47章
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凍てつく風雪の中を進んで、トンネルから外へと出る。
そこは──あたり一面、雪景色が広がっていた。
想像以上の光景に私たちの足が止まる。
「す、ご……」
「雪……雪って、こんなに真っ白で……静かなんだ」
呼吸する度に息が白くなって、消えていく。
だがしかし、我々は目の前の景色を眺める余裕などない。
動かないと死ぬ気がするからだ!!
「これのどこが静かなんだよ。めちゃくちゃ吹雪いてるぞ」
「兄貴、姉貴〜! 何とか今日中に町なり宿なり見つけたほうがいいでがすよ〜!!」
「さ、寒いわねぇ……! レイラからコートを借りなかったら、私どうなってたのかしら……!!」
ビュオォォォと耳元で風が唸る。
風に乗って雪も猛烈な勢いで私たちに吹き付けてきて、全員既に雪を被っていた。
と、とにかく、凍死だけは避けないと!!
道なりに進もうにも、今歩いているところが道なのかすら怪しい。
だが進まないことにはどうにもならないので、私たちはとにかく固まって歩き続けた。
「……なんでわしがこんな寒い思いをせねばならんのだ。これもすべてドルマゲスのせい……。……いや奴はもう死んだか。ではレオなんとかいう犬のせいじゃな。まったく犬の分際で……」
陛下は御者台に座りながら、ブツブツと何かを呟いている。
文句を言いたい気持ちはよく分かるけど、ちょっと黙っててくれないだろうか。
主君相手にそんなことを言うわけにはいかないんだけどさ!
「ブツクサうるせぇなぁ! こっちだって寒さに気が立ってんだ! ちったぁ黙ってろよ!」
「な、なんじゃとぉ! 別に何の迷惑が掛かるわけでもなし、わしが何を言おうとわしの勝手じゃ! 他人にどうこう言われる筋合いはないわい!!」
「ちょ、ちょっと陛下、ヤンガス! なにもこんな猛吹雪の真っ只中で喧嘩しなくても!」
「あ〜まったく腹の立つ! わしは先に行くぞ!」
「えええ!?」
陛下は無情にも我々を置いて先に行ってしまった。
馬車が小さくなっていくのを呆気に取られて見送ってしまった、そのとき。
不意に地面が揺れ始め、何かがこちらへ向かってくる音が聞こえてきた。
「え、なに? 何事!?」
「地震でがすか!?」
「おい! あれ!」
ククールが右手側の山を指差す。
そこは何か……白いものが勢いよくこちらへ滑り落ちてきていた。
見たところ雪の塊みたいだけど……やばくない!?
「雪崩!!」
「まずい、こっちに来るぞ!!」
慌てて私たちはその場から走り出す。
……が、時すでに遅し。
「ウソぉぉぉぉ!!」
視界一面が真っ白になって──。
その直後、すべてが真っ暗になった。
* * *
麗らかな陽気が窓から差し込む、どこかの家の室内。
窓の外からは子供たちの笑い声が小さく聞こえ、室内の静けさを際立たせていた。
室内は書斎だろうか、壁一面に本棚が並んでいる。
その中で普段着の質素なドレスを着た若い女性が、一冊の本を手に取って、その表紙を寂しそうに眺めていた。
キィ、と軽い音がして、書斎のドアが小さく開く。
そこから顔を出した少女は、黒い髪に緑色の瞳……すぐに私だと気付いた。
「お母様、それはなぁに?」
「あらレイラ。これはね、お母様がお祖母様から頂いた、大切な本よ」
「何が書いてあるの?」
「ロアナス家の歴史──これまでの歩みと、我らが祖である賢者ヨシュアの偉業について」
「いぎょー?」
「レイラには難しかったかしら」
母の腕に抱かれ、幼い私が本棚を眺める。
これはなぁに、と私が掴んだ本のタイトルを見て、母が表情を曇らせる。
その本のタイトルは、『聖文教典』。
おそらく、霊導者が使う聖句を、歴代の霊導者たちはこれで勉強してきたんだろう。
「それはね、もう使わない本」
「どうして?」
「お母様もお祖母様もね、先祖のような力はもう残っていないの」
「力?」
「そう、不思議な力。お祖母様は死んだ人の魂を見ることもあったけど、お母様は何も見えないの。きっとあなたも……」
「しんだひとって?」
「夜になると見えるんですって。白くて透明な人だそうよ」
「私、それ見える」
無邪気な笑顔がそう告げた時──母なる人は、表情を凍り付かせた。
なんてこと、と呟く声は掠れていて、母のただならぬ様子を察した幼い私が、口を閉ざす。
母は私を床に下ろすと、優しい声で退室を促した。
幼い私が恐る恐ると部屋を出ていく。
パタンとドアの閉まる音を背中で聞いた母は、先程の私が手に取った本を開いた。
「……聖なる力よ、我が身に宿れ」
当然ながら何かが起きるはずもない。
ため息をついた母は、けれど何を思ったのか最後のページを開いた。
そこに記載されているのは、封印術。
これまで繊細な文字で解説されていたが、このページだけは字が違う。
誰かがここにページを付け足したかのようだ。
『霊導者ヨシュアは、悪しき力を持つ存在を、七賢者の血と己の存在によって封印した。ここに彼女の偉業を讃え、霊導者ヨシュアが最期に唱えた聖句を書き記す』
これ……ゼシカが言ってた、ヨシュアが自分を犠牲にしてラプソーンを封印した時の……?
状況的にはその時と今は似ている。
ラプソーンが蘇りつつある今の世界で、もう一度それを封印することが出来るのは、たぶん私だけだ。
『聖なる力よ、我に力を与えたまえ。この身は闇を切り裂く剣となり、光を守る盾とならん。今ここに、我が魂をもって暗黒神を封印せん。人の子を守れ、我が子孫たちを。この世界を守る封印とならん』
それが、ヨシュアが自分と引き換えにラプソーンを封印した聖句。
七賢者の血とヨシュアの魂によって杖に封印されたラプソーンは、気の遠くなるような時間の中で、トロデーン城から隙を伺っていた。
……もし今後、どうにもならないことになったら。
その時は、私の番だ。
そこは──あたり一面、雪景色が広がっていた。
想像以上の光景に私たちの足が止まる。
「す、ご……」
「雪……雪って、こんなに真っ白で……静かなんだ」
呼吸する度に息が白くなって、消えていく。
だがしかし、我々は目の前の景色を眺める余裕などない。
動かないと死ぬ気がするからだ!!
「これのどこが静かなんだよ。めちゃくちゃ吹雪いてるぞ」
「兄貴、姉貴〜! 何とか今日中に町なり宿なり見つけたほうがいいでがすよ〜!!」
「さ、寒いわねぇ……! レイラからコートを借りなかったら、私どうなってたのかしら……!!」
ビュオォォォと耳元で風が唸る。
風に乗って雪も猛烈な勢いで私たちに吹き付けてきて、全員既に雪を被っていた。
と、とにかく、凍死だけは避けないと!!
道なりに進もうにも、今歩いているところが道なのかすら怪しい。
だが進まないことにはどうにもならないので、私たちはとにかく固まって歩き続けた。
「……なんでわしがこんな寒い思いをせねばならんのだ。これもすべてドルマゲスのせい……。……いや奴はもう死んだか。ではレオなんとかいう犬のせいじゃな。まったく犬の分際で……」
陛下は御者台に座りながら、ブツブツと何かを呟いている。
文句を言いたい気持ちはよく分かるけど、ちょっと黙っててくれないだろうか。
主君相手にそんなことを言うわけにはいかないんだけどさ!
「ブツクサうるせぇなぁ! こっちだって寒さに気が立ってんだ! ちったぁ黙ってろよ!」
「な、なんじゃとぉ! 別に何の迷惑が掛かるわけでもなし、わしが何を言おうとわしの勝手じゃ! 他人にどうこう言われる筋合いはないわい!!」
「ちょ、ちょっと陛下、ヤンガス! なにもこんな猛吹雪の真っ只中で喧嘩しなくても!」
「あ〜まったく腹の立つ! わしは先に行くぞ!」
「えええ!?」
陛下は無情にも我々を置いて先に行ってしまった。
馬車が小さくなっていくのを呆気に取られて見送ってしまった、そのとき。
不意に地面が揺れ始め、何かがこちらへ向かってくる音が聞こえてきた。
「え、なに? 何事!?」
「地震でがすか!?」
「おい! あれ!」
ククールが右手側の山を指差す。
そこは何か……白いものが勢いよくこちらへ滑り落ちてきていた。
見たところ雪の塊みたいだけど……やばくない!?
「雪崩!!」
「まずい、こっちに来るぞ!!」
慌てて私たちはその場から走り出す。
……が、時すでに遅し。
「ウソぉぉぉぉ!!」
視界一面が真っ白になって──。
その直後、すべてが真っ暗になった。
* * *
麗らかな陽気が窓から差し込む、どこかの家の室内。
窓の外からは子供たちの笑い声が小さく聞こえ、室内の静けさを際立たせていた。
室内は書斎だろうか、壁一面に本棚が並んでいる。
その中で普段着の質素なドレスを着た若い女性が、一冊の本を手に取って、その表紙を寂しそうに眺めていた。
キィ、と軽い音がして、書斎のドアが小さく開く。
そこから顔を出した少女は、黒い髪に緑色の瞳……すぐに私だと気付いた。
「お母様、それはなぁに?」
「あらレイラ。これはね、お母様がお祖母様から頂いた、大切な本よ」
「何が書いてあるの?」
「ロアナス家の歴史──これまでの歩みと、我らが祖である賢者ヨシュアの偉業について」
「いぎょー?」
「レイラには難しかったかしら」
母の腕に抱かれ、幼い私が本棚を眺める。
これはなぁに、と私が掴んだ本のタイトルを見て、母が表情を曇らせる。
その本のタイトルは、『聖文教典』。
おそらく、霊導者が使う聖句を、歴代の霊導者たちはこれで勉強してきたんだろう。
「それはね、もう使わない本」
「どうして?」
「お母様もお祖母様もね、先祖のような力はもう残っていないの」
「力?」
「そう、不思議な力。お祖母様は死んだ人の魂を見ることもあったけど、お母様は何も見えないの。きっとあなたも……」
「しんだひとって?」
「夜になると見えるんですって。白くて透明な人だそうよ」
「私、それ見える」
無邪気な笑顔がそう告げた時──母なる人は、表情を凍り付かせた。
なんてこと、と呟く声は掠れていて、母のただならぬ様子を察した幼い私が、口を閉ざす。
母は私を床に下ろすと、優しい声で退室を促した。
幼い私が恐る恐ると部屋を出ていく。
パタンとドアの閉まる音を背中で聞いた母は、先程の私が手に取った本を開いた。
「……聖なる力よ、我が身に宿れ」
当然ながら何かが起きるはずもない。
ため息をついた母は、けれど何を思ったのか最後のページを開いた。
そこに記載されているのは、封印術。
これまで繊細な文字で解説されていたが、このページだけは字が違う。
誰かがここにページを付け足したかのようだ。
『霊導者ヨシュアは、悪しき力を持つ存在を、七賢者の血と己の存在によって封印した。ここに彼女の偉業を讃え、霊導者ヨシュアが最期に唱えた聖句を書き記す』
これ……ゼシカが言ってた、ヨシュアが自分を犠牲にしてラプソーンを封印した時の……?
状況的にはその時と今は似ている。
ラプソーンが蘇りつつある今の世界で、もう一度それを封印することが出来るのは、たぶん私だけだ。
『聖なる力よ、我に力を与えたまえ。この身は闇を切り裂く剣となり、光を守る盾とならん。今ここに、我が魂をもって暗黒神を封印せん。人の子を守れ、我が子孫たちを。この世界を守る封印とならん』
それが、ヨシュアが自分と引き換えにラプソーンを封印した聖句。
七賢者の血とヨシュアの魂によって杖に封印されたラプソーンは、気の遠くなるような時間の中で、トロデーン城から隙を伺っていた。
……もし今後、どうにもならないことになったら。
その時は、私の番だ。
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