46章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ハワードさんのお屋敷に向かうと、南側の入口の方向から、三人がやってくるのが見えた。
ゼシカとエイトにはああ言ってもらえたけど、ヤンガスとククールはどう思ってるか分からない。
うまく顔を見られなくて口ごもる私を察したのか、エイトが黙って首を振った。
「ハワードのおっさんは何か知ってたりしませんかね? 話だけでも聞いておきやせんか、兄貴」
「……そうだね」
全員でハワードさんのお屋敷へと足を踏み入れる。
ハワードさんはお食事中だということで、一階にあるダイニングへ向かってみた。
ダイニングにはハワードさんが座っていて、けれどお食事はまったく進んでいないようだ。
「ハワードさん」
「おお、お前たちか。あの杖使い女を退治してからというもの、どうにも身体の調子が悪くてな。いや……。悪いのは身体じゃなくて、心の方じゃな。あれから胸騒ぎが止まらんのじゃ。うまく言えんのだが、自分がとんでもない失敗をしてしまったような、妙な気持ちに囚われておってな。わしともあろう者が、この心の迷いはどういうわけか……」
「それはたぶん……」
「……ええい。今はあまり話しとうないぞ。下がれ下がれ。用があるなら、また訪ねてくるがよい」
こいつはだめだ、あてにならない。
やっぱり私たちで杖を見つけるしかないな。
みんなで顔を見合わせて、ダイニングからエントランスへと出た、その時。
「きゃああ──ッ!!」
屋敷の外から、女性の悲鳴が聞こえてきた。
次いで屋敷に飛び込んできたのは、ここの調理場で働いているおばさんだ。
「誰か!! 誰か来ておくれ!! チェ、チェルスが……!!」
「……うそ」
全身から血の気が引いて、私たちは転ぶように屋敷の外へ飛び出した。
その先にいたのは、チェルスさんのことを熱心に見つめていた、あの若い女性だ。
その人は今にも倒れそうな顔で、噴水のほうを指差した。
「れ……レオパルドが!! レオパルドが……チェルスに、杖を!!」
「ぐあぁぁッ!!」
女性が言い終わらないうちに、絶叫が響く。
悲鳴の方向を見ると……。
そこには──倒れたチェルスさんに伸し掛かる、レオパルド。
その口には、あの杖を咥えていた。
「あの犬!! 杖に乗っ取られてやがる!!」
ククールが弓に矢をつがえる。
けれどその瞬間、レオパルドの口にある杖が、封印をまたひとつ解除した。
杖から感じる禍々しさがさらに増している。
『あと二人……。これ以上、邪魔はさせぬぞ……』
「二人……!? まさか私のこと忘れてんの!?」
「自分から申告してどうするんだ馬鹿が!!」
『貴様は最後の一人まで生かしておいてやる。せいぜい震えて待つがいい……』
そう言い残して、レオパルドは北の方向へと飛び去って行った。
あの犬、杖に乗っ取られてから身体能力も強化されたのか、犬にしてはとんでもない跳躍力だったぞ……!?
……いや、今はそんなことよりも、チェルスさんだ。
「チェルスさん、チェルスさん!!」
横たわったまま苦悶の表情を浮かべるチェルスさんは、口から血を大きく吐き出すと、私たちに縋るように震えた手を持ち上げた。
その手を両手で強く握り締める。
嫌だ、嘘だ、もう犠牲者は出さないって決めたのに。
「お、お願いし、ます……。レオパルド……さま、を……追い、かけて、くださ……い。レオ、パルド……さま、は……ハワードさ、ま、が……心を、開け、る、唯一、の、存在……だから……。レオパル、ド……さま、が……いなく、なった、ら……ハ、ハワードさ、ま、が……。ハワードさま、が……どんな、に……悲し、む……か……。……ハ、ワード……さ……──」
チェルスさんの体が力を失って。
滑り落ちていきそうになるその手を、私は必死に掴んだ。
でも閉じられた瞳は開くことはなくて……。
チェルスさんはそれきり、動かなかった。
「チェルスさん!!」
「クソ……駄目だ、ザオリクに応えない……!!」
「うそ、そんなの嘘……嘘だよ。だって、ねぇ、チェルスさん……チェルスさん……」
「なんでぇ……。アッシらは、また守れなかったってのかよ……」
私の手の中にあるチェルスさんの手が、冷たくなっていく。
誰か嘘だって、夢だって言って。
これはただの夢なんだって、私が見ている悪夢なんだって。
誰か、ねぇ、誰か……!!
「こ、これは……これは、どういうわけじゃ……」
ふらつくようにハワードさんがこちらへ近づいてくる。
そうしてチェルスさんの亡骸を見て、うわ言のように言った。
「チェルス……いや……偉大なる賢者、クーパス様の末裔……。……そうか。ようやく分かったぞ……。わしは……わしは……守り通すことができんかったのか……。代々の悲願である、因縁の呪を……。せっかくご先祖様が、わしとクーパス様の末裔を導いてくれたというのに……わしは……。うう、う……。頭が、頭が割れそうに痛む……」
ハワードさんが頭を両手で押さえて倒れ込む。
向こうからゼシカと陛下が駆け付けてきて、状況を見た瞬間に二人は言葉を失った。
……何度目だろう、人が死ぬ瞬間を見るのは。
どうして私は、人の命を奪うばかりで……。
「レイラのせいじゃない……。レイラのせいじゃないから……」
「エイト……。私の力は、誰かを守るためじゃなくて……誰かの命を奪うためにあるの……?」
「違う! レイラの力は、守るための力だ。レイラだけのせいじゃない……。僕ら全員が、守れなかったんだ……」
守れなかった。
私たちは、また守れなかった。
オディロ院長に続いて、チェルスまで犠牲にしてしまった。
戦う力はあるのに──私たちは、無力なままだ。
ゼシカとエイトにはああ言ってもらえたけど、ヤンガスとククールはどう思ってるか分からない。
うまく顔を見られなくて口ごもる私を察したのか、エイトが黙って首を振った。
「ハワードのおっさんは何か知ってたりしませんかね? 話だけでも聞いておきやせんか、兄貴」
「……そうだね」
全員でハワードさんのお屋敷へと足を踏み入れる。
ハワードさんはお食事中だということで、一階にあるダイニングへ向かってみた。
ダイニングにはハワードさんが座っていて、けれどお食事はまったく進んでいないようだ。
「ハワードさん」
「おお、お前たちか。あの杖使い女を退治してからというもの、どうにも身体の調子が悪くてな。いや……。悪いのは身体じゃなくて、心の方じゃな。あれから胸騒ぎが止まらんのじゃ。うまく言えんのだが、自分がとんでもない失敗をしてしまったような、妙な気持ちに囚われておってな。わしともあろう者が、この心の迷いはどういうわけか……」
「それはたぶん……」
「……ええい。今はあまり話しとうないぞ。下がれ下がれ。用があるなら、また訪ねてくるがよい」
こいつはだめだ、あてにならない。
やっぱり私たちで杖を見つけるしかないな。
みんなで顔を見合わせて、ダイニングからエントランスへと出た、その時。
「きゃああ──ッ!!」
屋敷の外から、女性の悲鳴が聞こえてきた。
次いで屋敷に飛び込んできたのは、ここの調理場で働いているおばさんだ。
「誰か!! 誰か来ておくれ!! チェ、チェルスが……!!」
「……うそ」
全身から血の気が引いて、私たちは転ぶように屋敷の外へ飛び出した。
その先にいたのは、チェルスさんのことを熱心に見つめていた、あの若い女性だ。
その人は今にも倒れそうな顔で、噴水のほうを指差した。
「れ……レオパルドが!! レオパルドが……チェルスに、杖を!!」
「ぐあぁぁッ!!」
女性が言い終わらないうちに、絶叫が響く。
悲鳴の方向を見ると……。
そこには──倒れたチェルスさんに伸し掛かる、レオパルド。
その口には、あの杖を咥えていた。
「あの犬!! 杖に乗っ取られてやがる!!」
ククールが弓に矢をつがえる。
けれどその瞬間、レオパルドの口にある杖が、封印をまたひとつ解除した。
杖から感じる禍々しさがさらに増している。
『あと二人……。これ以上、邪魔はさせぬぞ……』
「二人……!? まさか私のこと忘れてんの!?」
「自分から申告してどうするんだ馬鹿が!!」
『貴様は最後の一人まで生かしておいてやる。せいぜい震えて待つがいい……』
そう言い残して、レオパルドは北の方向へと飛び去って行った。
あの犬、杖に乗っ取られてから身体能力も強化されたのか、犬にしてはとんでもない跳躍力だったぞ……!?
……いや、今はそんなことよりも、チェルスさんだ。
「チェルスさん、チェルスさん!!」
横たわったまま苦悶の表情を浮かべるチェルスさんは、口から血を大きく吐き出すと、私たちに縋るように震えた手を持ち上げた。
その手を両手で強く握り締める。
嫌だ、嘘だ、もう犠牲者は出さないって決めたのに。
「お、お願いし、ます……。レオパルド……さま、を……追い、かけて、くださ……い。レオ、パルド……さま、は……ハワードさ、ま、が……心を、開け、る、唯一、の、存在……だから……。レオパル、ド……さま、が……いなく、なった、ら……ハ、ハワードさ、ま、が……。ハワードさま、が……どんな、に……悲し、む……か……。……ハ、ワード……さ……──」
チェルスさんの体が力を失って。
滑り落ちていきそうになるその手を、私は必死に掴んだ。
でも閉じられた瞳は開くことはなくて……。
チェルスさんはそれきり、動かなかった。
「チェルスさん!!」
「クソ……駄目だ、ザオリクに応えない……!!」
「うそ、そんなの嘘……嘘だよ。だって、ねぇ、チェルスさん……チェルスさん……」
「なんでぇ……。アッシらは、また守れなかったってのかよ……」
私の手の中にあるチェルスさんの手が、冷たくなっていく。
誰か嘘だって、夢だって言って。
これはただの夢なんだって、私が見ている悪夢なんだって。
誰か、ねぇ、誰か……!!
「こ、これは……これは、どういうわけじゃ……」
ふらつくようにハワードさんがこちらへ近づいてくる。
そうしてチェルスさんの亡骸を見て、うわ言のように言った。
「チェルス……いや……偉大なる賢者、クーパス様の末裔……。……そうか。ようやく分かったぞ……。わしは……わしは……守り通すことができんかったのか……。代々の悲願である、因縁の呪を……。せっかくご先祖様が、わしとクーパス様の末裔を導いてくれたというのに……わしは……。うう、う……。頭が、頭が割れそうに痛む……」
ハワードさんが頭を両手で押さえて倒れ込む。
向こうからゼシカと陛下が駆け付けてきて、状況を見た瞬間に二人は言葉を失った。
……何度目だろう、人が死ぬ瞬間を見るのは。
どうして私は、人の命を奪うばかりで……。
「レイラのせいじゃない……。レイラのせいじゃないから……」
「エイト……。私の力は、誰かを守るためじゃなくて……誰かの命を奪うためにあるの……?」
「違う! レイラの力は、守るための力だ。レイラだけのせいじゃない……。僕ら全員が、守れなかったんだ……」
守れなかった。
私たちは、また守れなかった。
オディロ院長に続いて、チェルスまで犠牲にしてしまった。
戦う力はあるのに──私たちは、無力なままだ。
5/5ページ
