45章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝、ハワードさんのお屋敷を訪ねると、なんだかお屋敷の前が物々しい雰囲気だった。
レオパルドの犬小屋の前には、いい肉の乗った餌入れを持っているチェルスさんと、レオパルドを従えたハワードさんが向かい合っている。
……なんだか気分のいい場面ではないな。
「このクズめが!! お前のような何処の馬の骨とも知れん旅人を雇い入れたわしの恩を、貴様は仇で返すつもりか!!」
「め……滅相もございません! 信じてください! 私はただ、いつもの通りレオパルドにご飯を……」
「……はぁ〜ん? レオパルドぉ?」
ハワードさんの声音が変わった。
いったい何があったか分からないけど、どうやらチェルスさんはレオパルドの機嫌を損ねてしまったようだ。
ハワードさんにとっては、チェルスをいびる口実になったというところか。
「ちょっと待て、チェルスよ。いつ誰が、レオパルドちゃんを呼び捨てにしてよいと言った?」
「バウッ!! バウッ!!」
レオパルドが相槌を打つように吠える。
本当に……主人が主人なら、犬も犬だな。
さすがに介入すべきか、いやでも火に油を注ぐことになれば、更に酷い目に遭うのはチェルスさんだ。
「おお、そうかそうか。お前も気分が悪いか。無理もないのう。毒を盛られかけたばかりか、あのような愚か者に気安く呼び捨てにされたのではなぁ」
「信じてください、ハワード様! 私は断じてレオパルド……様のご飯に毒など盛っておりません!」
そりゃまあ、犬に毒なんか盛ってどうするんだって話だもん。
殺るならハワード様の食事に盛るだろう、私ならそうする。
さすがに止めようとしたエイトの肩をククールが掴んだ。
「入るな、余計にややこしくなる」とククールが囁き、エイトが手のひらを握り締める。
「言葉だけでは信じられんな。ならばわしが見ている目の前で、その皿のご飯を食ってもらおうかな」
「……!?」
「は……なんて……!?」
聞き間違いか!?
今この人、犬の餌を食えって言った!?
チャゴス王子以上に性根が腐ってるぞ!?
「おっと、立ったままではならんぞ。皿を置き、地面に這いつくばって、美味そうに食べるのじゃ」
仮にもあれは犬に上げる餌……。
人体に影響はないとしても、人間であるという矜持を引き裂くには十分だ。
怒鳴り声を上げそうになるけれど、私たちが介入したところで、事態は何も変わらない。
私たちにせめてできるのは、チェルスさんから目を背けることだけだった。
チェルスさんは悲しげな瞳で餌を地面に置き、一度だけ何かを訴えかけるようにハワードさんを見上げた。
ハワードさんは薄汚い……下卑た笑みを浮かべてチェルスさんを見下ろしている。
そうしてチェルスさんは……這いつくばって、それを食べ始めた。
「うわっはっはっは!! いい姿じゃぞ、チェルスよ!! さぁレオパルドちゃんや。あのご飯はどうやら安全のようじゃ。食べてもよいぞ」
レオパルドは返事をするようにハワードさんへ吠え、チェルスの元へと近付いていく。
チェルスが体を起こして餌入れから離れると、レオパルドは餌を食べ始めた。
……チェルスさんがレオパルドのご飯に毒を盛ったなんて考えにくい。
あのクソオヤジ、適当な罪をでっち上げて、チェルスを虐めたいたけなんだ。
……本当、反吐が出る。
「チェルスよ。レオパルドちゃんはお前の主人も同然じゃ。わしが言わずとも丁重に接するのだぞ。よいな」
「……最低」
人を人とも思わない所業──こいつを助けることに、本当に意味なんてある?
ゼシカの事は助けたい。
……でも、こいつは死んでもいいんじゃないの?
「おお、戻ったか。わははは。つまらんものを見せてしまったな。それはそうと、ここではなんじゃな。報告ならわしの部屋で聞くので、上がってくるとよいぞ」
ハワードさんが私たちに背を向けて、屋敷の方へ歩いていく。
仕留めるなら、今だ──。
「駄目だよ」
スラリと剣を引き抜こうとした私の右手を止めたのは……やっぱりエイトだった。
どうして、と小さく呟く。
エイトは私のすぐ横に顔を寄せたまま言った。
「人を殺すことを手段に加えちゃ駄目だ。『夜勤』でもレイラが誰かを手にかけるのなんて嫌なのに……。そうじゃないときまで、人を殺そうなんて思っちゃ駄目だよ」
「……」
「その憤りは、僕が後でいくらでも分かち合うから。今は堪えて。ね?」
急速に頭の中が冷えていって、手が剣から離れていく。
ああ……なんて、気分の悪いことを。
相手がどんなに人でなしのろくでなしでも、殺しちゃいけないのに。
私の中に、人を殺すことが手段として存在しているなんて──。
「……ごめん……」
「分かってくれたなら大丈夫。さ、ハワードさんにクラン・スピネルを渡しに行こう」
ククールとヤンガスは先にお屋敷に入っていったようで、姿が見えない。
私の行動も衛兵の目には留まっていないようで、私たちはそのままハワードさんのお屋敷の中へと入った。
……やっぱり、こんな人間、エイトには相応しくないよ。
私、平気で人を殺そうとするんだよ?
それでも好きだなんて、どうして言えるの……?
レオパルドの犬小屋の前には、いい肉の乗った餌入れを持っているチェルスさんと、レオパルドを従えたハワードさんが向かい合っている。
……なんだか気分のいい場面ではないな。
「このクズめが!! お前のような何処の馬の骨とも知れん旅人を雇い入れたわしの恩を、貴様は仇で返すつもりか!!」
「め……滅相もございません! 信じてください! 私はただ、いつもの通りレオパルドにご飯を……」
「……はぁ〜ん? レオパルドぉ?」
ハワードさんの声音が変わった。
いったい何があったか分からないけど、どうやらチェルスさんはレオパルドの機嫌を損ねてしまったようだ。
ハワードさんにとっては、チェルスをいびる口実になったというところか。
「ちょっと待て、チェルスよ。いつ誰が、レオパルドちゃんを呼び捨てにしてよいと言った?」
「バウッ!! バウッ!!」
レオパルドが相槌を打つように吠える。
本当に……主人が主人なら、犬も犬だな。
さすがに介入すべきか、いやでも火に油を注ぐことになれば、更に酷い目に遭うのはチェルスさんだ。
「おお、そうかそうか。お前も気分が悪いか。無理もないのう。毒を盛られかけたばかりか、あのような愚か者に気安く呼び捨てにされたのではなぁ」
「信じてください、ハワード様! 私は断じてレオパルド……様のご飯に毒など盛っておりません!」
そりゃまあ、犬に毒なんか盛ってどうするんだって話だもん。
殺るならハワード様の食事に盛るだろう、私ならそうする。
さすがに止めようとしたエイトの肩をククールが掴んだ。
「入るな、余計にややこしくなる」とククールが囁き、エイトが手のひらを握り締める。
「言葉だけでは信じられんな。ならばわしが見ている目の前で、その皿のご飯を食ってもらおうかな」
「……!?」
「は……なんて……!?」
聞き間違いか!?
今この人、犬の餌を食えって言った!?
チャゴス王子以上に性根が腐ってるぞ!?
「おっと、立ったままではならんぞ。皿を置き、地面に這いつくばって、美味そうに食べるのじゃ」
仮にもあれは犬に上げる餌……。
人体に影響はないとしても、人間であるという矜持を引き裂くには十分だ。
怒鳴り声を上げそうになるけれど、私たちが介入したところで、事態は何も変わらない。
私たちにせめてできるのは、チェルスさんから目を背けることだけだった。
チェルスさんは悲しげな瞳で餌を地面に置き、一度だけ何かを訴えかけるようにハワードさんを見上げた。
ハワードさんは薄汚い……下卑た笑みを浮かべてチェルスさんを見下ろしている。
そうしてチェルスさんは……這いつくばって、それを食べ始めた。
「うわっはっはっは!! いい姿じゃぞ、チェルスよ!! さぁレオパルドちゃんや。あのご飯はどうやら安全のようじゃ。食べてもよいぞ」
レオパルドは返事をするようにハワードさんへ吠え、チェルスの元へと近付いていく。
チェルスが体を起こして餌入れから離れると、レオパルドは餌を食べ始めた。
……チェルスさんがレオパルドのご飯に毒を盛ったなんて考えにくい。
あのクソオヤジ、適当な罪をでっち上げて、チェルスを虐めたいたけなんだ。
……本当、反吐が出る。
「チェルスよ。レオパルドちゃんはお前の主人も同然じゃ。わしが言わずとも丁重に接するのだぞ。よいな」
「……最低」
人を人とも思わない所業──こいつを助けることに、本当に意味なんてある?
ゼシカの事は助けたい。
……でも、こいつは死んでもいいんじゃないの?
「おお、戻ったか。わははは。つまらんものを見せてしまったな。それはそうと、ここではなんじゃな。報告ならわしの部屋で聞くので、上がってくるとよいぞ」
ハワードさんが私たちに背を向けて、屋敷の方へ歩いていく。
仕留めるなら、今だ──。
「駄目だよ」
スラリと剣を引き抜こうとした私の右手を止めたのは……やっぱりエイトだった。
どうして、と小さく呟く。
エイトは私のすぐ横に顔を寄せたまま言った。
「人を殺すことを手段に加えちゃ駄目だ。『夜勤』でもレイラが誰かを手にかけるのなんて嫌なのに……。そうじゃないときまで、人を殺そうなんて思っちゃ駄目だよ」
「……」
「その憤りは、僕が後でいくらでも分かち合うから。今は堪えて。ね?」
急速に頭の中が冷えていって、手が剣から離れていく。
ああ……なんて、気分の悪いことを。
相手がどんなに人でなしのろくでなしでも、殺しちゃいけないのに。
私の中に、人を殺すことが手段として存在しているなんて──。
「……ごめん……」
「分かってくれたなら大丈夫。さ、ハワードさんにクラン・スピネルを渡しに行こう」
ククールとヤンガスは先にお屋敷に入っていったようで、姿が見えない。
私の行動も衛兵の目には留まっていないようで、私たちはそのままハワードさんのお屋敷の中へと入った。
……やっぱり、こんな人間、エイトには相応しくないよ。
私、平気で人を殺そうとするんだよ?
それでも好きだなんて、どうして言えるの……?
