5章
夢小説設定
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景色が、現実へ戻ってくる。
雷鳴轟くセピア色の世界は、星々が瞬く静かな夜へ。
静かに佇んでいたリーザス像は、炎に巻かれて。
そうしてサーベルトさんの亡骸は消え、私達だけがいた。
『旅の方よ……。リーザス像の記憶……見届けてくれたか……』
サーベルトさんの声は私達へそう語りかけた。
何もかもが不思議な心地で、私達はリーザス像を見上げている。
「どうして、リーザス像はサーベルトさんの魂を……?」
『私にも……なぜかは分からぬ。だが……リーザス像は……そなた達が来るのを……待っていたようだ……』
炎の熱さも忘れて、私達は顔を見合わせた。
リーザス像が私達を待っていた?
私達は初めてリーザス地方にやってきたから、リーザス像だって初めて目にしたのに……。
『願わくば……このリーザス像の記憶が……そなた達の……旅の助けになれば……私も……報われる』
「……もちろんです。あの男、地獄の果てまででも追い掛けてやる」
隣でエイトも強く頷いた。
師匠であるマスター・ライラスを手にかけ、罪もないサーベルトさんを殺して、いったいドルマゲスは何をしたいのか。
……この旅でドルマゲスと対峙したとき、謎は解けるのだろうか。
サーベルトさんの言葉は、ゼシカさんへと続いた。
『ゼシカよ……。これで……我が魂の欠片も役目を終えた……。お別れだ……』
優しい声で告げられたそれに、ゼシカさんが強く首を振る。
……本当なら、こうしてサーベルトさんと会話ができること自体、不思議な話だ。
でもゼシカさんにとっては、突然奪われた兄との最後の会話だった。
どんな思いで、ゼシカさんはこの話を……。
「いやぁっ! どうすればいいの!? お願い……逝かないでよ、兄さん……」
ゼシカさんの縋る言葉にも、サーベルトさんは頷いてあげられない。
私達の前にあるリーザス像は炎に焼かれながらも、私達を静かに見つめていて。
サーベルトさんの気配は、どんどん遠ざかっていく。
『ゼシカ……最後に……これだけは……伝えたかった……。……この先も、母さんはお前に手を焼くことだろう……。だが、それでいい……。お前は、自分の信じた道を進め……』
……どうしてだろう。
目の前にあるのは燃え盛る石像なのに。
私の目には、大切な妹を見守る、優しいお兄さんの微笑みが見える。
『さよならだ……ゼシカ……――』
リーザス像から淡い光が立ち上る。
それは像がまとっていた炎ごと消えていって……。
ゼシカさんはその光を手で追いかけ、そうして顔を覆ってしゃがみこんで、肩を震わせた。
……人が死ぬということは、こういうことだ。
私達は、この重みを知らなきゃいけない。
ドルマゲスという存在が振り撒いた悲劇を、私達で終わらせるために。
「……ふーむ、何たることじゃ。あのサーベルトとやらを殺したヤツめ、間違いなくドルマゲスじゃっ!」
「うわビックリした!!」
「おっさん! いつの間に!?」
「さっきからずっと居たよ?」
何言ってんの、と言いたげな顔でエイトが教えてくれた。
ありがとう教えてくれて。
でもその視線は心に刺さるからやめてほしい。
「なぜかは分からんが、サーベルトとやらもまた、わしらにドルマゲスを倒せと言っておるようじゃ。ふむ……。彼の想い、決して無駄にはできんな。これでまたひとつ、ドルマゲスを追う理由が増えたということじゃ」
陛下のお言葉に頷く。
ゼシカさんの分も、私達は背負っていかなきゃ。
必ずドルマゲスに追いついて、ゼシカさんの分までお返ししてやるんだ。
「それじゃ、わしは馬車で待っておるぞ。じゃっ」
スチャッと左手で合図をして、陛下が後ろの階段を降りていく。
ズッコケたい気持ちを押さえて、私達は陛下の後ろ姿を見送った。
ヤンガスがゼシカさんを気遣わしげに見やって、声を掛けようと歩み寄る。
その肩をエイトが引き留めた。
「……今は、そっとしておいてあげよう」
「うん。そうだね……」
リーザス像の足元で泣き崩れるゼシカさんを見つめて、私達は彼女に背を向けた。
階段を降りていこうとした私達へ、そのとき、ゼシカさんから声がかかった。
「あ、ねえ……」
か細い声に振り向くと、ゼシカさんは立ち上がって私達を見つめていた。
「名前も分からないけど、誤解しちゃってごめん。今度、ゆっくり謝るから……。……だから、もうしばらく、ひとりでここにいさせて……。ごめん。少ししたら、村に戻るから……」
「……分かりました。子供達には、そう伝えておきますね」
私がそう言ってあげると、ゼシカさんは小さく頷いて。
それからまたしゃがんで泣き伏せた。
行こう、とヤンガスの背を促す。
そうして私達は、リーザス像の塔から出た。
昼間に上ったのに、外はもう真っ暗だ。
外で待っていた陛下に頭を下げて、私達はリーザス村へと歩いていく。
なんだか、心が重かった。
私達はドルマゲスの足取りを追い掛けて行くしかない。
未然に防ぐことなんて……もしかしたら、本当はできっこないんじゃないの?
雷鳴轟くセピア色の世界は、星々が瞬く静かな夜へ。
静かに佇んでいたリーザス像は、炎に巻かれて。
そうしてサーベルトさんの亡骸は消え、私達だけがいた。
『旅の方よ……。リーザス像の記憶……見届けてくれたか……』
サーベルトさんの声は私達へそう語りかけた。
何もかもが不思議な心地で、私達はリーザス像を見上げている。
「どうして、リーザス像はサーベルトさんの魂を……?」
『私にも……なぜかは分からぬ。だが……リーザス像は……そなた達が来るのを……待っていたようだ……』
炎の熱さも忘れて、私達は顔を見合わせた。
リーザス像が私達を待っていた?
私達は初めてリーザス地方にやってきたから、リーザス像だって初めて目にしたのに……。
『願わくば……このリーザス像の記憶が……そなた達の……旅の助けになれば……私も……報われる』
「……もちろんです。あの男、地獄の果てまででも追い掛けてやる」
隣でエイトも強く頷いた。
師匠であるマスター・ライラスを手にかけ、罪もないサーベルトさんを殺して、いったいドルマゲスは何をしたいのか。
……この旅でドルマゲスと対峙したとき、謎は解けるのだろうか。
サーベルトさんの言葉は、ゼシカさんへと続いた。
『ゼシカよ……。これで……我が魂の欠片も役目を終えた……。お別れだ……』
優しい声で告げられたそれに、ゼシカさんが強く首を振る。
……本当なら、こうしてサーベルトさんと会話ができること自体、不思議な話だ。
でもゼシカさんにとっては、突然奪われた兄との最後の会話だった。
どんな思いで、ゼシカさんはこの話を……。
「いやぁっ! どうすればいいの!? お願い……逝かないでよ、兄さん……」
ゼシカさんの縋る言葉にも、サーベルトさんは頷いてあげられない。
私達の前にあるリーザス像は炎に焼かれながらも、私達を静かに見つめていて。
サーベルトさんの気配は、どんどん遠ざかっていく。
『ゼシカ……最後に……これだけは……伝えたかった……。……この先も、母さんはお前に手を焼くことだろう……。だが、それでいい……。お前は、自分の信じた道を進め……』
……どうしてだろう。
目の前にあるのは燃え盛る石像なのに。
私の目には、大切な妹を見守る、優しいお兄さんの微笑みが見える。
『さよならだ……ゼシカ……――』
リーザス像から淡い光が立ち上る。
それは像がまとっていた炎ごと消えていって……。
ゼシカさんはその光を手で追いかけ、そうして顔を覆ってしゃがみこんで、肩を震わせた。
……人が死ぬということは、こういうことだ。
私達は、この重みを知らなきゃいけない。
ドルマゲスという存在が振り撒いた悲劇を、私達で終わらせるために。
「……ふーむ、何たることじゃ。あのサーベルトとやらを殺したヤツめ、間違いなくドルマゲスじゃっ!」
「うわビックリした!!」
「おっさん! いつの間に!?」
「さっきからずっと居たよ?」
何言ってんの、と言いたげな顔でエイトが教えてくれた。
ありがとう教えてくれて。
でもその視線は心に刺さるからやめてほしい。
「なぜかは分からんが、サーベルトとやらもまた、わしらにドルマゲスを倒せと言っておるようじゃ。ふむ……。彼の想い、決して無駄にはできんな。これでまたひとつ、ドルマゲスを追う理由が増えたということじゃ」
陛下のお言葉に頷く。
ゼシカさんの分も、私達は背負っていかなきゃ。
必ずドルマゲスに追いついて、ゼシカさんの分までお返ししてやるんだ。
「それじゃ、わしは馬車で待っておるぞ。じゃっ」
スチャッと左手で合図をして、陛下が後ろの階段を降りていく。
ズッコケたい気持ちを押さえて、私達は陛下の後ろ姿を見送った。
ヤンガスがゼシカさんを気遣わしげに見やって、声を掛けようと歩み寄る。
その肩をエイトが引き留めた。
「……今は、そっとしておいてあげよう」
「うん。そうだね……」
リーザス像の足元で泣き崩れるゼシカさんを見つめて、私達は彼女に背を向けた。
階段を降りていこうとした私達へ、そのとき、ゼシカさんから声がかかった。
「あ、ねえ……」
か細い声に振り向くと、ゼシカさんは立ち上がって私達を見つめていた。
「名前も分からないけど、誤解しちゃってごめん。今度、ゆっくり謝るから……。……だから、もうしばらく、ひとりでここにいさせて……。ごめん。少ししたら、村に戻るから……」
「……分かりました。子供達には、そう伝えておきますね」
私がそう言ってあげると、ゼシカさんは小さく頷いて。
それからまたしゃがんで泣き伏せた。
行こう、とヤンガスの背を促す。
そうして私達は、リーザス像の塔から出た。
昼間に上ったのに、外はもう真っ暗だ。
外で待っていた陛下に頭を下げて、私達はリーザス村へと歩いていく。
なんだか、心が重かった。
私達はドルマゲスの足取りを追い掛けて行くしかない。
未然に防ぐことなんて……もしかしたら、本当はできっこないんじゃないの?
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