50章
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「エイトさん、そしてレイラさんや」
昼間のように明るい夜の中で、メディさんは……これから殺されるかもしれないのに、微笑んでいた。
それがなおのこと悲しくて、その先の言葉を聞きたくなくて……。
「駄目ですよ、メディさん……。行ったりなんかしたら……」
止める声は情けないくらい震えていた。
それでも、メディさんは、とっくに覚悟を決めていた。
「後のことは、頼みましたぞ……」
そんな、そんなの嫌だ、もう嫌だ!!
これ以上……誰かが犠牲になるなんて、もう嫌なのに!!
「メディさん! だめ!」
「レイラ、行くな! 殺されるぞ!」
「だって! メディさんが……っ! 離してよククール!」
「離せるかバカ野郎!」
後ろからククールに羽交い絞めにされて、身動きが取れない。
そうこうするうちに、メディさんが静かにレオパルドの前へと進み出る。
その隣にはバフも一緒だ。
今ならまだ間に合う。
メディさんを守れる。
レオパルドだって倒せるかもしれない。
……なのに、身体は凍り付いたように動かなかった。
『よくぞ来た、賢者の末裔よ。今その命、刈り取ってくれよう。だが何も怯えることはない。すぐにお前の息子にも後を追わせてやるのだからな』
「やはりそういうことかい。……でも、バアさんが相手だからって、何でも思い通りになるとは思わないことだね」
そう言うが否や、メディさんは何かの袋をレオパルド目掛けて投げつけた。
それはレオパルドの目に当たって、真っ赤な粉が散らばる。
遠目から見ても、それはヌーク草の粉だと分かった。
だからメディさんは、大人しく前に出たのか……!
『ガアァァァァッ!! き、貴様、何をぉ……』
「どうじゃね? ヌーク草の粉はよく効くだろう? さぁバフ、お行きっ!」
バフが見たこともないくらい俊敏な動きで、レオパルドの足元からグラッドさんを救出していく。
ほ、と小さく安堵の息を零しかけて、レオパルドの様子がおかしいことに気付いた。
『グオォォォッ!! おのれ、おのれ、おのれーッ!!』
「メディさん危ない!!」
私が駆け出すより──向こうが早かった。
メディさんへ目掛けて飛びつくように駆けたレオパルドが、一瞬でメディさんの懐に入って……。
目の前が真っ赤だ。
赤い炎の逆光の中で……メディさんが、杖に刺し貫かれて……。
嫌だ、そんなの……こんなの嘘だ……。
呆然と私たちがその光景を見つめる中で、レオパルドの咥えた杖が、またひとつ封印を解かれた。
感じる闇の力が、更に膨れていく。
『老いぼれが味な真似を! これでは目も鼻も効かぬ……。だが残る封印はあとひとつ。あと一人……最後の賢者を葬れば、我が魂はこの忌まわしき杖より抜け出せる!』
レオパルドが力を溜め込み……そして眩い光と共に、力が解放された。
レオパルドの背からは大きな翼が生え……体表は手足と顔が青い。
ドルマゲスが姿を変えた時と同じだ……。
こんなの、もうただの魔物……。
長い尻尾が地面を打つ。
そうして一気にレオパルドは空へと飛び上がった。
「待ちなさい! ようやく追いついたんだから。逃がさないわよ!」
レオパルドを撃ち落とそうとしたゼシカや私たちを阻むように、ダースウルフェンがじりじりと迫ってくる。
その光景を見下ろして……レオパルドはゆっくりと飛び去っていった。
私たちはそれを見送ることしかできなくて……。
レオパルドの気配が完全に途切れた頃、ダースウルフェンたちは正気を取り戻したように、私たちの前から立ち去って行った。
「そんな……」
足から力が抜けて、地面に座り込んでしまった。
私の視線の先で、バフが倒れたメディさんを何度も鼻でつついて起こそうとする。
でも……メディさんは目を覚まさない。
ようやく目を覚ましたグラッドさんが、メディさんに気が付いて、腕だけで這い寄っていく。
そうして震える手が、メディさんの肩を揺すった。
「か、母さん……。なんてことだ。俺があの黒犬に捕まったばかりに……。ようやく謝ることができると思ってたのに……。俺の……俺のせいで!!」
グラッドさんが地面を殴って叫ぶ。
慟哭だけが響いて……。
私たちは、どうすることもできなかった……。
メディさんの表情は安らかで……だから余計に、心が痛い。
どうして守れなかったんだろう。
ひょっとして本当に、私たちのやっていることは無駄なことなの……?
世界は暗黒神の目覚めを迎えるしかなくて……それは誰にも止められない事なの……?
ガラガラと音を立てて、山小屋が燃え落ちていく。
誰もが痛切な面持ちで……。
なのに……やっぱりどうしても、私は涙が出なかった。
悲しくて悲しくてたまらないのに……私は泣くことさえ出来なかった。
昼間のように明るい夜の中で、メディさんは……これから殺されるかもしれないのに、微笑んでいた。
それがなおのこと悲しくて、その先の言葉を聞きたくなくて……。
「駄目ですよ、メディさん……。行ったりなんかしたら……」
止める声は情けないくらい震えていた。
それでも、メディさんは、とっくに覚悟を決めていた。
「後のことは、頼みましたぞ……」
そんな、そんなの嫌だ、もう嫌だ!!
これ以上……誰かが犠牲になるなんて、もう嫌なのに!!
「メディさん! だめ!」
「レイラ、行くな! 殺されるぞ!」
「だって! メディさんが……っ! 離してよククール!」
「離せるかバカ野郎!」
後ろからククールに羽交い絞めにされて、身動きが取れない。
そうこうするうちに、メディさんが静かにレオパルドの前へと進み出る。
その隣にはバフも一緒だ。
今ならまだ間に合う。
メディさんを守れる。
レオパルドだって倒せるかもしれない。
……なのに、身体は凍り付いたように動かなかった。
『よくぞ来た、賢者の末裔よ。今その命、刈り取ってくれよう。だが何も怯えることはない。すぐにお前の息子にも後を追わせてやるのだからな』
「やはりそういうことかい。……でも、バアさんが相手だからって、何でも思い通りになるとは思わないことだね」
そう言うが否や、メディさんは何かの袋をレオパルド目掛けて投げつけた。
それはレオパルドの目に当たって、真っ赤な粉が散らばる。
遠目から見ても、それはヌーク草の粉だと分かった。
だからメディさんは、大人しく前に出たのか……!
『ガアァァァァッ!! き、貴様、何をぉ……』
「どうじゃね? ヌーク草の粉はよく効くだろう? さぁバフ、お行きっ!」
バフが見たこともないくらい俊敏な動きで、レオパルドの足元からグラッドさんを救出していく。
ほ、と小さく安堵の息を零しかけて、レオパルドの様子がおかしいことに気付いた。
『グオォォォッ!! おのれ、おのれ、おのれーッ!!』
「メディさん危ない!!」
私が駆け出すより──向こうが早かった。
メディさんへ目掛けて飛びつくように駆けたレオパルドが、一瞬でメディさんの懐に入って……。
目の前が真っ赤だ。
赤い炎の逆光の中で……メディさんが、杖に刺し貫かれて……。
嫌だ、そんなの……こんなの嘘だ……。
呆然と私たちがその光景を見つめる中で、レオパルドの咥えた杖が、またひとつ封印を解かれた。
感じる闇の力が、更に膨れていく。
『老いぼれが味な真似を! これでは目も鼻も効かぬ……。だが残る封印はあとひとつ。あと一人……最後の賢者を葬れば、我が魂はこの忌まわしき杖より抜け出せる!』
レオパルドが力を溜め込み……そして眩い光と共に、力が解放された。
レオパルドの背からは大きな翼が生え……体表は手足と顔が青い。
ドルマゲスが姿を変えた時と同じだ……。
こんなの、もうただの魔物……。
長い尻尾が地面を打つ。
そうして一気にレオパルドは空へと飛び上がった。
「待ちなさい! ようやく追いついたんだから。逃がさないわよ!」
レオパルドを撃ち落とそうとしたゼシカや私たちを阻むように、ダースウルフェンがじりじりと迫ってくる。
その光景を見下ろして……レオパルドはゆっくりと飛び去っていった。
私たちはそれを見送ることしかできなくて……。
レオパルドの気配が完全に途切れた頃、ダースウルフェンたちは正気を取り戻したように、私たちの前から立ち去って行った。
「そんな……」
足から力が抜けて、地面に座り込んでしまった。
私の視線の先で、バフが倒れたメディさんを何度も鼻でつついて起こそうとする。
でも……メディさんは目を覚まさない。
ようやく目を覚ましたグラッドさんが、メディさんに気が付いて、腕だけで這い寄っていく。
そうして震える手が、メディさんの肩を揺すった。
「か、母さん……。なんてことだ。俺があの黒犬に捕まったばかりに……。ようやく謝ることができると思ってたのに……。俺の……俺のせいで!!」
グラッドさんが地面を殴って叫ぶ。
慟哭だけが響いて……。
私たちは、どうすることもできなかった……。
メディさんの表情は安らかで……だから余計に、心が痛い。
どうして守れなかったんだろう。
ひょっとして本当に、私たちのやっていることは無駄なことなの……?
世界は暗黒神の目覚めを迎えるしかなくて……それは誰にも止められない事なの……?
ガラガラと音を立てて、山小屋が燃え落ちていく。
誰もが痛切な面持ちで……。
なのに……やっぱりどうしても、私は涙が出なかった。
悲しくて悲しくてたまらないのに……私は泣くことさえ出来なかった。
