56章
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魔物を見た瞬間、全員が確信した。
こいつが妖魔ゲモンだ、と。
「お前がゲモンか」
厳しさを伴うエイトの声は、先程まで私たちを励ましていた人と同一人物とは思えないほど、低い声だった。
エイトの声に気付いて、ゲモンが振り返る。
「なんだ、貴様らは? こんなところにどうして人間がいる? それにその姿。この闇の世界の住人ではないな。いったいどこから迷い込んだ?」
「御託はいい。レディとのおしゃべりなら大歓迎だが、魔物との無駄話に付き合う時間は持ち合わせてなくてな」
「レティスの卵、返してもらうわよ!」
威勢よく啖呵を切ったのはククールとゼシカ。
普段ならこういうのは私の役目な気がするけど、ちょっと出遅れた。
しかも言いたいことも言われてしまったので、私は大人しくゲモンを睨むことにした。
「……まあいい。こっちも卵を見張ってるのにはいい加減飽き飽きしていたところ。せっかく来てくれたのだ。暗黒神ラプソーン様の腹心、妖魔ゲモンが直々に遊んでやろうじゃないか。……ん?」
ゲモンが私をじっと見つめる。
剣の柄に手をかけたまま睨み返していると、不意にゲモンがニタリと不気味に笑った。
「これは面白い。お前たち人間の言葉で言うならば、正に『鴨が葱を背負って来る』といったところだ。卵を見張る毎日に退屈していたが、まさか自ら我が元に現れるとは! 貴様、霊導者の末裔だな? ラプソーン様の肉体を封じる核となる存在、忌まわしきあの女! 忘れたことなど一度もない」
「……核?」
封印の核だなんて、レティスからそんな話は一度も……。
メディさんの家の遺跡にある石碑だって、そんなことは書いていなかった。
ひょっとして私がここに来るのって、実は相当まずかったりする?
「核ってどういう意味?」
「なんだ、知らんのか? それは好都合。ならば知らずに、その命を差し出せ!!」
ゲモンが吼えた瞬間、姿が消えた。
視界がその姿を探そうとした直後──私の体が衝撃を受けて吹っ飛ぶ。
目にも止まらぬ速さとはこのこと。
背中が岩山の壁に激突して、息が詰まる。
衝撃が全身を駆け巡って、呻き声すら上がらず、私はそのままずるずると壁伝いに倒れ込んだ。
「「レイラッ!!」」
「姉貴ィ!!」
ふらつく頭のまま、ぼんやりとした視界を持ち上げる。
何かが……迫ってくる。
それが光を反射して、きらりと光って、一直線に私に迫って──。
(──避けきれない)
私は死んじゃいけないって、レティス、言ってたのに。
私の力が切り札だって……ラプソーンが復活したら、私の力が必要になるって──。
私が死んだら、封じられているラプソーンの肉体はどうなるんだろう。
ゲモンの爪が伸びる。
光の残像を残して振り下ろされたそれは、断頭台から落ちる刃のように綺麗だった。
「っ、や」
顔を背けて目を閉じる。
そして、私を貫く絶命の痛みが──。
何かが肉を切り裂く音。
けれど待てども待てども、私の体に痛みはやってこない。
恐る恐ると目を開けて前を見ると──妖魔ゲモンは、確かに私を殺そうと爪を振りかざしていた。
けれどその胴から、刃が生えている。
「……え……?」
ズルリと引き抜かれた反動で、ゲモンが倒れる。
その後ろに立っていたのは、エイトだ。
呆然として言葉が出てこない私に、エイトはベホマを唱えた。
「……エイト」
「言っただろ。レイラは僕が命にかえても守り抜くって」
剣を背中の鞘に納めて、エイトが私の手を引っ張る。
エイトの手を支えにして立ち上がると、エイトの手が少し震えているのに気付いた。
ああ、怖かったんだ、エイト。
そうだよね、エイトにだって怖いものくらいあるよね。
「……ありがとう、エイト」
「間に合ってよかった」
心底ほっとしたというようにエイトが笑う。
そうして私たちは卵のある場所を見やって──言葉を失った。
「馬鹿な……。こ、こんな強い人間がいるなど……」
「……ゲモン!? なんで動けるんだ!? 間違いなく急所を突いたはず……!!」
「ううん。あれは急所を逸れてた」
そんな、とエイトが呟く。
残念だけど、『そういう技』の話なら、私のほうが詳しい。
エイトの一撃は、ゲモンの攻撃を止めるには十分だったけど、命を仕留めるまではいかなかった。
その証拠に、ゲモンが卵の前に立っている。
──そう、『立って』いるんだ。
「……そうか、レティスだな! 奴がこの俺を倒させるために、光の世界から貴様たちを……」
……ゲモンの挙動がおかしい。
何をする気だ、こんな狭いところで戦おうっていうの?
手負いのゲモンに、私たちが遅れを取るとは思えないのに。
「お……おのれぇ! そうと分かれば、このまま倒されてなるものか! 奴の卵も道連れにしてやる! 死なば諸共よ! このゲモンを謀ったこと、後悔するがいい!」
ゲモンの体が眩く光る。
そうして高密度の魔力が破裂して──凄まじい爆風が吹き付けた。
エイトが私を覆うように抱き締める。
そうして衝撃と音が止んだ時、目を開けた私たちの前には──。
焼け焦げ、無惨に破壊された、鮮やかな色の卵が残っていた。
誰もが絶句して立ち尽くすしかなかった。
そうして悟った。
また守れなかった、と。
頭上から羽ばたきの音がする。
青ざめた私にとって、その羽ばたきは断罪のようですらあった。
『さっきの音は、いったい何が……?』
「れ、レティス……」
恐らく、ゲモンの自爆の時に起きた衝撃を聞いて、急いで飛んできたんだ。
でも……でも、今、レティスの目の前にあるのは……。
『こ、これは!? どうしてこんなことに? 私の赤ちゃんが……卵が、粉々になって……』
「レティス……。あの……ごめんなさい」
俯いたままゼシカが呟く。
ゲモンの自爆を止められていたら。
そうしたらこんな悲劇、起きなかったのに。
私たちはいつだってそうだ。
最後の最後で、守りきれない。
『……どうやら、あなた方には迷惑をかけてしまったようですね』
岩場に降り立ち、翼を畳んだレティスは、静かに呟いた。
いっそ、責めてくれたほうが楽だった。
なのにレティスは全て見ていたかのように、私たちを咎めもしない。
『光の世界から呼び寄せておいて、こんな嫌な思いをさせてしまうなんて、本当に申し訳ありません』
「……! ち、違います、私たちがゲモンを止められなかったから……!」
そう言っても、レティスは静かに首を振るだけだった。
どうして守れなかったんだと責めてほしかった。
お前たちを頼った私が愚かだったと罵ってほしかった。
……私はきっと、そう……誰かに、私のしたことを責めてほしかったんだ、ずっと。
こんなことでそれに気付くなんて……馬鹿馬鹿しすぎる。
『さあ、ここにいたところで、もはや為すべきこともありません。光の世界の扉まで送っていきましょう』
「……」
私たちは項垂れたまま、頷く他なかった。
確かにそう、その通りだ。
この世界で私たちにできることなんて、何もない。
結局、私たちはこの世界に、何をしに来たんだろう。
『──母様、待ってください』
鈴を転がすような声が聞こえたのは、そんな時だった。
幼い子供の声が母様と呼ぶ。
その声に、レティスが目を見張った。
『ま、まさか、私の赤ちゃん……?』
『そうです、母様。生まれてくることもできず、こんな姿でお話しすることになってごめんなさい』
無惨に砕けた卵の残骸の上に、レティスによく似た小さい鳥の姿がある。
金色に輝く小さな幼鳥は、私たちが守れなかった幼子の魂だ。
『ボクを助けるために来てくれた、その人たちにお礼がしたくて、こうして姿を現したのです』
『お礼? しかし、あなたは……』
『いいえ、母様。こんなボクだからこそできることがあると思うんです。実体を持たない、魂だけのボクに、皆さんの身体を貸してもらえれば、空を飛ぶことができるようになるはず。どうか皆さんの旅に、ボクをご一緒させていただけませんか?』
「そ、それは──」
正直に言えば、ありがたいどころの話じゃない。
だって私たちが追っている相手は、翼を持つレオパルド。
こちらも空を飛べるようになれば、どこに逃げたって追いかけられる。
『エイト。私からもお願いします。この子があなた達の役に立てるなら、私も救われます。どうか、この子の願いを叶えてあげてください』
「願ってもないことです。……よろしく」
少し寂しそうに微笑んで、エイトは頷いた。
この子と共に旅をして、空を飛んで、レオパルドを追いかけて……。
その果てに世界を救えたら、レティスもこの子もきっと。
『ありがとう、エイト。あなた方には感謝してもしきれません』
『それではボクは、皆さんとご一緒できるように姿を変えます。力が必要なときは、いつでも呼んでください』
「姿を変えるって、えっと、持ち運べるようになるってこと?」
『いえ、ボクは霊導者様の身体の中にいます。空を飛びたいときは、心の中でボクに話しかけてください』
「はい!?」
小さな金色の光となった神鳥の魂は、ふわりとエイトの周囲を飛ぶと、なんと私の体にすっと入り込んでしまった!
全員が「えッ」と目を剥く中、エイトだけがものすごい顔で私の胸元を睨んでいる。
どうしよう、めちゃくちゃ瞳孔が開いてて怖いんだけど……。
「兄貴、兄貴。姉貴の胸をまじまじと見つめるのは、二人っきりの時にしてくだせぇ」
「な、何言ってんだヤンガス!! エイトがそんな下心あるわけが……!!」
「……僕だってまだレイラの胸なんか見たことないのに……」
「エイト、欲望がダダ漏れよ」
「いいかレイラ。男なんてのは大体、下心しかねぇ生き物なんだよ」
そうだねククール、今まさに思い知ったよ。
エイトと下心は無縁だと思っていたのにね、なんかショックすらある。
いやでも、うん、エイトも男の子なんだなぁと思うことにしよう。
男の子だからね、仕方ないよね。
こいつが妖魔ゲモンだ、と。
「お前がゲモンか」
厳しさを伴うエイトの声は、先程まで私たちを励ましていた人と同一人物とは思えないほど、低い声だった。
エイトの声に気付いて、ゲモンが振り返る。
「なんだ、貴様らは? こんなところにどうして人間がいる? それにその姿。この闇の世界の住人ではないな。いったいどこから迷い込んだ?」
「御託はいい。レディとのおしゃべりなら大歓迎だが、魔物との無駄話に付き合う時間は持ち合わせてなくてな」
「レティスの卵、返してもらうわよ!」
威勢よく啖呵を切ったのはククールとゼシカ。
普段ならこういうのは私の役目な気がするけど、ちょっと出遅れた。
しかも言いたいことも言われてしまったので、私は大人しくゲモンを睨むことにした。
「……まあいい。こっちも卵を見張ってるのにはいい加減飽き飽きしていたところ。せっかく来てくれたのだ。暗黒神ラプソーン様の腹心、妖魔ゲモンが直々に遊んでやろうじゃないか。……ん?」
ゲモンが私をじっと見つめる。
剣の柄に手をかけたまま睨み返していると、不意にゲモンがニタリと不気味に笑った。
「これは面白い。お前たち人間の言葉で言うならば、正に『鴨が葱を背負って来る』といったところだ。卵を見張る毎日に退屈していたが、まさか自ら我が元に現れるとは! 貴様、霊導者の末裔だな? ラプソーン様の肉体を封じる核となる存在、忌まわしきあの女! 忘れたことなど一度もない」
「……核?」
封印の核だなんて、レティスからそんな話は一度も……。
メディさんの家の遺跡にある石碑だって、そんなことは書いていなかった。
ひょっとして私がここに来るのって、実は相当まずかったりする?
「核ってどういう意味?」
「なんだ、知らんのか? それは好都合。ならば知らずに、その命を差し出せ!!」
ゲモンが吼えた瞬間、姿が消えた。
視界がその姿を探そうとした直後──私の体が衝撃を受けて吹っ飛ぶ。
目にも止まらぬ速さとはこのこと。
背中が岩山の壁に激突して、息が詰まる。
衝撃が全身を駆け巡って、呻き声すら上がらず、私はそのままずるずると壁伝いに倒れ込んだ。
「「レイラッ!!」」
「姉貴ィ!!」
ふらつく頭のまま、ぼんやりとした視界を持ち上げる。
何かが……迫ってくる。
それが光を反射して、きらりと光って、一直線に私に迫って──。
(──避けきれない)
私は死んじゃいけないって、レティス、言ってたのに。
私の力が切り札だって……ラプソーンが復活したら、私の力が必要になるって──。
私が死んだら、封じられているラプソーンの肉体はどうなるんだろう。
ゲモンの爪が伸びる。
光の残像を残して振り下ろされたそれは、断頭台から落ちる刃のように綺麗だった。
「っ、や」
顔を背けて目を閉じる。
そして、私を貫く絶命の痛みが──。
何かが肉を切り裂く音。
けれど待てども待てども、私の体に痛みはやってこない。
恐る恐ると目を開けて前を見ると──妖魔ゲモンは、確かに私を殺そうと爪を振りかざしていた。
けれどその胴から、刃が生えている。
「……え……?」
ズルリと引き抜かれた反動で、ゲモンが倒れる。
その後ろに立っていたのは、エイトだ。
呆然として言葉が出てこない私に、エイトはベホマを唱えた。
「……エイト」
「言っただろ。レイラは僕が命にかえても守り抜くって」
剣を背中の鞘に納めて、エイトが私の手を引っ張る。
エイトの手を支えにして立ち上がると、エイトの手が少し震えているのに気付いた。
ああ、怖かったんだ、エイト。
そうだよね、エイトにだって怖いものくらいあるよね。
「……ありがとう、エイト」
「間に合ってよかった」
心底ほっとしたというようにエイトが笑う。
そうして私たちは卵のある場所を見やって──言葉を失った。
「馬鹿な……。こ、こんな強い人間がいるなど……」
「……ゲモン!? なんで動けるんだ!? 間違いなく急所を突いたはず……!!」
「ううん。あれは急所を逸れてた」
そんな、とエイトが呟く。
残念だけど、『そういう技』の話なら、私のほうが詳しい。
エイトの一撃は、ゲモンの攻撃を止めるには十分だったけど、命を仕留めるまではいかなかった。
その証拠に、ゲモンが卵の前に立っている。
──そう、『立って』いるんだ。
「……そうか、レティスだな! 奴がこの俺を倒させるために、光の世界から貴様たちを……」
……ゲモンの挙動がおかしい。
何をする気だ、こんな狭いところで戦おうっていうの?
手負いのゲモンに、私たちが遅れを取るとは思えないのに。
「お……おのれぇ! そうと分かれば、このまま倒されてなるものか! 奴の卵も道連れにしてやる! 死なば諸共よ! このゲモンを謀ったこと、後悔するがいい!」
ゲモンの体が眩く光る。
そうして高密度の魔力が破裂して──凄まじい爆風が吹き付けた。
エイトが私を覆うように抱き締める。
そうして衝撃と音が止んだ時、目を開けた私たちの前には──。
焼け焦げ、無惨に破壊された、鮮やかな色の卵が残っていた。
誰もが絶句して立ち尽くすしかなかった。
そうして悟った。
また守れなかった、と。
頭上から羽ばたきの音がする。
青ざめた私にとって、その羽ばたきは断罪のようですらあった。
『さっきの音は、いったい何が……?』
「れ、レティス……」
恐らく、ゲモンの自爆の時に起きた衝撃を聞いて、急いで飛んできたんだ。
でも……でも、今、レティスの目の前にあるのは……。
『こ、これは!? どうしてこんなことに? 私の赤ちゃんが……卵が、粉々になって……』
「レティス……。あの……ごめんなさい」
俯いたままゼシカが呟く。
ゲモンの自爆を止められていたら。
そうしたらこんな悲劇、起きなかったのに。
私たちはいつだってそうだ。
最後の最後で、守りきれない。
『……どうやら、あなた方には迷惑をかけてしまったようですね』
岩場に降り立ち、翼を畳んだレティスは、静かに呟いた。
いっそ、責めてくれたほうが楽だった。
なのにレティスは全て見ていたかのように、私たちを咎めもしない。
『光の世界から呼び寄せておいて、こんな嫌な思いをさせてしまうなんて、本当に申し訳ありません』
「……! ち、違います、私たちがゲモンを止められなかったから……!」
そう言っても、レティスは静かに首を振るだけだった。
どうして守れなかったんだと責めてほしかった。
お前たちを頼った私が愚かだったと罵ってほしかった。
……私はきっと、そう……誰かに、私のしたことを責めてほしかったんだ、ずっと。
こんなことでそれに気付くなんて……馬鹿馬鹿しすぎる。
『さあ、ここにいたところで、もはや為すべきこともありません。光の世界の扉まで送っていきましょう』
「……」
私たちは項垂れたまま、頷く他なかった。
確かにそう、その通りだ。
この世界で私たちにできることなんて、何もない。
結局、私たちはこの世界に、何をしに来たんだろう。
『──母様、待ってください』
鈴を転がすような声が聞こえたのは、そんな時だった。
幼い子供の声が母様と呼ぶ。
その声に、レティスが目を見張った。
『ま、まさか、私の赤ちゃん……?』
『そうです、母様。生まれてくることもできず、こんな姿でお話しすることになってごめんなさい』
無惨に砕けた卵の残骸の上に、レティスによく似た小さい鳥の姿がある。
金色に輝く小さな幼鳥は、私たちが守れなかった幼子の魂だ。
『ボクを助けるために来てくれた、その人たちにお礼がしたくて、こうして姿を現したのです』
『お礼? しかし、あなたは……』
『いいえ、母様。こんなボクだからこそできることがあると思うんです。実体を持たない、魂だけのボクに、皆さんの身体を貸してもらえれば、空を飛ぶことができるようになるはず。どうか皆さんの旅に、ボクをご一緒させていただけませんか?』
「そ、それは──」
正直に言えば、ありがたいどころの話じゃない。
だって私たちが追っている相手は、翼を持つレオパルド。
こちらも空を飛べるようになれば、どこに逃げたって追いかけられる。
『エイト。私からもお願いします。この子があなた達の役に立てるなら、私も救われます。どうか、この子の願いを叶えてあげてください』
「願ってもないことです。……よろしく」
少し寂しそうに微笑んで、エイトは頷いた。
この子と共に旅をして、空を飛んで、レオパルドを追いかけて……。
その果てに世界を救えたら、レティスもこの子もきっと。
『ありがとう、エイト。あなた方には感謝してもしきれません』
『それではボクは、皆さんとご一緒できるように姿を変えます。力が必要なときは、いつでも呼んでください』
「姿を変えるって、えっと、持ち運べるようになるってこと?」
『いえ、ボクは霊導者様の身体の中にいます。空を飛びたいときは、心の中でボクに話しかけてください』
「はい!?」
小さな金色の光となった神鳥の魂は、ふわりとエイトの周囲を飛ぶと、なんと私の体にすっと入り込んでしまった!
全員が「えッ」と目を剥く中、エイトだけがものすごい顔で私の胸元を睨んでいる。
どうしよう、めちゃくちゃ瞳孔が開いてて怖いんだけど……。
「兄貴、兄貴。姉貴の胸をまじまじと見つめるのは、二人っきりの時にしてくだせぇ」
「な、何言ってんだヤンガス!! エイトがそんな下心あるわけが……!!」
「……僕だってまだレイラの胸なんか見たことないのに……」
「エイト、欲望がダダ漏れよ」
「いいかレイラ。男なんてのは大体、下心しかねぇ生き物なんだよ」
そうだねククール、今まさに思い知ったよ。
エイトと下心は無縁だと思っていたのにね、なんかショックすらある。
いやでも、うん、エイトも男の子なんだなぁと思うことにしよう。
男の子だからね、仕方ないよね。
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