また我が元を訪れるがよい。お前たちにならば、竜の試練への挑戦を許そうぞ。見事私に六度勝った暁には、特別な力を持つ宝珠をくれてやろう」
「宝珠?」
「魂呼びの宝珠という。魂呼びの儀式を行う際に使え。そうすれば霊導者の末裔はよみがえる」
「本当ですか!?」
「ただし、試練に六度勝てたらだ」
「はい!」
その返事に、竜神王は満足そうに頷いた。
竜神王の姿が光の向こうへ消えていく。そうして光が収まったとき、周囲の空気は天の祭壇ではなく──里の静かなものに変わっていた。
……戻ってきた、僕はこの世界に。
戦うために、戻ってきた。
「やっとお目覚めか! お前、ザオリクでも蘇生できないところまでいくなよな!!」
「悪い、腑抜けた真似した」
剣をしっかりと握り締めて、竜神王を睨みつける。
さっさと正気に戻して、僕の秘密を暴かないといけないんだ。
こんなところで手間取ってたまるか!
「ククールはタンバリンで援護! ゼシカは効果をなくした補助呪文をかけ直して! ヤンガス、僕に合わせて!」
「承知でげす、兄貴!!」
「言われなくてもタンバリンしか振ってねーよ!!」
「わかってるわよ! ピオリム!」
竜神王の攻撃を避けて、気合の声と共にはやぶさ斬りを叩き込む。
ヤンガスが蒼天魔斬を食らわせて、間合いを取ると、灼熱の炎が吐き出された。
熱い──けど、ここで怯む僕じゃない!
竜神王が僕を見下ろした、次の狙いはまた僕だ。
無茶だ、とヤンガスが叫ぶ。
いや、無茶じゃない。
僕には見えている──竜神王の隙が!
ククールがタンバリンを鳴らす、その勢いのままに──。
「ギガブレイク!!」
赤い雷光刃が竜神王を貫く。
グォォォ──と絶叫を残して、竜神王が倒れた。
呼吸を整えながら様子を伺っていると、竜神王の体から光が溢れ出て……。
咄嗟に閉じた目を開けると、そこには錫杖を支えに膝をついて蹲る、人の姿があった。
頭を振って立ち上がったその人が、自身の手を見つめて呆然と呟く。
「……私は、何をやっていた? 人の姿を封じる儀式からずっと……まるで長い悪夢を見ていたようだ」
「あなたが竜神王……ですか?」
武器を納めて尋ねると、は、と竜神王が目を見開く。
「……人間だと? 人間が何故ここにいる!? ……いや、覚えているぞ。そうだ。お前たちが、正気を失った私を救ってくれたのだ。勇敢なる人間たちよ、礼を言おう。お前たちが止めてくれなければ、私は我が一族を滅ぼすところであった。人間の姿を捨てようとして、人間に助けられるとは……。私の行いは誤りであったということか」
どうやら正気を取り戻しているようだ。
これで竜神族の人たちも元気になるだろうか。
なんだかどっと疲れがやってきて、足の力が抜けそうになる。
疲れた、と無意識に零してしまった僕を見た竜神王が、今度はこれ以上ないくらい目を見開いた。
「お前はっ……!? お前はもしかしてエイト? エイトなのだな!? お前が私を……竜神族を救ったと? なんと宿命的な……」
「な、なんでアンタが、エイト兄貴のことを知ってんでがす? それに宿命的って……?」
「……そうか。エイトはまだ、自らの出生の秘密を知らぬのだな。いや、思い出していないと言うべきか……」
「僕の……出生の、秘密」
心臓がドッと音を立てる。
どうしよう、いや薄々ちょっと勘づいてはいるけど、ひょっとして僕は人間じゃなくて──。
「エイトよ。お前は竜神族の里で生まれ育った、竜神族と人間、双方の血を引く者なのだ」
「え……え!?」
「詳しい話は……そうだな。お前の祖父から聞くのがよかろう。グルーノよ。そこにいるのは分かっているぞ。観念して出てくるがよい」
「……へ? グルーノのじいさん?」
僕らがキョロキョロと周囲を見渡すうちに、ポケットに隠れていたトーポがひょっこりと顔を出した。
そうしてトーポがポケットから飛び降りる。
……いや、まさか?
そりゃあ僕もうっすら、本当にうっすらそんな気はしてなくもなかったけど!?
ボワン、と煙が立って、そこに立っていたのは……グルーノさんだ。
「ええぇぇ!?」
「やはり竜神王様の目は誤魔化せませんな。まったくお恥ずかしい限りで……」
「え!? ってことは、え!? グルーノおじいさんって……!?」
「エイトよ。今までずっと黙っていて、すまなんだな。わしがお前の祖父……。そしてお前と共にずっと旅をしてきたネズミのトーポの正体なのじゃ」
「……」
いやもう、空いた口が塞がらない。
なんなら誰の口も塞がっていないし、みんな驚きすぎて言葉すら出なくなっている。
だって普通、トーポの正体がグルーノさんだってところまでは、ちょっとくらい予感があっても、それが僕の祖父だとは思わないだろ!?
「ふむ……。どうやら驚かせてしまったようじゃな。まあ、無理もないことじゃが。ともかく先日の約束通り、お前の出生と竜神族の関わり。その全てを語らねばなるまい。……そうじゃな。長い話になる。まずはわしの家に戻り、それから話すとしようか」
「それがよかろうな。どれ。里へ戻るならば、我が力で送ってやろう」
竜神王が錫杖を構える。
その竜神王へ向かって、グルーノさん──おじいさんが、「お待ちを」と声をかけた。
「竜神王様、不躾ながらお願いが」
「ほう、申してみよ」
「霊導者の末裔が、暗黒神の力を封じております」
「前回の歴史を繰り返したというわけか」
「その者を蘇らせるため、お力を」
「……名は」
竜神王がおじいさんではなく、僕にそう問う。
「レイラ・ロアナスです」
「なるほど……。己が魂を犠牲にした場合、消滅する確率は九九パーセント……。仮に魂呼びの儀式を行ったとしても、成功する確率は僅か一パーセント、といったところ。エイトよ、お前はその末裔をどう思っている?」
竜神王が僕を見下ろす。
まるで僕の意志を試すような視線だ。
その問いに対する僕の答えは、決まりきっていた。
「心の底から、想っています」
「……ふ。そうか、ならばよい。私に考えがある。ともあれまずは里へ戻り、私と戦った傷を癒すとよい」
竜神王が再び錫杖を構え、シャン、と地面を突いて音を鳴らす。
僕たちの足元に、不思議な魔法陣が広がった。
里まで送ってくれるようだから、きっとこれがワープのようなものなんだろう。
おじいさんが竜神王へ向かって頭を下げる。
「エイトよ。全ての事実を知ったら、また我が元を訪れるがよい。お前たちにならば、竜の試練への挑戦を許そうぞ。見事私に六度勝った暁には、特別な力を持つ宝珠をくれてやろう」
「宝珠?」
「魂呼びの宝珠という。魂呼びの儀式を行う際に使え。そうすれば霊導者の末裔はよみがえる」
「本当ですか!?」
「ただし、試練に六度勝てたらだ」
「はい!」
その返事に、竜神王は満足そうに頷いた。
竜神王の姿が光の向こうへ消えていく。そうして光が収まったとき、周囲の空気は天の祭壇ではなく──里の静かなものに変わっていた。
