45章
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ハワードさんのお部屋に入ると、ハワードさんは幾分か上機嫌だった。
……世の中には、こんなクズもいるんだな。
世界は広いということを、嫌でも思い知る。
「おお、来たか。さっきのことなら気にせんでよいぞ。いつものことじゃからな。わしはあのチェルスの顔を見ていると、自分でもなぜか分からんが、とにかく腹が立って仕方ないんじゃ。なのに不思議とクビにしようとは思わん。……きっとわしは、あの男を死ぬまでいびり倒したいんじゃろうな」
「こいつ──」
「……っと、そんな話はどうでもいい! クラン・スピネルじゃ! クラン・スピネルは手に入ったのか!?」
「ええ、ありますよ。どうぞ」
「おお! でかしたぞ!! どうやって手に入れたかなど、いちいち聞かんぞ。なにしろわしは結果だけを重視する男じゃからな」
ハワードさんにクラン・スピネルを手渡す。
投げつけたい気持ちを抑えたものの、気持ち放り投げたような形になったのは仕方のないことだと思う。
こんなやつ、ゼシカの件が絡んでなければ、喜んで杖の前に差し出したくらいだ。
「おお、手に持っただけで感じる、この魔力の波動は間違いない! これぞクラン・スピネルじゃ!! これさえあれば強力な結界も容易に作れるじゃろう。杖使い女なぞ、もはや恐れるものではないわい!」
その結界が、ゼシカの命を奪うものでないならいいけど。
もしそうだとしたら、私は刺し違えてでも結界を破るつもりだ。
だってゼシカは私たちの仲間なんだもん、絶対に助けなきゃ。
「それにしてもお前さんも嬉しいじゃろう。なにしろ大呪術師たるこのわしの役に立てたのじゃからな。よし! せっかくじゃ。次にあの杖使い女が来るまで、わしの屋敷の衛兵として雇ってやろう。よいな?」
「は? このやし」
「頼むからお口チャックしようなー、いい子だからなー」
「ムーッ!!」
この屋敷を守るのなんか別に何の栄誉でもないが、と素直に言おうとしたら、またもやククールの手が口を塞いできた。
だから息できんって、鼻まで塞いでんのよ。
「よし! お前さんはたった今から、このハワード邸の衛兵じゃ。さっそく仕事を与えてやろう」
「こっちへ来るのじゃ」と言って、ハワードさんは変な紋様の刻まれた壁へと向かった。
ハワードさんが手をかざすと、なんとそこに秘密の通路が現れたではないか。
呪術ってすごいな、いや真似したいとは思わないけど。
「この先には、わしの秘密の資料室がある。そこからある本を探してきてほしいのじゃ。本のタイトルは『世界結界全集』じゃ。その本に強力な結界のレシピが載っておる。宜しく頼むぞ」
これ衛兵の仕事か?
絶対違う気がするぞ……。
「衛兵ってのはこんな雑用係みてぇなこともやるもんなんでがすかね?」
「僕が知ってる衛兵は違うかな……」
なんとここには衛兵の中の衛兵、近衛兵が二人もいるのだ。
さすがにトロデーンにいた頃だって、こんな雑用を命じられたことないぞ。
しかも資料室は乱雑に本が積み上げられたりしていて、大変散らかっている。
「きったねえ書庫だな」
「これじゃ、どこにその本があるのか分かんないな」
「手当たり次第に探すしかないねー……」
「骨のいる作業でがすな……」
手元にある本の表紙を読んでは戻し、本棚を隅から隅まで見ては横の本棚に移動し──という作業を何度か繰り返したとき。
「……ん? これ……」
エイトが不思議そうに本を取り出した。
タイトルは『ハワード一族の歴史・上巻』と書いてある。
つまりこの家の歴史ってことだ。
『我が名はハワード。偉大なる大呪術師クーパスより、呪術の教えを乞う者なり。我が師にして偉大なる大呪術師クーパスは、強力な呪術の力を持つばかりでなく、なにより聡明な人物であった。師クーパスは気付いていた。いずれ世界に闇の力蘇りしとき、己の持つ呪術の力が、自分の一族こそ賢者の血筋であると魔の存在に示してしまうだろう……と。師クーパスは賢者の血を魔の力に悟られぬように、自らの呪術の力を我がハワード一族に譲り渡した。呪術の力を失った師クーパスは、最後の言葉もなく、突然に私の前から姿を消してしまった。私は必死でその行方を探したが、師クーパスの行方はとうとう分からずじまいだった……』
……なるほどな?
つまりハワードさんの呪術の力は、賢者であるクーパスという人から、ご先祖さまが譲り受けたものだったってことだ。
まあ、あんだけ『偉大なる大呪術師』とか自分で言ってるし、魔の存在に対する囮としては効果があったかもしれない。
そして上巻があるということは、下巻もあるということだ!
隣の本棚を探すと、『ハワード一族の歴史・下巻』を見つけた。
ククールとヤンガスも気になったようで、四人で本を囲んでいる。
ちょっと狭いな。
『我が名はハワード。師クーパスより呪術の力を託された私は、我が一族に因縁の呪をかけることにした。この因縁の呪があれば、どれほど時が流れ、どれほど人の記憶が薄れゆこうとも、魔の力、真に迫りし時には、師クーパスの末裔と我がハワード一族の末裔は必ず導かれ、出会うだろう。そして我が一族の末裔が、命を賭して師クーパスの末裔をお守りすることを、ただひたすらに願うばかりである……』
魔の力が真に迫りし時……それはつまり、今ってことじゃない?
だけど、クーパスの末裔らしき人はここに来ていない。
長い年月を経て、呪も薄れてしまったのだろうか。
……と、読書に夢中になっていたけど、肝心の世界結界全集は?
慌てて右端の本棚から、目当てのタイトルを探していく。
「あ……あったー!!」
ついに探し当てた、世界結界全集!
まさか本一冊を探すのに、ここまで時間がかかるとは思わなかったぞ。
あとはこれをハワードさんに渡して……と階段を登っていると、外がやけに騒がしいことに気付いた。
「嫌な雰囲気だな」
「ひょっとして……」
「ゼシカが来たのかもしれねぇでげす! 急ぐでがすよ、兄貴、姉貴!」
私たちは階段を駆け上がって、ハワードさんの部屋へと飛び込んだ。
ゼシカが来たなら、私たちが相手をしないと!
並の衛兵や、ましてやチェルスさんじゃ相手にならない!
……世の中には、こんなクズもいるんだな。
世界は広いということを、嫌でも思い知る。
「おお、来たか。さっきのことなら気にせんでよいぞ。いつものことじゃからな。わしはあのチェルスの顔を見ていると、自分でもなぜか分からんが、とにかく腹が立って仕方ないんじゃ。なのに不思議とクビにしようとは思わん。……きっとわしは、あの男を死ぬまでいびり倒したいんじゃろうな」
「こいつ──」
「……っと、そんな話はどうでもいい! クラン・スピネルじゃ! クラン・スピネルは手に入ったのか!?」
「ええ、ありますよ。どうぞ」
「おお! でかしたぞ!! どうやって手に入れたかなど、いちいち聞かんぞ。なにしろわしは結果だけを重視する男じゃからな」
ハワードさんにクラン・スピネルを手渡す。
投げつけたい気持ちを抑えたものの、気持ち放り投げたような形になったのは仕方のないことだと思う。
こんなやつ、ゼシカの件が絡んでなければ、喜んで杖の前に差し出したくらいだ。
「おお、手に持っただけで感じる、この魔力の波動は間違いない! これぞクラン・スピネルじゃ!! これさえあれば強力な結界も容易に作れるじゃろう。杖使い女なぞ、もはや恐れるものではないわい!」
その結界が、ゼシカの命を奪うものでないならいいけど。
もしそうだとしたら、私は刺し違えてでも結界を破るつもりだ。
だってゼシカは私たちの仲間なんだもん、絶対に助けなきゃ。
「それにしてもお前さんも嬉しいじゃろう。なにしろ大呪術師たるこのわしの役に立てたのじゃからな。よし! せっかくじゃ。次にあの杖使い女が来るまで、わしの屋敷の衛兵として雇ってやろう。よいな?」
「は? このやし」
「頼むからお口チャックしようなー、いい子だからなー」
「ムーッ!!」
この屋敷を守るのなんか別に何の栄誉でもないが、と素直に言おうとしたら、またもやククールの手が口を塞いできた。
だから息できんって、鼻まで塞いでんのよ。
「よし! お前さんはたった今から、このハワード邸の衛兵じゃ。さっそく仕事を与えてやろう」
「こっちへ来るのじゃ」と言って、ハワードさんは変な紋様の刻まれた壁へと向かった。
ハワードさんが手をかざすと、なんとそこに秘密の通路が現れたではないか。
呪術ってすごいな、いや真似したいとは思わないけど。
「この先には、わしの秘密の資料室がある。そこからある本を探してきてほしいのじゃ。本のタイトルは『世界結界全集』じゃ。その本に強力な結界のレシピが載っておる。宜しく頼むぞ」
これ衛兵の仕事か?
絶対違う気がするぞ……。
「衛兵ってのはこんな雑用係みてぇなこともやるもんなんでがすかね?」
「僕が知ってる衛兵は違うかな……」
なんとここには衛兵の中の衛兵、近衛兵が二人もいるのだ。
さすがにトロデーンにいた頃だって、こんな雑用を命じられたことないぞ。
しかも資料室は乱雑に本が積み上げられたりしていて、大変散らかっている。
「きったねえ書庫だな」
「これじゃ、どこにその本があるのか分かんないな」
「手当たり次第に探すしかないねー……」
「骨のいる作業でがすな……」
手元にある本の表紙を読んでは戻し、本棚を隅から隅まで見ては横の本棚に移動し──という作業を何度か繰り返したとき。
「……ん? これ……」
エイトが不思議そうに本を取り出した。
タイトルは『ハワード一族の歴史・上巻』と書いてある。
つまりこの家の歴史ってことだ。
『我が名はハワード。偉大なる大呪術師クーパスより、呪術の教えを乞う者なり。我が師にして偉大なる大呪術師クーパスは、強力な呪術の力を持つばかりでなく、なにより聡明な人物であった。師クーパスは気付いていた。いずれ世界に闇の力蘇りしとき、己の持つ呪術の力が、自分の一族こそ賢者の血筋であると魔の存在に示してしまうだろう……と。師クーパスは賢者の血を魔の力に悟られぬように、自らの呪術の力を我がハワード一族に譲り渡した。呪術の力を失った師クーパスは、最後の言葉もなく、突然に私の前から姿を消してしまった。私は必死でその行方を探したが、師クーパスの行方はとうとう分からずじまいだった……』
……なるほどな?
つまりハワードさんの呪術の力は、賢者であるクーパスという人から、ご先祖さまが譲り受けたものだったってことだ。
まあ、あんだけ『偉大なる大呪術師』とか自分で言ってるし、魔の存在に対する囮としては効果があったかもしれない。
そして上巻があるということは、下巻もあるということだ!
隣の本棚を探すと、『ハワード一族の歴史・下巻』を見つけた。
ククールとヤンガスも気になったようで、四人で本を囲んでいる。
ちょっと狭いな。
『我が名はハワード。師クーパスより呪術の力を託された私は、我が一族に因縁の呪をかけることにした。この因縁の呪があれば、どれほど時が流れ、どれほど人の記憶が薄れゆこうとも、魔の力、真に迫りし時には、師クーパスの末裔と我がハワード一族の末裔は必ず導かれ、出会うだろう。そして我が一族の末裔が、命を賭して師クーパスの末裔をお守りすることを、ただひたすらに願うばかりである……』
魔の力が真に迫りし時……それはつまり、今ってことじゃない?
だけど、クーパスの末裔らしき人はここに来ていない。
長い年月を経て、呪も薄れてしまったのだろうか。
……と、読書に夢中になっていたけど、肝心の世界結界全集は?
慌てて右端の本棚から、目当てのタイトルを探していく。
「あ……あったー!!」
ついに探し当てた、世界結界全集!
まさか本一冊を探すのに、ここまで時間がかかるとは思わなかったぞ。
あとはこれをハワードさんに渡して……と階段を登っていると、外がやけに騒がしいことに気付いた。
「嫌な雰囲気だな」
「ひょっとして……」
「ゼシカが来たのかもしれねぇでげす! 急ぐでがすよ、兄貴、姉貴!」
私たちは階段を駆け上がって、ハワードさんの部屋へと飛び込んだ。
ゼシカが来たなら、私たちが相手をしないと!
並の衛兵や、ましてやチェルスさんじゃ相手にならない!
