61章
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さて、あと立ち寄ってないのはどこだろう。
なにせ初めて来たもんだから、どこに何があるかさっぱりなんだよな。
と思ったら、四人はどこかへと歩いて行くから、慌てて私も追いかけた。
「どこ行くの?」
「エルフに会いに行こうかなって、みんなで話してたとこなんだ」
「あっ、それいいかも!」
酒場の入口から外に出て、屋根の下を歩いていくと、教会が見えた。
せっかくだしお祈りしていくか、と立ち寄ってみると、何故かそこにドラキーがいる。
……ドラキーが神父は想像してなかったなァ……。
「えっと……あとでまた来ようか」
「そ、そうね、そうしましょう」
そっと教会の扉を閉め、私たちは屋根の下の通路を突き当たりまで進むことにした。
そこには吊り橋がかかっていて、吊り橋を渡った先には、崖に遺跡の入口が見えている。
一角うさぎやドラキーマ、人面樹がキャッキャふしゅううう……と会話する中を通り抜け、遺跡へと足を踏み入れる。
遺跡の中は祭壇になっていて、ギガンテスと──ビンクの髪の、エルフがいた。
「すごい……! 本当にエルフだ……」
「実在するものだったんだな、エルフって」
「月の世界の住人とかいう奴がいるくらいでがすし、エルフがいてもおかしくはないでげすよ」
「……まさかヤンガスに納得させられちゃうなんてね」
ありえない現象に出会う度に引き合いに出されるイシュマウリも大変だな。
でも仕方ないよね、月の世界の住人とか、エルフ以上に実在を信じてもらえなさそうだし。
本物のエルフを前にはしゃいでいると、エルフの人が私をじっと見ているのに気が付いた。
「あなたは……あなたは、もしや八賢者の血を引くお方でありませんか?」
「呼ばれてるぜ、ヨシュアの子孫」
「間違ってはないけどちょっとムカつくな、その呼び方」
「ヨシュア……ああ、なんて偶然、なんて奇跡。あなたこそ、紛うことなき救世主様です!」
「ききっき、救世主!?」
「いやドモりすぎだろ」
「黙ってバカリスマ」
ククールが「俺の扱いって……」と呟いた。
まあ、ククールはそういう扱いになるよね。
こういうところで茶化しにかかるからだよ、バカリスマめ。
ゼシカがククールの後ろで呆れたように首を振っていた。
誰かこいつをどうにかしてくれと顔が言っている。
どうにもできないままここまで来ちゃったもんね、諦めたほうが早いと思う。
「偉大なる聖女ヨシュア様は、暗黒神ラプソーンの肉体を封じる核となられた、まさに救世主たるお方。そのヨシュア様の子孫にお会いできて光栄です、次なる救世主様」
「あ、えっと、あの……こちらこそ……」
ラジュさんにがっちりと手を掴まれて、ブンブンと上下に振られる。
そんなキラキラした目で言われても、私どうすればいいの。
私はヨシュアと違って、物理で殴ることしか出来ないぞ!?
「レイラが救世主、ねぇ……」
「まぁ……そうなるよな」
「え、それは何に対しての納得なの?」
「何でもありませんよ、救世主様」
「それいじめ? っていうか、ここぞとばかりにククールがいじってくるのムカつく」
ゼシカはいいとしてね。
ククールの意味ありげな笑みがちょっとムカつくよ。
どう考えたって救世主の器じゃなくない?
そんなふうに祀り上げられていいのは、私みたいな人間じゃなくて、もっとこう、エイトみたいな……。
こほん、とエイトがわざとらしく咳払いをする。
は、と顔を赤らめたラジュさんは、私の手を離してエイトに向き直ると、改めて頭を下げた。
「私はエルフのラジュ。以前、この谷にチェルスという若者がおりました。しかしチェルスは、自分が偉大なる賢者の末裔であることさえ知らぬまま、旅先にて亡くなりました。……不思議なことですが、私はあなた方から微かに、チェルスの気配を感じるのです。もしやあなた方は、どこかでチェルスに会ってはおりませんか?」
「チェルスさん……は、その、私たち、リブルアーチという町で出会って……。ごめんなさい、守りたかったけど、守れなくて……チェルスさんの最期を、私たちで看取ったんです」
誰もが狙いはハワードさんだと思っていたから、チェルスさんを守るなんて頭になかった。
チェルスさん自身も、ハワードさんを守ろうとしていたから、尚更……。
「なんですって? あなた方がチェルスの最期を看取ったと……。なんということでしょうか……。偉大なるクーパス様の末裔の最期を看取った方々の中に、ヨシュア様の末裔がいらっしゃるとは……。そしてその方々がこの谷を訪れるとは、これも、きっと何かの因縁でしょう……。今は藁をも縋る思いで、あなた方にお頼み申し上げます。暗黒神ラプソーンの復活が近付いています。暗黒神の復活を、なんとしても阻止してほしいのです。暗黒神が復活すれば、この世界はすぐにすべてが闇に飲み込まれてしまうでしょう。暗黒神の復活を阻止せんとする、私たちの数百年に渡る長き願い……。どうぞ聞き入れてくださいませ」
「も、勿論です……! 私たち、そのために世界中を旅してきたので!」
むしろそれは私たちが申し入れたいくらいだ。
こんなにも暗黒神について詳しいのだから、助力を得られないかと思っていたくらいだし。
私が食い気味に頷くと、ラジュさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。これもきっとクーパス様のお導きに違いありませんわ。暗黒神ラプソーンの復活を阻止する唯一の手段は、暗黒神の封印に使われた杖を、再び結界に封じ込めること……。私たちにも、せめてもの協力をさせてください。ドラング、来なさい」
ラジュさんはすぐ側にいたドラキーを呼びつけた。
「ドラッキュー!」と可愛らしい声で返事をして、ドラキーのドラングがパタパタと飛んでくる。
滝の洞窟で出てきたドラキーも、こんなふうに可愛かったら良かったな。
ラリホーで眠らされた記憶しかないもん。
やっぱり嫌なことって、いつまで経っても忘れないもんなんだな。
「この方たちに、クーパス様の遺された物を差し上げたいの。門番にそう伝えておいてちょうだい」
「ドラキュッキュー!」
ドラングが「任せろ」と言わんばかりの返事をして、遺跡から飛び去っていく。
それをみんなで見やってから、私たちは小首を傾げた。
そんな大層なものを貰っていいんだろうか、私たち……。
「お聞きになったとおりです。この谷の宝物庫にある宝を、あなた方に託します。クーパス様の遺された物に、暗黒大樹の葉という、闇の世界に生きる大樹の葉があります。その葉を地図の上に落とすと、禍々しき存在の居場所を直ちに指し示すそうです」
「……それって」
レオパルドがどこにいるか、その暗黒大樹の葉が教えてくれるってこと……?
それが手に入れば、レオパルドを追いかけられる。
法皇様の事も守り通せるはず!
今度こそ……今度こそ守り抜かなきゃ。
そうじゃなきゃ、世界が終わっちゃうんだもん。
なにせ初めて来たもんだから、どこに何があるかさっぱりなんだよな。
と思ったら、四人はどこかへと歩いて行くから、慌てて私も追いかけた。
「どこ行くの?」
「エルフに会いに行こうかなって、みんなで話してたとこなんだ」
「あっ、それいいかも!」
酒場の入口から外に出て、屋根の下を歩いていくと、教会が見えた。
せっかくだしお祈りしていくか、と立ち寄ってみると、何故かそこにドラキーがいる。
……ドラキーが神父は想像してなかったなァ……。
「えっと……あとでまた来ようか」
「そ、そうね、そうしましょう」
そっと教会の扉を閉め、私たちは屋根の下の通路を突き当たりまで進むことにした。
そこには吊り橋がかかっていて、吊り橋を渡った先には、崖に遺跡の入口が見えている。
一角うさぎやドラキーマ、人面樹がキャッキャふしゅううう……と会話する中を通り抜け、遺跡へと足を踏み入れる。
遺跡の中は祭壇になっていて、ギガンテスと──ビンクの髪の、エルフがいた。
「すごい……! 本当にエルフだ……」
「実在するものだったんだな、エルフって」
「月の世界の住人とかいう奴がいるくらいでがすし、エルフがいてもおかしくはないでげすよ」
「……まさかヤンガスに納得させられちゃうなんてね」
ありえない現象に出会う度に引き合いに出されるイシュマウリも大変だな。
でも仕方ないよね、月の世界の住人とか、エルフ以上に実在を信じてもらえなさそうだし。
本物のエルフを前にはしゃいでいると、エルフの人が私をじっと見ているのに気が付いた。
「あなたは……あなたは、もしや八賢者の血を引くお方でありませんか?」
「呼ばれてるぜ、ヨシュアの子孫」
「間違ってはないけどちょっとムカつくな、その呼び方」
「ヨシュア……ああ、なんて偶然、なんて奇跡。あなたこそ、紛うことなき救世主様です!」
「ききっき、救世主!?」
「いやドモりすぎだろ」
「黙ってバカリスマ」
ククールが「俺の扱いって……」と呟いた。
まあ、ククールはそういう扱いになるよね。
こういうところで茶化しにかかるからだよ、バカリスマめ。
ゼシカがククールの後ろで呆れたように首を振っていた。
誰かこいつをどうにかしてくれと顔が言っている。
どうにもできないままここまで来ちゃったもんね、諦めたほうが早いと思う。
「偉大なる聖女ヨシュア様は、暗黒神ラプソーンの肉体を封じる核となられた、まさに救世主たるお方。そのヨシュア様の子孫にお会いできて光栄です、次なる救世主様」
「あ、えっと、あの……こちらこそ……」
ラジュさんにがっちりと手を掴まれて、ブンブンと上下に振られる。
そんなキラキラした目で言われても、私どうすればいいの。
私はヨシュアと違って、物理で殴ることしか出来ないぞ!?
「レイラが救世主、ねぇ……」
「まぁ……そうなるよな」
「え、それは何に対しての納得なの?」
「何でもありませんよ、救世主様」
「それいじめ? っていうか、ここぞとばかりにククールがいじってくるのムカつく」
ゼシカはいいとしてね。
ククールの意味ありげな笑みがちょっとムカつくよ。
どう考えたって救世主の器じゃなくない?
そんなふうに祀り上げられていいのは、私みたいな人間じゃなくて、もっとこう、エイトみたいな……。
こほん、とエイトがわざとらしく咳払いをする。
は、と顔を赤らめたラジュさんは、私の手を離してエイトに向き直ると、改めて頭を下げた。
「私はエルフのラジュ。以前、この谷にチェルスという若者がおりました。しかしチェルスは、自分が偉大なる賢者の末裔であることさえ知らぬまま、旅先にて亡くなりました。……不思議なことですが、私はあなた方から微かに、チェルスの気配を感じるのです。もしやあなた方は、どこかでチェルスに会ってはおりませんか?」
「チェルスさん……は、その、私たち、リブルアーチという町で出会って……。ごめんなさい、守りたかったけど、守れなくて……チェルスさんの最期を、私たちで看取ったんです」
誰もが狙いはハワードさんだと思っていたから、チェルスさんを守るなんて頭になかった。
チェルスさん自身も、ハワードさんを守ろうとしていたから、尚更……。
「なんですって? あなた方がチェルスの最期を看取ったと……。なんということでしょうか……。偉大なるクーパス様の末裔の最期を看取った方々の中に、ヨシュア様の末裔がいらっしゃるとは……。そしてその方々がこの谷を訪れるとは、これも、きっと何かの因縁でしょう……。今は藁をも縋る思いで、あなた方にお頼み申し上げます。暗黒神ラプソーンの復活が近付いています。暗黒神の復活を、なんとしても阻止してほしいのです。暗黒神が復活すれば、この世界はすぐにすべてが闇に飲み込まれてしまうでしょう。暗黒神の復活を阻止せんとする、私たちの数百年に渡る長き願い……。どうぞ聞き入れてくださいませ」
「も、勿論です……! 私たち、そのために世界中を旅してきたので!」
むしろそれは私たちが申し入れたいくらいだ。
こんなにも暗黒神について詳しいのだから、助力を得られないかと思っていたくらいだし。
私が食い気味に頷くと、ラジュさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます。これもきっとクーパス様のお導きに違いありませんわ。暗黒神ラプソーンの復活を阻止する唯一の手段は、暗黒神の封印に使われた杖を、再び結界に封じ込めること……。私たちにも、せめてもの協力をさせてください。ドラング、来なさい」
ラジュさんはすぐ側にいたドラキーを呼びつけた。
「ドラッキュー!」と可愛らしい声で返事をして、ドラキーのドラングがパタパタと飛んでくる。
滝の洞窟で出てきたドラキーも、こんなふうに可愛かったら良かったな。
ラリホーで眠らされた記憶しかないもん。
やっぱり嫌なことって、いつまで経っても忘れないもんなんだな。
「この方たちに、クーパス様の遺された物を差し上げたいの。門番にそう伝えておいてちょうだい」
「ドラキュッキュー!」
ドラングが「任せろ」と言わんばかりの返事をして、遺跡から飛び去っていく。
それをみんなで見やってから、私たちは小首を傾げた。
そんな大層なものを貰っていいんだろうか、私たち……。
「お聞きになったとおりです。この谷の宝物庫にある宝を、あなた方に託します。クーパス様の遺された物に、暗黒大樹の葉という、闇の世界に生きる大樹の葉があります。その葉を地図の上に落とすと、禍々しき存在の居場所を直ちに指し示すそうです」
「……それって」
レオパルドがどこにいるか、その暗黒大樹の葉が教えてくれるってこと……?
それが手に入れば、レオパルドを追いかけられる。
法皇様の事も守り通せるはず!
今度こそ……今度こそ守り抜かなきゃ。
そうじゃなきゃ、世界が終わっちゃうんだもん。
