69章
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杖の先の玉がククールを連続して襲う。
呻き声を上げて膝をつきかけたククールにベホマを唱えるより早く──私たちの頭上から、隕石が降り注いだ。
「ま、まずい……!」
防御体勢を取るが間に合わない。
避けきれなかったククールは、頭上を見上げ──。
「ここまで、か……」
悔しげに呟き、倒れた。
ククールが倒れるとまずい、いや誰が倒れてもまずいけど!!
「ゼシカ、ククールをザオリクで起こして! 私が回復する!!」
ゼシカがザオリクでククールを蘇生させて、私がベホマズンで全員の傷を治す。
けれど状況は徐々に私たちの劣勢へ変わっていく。
ククールが戦線に復帰してくるけど、ゼシカも私も回復や補助に手一杯で、攻撃しているのはエイトとヤンガスだけだ。
せめて私が攻撃に回れたなら……!
追い詰められていく私たちに、容赦なくラプソーンの腕が振り下ろされる。
その上から、再び隕石が降り注いだ。
……強い。
これが、暗黒神ラプソーン──八賢者をもってしても討ち滅ぼせなかった、闇の世界からの邪神。
エイトもヤンガスも必死に攻撃をしている。
それでも、こんなに歯が立たないなんて……。
何度目かも分からないベホマズンを唱えて、凍てつく波動でかき消されたままのピオリムを唱えて、素早さを底上げする。
その時──ラプソーンが、全ての魔力を解き放った。
「ま、マダンテ……!?」
かつてない威力の衝撃が私たちを翻弄する。
そしてさらに、間の悪いことに──。
ラプソーンがぐっと息を吸って、息を吐き出す。
それは凍える吹雪。
こんなの今食らったら、私たちみんな──。
思わず腕で顔を覆い、衝撃に備える。
けれど、思ったような威力ではなくて……。
恐る恐る腕を下ろすと、私の眼前には、山吹色の背中が立ちはだかっていた。
「……エイト?」
その背中が揺らいで……倒れていく。
頭が真っ白になったまま、エイトの背中を揺するけど、エイトは何の反応も示さない。
「ま、待っててエイト、すぐに蘇生を……」
ザオリクを唱えようと息を吸った瞬間、マダンテを食らった時の衝撃が残っていたのか、肺が痛みを訴えた。
ぐっと胸を押さえた、その一瞬の隙で──。
「あ……」
ラプソーンの口から、激しい炎が吐き出される。
それは私たちの肌を焦がし、そして。
「オディロ院長……申し訳、ありま、せ……っ」
ククールが倒れ、その隣で。
「ゲルダ……すまねぇ、負けちまった……」
ヤンガスが仰向けに倒れていく。
ゼシカは既に倒れていた。
立っているのは、私だけだ。
……どうして?
逆になるはずだったのに、どうして、私だけが?
「みんな……みんな、ねぇ……」
誰も反応しない。
私ひとりで……ラプソーンを相手に戦うしかない。
……いや、それで私まで死んだら、いよいよおしまいだ。
だから──私に出来ることは、ただ一つ。
来なければいいと思ったけれど……そうはいかなかったみたい。
──今が、『その時』だ。
『霊導者の末裔よ。まだ我に歯向かうか?』
嘲笑う声が耳障りだ。
歯向かうかって?
当たり前のことを聞いてくれるな。
私はみんなを信じている。
再び立ち上がって、その時こそラプソーンを倒してくれるって。
だから……だから私が一緒にいられるのは。
「……ここまで、かな」
剣を鞘に納めて、ベルトごと外す。
それを倒れたまま動かないエイトの腕に握らせて、それから傷だらけの頬にキスをした。
……ごめんね、エイト。
私、何の約束も守れなかったや。
『レイラ……』
「レティス。私の代わりに、みんなに伝言を。最後まで一緒に戦えなくてごめんって。それからエイトに……消えちゃってごめんね」
動ける者は私だけ。
恐怖はある、今だって足が竦みそうだし、声も震えそう。
だけど、エイトを、大切な人を守るためなら、その恐怖すら呑み込んでやる!
「……絶対に倒してね」
これは約束じゃない。
約束しなくたって、彼らはそうしてくれると信じている。
服の下からネックレスを取り出し、握り締める。
……この力を解放して、私は死ぬ。
いや、死ぬという言い方もおかしい。
私は消える。
この世界にも、神の御許にも、どこにも私はいなくなる。
たとえそうだとしても──!
「終わらせはしない……。この世界も、この人たちも! 私が守ってみせる!!」
私の声に呼応するように、ネックレスが眩しく輝いた。
握り締めたそれを引きちぎって、エイトのロングジレのポケットにねじ込む。
ポケットにいたトーポが、私の手に触れる。
「……トーポ。エイトのこと、宜しくね」
微笑んで人差し指で撫でて、私は立ち上がった。
聖なる力が溢れて、風が逆巻く。
そうして私は、深く──深く息を吸った。
これを私の償いとさせてほしい。
我が罪よ、赦されよ。
この身が負った罪と引き換えに、私は赦しを得て、命を手放そう。
呻き声を上げて膝をつきかけたククールにベホマを唱えるより早く──私たちの頭上から、隕石が降り注いだ。
「ま、まずい……!」
防御体勢を取るが間に合わない。
避けきれなかったククールは、頭上を見上げ──。
「ここまで、か……」
悔しげに呟き、倒れた。
ククールが倒れるとまずい、いや誰が倒れてもまずいけど!!
「ゼシカ、ククールをザオリクで起こして! 私が回復する!!」
ゼシカがザオリクでククールを蘇生させて、私がベホマズンで全員の傷を治す。
けれど状況は徐々に私たちの劣勢へ変わっていく。
ククールが戦線に復帰してくるけど、ゼシカも私も回復や補助に手一杯で、攻撃しているのはエイトとヤンガスだけだ。
せめて私が攻撃に回れたなら……!
追い詰められていく私たちに、容赦なくラプソーンの腕が振り下ろされる。
その上から、再び隕石が降り注いだ。
……強い。
これが、暗黒神ラプソーン──八賢者をもってしても討ち滅ぼせなかった、闇の世界からの邪神。
エイトもヤンガスも必死に攻撃をしている。
それでも、こんなに歯が立たないなんて……。
何度目かも分からないベホマズンを唱えて、凍てつく波動でかき消されたままのピオリムを唱えて、素早さを底上げする。
その時──ラプソーンが、全ての魔力を解き放った。
「ま、マダンテ……!?」
かつてない威力の衝撃が私たちを翻弄する。
そしてさらに、間の悪いことに──。
ラプソーンがぐっと息を吸って、息を吐き出す。
それは凍える吹雪。
こんなの今食らったら、私たちみんな──。
思わず腕で顔を覆い、衝撃に備える。
けれど、思ったような威力ではなくて……。
恐る恐る腕を下ろすと、私の眼前には、山吹色の背中が立ちはだかっていた。
「……エイト?」
その背中が揺らいで……倒れていく。
頭が真っ白になったまま、エイトの背中を揺するけど、エイトは何の反応も示さない。
「ま、待っててエイト、すぐに蘇生を……」
ザオリクを唱えようと息を吸った瞬間、マダンテを食らった時の衝撃が残っていたのか、肺が痛みを訴えた。
ぐっと胸を押さえた、その一瞬の隙で──。
「あ……」
ラプソーンの口から、激しい炎が吐き出される。
それは私たちの肌を焦がし、そして。
「オディロ院長……申し訳、ありま、せ……っ」
ククールが倒れ、その隣で。
「ゲルダ……すまねぇ、負けちまった……」
ヤンガスが仰向けに倒れていく。
ゼシカは既に倒れていた。
立っているのは、私だけだ。
……どうして?
逆になるはずだったのに、どうして、私だけが?
「みんな……みんな、ねぇ……」
誰も反応しない。
私ひとりで……ラプソーンを相手に戦うしかない。
……いや、それで私まで死んだら、いよいよおしまいだ。
だから──私に出来ることは、ただ一つ。
来なければいいと思ったけれど……そうはいかなかったみたい。
──今が、『その時』だ。
『霊導者の末裔よ。まだ我に歯向かうか?』
嘲笑う声が耳障りだ。
歯向かうかって?
当たり前のことを聞いてくれるな。
私はみんなを信じている。
再び立ち上がって、その時こそラプソーンを倒してくれるって。
だから……だから私が一緒にいられるのは。
「……ここまで、かな」
剣を鞘に納めて、ベルトごと外す。
それを倒れたまま動かないエイトの腕に握らせて、それから傷だらけの頬にキスをした。
……ごめんね、エイト。
私、何の約束も守れなかったや。
『レイラ……』
「レティス。私の代わりに、みんなに伝言を。最後まで一緒に戦えなくてごめんって。それからエイトに……消えちゃってごめんね」
動ける者は私だけ。
恐怖はある、今だって足が竦みそうだし、声も震えそう。
だけど、エイトを、大切な人を守るためなら、その恐怖すら呑み込んでやる!
「……絶対に倒してね」
これは約束じゃない。
約束しなくたって、彼らはそうしてくれると信じている。
服の下からネックレスを取り出し、握り締める。
……この力を解放して、私は死ぬ。
いや、死ぬという言い方もおかしい。
私は消える。
この世界にも、神の御許にも、どこにも私はいなくなる。
たとえそうだとしても──!
「終わらせはしない……。この世界も、この人たちも! 私が守ってみせる!!」
私の声に呼応するように、ネックレスが眩しく輝いた。
握り締めたそれを引きちぎって、エイトのロングジレのポケットにねじ込む。
ポケットにいたトーポが、私の手に触れる。
「……トーポ。エイトのこと、宜しくね」
微笑んで人差し指で撫でて、私は立ち上がった。
聖なる力が溢れて、風が逆巻く。
そうして私は、深く──深く息を吸った。
これを私の償いとさせてほしい。
我が罪よ、赦されよ。
この身が負った罪と引き換えに、私は赦しを得て、命を手放そう。
