40章
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あーあ、とため息をつきかけて、慌てて飲み込む。
ため息は良くない、幸せが逃げちゃう。
でも誰かに聞いてほしいよ、私の初恋が儚く散ってしまいそうなんだ。
……初恋だったんだな、今思えば。
初恋は実らないとはよく言ったもんだ。
まあ実際に成就しなかった人間が、ここにいるわけだからな……。
「……レイラ?」
背後から突然声が掛けられて、思いっきり跳び上がった。
ついでに小川のほうを向いて座っていたので、うっかり川に落ちるかと思った。
気合いでそこは踏みとどまったけど。
「お、おおお!? エイト、いつからそこに!?」
「今通りかかっただけだけど……」
「そ、そっか……。それならよかった……」
エイトはじっと私を見て、それから困ったように笑った。
笑顔の意味が分からずに首を傾げて見せると、エイトは小さく首を振って、「眠れなくてさ」と呟いたのだった。
「……私も」
「一緒だね。……隣、いい?」
「あ、う、うん」
エイトがベンチに座って、私はその隣に一人分を空けて座った。
何か言われるかなと思ったけど、エイトは特に何を言うこともなく、夜空を見上げている。
……私たちは明日、死力を尽くしてドルマゲスと戦うってのに、世界はあまりにも普段通りだ。
「……いよいよ明日だね」
「う、うん。そうだね」
「緊張してる?」
「そ……そりゃあ、まあ……」
「僕も緊張してる」
「そうなの? 全然そうは見えなかった……」
「ドルマゲスの力は、マイエラ修道院で見せつけられただろ。色んな相手と戦ってきたけど、あんなにも底が知れないと思ったのは初めてだった」
「……うん」
「だから緊張してる。……ていうより、怖い、かな」
その恐怖は、私もよく理解できる。
だってマイエラ修道院で奴と相見えたとき、本能が勝てないと悟ったから。
でもあれから私達は強くなった。
それに私たち、みんなで戦うんだもん。
「エイトひとりで戦うわけじゃないよ。私も隣にいるし、ヤンガスもククールもゼシカも一緒に戦うよ。私もちょっと怖いけど……でも、五人で力を合わせれば、絶対に大丈夫だって信じてる」
「……うん。そうだね。僕も信じてる。レイラと話せて良かった。ありがとう」
「怖いの飛んでった?」
「レイラは?」
「私はイカとタコとホラー以外は大丈夫だよ」
「ははっ、頼もしいなぁ」
エイトが小さく肩を揺らして、また空を見上げた。
バンダナを外しているエイトの髪が風になびく。
星空を見上げるその横顔がかっこよくて、つい見とれてしまって……。
ふとこちらを向いたエイトと、バッチリと目が合ってしまった。
慌てて目を逸らして、足元に視線を落とす。
トロデーン城から始まって西の大陸までを駆け抜けてきたブーツは、すっかりくたびれてしまっていた。
「レイラさ、変わったね」
「え?」
唐突にそんなことを言われて、顔を上げる。
隣を見やれば、穏やかに微笑むエイトが私を見つめていた。
何を言い出すかと思えば……私は何も変わってないぞ。
ちゃんと能天気だが役に立つレイラだぞ。
自分で言って悲しくなってきたな。
「そうかな? 別に私は変わってないと思うけど……」
「ううん、変わったよ。なんて言うか……雰囲気かな。大人っぽくなったなって」
「大人っぽく……?」
「本質的には変わらないよ? 強くて優しくて……。海の生物と死霊系が苦手っていう、可愛い一面があって」
「何度も言うけど、私は優しくなんてないからね。それに可愛くなんか……」
条件反射のように否定すると、エイトは分かっていたかのように小さく笑った。
私を捕まえて可愛いなんて、エイトには私がどう見えてるんだ。
そういうのは姫様とかゼシカにかけられるべき言葉であって、間違っても私なんかがもらっていい台詞じゃない。
……なのに、馬鹿みたいに心臓が跳ねた。
嬉しいって……思ってしまった。
「でも時々さ、そう思うんだ。特に王家の山での……野宿の時、覚えてる?」
「野宿……。ああ、チャゴス王子に無理やりお肉を食べさせたあれ?」
「そう。あの時に、大人だなって思ったんだ。みんなあの王子には呆れてて、怒鳴り散らしたい気持ちだったのに……。レイラは違っただろ?」
「違ったっていうか……あの場で喧嘩したって意味がないもん。どのみち大きなアルゴンハートを取るまでは、王子と一緒になっちゃうわけだし。だったら少しでも摩擦を和らげて探したかったからさ」
「そううところ、レイラは優しいよね……」
「優しくなんか……ない」
優しいんじゃない、私は優しい人間なんかじゃない。
優しくないから、私は『夜勤』を続けてこられたんだと思う。
私が優しい人間じゃないって知っていたから、隊長だって私にそれを続けさせたんだろうし。
それに、旅に出てからだって、私は……。
「私は……人の恋だって満足に応援できない奴だもん……」
「恋?」
「そう、恋。エイトと姫様の」
「……えっ?」
「え?」
あまりにエイトが変な声を上げるから、逆に聞き返してしまった。
いや、なんでエイトはそんな、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔を。
エイトが姫様のことを好きなのなんて、多分トロデーン城で仕事してる人達みんな気付いてたぞ。
「え? だって、好きなんだよね? 姫様のこと」
「僕が?」
「うん」
「ミーティア姫を?」
「え、うん」
「……好き?」
「違うの?」
「……はぁぁ……」
深いため息が、それはもう深いため息が聞こえてきた。
両手で顔を覆ったエイトは、私の隣で力なく項垂れている。
思ってた反応と違ったな、指摘しないほうが良かったか?
いやでも流石に、気付かないほうが難しいくらいだったしさぁ……!?
「……そう見えてたんだ?」
「だって、二人ともいい感じだし……。明らかに姫様はエイトのこと好きだし」
「ええ!?」
「え!? そこから気付いてなかったの!?」
こいつ鈍感にもほどがあるぞ……。
姫様も可哀想に……。
なんだこの三角関係、一歩間違えたら修羅場だな!?
これ、もしかしなくても、私と姫様でエイトの取り合いになってない!?
「そういうレイラは?」
「はい?」
「誰かに好意を寄せられてるなとか、そんなの感じなかったの?」
「え、そんなことある? 誰かから想いを寄せられてたの? この能天気担当のアホの子が?」
「この子、鈍感にもほどが……」
「それに関してはエイトが言えることじゃないと思うよぉ……?」
私が言えることでもないけども。
でも……やっぱり私の事を好きになってくれる人なんていないよ。
トロデーン城での私の役目を知らない人はいなかった。
知ってて好きになるなんて、それはもうとんだ物好きだ。
普通の人は……「人殺し」なんて、好きにならないと思う。
ため息は良くない、幸せが逃げちゃう。
でも誰かに聞いてほしいよ、私の初恋が儚く散ってしまいそうなんだ。
……初恋だったんだな、今思えば。
初恋は実らないとはよく言ったもんだ。
まあ実際に成就しなかった人間が、ここにいるわけだからな……。
「……レイラ?」
背後から突然声が掛けられて、思いっきり跳び上がった。
ついでに小川のほうを向いて座っていたので、うっかり川に落ちるかと思った。
気合いでそこは踏みとどまったけど。
「お、おおお!? エイト、いつからそこに!?」
「今通りかかっただけだけど……」
「そ、そっか……。それならよかった……」
エイトはじっと私を見て、それから困ったように笑った。
笑顔の意味が分からずに首を傾げて見せると、エイトは小さく首を振って、「眠れなくてさ」と呟いたのだった。
「……私も」
「一緒だね。……隣、いい?」
「あ、う、うん」
エイトがベンチに座って、私はその隣に一人分を空けて座った。
何か言われるかなと思ったけど、エイトは特に何を言うこともなく、夜空を見上げている。
……私たちは明日、死力を尽くしてドルマゲスと戦うってのに、世界はあまりにも普段通りだ。
「……いよいよ明日だね」
「う、うん。そうだね」
「緊張してる?」
「そ……そりゃあ、まあ……」
「僕も緊張してる」
「そうなの? 全然そうは見えなかった……」
「ドルマゲスの力は、マイエラ修道院で見せつけられただろ。色んな相手と戦ってきたけど、あんなにも底が知れないと思ったのは初めてだった」
「……うん」
「だから緊張してる。……ていうより、怖い、かな」
その恐怖は、私もよく理解できる。
だってマイエラ修道院で奴と相見えたとき、本能が勝てないと悟ったから。
でもあれから私達は強くなった。
それに私たち、みんなで戦うんだもん。
「エイトひとりで戦うわけじゃないよ。私も隣にいるし、ヤンガスもククールもゼシカも一緒に戦うよ。私もちょっと怖いけど……でも、五人で力を合わせれば、絶対に大丈夫だって信じてる」
「……うん。そうだね。僕も信じてる。レイラと話せて良かった。ありがとう」
「怖いの飛んでった?」
「レイラは?」
「私はイカとタコとホラー以外は大丈夫だよ」
「ははっ、頼もしいなぁ」
エイトが小さく肩を揺らして、また空を見上げた。
バンダナを外しているエイトの髪が風になびく。
星空を見上げるその横顔がかっこよくて、つい見とれてしまって……。
ふとこちらを向いたエイトと、バッチリと目が合ってしまった。
慌てて目を逸らして、足元に視線を落とす。
トロデーン城から始まって西の大陸までを駆け抜けてきたブーツは、すっかりくたびれてしまっていた。
「レイラさ、変わったね」
「え?」
唐突にそんなことを言われて、顔を上げる。
隣を見やれば、穏やかに微笑むエイトが私を見つめていた。
何を言い出すかと思えば……私は何も変わってないぞ。
ちゃんと能天気だが役に立つレイラだぞ。
自分で言って悲しくなってきたな。
「そうかな? 別に私は変わってないと思うけど……」
「ううん、変わったよ。なんて言うか……雰囲気かな。大人っぽくなったなって」
「大人っぽく……?」
「本質的には変わらないよ? 強くて優しくて……。海の生物と死霊系が苦手っていう、可愛い一面があって」
「何度も言うけど、私は優しくなんてないからね。それに可愛くなんか……」
条件反射のように否定すると、エイトは分かっていたかのように小さく笑った。
私を捕まえて可愛いなんて、エイトには私がどう見えてるんだ。
そういうのは姫様とかゼシカにかけられるべき言葉であって、間違っても私なんかがもらっていい台詞じゃない。
……なのに、馬鹿みたいに心臓が跳ねた。
嬉しいって……思ってしまった。
「でも時々さ、そう思うんだ。特に王家の山での……野宿の時、覚えてる?」
「野宿……。ああ、チャゴス王子に無理やりお肉を食べさせたあれ?」
「そう。あの時に、大人だなって思ったんだ。みんなあの王子には呆れてて、怒鳴り散らしたい気持ちだったのに……。レイラは違っただろ?」
「違ったっていうか……あの場で喧嘩したって意味がないもん。どのみち大きなアルゴンハートを取るまでは、王子と一緒になっちゃうわけだし。だったら少しでも摩擦を和らげて探したかったからさ」
「そううところ、レイラは優しいよね……」
「優しくなんか……ない」
優しいんじゃない、私は優しい人間なんかじゃない。
優しくないから、私は『夜勤』を続けてこられたんだと思う。
私が優しい人間じゃないって知っていたから、隊長だって私にそれを続けさせたんだろうし。
それに、旅に出てからだって、私は……。
「私は……人の恋だって満足に応援できない奴だもん……」
「恋?」
「そう、恋。エイトと姫様の」
「……えっ?」
「え?」
あまりにエイトが変な声を上げるから、逆に聞き返してしまった。
いや、なんでエイトはそんな、鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔を。
エイトが姫様のことを好きなのなんて、多分トロデーン城で仕事してる人達みんな気付いてたぞ。
「え? だって、好きなんだよね? 姫様のこと」
「僕が?」
「うん」
「ミーティア姫を?」
「え、うん」
「……好き?」
「違うの?」
「……はぁぁ……」
深いため息が、それはもう深いため息が聞こえてきた。
両手で顔を覆ったエイトは、私の隣で力なく項垂れている。
思ってた反応と違ったな、指摘しないほうが良かったか?
いやでも流石に、気付かないほうが難しいくらいだったしさぁ……!?
「……そう見えてたんだ?」
「だって、二人ともいい感じだし……。明らかに姫様はエイトのこと好きだし」
「ええ!?」
「え!? そこから気付いてなかったの!?」
こいつ鈍感にもほどがあるぞ……。
姫様も可哀想に……。
なんだこの三角関係、一歩間違えたら修羅場だな!?
これ、もしかしなくても、私と姫様でエイトの取り合いになってない!?
「そういうレイラは?」
「はい?」
「誰かに好意を寄せられてるなとか、そんなの感じなかったの?」
「え、そんなことある? 誰かから想いを寄せられてたの? この能天気担当のアホの子が?」
「この子、鈍感にもほどが……」
「それに関してはエイトが言えることじゃないと思うよぉ……?」
私が言えることでもないけども。
でも……やっぱり私の事を好きになってくれる人なんていないよ。
トロデーン城での私の役目を知らない人はいなかった。
知ってて好きになるなんて、それはもうとんだ物好きだ。
普通の人は……「人殺し」なんて、好きにならないと思う。
