閑話4
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霊導者とは。
読んで字のごとく、霊魂を天へと導く力を持つ者。
現世に留まり天へ逝くことの出来ない故人の魂を神の御許へ還し、更には葬式で聖句を捧げ、魂の安寧を祈ることができる、まさに霊能者と呼べる者である。
霊導者の家系は世界に一つしかない。
トロデーン国領における、名家の中の名家──ロアナス家だ。
ロアナス家は元々、ただの貴族の家柄であったのだが、とある当主夫婦の間に出来た赤子は、生まれながらに並々ならぬ力を持っていた。
その赤子を診た呪術者は、こう予言した。
『この赤子は神に祝福されし者。されど、世界を邪悪な力が覆うとき、その魂を以て闇の力を封じるであろう。そして、この子の子孫も、また……』
神に力を授けられた赤子は、生まれながらにして世界の救世主となった。
ヨシュアと名付けられた赤子は育つにつれ、人には見えぬモノ──霊魂が見えるようになっていった。
その霊魂と会話をすることで、その霊魂が安らかに天へ召されるということを知ったヨシュアは、己が持つ力を『霊導』と名付け、自らを『霊導者』と名乗った。
そして数十年が経ち、ヨシュアは十九のとき、家庭を持った。
女当主が君臨するロアナス家を継ぎ、貴族としても、霊導者としてもトロデーンに貢献し続けた。
異変を読み取ったのは、突然のこと。
ありとあらゆる方向から禍々しい気がとめどなく溢れ、魔物は凶暴化し、ヨシュア自身も狙われることが多くなった。
それは明らかな異常事態であり、世界に邪悪な力が迫っている証だった。
「どうか、我々と共に暗黒神を封印してほしい」
ヨシュアの元に現れた七人は、神鳥レティスの呼び掛けに応じた者たち──後の賢者となる者たちであった。
七人の願いにヨシュアは威厳をもって頷いた。
「我が力が役に立つというのなら、協力は惜しまない。世界の滅亡は私も望まぬところだ。……この子の未来を、潰してはならぬからな」
賢者たちに対するヨシュアの返答は、こうであった。
それから八人は、神鳥と呼ばれる聖獣の元を訪れ、自分たちを暗黒神の元まで連れて行くよう頼み込んだ。
この者たちならもしやと思ったのであろう、神鳥レティスは承諾し、彼らを暗黒神の元へと送り届けた。
そして死闘を繰り広げた末、彼らは暗黒神の封印に成功する。
──しかし、その封印には代償が必要だった。
とてつもなく大きな代償が……。
「私がその代償を払おう」
迷いなく進み出たのは、霊導者ヨシュアであった。
最初に止めたのは賢者のひとり、呪術師クーパスだ。
「馬鹿め、お前には娘がいるのだろう」
「だからこそだ。ここで誰かが行かねば、この禍々しき神は世界を破滅へと導く。お前たちには、この戦いを子々孫々に至るまで語り継いでもらわねばならん。そして、この場において、子孫を繋いでいるのはこの私だ」
「しかし、お前の子孫には誰が語り継ぐのだ」
大学者カッティードの問いを受け、ヨシュアは別の人物へと答えた。
それは魔術師のマスター・コゾであった。
「コゾ、ひとつ頼まれてくれるか」
「なんじゃ」
「この戦いから帰った後、この戦いのことを伝記として書き綴り、私の子に授けてくれ。いずれあの子が大きく育つ中で、その本が語り継いでくれるように」
「……承知した」
マスター・コゾに頷き、ヨシュアは最後にレティスを見やった。
我らが盟友、賢者へ世界の危機を伝えた神の使いは、悲しそうな瞳でヨシュアを見つめている。
「本当に……よいのですか」
「良しとする他あるまい。そうでもせねば、娘の生きる世界がなくなるのでな。親としてそれは看過できん」
ヨシュアは暗黒神を見つめ、それからゆっくりと、静かな声で聖句を唱えた。
ヨシュアが編み出した数多の聖句の中でも、それは最も強力であり、最も代償の大きい聖句であった。
「我が聖なる力よ、我に力を与えたまえ。この身は闇を切り裂く剣となり、光を守る盾とならん」
ヨシュアの身体が、目も眩むほどの光に包まれる。
呼び掛けに応じるかのように、暗黒神を清浄な光が覆っていき──。
「今ここに、我が魂と七人の血脈をもって暗黒神を封印せんことを願う! 人の子を守れ! 我が子孫たちを! この世界を守る封印とならん!!」
暗黒神が苦悶の叫びを上げ、その魂と肉体が分離する。
こうして、暗黒神の魂は一つの杖に、肉体はとある無人島の岩肌に封印された。
この二つのうち、封印の杖はマスター・コゾによってトロデーン王国へ持ち帰られることとなる。
以降、トロデーンの国王は、代々この封印の杖を守り続ける使命を担っていくこととなった。
ヨシュア・ロアナスの血を受け継ぐロアナス家はその後も長く続いたが──。
とある日を境にロアナス家は断絶。
長らく行方不明であった一人娘の死亡が認定され、ロアナス家は長い歴史に幕を下ろすこととなった──。
読んで字のごとく、霊魂を天へと導く力を持つ者。
現世に留まり天へ逝くことの出来ない故人の魂を神の御許へ還し、更には葬式で聖句を捧げ、魂の安寧を祈ることができる、まさに霊能者と呼べる者である。
霊導者の家系は世界に一つしかない。
トロデーン国領における、名家の中の名家──ロアナス家だ。
ロアナス家は元々、ただの貴族の家柄であったのだが、とある当主夫婦の間に出来た赤子は、生まれながらに並々ならぬ力を持っていた。
その赤子を診た呪術者は、こう予言した。
『この赤子は神に祝福されし者。されど、世界を邪悪な力が覆うとき、その魂を以て闇の力を封じるであろう。そして、この子の子孫も、また……』
神に力を授けられた赤子は、生まれながらにして世界の救世主となった。
ヨシュアと名付けられた赤子は育つにつれ、人には見えぬモノ──霊魂が見えるようになっていった。
その霊魂と会話をすることで、その霊魂が安らかに天へ召されるということを知ったヨシュアは、己が持つ力を『霊導』と名付け、自らを『霊導者』と名乗った。
そして数十年が経ち、ヨシュアは十九のとき、家庭を持った。
女当主が君臨するロアナス家を継ぎ、貴族としても、霊導者としてもトロデーンに貢献し続けた。
異変を読み取ったのは、突然のこと。
ありとあらゆる方向から禍々しい気がとめどなく溢れ、魔物は凶暴化し、ヨシュア自身も狙われることが多くなった。
それは明らかな異常事態であり、世界に邪悪な力が迫っている証だった。
「どうか、我々と共に暗黒神を封印してほしい」
ヨシュアの元に現れた七人は、神鳥レティスの呼び掛けに応じた者たち──後の賢者となる者たちであった。
七人の願いにヨシュアは威厳をもって頷いた。
「我が力が役に立つというのなら、協力は惜しまない。世界の滅亡は私も望まぬところだ。……この子の未来を、潰してはならぬからな」
賢者たちに対するヨシュアの返答は、こうであった。
それから八人は、神鳥と呼ばれる聖獣の元を訪れ、自分たちを暗黒神の元まで連れて行くよう頼み込んだ。
この者たちならもしやと思ったのであろう、神鳥レティスは承諾し、彼らを暗黒神の元へと送り届けた。
そして死闘を繰り広げた末、彼らは暗黒神の封印に成功する。
──しかし、その封印には代償が必要だった。
とてつもなく大きな代償が……。
「私がその代償を払おう」
迷いなく進み出たのは、霊導者ヨシュアであった。
最初に止めたのは賢者のひとり、呪術師クーパスだ。
「馬鹿め、お前には娘がいるのだろう」
「だからこそだ。ここで誰かが行かねば、この禍々しき神は世界を破滅へと導く。お前たちには、この戦いを子々孫々に至るまで語り継いでもらわねばならん。そして、この場において、子孫を繋いでいるのはこの私だ」
「しかし、お前の子孫には誰が語り継ぐのだ」
大学者カッティードの問いを受け、ヨシュアは別の人物へと答えた。
それは魔術師のマスター・コゾであった。
「コゾ、ひとつ頼まれてくれるか」
「なんじゃ」
「この戦いから帰った後、この戦いのことを伝記として書き綴り、私の子に授けてくれ。いずれあの子が大きく育つ中で、その本が語り継いでくれるように」
「……承知した」
マスター・コゾに頷き、ヨシュアは最後にレティスを見やった。
我らが盟友、賢者へ世界の危機を伝えた神の使いは、悲しそうな瞳でヨシュアを見つめている。
「本当に……よいのですか」
「良しとする他あるまい。そうでもせねば、娘の生きる世界がなくなるのでな。親としてそれは看過できん」
ヨシュアは暗黒神を見つめ、それからゆっくりと、静かな声で聖句を唱えた。
ヨシュアが編み出した数多の聖句の中でも、それは最も強力であり、最も代償の大きい聖句であった。
「我が聖なる力よ、我に力を与えたまえ。この身は闇を切り裂く剣となり、光を守る盾とならん」
ヨシュアの身体が、目も眩むほどの光に包まれる。
呼び掛けに応じるかのように、暗黒神を清浄な光が覆っていき──。
「今ここに、我が魂と七人の血脈をもって暗黒神を封印せんことを願う! 人の子を守れ! 我が子孫たちを! この世界を守る封印とならん!!」
暗黒神が苦悶の叫びを上げ、その魂と肉体が分離する。
こうして、暗黒神の魂は一つの杖に、肉体はとある無人島の岩肌に封印された。
この二つのうち、封印の杖はマスター・コゾによってトロデーン王国へ持ち帰られることとなる。
以降、トロデーンの国王は、代々この封印の杖を守り続ける使命を担っていくこととなった。
ヨシュア・ロアナスの血を受け継ぐロアナス家はその後も長く続いたが──。
とある日を境にロアナス家は断絶。
長らく行方不明であった一人娘の死亡が認定され、ロアナス家は長い歴史に幕を下ろすこととなった──。
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