65章
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エイトが空を見上げて、つられるように私も視線を持ち上げた。
気を失う直前、真っ赤に染まっていた空は、今はもう元の青空を取り戻している。
ここからは見えないけれど、空に浮かぶ邪神の城。
暗黒神ラプソーンの根城となるあれには、名前がある。
「あの城……なにか呼び名があったはずなの。なんだっけ……」
霊導者の血が教えてくれる。
あの城の名前は。
暗黒神ラプソーンの領域である、あの場所の名前は。
「──暗黒魔城都市」
無意識のうちにその名を呟く。
そうだ……あの場所は、暗黒魔城都市──そう呼ばれていた。
ラプソーンの居城だもん、きっと侵入者である私たちを、ラプソーンの配下である魔物たちは排除しにかかるだろう。
それでも私たちは、行かなくてはならない。
「暗黒魔城都市、か。それらしい響きだな」
「そうね。ラプソーンの居城につけるには、ピッタリの名前ね」
ククールとゼシカも、ニコリともせずそう言った。
いよいよ最終決戦が始まる。
数百年前、八賢者さえ成し得なかった──暗黒神ラプソーンの討伐。
それを私たち五人で成し遂げられるかは、分からないけど。
それでも私たちがやらなければならないことだ。
「よし、今日は宿屋に泊まって……。明日……目指そう」
……なぜだろう。
あの暗黒魔城都市にいるラプソーンを倒しても、終わりだと思えない。
……私の考えすぎかな。
ドルマゲスを倒しても、ゼシカを助けても、レオパルドを倒しても、ラプソーンの力に操られる者が後を絶たなかった。
私たちでラプソーンを倒したら、本当に世界は平和になるの?
「ねぇ、レイラ……。リブルアーチで言ったこと、覚えてる?」
「命を投げ出すなって話のこと? ……もちろん、分かってるよ」
「なら、いいの。明日は頑張りましょう!」
「……うん」
ゼシカに微笑んで頷いて、エイトの腕に身体を預ける。
なんだか疲れてしまって……体が酷く思い。
私たちはこれから、暗黒神を倒すために戦う。
でもね、ゼシカ。
もし暗黒神を倒せずに、奴を封印するしか方法がなくなったら。
私はみんなの為に、今度こそ命を使う覚悟は出来てるんだ。
* * *
暗黒魔城都市に近い宿屋は、サザンビーク城の城下町にある宿屋だった。
バザーも終わったことで、宿屋はすべて空室。
贅沢に二部屋借りて男女で分かれようとすると、ゼシカはククール・ヤンガスと同室にすると言い出した。
「今のレイラには、エイトが必要だと思うの。エイト、レイラのこと、よろしく頼むわね」
「うん」
私を抱き抱えたまま、エイトはツインの部屋へと入っていく。
そうしてベッドに私をそっと下ろすと、私の腰から剣を外し、袋を外し、靴を脱がせた。
身体がベッドに沈み込んで、今すぐにでも眠れそうだ。
ゼシカが私とエイトを同室にした理由は分からないけど……今はその配慮が嬉しい。
「……疲れたね」
「うん……」
「崩壊に巻き込まれたのに、生きてるのが不思議なくらいだよ」
「そうだね……」
「……レイラ」
打って変わって、エイトはつらそうに私を呼んだ。
閉じかけた瞼を押し上げて、エイトを見やる。
エイトは沈んだ顔のまま……私に言った。
「どうしても……自分のこと、許せないんだね」
「……」
「七賢者が殺されたことも、ラプソーンが復活したことも、ゴルドが崩壊してたくさんの人が犠牲になったことも、レイラのせいじゃないのに」
「……でも少なくとも、今日のことは、私が杖を封印できてたら、起きなかったよ」
エイトは黙ったまま俯いていた。
私のせいじゃない、なんて気休めの言葉はいらない。
今日のことは明らかに私のせいだ。
法皇の館でレオパルドと戦った後、どうして躊躇ってしまったのか。
……覚悟なんて、決まっていたはずなのに。
「死んだって、レイラの望む赦しは得られないんだ。ただ僕らがレイラを失った傷を、一生心に抱えていくだけで。それでも、杖を封印できなかった自分を憎む?」
「……本当は、エイトにそんな思いをさせたくないし、私もエイトと一緒に、復活したトロデーン城で生きていきたい」
「じゃあそうしようよ」
「……そしたら私、どうやって償ったらいい? 元々が平和な世界にはそぐわない人間だよ。人を殺してきた私ができる償いなんて、封印に命を捧げることくらいだったのに……」
そんなことない、と首を振って、エイトが私の顔の横に手をついた。
近づくエイトの顔。
優しく塞がれた唇は温かい。
そっと離れたエイトの瞳は、やっぱり悲しそうだった。
「償いなんかじゃない。償う必要だってないよ。だってレイラがそれを罪だと言うなら、命じた隊長も、容認したトロデ王も、事実を知って黙っていた僕たちも、みんな罪を償う必要があるだろ?」
「そう、なのかな……。難しいや。いっそ何もかも、私が悪いことにしてくれたらいいのにね……」
「しないよ、そんなこと。知ってた僕も同罪だ。レイラのせいだって言うなら、僕のせいでもあるよ」
疲れた頭では、エイトの言っていることを理解するのは難しい。
この問題は私の中で色んなものに絡まってしまって、自分でも解けなくなっている。
暗黒神を倒して、いつか訪れるであろう平和な時代を生きようとしても、私は変わらず『夜勤』を続けることになる。
その必要がなくなったとしても、やっぱり心のどこかで過去のことを引きずってしまう。
守るべき人たちを守ることもできなかった、失わなくていい命をたくさん死なせた。
うとうとと瞼が落ちる間際、エイトの静かな声が問うた。
「なにか望みはないの?」と。
だから私は、眠りに落ちながら呟いた。
「みんなが幸せに生きてくれることかな」と。
気を失う直前、真っ赤に染まっていた空は、今はもう元の青空を取り戻している。
ここからは見えないけれど、空に浮かぶ邪神の城。
暗黒神ラプソーンの根城となるあれには、名前がある。
「あの城……なにか呼び名があったはずなの。なんだっけ……」
霊導者の血が教えてくれる。
あの城の名前は。
暗黒神ラプソーンの領域である、あの場所の名前は。
「──暗黒魔城都市」
無意識のうちにその名を呟く。
そうだ……あの場所は、暗黒魔城都市──そう呼ばれていた。
ラプソーンの居城だもん、きっと侵入者である私たちを、ラプソーンの配下である魔物たちは排除しにかかるだろう。
それでも私たちは、行かなくてはならない。
「暗黒魔城都市、か。それらしい響きだな」
「そうね。ラプソーンの居城につけるには、ピッタリの名前ね」
ククールとゼシカも、ニコリともせずそう言った。
いよいよ最終決戦が始まる。
数百年前、八賢者さえ成し得なかった──暗黒神ラプソーンの討伐。
それを私たち五人で成し遂げられるかは、分からないけど。
それでも私たちがやらなければならないことだ。
「よし、今日は宿屋に泊まって……。明日……目指そう」
……なぜだろう。
あの暗黒魔城都市にいるラプソーンを倒しても、終わりだと思えない。
……私の考えすぎかな。
ドルマゲスを倒しても、ゼシカを助けても、レオパルドを倒しても、ラプソーンの力に操られる者が後を絶たなかった。
私たちでラプソーンを倒したら、本当に世界は平和になるの?
「ねぇ、レイラ……。リブルアーチで言ったこと、覚えてる?」
「命を投げ出すなって話のこと? ……もちろん、分かってるよ」
「なら、いいの。明日は頑張りましょう!」
「……うん」
ゼシカに微笑んで頷いて、エイトの腕に身体を預ける。
なんだか疲れてしまって……体が酷く思い。
私たちはこれから、暗黒神を倒すために戦う。
でもね、ゼシカ。
もし暗黒神を倒せずに、奴を封印するしか方法がなくなったら。
私はみんなの為に、今度こそ命を使う覚悟は出来てるんだ。
* * *
暗黒魔城都市に近い宿屋は、サザンビーク城の城下町にある宿屋だった。
バザーも終わったことで、宿屋はすべて空室。
贅沢に二部屋借りて男女で分かれようとすると、ゼシカはククール・ヤンガスと同室にすると言い出した。
「今のレイラには、エイトが必要だと思うの。エイト、レイラのこと、よろしく頼むわね」
「うん」
私を抱き抱えたまま、エイトはツインの部屋へと入っていく。
そうしてベッドに私をそっと下ろすと、私の腰から剣を外し、袋を外し、靴を脱がせた。
身体がベッドに沈み込んで、今すぐにでも眠れそうだ。
ゼシカが私とエイトを同室にした理由は分からないけど……今はその配慮が嬉しい。
「……疲れたね」
「うん……」
「崩壊に巻き込まれたのに、生きてるのが不思議なくらいだよ」
「そうだね……」
「……レイラ」
打って変わって、エイトはつらそうに私を呼んだ。
閉じかけた瞼を押し上げて、エイトを見やる。
エイトは沈んだ顔のまま……私に言った。
「どうしても……自分のこと、許せないんだね」
「……」
「七賢者が殺されたことも、ラプソーンが復活したことも、ゴルドが崩壊してたくさんの人が犠牲になったことも、レイラのせいじゃないのに」
「……でも少なくとも、今日のことは、私が杖を封印できてたら、起きなかったよ」
エイトは黙ったまま俯いていた。
私のせいじゃない、なんて気休めの言葉はいらない。
今日のことは明らかに私のせいだ。
法皇の館でレオパルドと戦った後、どうして躊躇ってしまったのか。
……覚悟なんて、決まっていたはずなのに。
「死んだって、レイラの望む赦しは得られないんだ。ただ僕らがレイラを失った傷を、一生心に抱えていくだけで。それでも、杖を封印できなかった自分を憎む?」
「……本当は、エイトにそんな思いをさせたくないし、私もエイトと一緒に、復活したトロデーン城で生きていきたい」
「じゃあそうしようよ」
「……そしたら私、どうやって償ったらいい? 元々が平和な世界にはそぐわない人間だよ。人を殺してきた私ができる償いなんて、封印に命を捧げることくらいだったのに……」
そんなことない、と首を振って、エイトが私の顔の横に手をついた。
近づくエイトの顔。
優しく塞がれた唇は温かい。
そっと離れたエイトの瞳は、やっぱり悲しそうだった。
「償いなんかじゃない。償う必要だってないよ。だってレイラがそれを罪だと言うなら、命じた隊長も、容認したトロデ王も、事実を知って黙っていた僕たちも、みんな罪を償う必要があるだろ?」
「そう、なのかな……。難しいや。いっそ何もかも、私が悪いことにしてくれたらいいのにね……」
「しないよ、そんなこと。知ってた僕も同罪だ。レイラのせいだって言うなら、僕のせいでもあるよ」
疲れた頭では、エイトの言っていることを理解するのは難しい。
この問題は私の中で色んなものに絡まってしまって、自分でも解けなくなっている。
暗黒神を倒して、いつか訪れるであろう平和な時代を生きようとしても、私は変わらず『夜勤』を続けることになる。
その必要がなくなったとしても、やっぱり心のどこかで過去のことを引きずってしまう。
守るべき人たちを守ることもできなかった、失わなくていい命をたくさん死なせた。
うとうとと瞼が落ちる間際、エイトの静かな声が問うた。
「なにか望みはないの?」と。
だから私は、眠りに落ちながら呟いた。
「みんなが幸せに生きてくれることかな」と。
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