39章
夢小説設定
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姫様が閉じていた目蓋を開ける。
その瞳は、私ではなく──エイトを見つめていた。
あ、と既視感を覚えて、私は無意識に二歩ほど後ろへ下がってしまった。
「駄々をこねてごめんなさい。エイト。どうしてもあなたにお願いしたいことがあったのです」
「お願いですか? それはどういう……」
「少しの間だけですが、ミーティアはここの泉の水を飲むと、人間の姿に戻れると分かりました。だから時々は、こうして泉に立ち寄ってくれると、ミーティアは嬉しく思います。お城にいた時のように、またエイトとお話したいのです。もちろんレイラとも。そうすれば、その時だけは、この忌まわしい呪いのことも忘れられますわ……」
姫様の視線が私に向けられて、微笑んで頷く。
それでも……やっぱり、疎外感は否めない。
そりゃそうだよね、姫様はエイトのことが好きなんだもん。
好きな人とようやく話せるようになったんだ、ここに来た時はあまり邪魔しないほうがいいだろうな。
エイトが姫様に頷いたとき、姫様は再び光に包まれた。
「あっ……。もう時間切れみたい……」
光と共に姫様の姿が馬へと戻る。
本当にちょっとの間しか戻れないんだな。
ここに来る時は、話すことを考えておいたほうがいいのかも。
せっかく姫様とお話しできるんだもん、時間を無駄にはしたくない。
「……わしからも頼む。姫のたったひとつの我儘を叶えてやってほしい」
「トロデ王……」
「というか、これは命令じゃ。分かったな、エイト?」
「勿論です」
そりゃあ断る理由はない。
我らが姫様のご所望とあらば、毎日でも通ってやろうじゃんかよ!
さすがに毎日だと話すことがなくなるかな。
二日に一回くらいがちょうどいいか?
「よっしゃよっしゃ。では姫の気も治まったことだし、そろそろ行くとするか……んん!?」
「えっ何、どうされましたか陛下?」
「……そういやアッシら、ここへ何しに来たんでしたっけね、兄貴?」
「えっと……?」
そういや何しに来たんだっけ?
何か用があってここに来たのは間違いないんだけど……?
姫様の件で忘れちゃったな……。
「いかんいかん! 大事なことを忘れておったぞ。おいエイト、レイラ。さっきここで出会った老人こそ、サザンビークで聞いた、西の森に住む老魔術師ではないのか?」
「え、あ、確かに……」
「そうだった、隠居した元宮廷魔術師を探してたんだった……」
ってことは、あのおじいちゃんがそうだったのか。
心眼が使えることといい、不思議な泉に詳しいことといい、只者ではなさそうだったけど。
呼び止めて聞いておけば良かったけど、それどころじゃなかったな。
「人違いでなければ、あの老人は魔法の鏡に詳しいはず。ここはぜひ家を訪ねて、知恵を貸していただこう」
「はい。ミーティア姫、行きましょう」
エイトが姫様を連れて行って、荷台と繋げる。
姫様は何もおっしゃらないけど……エイトと少しだけでも話せたことが嬉しかったんだろう。
先程とは表情が違う。
その光景を、私は見ていることしか出来なかった。
「敵が多いな、お前は」
ククールが私の頭に手を置いて、そう微笑む。
敵じゃない、姫様のことをそんなふうに思ったことはない。
だって姫様とエイトが両想いだって、この旅に出る前から知っていた。
私はそんな二人の、立場ゆえに縮まらない距離をもどかしく思いつつ、近くで見守っていこうと思っていたのに。
「……ねえ、ククール」
「なんだ?」
「前まではね……姫様とエイトがああやって親しげに話してても、全然気にならなかった。姫様がエイトのこと好きなのは知ってたし、エイトが姫様のこと好きなのも気付いてたし」
ククールは黙って私の話を聞いてくれていた。
いつもなら茶化してくるくせに、こういう時だけ腹立つくらい空気読めちゃって。
いっそ揶揄ってくれたら、私の気も楽だったのに。
「でも今は……なんでだろうね。ああやって二人で話してるのを見てたら……胸が痛くなる。苦しいんだ。黒いものが胸の中で渦を巻くような、そんな感じになるの」
「そりゃーお前……」
ククールがポンポンと私の頭を叩いた。
なぜかその顔はちょっと嬉しそうで、そしてやっぱり、腹が立つくらい、全てお見通しみたいな顔をしていた。
ククールの隣でゼシカもニコニコしている。
人が悩みを告白したっていうのに、なんでそんなに嬉しそうな顔をしているんだ。
「お前がエイトのこと、好きだからじゃないのか?」
「……え、好き? 私がエイトのことを? でも、もう十年も一緒にいて、今更そんな……」
「人を好きになるのに、年月は関係ないわよ。好きなんでしょ? エイトのこと。だからミーティア姫とエイトが仲睦まじそうに見えて、妬いちゃったのよね」
そうなのかな、私、姫様に嫉妬しちゃったのかな。
私、エイトのことが好きなのかな。
……誰かを好きになった経験がないから、私の中にあるエイトへの感情が、恋で合っているかは分からない。
でも、エイトと二人でいるとドキドキしたり、今までよりも楽しいって思うのが、恋なんだとしたら。
私はきっと、エイトのことを好きになっちゃったんだ。
その瞳は、私ではなく──エイトを見つめていた。
あ、と既視感を覚えて、私は無意識に二歩ほど後ろへ下がってしまった。
「駄々をこねてごめんなさい。エイト。どうしてもあなたにお願いしたいことがあったのです」
「お願いですか? それはどういう……」
「少しの間だけですが、ミーティアはここの泉の水を飲むと、人間の姿に戻れると分かりました。だから時々は、こうして泉に立ち寄ってくれると、ミーティアは嬉しく思います。お城にいた時のように、またエイトとお話したいのです。もちろんレイラとも。そうすれば、その時だけは、この忌まわしい呪いのことも忘れられますわ……」
姫様の視線が私に向けられて、微笑んで頷く。
それでも……やっぱり、疎外感は否めない。
そりゃそうだよね、姫様はエイトのことが好きなんだもん。
好きな人とようやく話せるようになったんだ、ここに来た時はあまり邪魔しないほうがいいだろうな。
エイトが姫様に頷いたとき、姫様は再び光に包まれた。
「あっ……。もう時間切れみたい……」
光と共に姫様の姿が馬へと戻る。
本当にちょっとの間しか戻れないんだな。
ここに来る時は、話すことを考えておいたほうがいいのかも。
せっかく姫様とお話しできるんだもん、時間を無駄にはしたくない。
「……わしからも頼む。姫のたったひとつの我儘を叶えてやってほしい」
「トロデ王……」
「というか、これは命令じゃ。分かったな、エイト?」
「勿論です」
そりゃあ断る理由はない。
我らが姫様のご所望とあらば、毎日でも通ってやろうじゃんかよ!
さすがに毎日だと話すことがなくなるかな。
二日に一回くらいがちょうどいいか?
「よっしゃよっしゃ。では姫の気も治まったことだし、そろそろ行くとするか……んん!?」
「えっ何、どうされましたか陛下?」
「……そういやアッシら、ここへ何しに来たんでしたっけね、兄貴?」
「えっと……?」
そういや何しに来たんだっけ?
何か用があってここに来たのは間違いないんだけど……?
姫様の件で忘れちゃったな……。
「いかんいかん! 大事なことを忘れておったぞ。おいエイト、レイラ。さっきここで出会った老人こそ、サザンビークで聞いた、西の森に住む老魔術師ではないのか?」
「え、あ、確かに……」
「そうだった、隠居した元宮廷魔術師を探してたんだった……」
ってことは、あのおじいちゃんがそうだったのか。
心眼が使えることといい、不思議な泉に詳しいことといい、只者ではなさそうだったけど。
呼び止めて聞いておけば良かったけど、それどころじゃなかったな。
「人違いでなければ、あの老人は魔法の鏡に詳しいはず。ここはぜひ家を訪ねて、知恵を貸していただこう」
「はい。ミーティア姫、行きましょう」
エイトが姫様を連れて行って、荷台と繋げる。
姫様は何もおっしゃらないけど……エイトと少しだけでも話せたことが嬉しかったんだろう。
先程とは表情が違う。
その光景を、私は見ていることしか出来なかった。
「敵が多いな、お前は」
ククールが私の頭に手を置いて、そう微笑む。
敵じゃない、姫様のことをそんなふうに思ったことはない。
だって姫様とエイトが両想いだって、この旅に出る前から知っていた。
私はそんな二人の、立場ゆえに縮まらない距離をもどかしく思いつつ、近くで見守っていこうと思っていたのに。
「……ねえ、ククール」
「なんだ?」
「前まではね……姫様とエイトがああやって親しげに話してても、全然気にならなかった。姫様がエイトのこと好きなのは知ってたし、エイトが姫様のこと好きなのも気付いてたし」
ククールは黙って私の話を聞いてくれていた。
いつもなら茶化してくるくせに、こういう時だけ腹立つくらい空気読めちゃって。
いっそ揶揄ってくれたら、私の気も楽だったのに。
「でも今は……なんでだろうね。ああやって二人で話してるのを見てたら……胸が痛くなる。苦しいんだ。黒いものが胸の中で渦を巻くような、そんな感じになるの」
「そりゃーお前……」
ククールがポンポンと私の頭を叩いた。
なぜかその顔はちょっと嬉しそうで、そしてやっぱり、腹が立つくらい、全てお見通しみたいな顔をしていた。
ククールの隣でゼシカもニコニコしている。
人が悩みを告白したっていうのに、なんでそんなに嬉しそうな顔をしているんだ。
「お前がエイトのこと、好きだからじゃないのか?」
「……え、好き? 私がエイトのことを? でも、もう十年も一緒にいて、今更そんな……」
「人を好きになるのに、年月は関係ないわよ。好きなんでしょ? エイトのこと。だからミーティア姫とエイトが仲睦まじそうに見えて、妬いちゃったのよね」
そうなのかな、私、姫様に嫉妬しちゃったのかな。
私、エイトのことが好きなのかな。
……誰かを好きになった経験がないから、私の中にあるエイトへの感情が、恋で合っているかは分からない。
でも、エイトと二人でいるとドキドキしたり、今までよりも楽しいって思うのが、恋なんだとしたら。
私はきっと、エイトのことを好きになっちゃったんだ。
