51章
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宿屋に着いてすぐ、自由行動の時間になった。
もう夕方だったから、ククールとヤンガスは酒場に行って席を取るらしい。
ゼシカは私と町を見て回るつもりだったみたいだけど、私は一人で行動させてほしかったから、ごめんねと謝って宿屋を出た。
トラペッタの町はそんなに広くないから、聞き込みをしようと思えばすぐに終わる。
噴水広場の近くにいたおじいさんに頭を下げて、私はため息をついた。
「……やっぱり、何も残ってないか」
家のあった場所だけが知れたのは幸いだったかもしれない。
といっても、もうロアナス家の屋敷は取り壊されて久しくて、跡形もないんだけど。
「防具屋がテントを出してるだろう。あの辺に前は大きなお屋敷があってな」
「ロアナス様のお屋敷なら、防具屋さんのテントと、その隣のお宅にまたがるような形で、昔は大きなお屋敷が──」
馬車を止める必要があったので、上層部に屋敷を作れなかったのでは、という推測も得られたけど、どちらにせよだ。
さすがに歩き疲れて、噴水広場のベンチに腰を下ろす。
絶えず流れてゆく噴水を眺めながら、昔はこの景色を私も両親と一緒に見ていたのかな、なんて取り留めもないことを思った。
「……レイラ」
「ん……」
ぼんやりしていたから、反応が遅れた。
いつの間にか私のすぐ近くにエイトが立っていて、気遣わしげな瞳で私を見下ろしている。
へらりと笑って見せたけど、上手く笑えたかどうか。
「心配しなくても、トラペッタで迷子にはならないよ?」
「そういう心配をしてるんじゃなくて。……何か手がかりは見つかったのかなと思って」
「……家があった場所だけは。でもどうやら、屋敷は火事で燃えたらしくて。なーんにも残ってない」
そっか、とエイトは呟いた。
エイトのほうが私の何倍もつらそうな顔をしている。
……私が落ち込むわけにはいかないよね。
ここに私の生まれた家があったってことが分かれば、それでいいんだ。
「みんな酒場に集まってる?」
「え、あ……うん。レイラが来ないから、探しに来たんだ」
「それはとんだお手数を……」
ベンチから立ち上がって、すぐ横にある階段を上る。
後ろからついてきたエイトは、まだ私を気にしているようだった。
そんなに気にしなくてもいいのに。
酒場に入ると、既にヤンガスとククールとゼシカは一杯やっていた。
遅くなったのは私だから何も言うまい。
ヤンガスは既にへべれけだけど。
「お待たせしました!」
「あ、姉貴〜! 遅いでげすよ〜!」
「めっちゃ出来上がってるじゃん、何杯飲んだのヤンガス」
「私が合流した時には既に四、五杯は飲んでたわ」
「それから軽く三杯は飲んでるぞ」
「なんだと……」
エイトが呆れたようにため息をついて、ヤンガスのためにお水を頼んだ。
その横から私もエールを一杯。
酒場は徐々に客も増え出して、賑やかになっていった。
「──あ! いたいた! おーい、そこの緑のワンピース着たお嬢さん!」
「へっ?」
酒場の入口からそんな声が飛んできて、私たち全員がそちらを振り向いた。
そこには常連らしき町民と……まさかの神父様。
腐り切った修道院の僧侶ならまだしも、こういう町の教会の神父様はまともだと思ってたのに……。
こんな所に通うほど、落ちぶれていたのか……。
「あの方が?」
「そうそう。町の奴らにロアナス家のことを聞いて回ってたのは、あのお嬢さんで間違いないよ」
「……なんか私、知らないところでやらかした?」
「そんな風には見えないけど、でもレイラに用があるみたいよ?」
「……エイト、一緒にきて……」
「もちろん」
一人で行くのが怖すぎて、用心棒代わりにエイトを連れ出してしまった。
お、怒られではないと思いたいんだけど……!
でもこの町に昔住んでいた貴族のことを聞いて回るなんて、怪しいといえば怪しいか。
いや違う、私は決して怪しい者ではなくて!!
「お呼び出しして申し訳ない。ロアナス家のことを探しておられる方がいると聞いて、いても立ってもいられず」
「い、いえいえ! こちらこそ不躾に聞いて回ってすみません!」
「不躾などでは。では私も不躾ながらお尋ねしますが、あなたはロアナス家と関わりのあった方ですか?」
「……えっと、それは……」
「僕たちは、トロデーン城の者です」
どう答えようか迷っていると、隣からエイトが助け舟を出してくれた。
ナイス、エイト!
トロデーン城の関係者と名乗れば、ロアナス家のことを探っていても不思議じゃない!
「なるほど、トロデーン城の……」
「城を元に戻すために旅をしているんですが、旅の途中でロアナス家にまつわる話を耳にしたので、気になってしまって。ご不快に思われたらすみません。僕らは明日にはこの町を出るので……」
「とんでもない! トラペッタがあるのは、ひとえにロアナス家の守りあってこそでした。本当に残念なことです。当主ご夫妻が魔物に殺されてしまったばかりか、一人娘のお嬢様も行方不明のまま、十年が経とうとしている。……お嬢様が生きておられれば、ちょうどあなたくらいのお年でした」
……まあ、お嬢様ご本人なので、私。
でも私がその「行方不明だったお嬢様です」と名乗って、何になる。
ロアナス家の歴史は終わった。
今更始めることなんてできない。
「そういえば、あなたはお嬢様によく似ておられる。その黒い髪、緑の瞳……」
「……」
「十年ほど前のことですから、お嬢様もご存命ではないと思いますが……。もし神のご加護の元、奇跡が起こったのならば、どこかで穏やかに暮らしていてほしいものですな。……長話に付き合わせてしまい、失礼致しました。私はこれで。皆様の旅路に、神のご加護があらんことを……」
「……あの!」
立ち去ろうとする神父様を咄嗟に呼び止める。
私がその行方不明だった本人です、とは言えないけど……。
でもこの町は、私の家族のことを覚えていてくれた。
……だから。
「幸せに暮らしてる、と思います。自分のことは何も覚えていなくて、この町のことも家族のことも、忘れちゃったのかもしれないけど。……でも、ちゃんと幸せなんじゃないかなって思います。……な、なんて、無関係の私が何言ってんだって話ですけどね! あはは……」
神父様は不思議そうに目を丸くして、それから柔和な笑みを浮かべたままひとつ頷き、立ち去って行った。
……私は幸せに暮らしてます。
この町で過ごしていた頃の記憶は何もないけど、トロデーン城で過ごした日々は、確かに幸せだった。
今の私は、そんな幸せを取り戻すために、頑張ってる最中だ。
「……戻ろっか。お腹空いちゃった!」
「うん。そうだね」
エイトが酒場のドアを開ける。
こちらを気にしている様子の三人に手を振って、私は酒場に戻った。
とりあえず……怒られじゃなくて良かった!!
もう夕方だったから、ククールとヤンガスは酒場に行って席を取るらしい。
ゼシカは私と町を見て回るつもりだったみたいだけど、私は一人で行動させてほしかったから、ごめんねと謝って宿屋を出た。
トラペッタの町はそんなに広くないから、聞き込みをしようと思えばすぐに終わる。
噴水広場の近くにいたおじいさんに頭を下げて、私はため息をついた。
「……やっぱり、何も残ってないか」
家のあった場所だけが知れたのは幸いだったかもしれない。
といっても、もうロアナス家の屋敷は取り壊されて久しくて、跡形もないんだけど。
「防具屋がテントを出してるだろう。あの辺に前は大きなお屋敷があってな」
「ロアナス様のお屋敷なら、防具屋さんのテントと、その隣のお宅にまたがるような形で、昔は大きなお屋敷が──」
馬車を止める必要があったので、上層部に屋敷を作れなかったのでは、という推測も得られたけど、どちらにせよだ。
さすがに歩き疲れて、噴水広場のベンチに腰を下ろす。
絶えず流れてゆく噴水を眺めながら、昔はこの景色を私も両親と一緒に見ていたのかな、なんて取り留めもないことを思った。
「……レイラ」
「ん……」
ぼんやりしていたから、反応が遅れた。
いつの間にか私のすぐ近くにエイトが立っていて、気遣わしげな瞳で私を見下ろしている。
へらりと笑って見せたけど、上手く笑えたかどうか。
「心配しなくても、トラペッタで迷子にはならないよ?」
「そういう心配をしてるんじゃなくて。……何か手がかりは見つかったのかなと思って」
「……家があった場所だけは。でもどうやら、屋敷は火事で燃えたらしくて。なーんにも残ってない」
そっか、とエイトは呟いた。
エイトのほうが私の何倍もつらそうな顔をしている。
……私が落ち込むわけにはいかないよね。
ここに私の生まれた家があったってことが分かれば、それでいいんだ。
「みんな酒場に集まってる?」
「え、あ……うん。レイラが来ないから、探しに来たんだ」
「それはとんだお手数を……」
ベンチから立ち上がって、すぐ横にある階段を上る。
後ろからついてきたエイトは、まだ私を気にしているようだった。
そんなに気にしなくてもいいのに。
酒場に入ると、既にヤンガスとククールとゼシカは一杯やっていた。
遅くなったのは私だから何も言うまい。
ヤンガスは既にへべれけだけど。
「お待たせしました!」
「あ、姉貴〜! 遅いでげすよ〜!」
「めっちゃ出来上がってるじゃん、何杯飲んだのヤンガス」
「私が合流した時には既に四、五杯は飲んでたわ」
「それから軽く三杯は飲んでるぞ」
「なんだと……」
エイトが呆れたようにため息をついて、ヤンガスのためにお水を頼んだ。
その横から私もエールを一杯。
酒場は徐々に客も増え出して、賑やかになっていった。
「──あ! いたいた! おーい、そこの緑のワンピース着たお嬢さん!」
「へっ?」
酒場の入口からそんな声が飛んできて、私たち全員がそちらを振り向いた。
そこには常連らしき町民と……まさかの神父様。
腐り切った修道院の僧侶ならまだしも、こういう町の教会の神父様はまともだと思ってたのに……。
こんな所に通うほど、落ちぶれていたのか……。
「あの方が?」
「そうそう。町の奴らにロアナス家のことを聞いて回ってたのは、あのお嬢さんで間違いないよ」
「……なんか私、知らないところでやらかした?」
「そんな風には見えないけど、でもレイラに用があるみたいよ?」
「……エイト、一緒にきて……」
「もちろん」
一人で行くのが怖すぎて、用心棒代わりにエイトを連れ出してしまった。
お、怒られではないと思いたいんだけど……!
でもこの町に昔住んでいた貴族のことを聞いて回るなんて、怪しいといえば怪しいか。
いや違う、私は決して怪しい者ではなくて!!
「お呼び出しして申し訳ない。ロアナス家のことを探しておられる方がいると聞いて、いても立ってもいられず」
「い、いえいえ! こちらこそ不躾に聞いて回ってすみません!」
「不躾などでは。では私も不躾ながらお尋ねしますが、あなたはロアナス家と関わりのあった方ですか?」
「……えっと、それは……」
「僕たちは、トロデーン城の者です」
どう答えようか迷っていると、隣からエイトが助け舟を出してくれた。
ナイス、エイト!
トロデーン城の関係者と名乗れば、ロアナス家のことを探っていても不思議じゃない!
「なるほど、トロデーン城の……」
「城を元に戻すために旅をしているんですが、旅の途中でロアナス家にまつわる話を耳にしたので、気になってしまって。ご不快に思われたらすみません。僕らは明日にはこの町を出るので……」
「とんでもない! トラペッタがあるのは、ひとえにロアナス家の守りあってこそでした。本当に残念なことです。当主ご夫妻が魔物に殺されてしまったばかりか、一人娘のお嬢様も行方不明のまま、十年が経とうとしている。……お嬢様が生きておられれば、ちょうどあなたくらいのお年でした」
……まあ、お嬢様ご本人なので、私。
でも私がその「行方不明だったお嬢様です」と名乗って、何になる。
ロアナス家の歴史は終わった。
今更始めることなんてできない。
「そういえば、あなたはお嬢様によく似ておられる。その黒い髪、緑の瞳……」
「……」
「十年ほど前のことですから、お嬢様もご存命ではないと思いますが……。もし神のご加護の元、奇跡が起こったのならば、どこかで穏やかに暮らしていてほしいものですな。……長話に付き合わせてしまい、失礼致しました。私はこれで。皆様の旅路に、神のご加護があらんことを……」
「……あの!」
立ち去ろうとする神父様を咄嗟に呼び止める。
私がその行方不明だった本人です、とは言えないけど……。
でもこの町は、私の家族のことを覚えていてくれた。
……だから。
「幸せに暮らしてる、と思います。自分のことは何も覚えていなくて、この町のことも家族のことも、忘れちゃったのかもしれないけど。……でも、ちゃんと幸せなんじゃないかなって思います。……な、なんて、無関係の私が何言ってんだって話ですけどね! あはは……」
神父様は不思議そうに目を丸くして、それから柔和な笑みを浮かべたままひとつ頷き、立ち去って行った。
……私は幸せに暮らしてます。
この町で過ごしていた頃の記憶は何もないけど、トロデーン城で過ごした日々は、確かに幸せだった。
今の私は、そんな幸せを取り戻すために、頑張ってる最中だ。
「……戻ろっか。お腹空いちゃった!」
「うん。そうだね」
エイトが酒場のドアを開ける。
こちらを気にしている様子の三人に手を振って、私は酒場に戻った。
とりあえず……怒られじゃなくて良かった!!
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