50章
夢小説設定
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町の中は平和そのもの。
ダースウルフェンに襲われた形跡もない。
無事に戻ってこられて安心したのはみんな同じで、全員が張っていた気を少しだけ緩めた。
「ようやく戻ってこられたか。ありがとう。世話になったな」
「いいえ。グラッドさんがご無事で何よりです」
グラッドさんは曖昧に微笑むと、思い詰めたような表情に戻った。
やっぱり、あの声が言っていたこと、気になっているんだろう。
「……ところで迷惑ついでに、ちょっと君たちに話しておきたいことがあるんだ。ここじゃなんだから、とりあえず私の部屋まで行こう。話はそれからだ」
「分かりました」
あの酔っ払いは、ひとまず階段の前からは退かされていたようだ。
ありがたくそこの階段を使わせてもらうことにした。
先導役は地元民ことグラッドさんがいるから心配ないしね!
グラッドさんの案内で、私たちはお部屋へと辿り着いた。
グラッドさんの話ということで、やはりククールは一人だけ、部屋の壁にもたれかかっている。
ちなみにここには陛下も同行していただいた。
入口が目の前だったというだけあり、誰も陛下には気付かなかったようだ。
お部屋の中は相変わらず大釜がグツグツと煮え立っていて、囲炉裏の効果で暖かい。
「……さて、まずは私と薬師メディの関係について話しておかなくてはならないね。隠していたわけではないんだが、実はあの人は、私の母親なんだ」
「メディさんの息子さん!? そうだったんだ……」
……似てないな。
お父さんに似たのかな、そうかもしれないな。
あまりにも彫りが深いというか……。
いやいや、そんなことを気にしてる場合じゃないだろ私。
「あの山小屋の裏にある遺跡。本当なら、私は母の跡を継いで、あれの守り人になるはずだったんだよ。それがどうしてこの町で暮らしているのか? ……私は、家を……母を捨てた人間なんだ」
「捨てた? それってどういうこと?」
「私は母から学んだ薬草の知識を、人々の役に立てたかった。だがあの山奥にいたのでは、それは難しい。そこで私は家を出て、このオークニスで薬師として人々のために尽くす道を選んだんだよ」
「……気持ちは分からんでもないがのう」
珍しく陛下が理解を示された。
どうするんだろうな、姫様がお嫁に行ってしまったら。
陛下、意気消沈してしまわないだろうか。
でも子を持つ親だからこそ、グラッドさんの思いも理解出来たのかもしれない。
「しかし夢を叶えても、私の心は晴れなかった。母ひとりを残して家を出たことが、うしろめたかった……。そして今日、君たちが母からあの袋を託されて、私の前に現れたんだ。本当に嬉しかったよ。母が私の生き方を認めてくれたような気がしたからね……」
「いつでも子供のことを見守り、その子が困っていれば助けようとする。親なんてのは、そういうものじゃよ」
深いお言葉だなぁ……。
私には親がいないけど、もしまだ両親が健在だったら、私のことも見守ってくれたんだろうか。
さすがに良家のご令嬢が『兵士になりたい!』と言い出したりはしなかっただろうし、言い出したとしても止めてそうだけど。
「……で、身の上話をするためにわしらをここまで呼んだのかね? 何か頼みでもある様子じゃったが……」
「……ああ、すまない。実は母に関わることで、どうしても気になることがあるんだ。君たちも聞いただろう? オオカミに襲われた時に聞こえた、あの不気味な声を……。あの声は私のことを指して、賢者の血は感じるが違うと言っていた。真の賢者を探しているとも……」
「そうね。気になることは言ってたわ。あの声……どこかで聞いたことがある声なのよ。間違いないわ」
ゼシカが聞いた声……とするなら、ひょっとしてあの声がラプソーン?
じゃあやっぱり、レオパルドを支配しているのはラプソーン自身ということか。
犬にまで憑依して、奴も復活のために形振り構っていられないってところなのかもしれない。
「でも、賢者のこととグラッドさんが、どう関係して……」
「実は私の家系には、かつて暗黒神を封じた賢者のひとりの血が流れているんだ」
「……!!」
「そして同じ血を引く者は、私以外には母しかいないはず。ならば真の賢者というのは……? そう考え始めたら、母のことが心配になってきてね。とにかく様子を見に行こうと思うんだ。そこでどうだろう? 君たちも一緒に行ってくれないか? 正直、私一人では心細いんだよ」
「も、もちろんです!!」
まさかここで賢者の末裔に辿り着くなんて!
しかもメディさんが狙われてるなんて、尚更許せない!!
私たちには一宿一飯の恩がある、絶対に助けないと!!
「そうか、行ってくれるか。じゃあ善は急げだ! さっそく出発しようじゃないか」
「ええ! 急ぎましょう!!」
私たちが意気込んだその時、お部屋のドアがノックされ、誰かが入ってきた。
よく見ればそれは町の入口で酔い潰れていた酔っ払いと、町の衛兵だ。
「グラッドさん。すまないけど、病人をひとり診てもらえないか?」
「ぶえっくしゅ!! ゔ〜っ……」
「まったく! そんな格好で酔い潰れてりゃ、風邪ひいて当然だろう」
「なんちゅータイミングで急患が来るんだよ……」
これからメディさんのところに急がなきゃならんって時に〜!!
それもこれもオメーが酔い潰れてグースカ寝てるからだぞ!!
分かってんのか、このスカポンタン!!
「いや、悪いが今は急いで……」
「ゲホッ! ゲホッ! きぼちわりぃ。頭がクラクラする……。死ぬぅ! 死んじまう〜!」
「死なんわ! いや死ぬか?」
「どっちなんだよ」
いや、私が思ってるより、この雪国で引く風邪は厄介かもしれないと思って……。
平地出身の人間が勝手に判断しちゃ駄目だよな……。
「……わかった。すぐに診よう。ちょうど、いい薬草が手に入ったところだったんだ。……こういうわけだ。すまないが私の方はしばらくここを離れられそうにない。必ず後で追っていくから、君たちは先に母のところへ向かってもらえないか? 何もなければ、それに越したことはないんだが……。とにかく頼んだよ」
「分かりました。先に行っておきます!」
私たちはグラッドさんの部屋を飛び出して、右と左に分かれた。
全員が「え?」という顔になる。
ちなみに左に行ったのは私とヤンガス。
右に行ったのは陛下とエイトとククールとゼシカだ。
私とヤンガスは黙って三人へとついて行った。
こういうときはね、多数決に従うべきなんだよ。
ダースウルフェンに襲われた形跡もない。
無事に戻ってこられて安心したのはみんな同じで、全員が張っていた気を少しだけ緩めた。
「ようやく戻ってこられたか。ありがとう。世話になったな」
「いいえ。グラッドさんがご無事で何よりです」
グラッドさんは曖昧に微笑むと、思い詰めたような表情に戻った。
やっぱり、あの声が言っていたこと、気になっているんだろう。
「……ところで迷惑ついでに、ちょっと君たちに話しておきたいことがあるんだ。ここじゃなんだから、とりあえず私の部屋まで行こう。話はそれからだ」
「分かりました」
あの酔っ払いは、ひとまず階段の前からは退かされていたようだ。
ありがたくそこの階段を使わせてもらうことにした。
先導役は地元民ことグラッドさんがいるから心配ないしね!
グラッドさんの案内で、私たちはお部屋へと辿り着いた。
グラッドさんの話ということで、やはりククールは一人だけ、部屋の壁にもたれかかっている。
ちなみにここには陛下も同行していただいた。
入口が目の前だったというだけあり、誰も陛下には気付かなかったようだ。
お部屋の中は相変わらず大釜がグツグツと煮え立っていて、囲炉裏の効果で暖かい。
「……さて、まずは私と薬師メディの関係について話しておかなくてはならないね。隠していたわけではないんだが、実はあの人は、私の母親なんだ」
「メディさんの息子さん!? そうだったんだ……」
……似てないな。
お父さんに似たのかな、そうかもしれないな。
あまりにも彫りが深いというか……。
いやいや、そんなことを気にしてる場合じゃないだろ私。
「あの山小屋の裏にある遺跡。本当なら、私は母の跡を継いで、あれの守り人になるはずだったんだよ。それがどうしてこの町で暮らしているのか? ……私は、家を……母を捨てた人間なんだ」
「捨てた? それってどういうこと?」
「私は母から学んだ薬草の知識を、人々の役に立てたかった。だがあの山奥にいたのでは、それは難しい。そこで私は家を出て、このオークニスで薬師として人々のために尽くす道を選んだんだよ」
「……気持ちは分からんでもないがのう」
珍しく陛下が理解を示された。
どうするんだろうな、姫様がお嫁に行ってしまったら。
陛下、意気消沈してしまわないだろうか。
でも子を持つ親だからこそ、グラッドさんの思いも理解出来たのかもしれない。
「しかし夢を叶えても、私の心は晴れなかった。母ひとりを残して家を出たことが、うしろめたかった……。そして今日、君たちが母からあの袋を託されて、私の前に現れたんだ。本当に嬉しかったよ。母が私の生き方を認めてくれたような気がしたからね……」
「いつでも子供のことを見守り、その子が困っていれば助けようとする。親なんてのは、そういうものじゃよ」
深いお言葉だなぁ……。
私には親がいないけど、もしまだ両親が健在だったら、私のことも見守ってくれたんだろうか。
さすがに良家のご令嬢が『兵士になりたい!』と言い出したりはしなかっただろうし、言い出したとしても止めてそうだけど。
「……で、身の上話をするためにわしらをここまで呼んだのかね? 何か頼みでもある様子じゃったが……」
「……ああ、すまない。実は母に関わることで、どうしても気になることがあるんだ。君たちも聞いただろう? オオカミに襲われた時に聞こえた、あの不気味な声を……。あの声は私のことを指して、賢者の血は感じるが違うと言っていた。真の賢者を探しているとも……」
「そうね。気になることは言ってたわ。あの声……どこかで聞いたことがある声なのよ。間違いないわ」
ゼシカが聞いた声……とするなら、ひょっとしてあの声がラプソーン?
じゃあやっぱり、レオパルドを支配しているのはラプソーン自身ということか。
犬にまで憑依して、奴も復活のために形振り構っていられないってところなのかもしれない。
「でも、賢者のこととグラッドさんが、どう関係して……」
「実は私の家系には、かつて暗黒神を封じた賢者のひとりの血が流れているんだ」
「……!!」
「そして同じ血を引く者は、私以外には母しかいないはず。ならば真の賢者というのは……? そう考え始めたら、母のことが心配になってきてね。とにかく様子を見に行こうと思うんだ。そこでどうだろう? 君たちも一緒に行ってくれないか? 正直、私一人では心細いんだよ」
「も、もちろんです!!」
まさかここで賢者の末裔に辿り着くなんて!
しかもメディさんが狙われてるなんて、尚更許せない!!
私たちには一宿一飯の恩がある、絶対に助けないと!!
「そうか、行ってくれるか。じゃあ善は急げだ! さっそく出発しようじゃないか」
「ええ! 急ぎましょう!!」
私たちが意気込んだその時、お部屋のドアがノックされ、誰かが入ってきた。
よく見ればそれは町の入口で酔い潰れていた酔っ払いと、町の衛兵だ。
「グラッドさん。すまないけど、病人をひとり診てもらえないか?」
「ぶえっくしゅ!! ゔ〜っ……」
「まったく! そんな格好で酔い潰れてりゃ、風邪ひいて当然だろう」
「なんちゅータイミングで急患が来るんだよ……」
これからメディさんのところに急がなきゃならんって時に〜!!
それもこれもオメーが酔い潰れてグースカ寝てるからだぞ!!
分かってんのか、このスカポンタン!!
「いや、悪いが今は急いで……」
「ゲホッ! ゲホッ! きぼちわりぃ。頭がクラクラする……。死ぬぅ! 死んじまう〜!」
「死なんわ! いや死ぬか?」
「どっちなんだよ」
いや、私が思ってるより、この雪国で引く風邪は厄介かもしれないと思って……。
平地出身の人間が勝手に判断しちゃ駄目だよな……。
「……わかった。すぐに診よう。ちょうど、いい薬草が手に入ったところだったんだ。……こういうわけだ。すまないが私の方はしばらくここを離れられそうにない。必ず後で追っていくから、君たちは先に母のところへ向かってもらえないか? 何もなければ、それに越したことはないんだが……。とにかく頼んだよ」
「分かりました。先に行っておきます!」
私たちはグラッドさんの部屋を飛び出して、右と左に分かれた。
全員が「え?」という顔になる。
ちなみに左に行ったのは私とヤンガス。
右に行ったのは陛下とエイトとククールとゼシカだ。
私とヤンガスは黙って三人へとついて行った。
こういうときはね、多数決に従うべきなんだよ。
