38章
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ベッドに横になった私は、「ううー……」と唸って、身体を沈みこませた。
さて話題は先程のチャゴス王子の件である。
「あの風体の悪さからして、まともな商人じゃなさそうだけど。ヤンガスはどう思う?」
「兄貴の言う通り、あれは闇商人でがすよ」
「闇商人?」
「不法なルートで物を売り買いするんでがすよ。あのバカ王子が受け取ったものが、偽物でなきゃいいんでがすけどね」
「どっちにせよ、あのバカ王子はあれ目当てで、大きなアルゴンハートを俺たちに取らせようとしてたってわけだな」
「……そうなるね」
エイトが感情を押し込めたような声で頷く。
言葉にしなくても、エイトが心底頭に来ているのはみんな察していた。
そりゃあ、あれだけ頑張ってアルゴングレートを相手したのに、結果がこれなんだもん。
エイトじゃなくても怒り心頭だよ。
「レイラが傷ついてまで倒したのに……」
「エイト、しょうがないよ。あの王子だもん」
「……うん」
納得はできないけど、チャゴス王子ならそういうことだってやるだろうし。
実際やられちゃったから、もう何も言えない。
でも何はともあれ、私達も王子の護衛はやり通したんだから、鏡をもらいに行かないと。
「……城、行くか?」
「そうね……」
気遣わしげな視線を受けて、私もベッドから起き上がった。
まだ疲れてるけど、ちょっとだけ横になれたから、さっきよりはマシだ。
それに、みんなで行かなきゃ意味が無い。
宿屋を出て、お城へと向かっていく。
バザーの喧騒に心を惹かれることもなくて、ただ無言で町の中を歩いた。
やりきれない思いを浮かべながら、お城の中へ入る。
城内は当然だけれど騒然としていて、どうやら今から謁見の間で、チャゴス王子がアルゴンハートをお披露目するらしい。
見たければ謁見の間へ、と言われ、私達は気乗りしないながらも、謁見の間へと向かった。
謁見の間には、城内の人たちがそれは大勢詰めかけていた。
あのチャゴス王子が帰ってきただけでも大騒ぎなのに、とんでもなく大きいアルゴンハートを持ってきたんだから、ビッグニュースにもなるだろう。
「それではチャゴス王子。我らに、王子の持ち帰ったアルゴンハートをお見せ下さい」
大臣がそう言うと、チャゴス王子はやっぱり勿体ぶるように間を置いて、白い布を取った。
瞬間、謁見の間が大いにザワつく。
「なんて大きさだ」「これ程のものは見たことがないわ」と驚きの声が上がり、「歴代の王が持ち帰ったものの中でも一番大きいのでは」とサイズを比較する者もいる。
そのざわめきの中で、チャゴス王子は満足気な顔でふんぞり返っていた。
「ささ、チャゴス王子。あなたの勇気と力の証であるアルゴンハートを、グクラビウス王にお納めください」
「──いや、よい」
大臣を止めたのはクラビウス王だ。
クラビウス王は玉座から立ち上がると、そのままチャゴス王子の前へと歩み出た。
「チャゴスよ。これはお前が倒したリザードから得たものであると、神に誓えるだろうな?」
「も、もちろんです、父上」
……おや?
ひょっとしてクラビウス王は、お気付きでいらっしゃる?
目の前にあるものが、闇商人から手に入れたものだと。
「頷く王子も王子よね……」
逆に感心したらしいゼシカの呟きに、私は無言で頷いた。
凄いよあんた、さすがの私も神に嘘はつけないもん。
「仮に協力者がいたとしても、お前が戦ってこれを手に入れたのなら、わしはお前の力を認めるだろう。だがそれ以外の方法で手に入れたのなら、わしはお前を認めん。今一度問う。戦って得たのだな?」
「は、はい。その通りです! これは僕がアルゴリザードと戦って勝ち得た物です」
「……そうか。大儀であった。お前の力の証、しかと受け取ったぞ」
チャゴス王子の持ってきたアルゴンハートに手を触れ、クラビウス王は静かな声でそう労うと、窓辺へと歩いていった。
なんだか……痛々しいな。
チャゴス王子に裏切られたのは、私たちだけじゃなかったんだ。
お披露目式が解散になった頃合いを見て、私たちはそっとクラビウス王へ声をかけた。
力なく項垂れていたクラビウス王が、私たちを見るなり勢いよく振り向く。
その表情には怒りよりも悲しみが深く刻まれていた。
「待っておったぞ、エイト。いったいどういうことか説明しろ。わしは屋上から見ておったのだぞ! チャゴスがバザーの商人からアルゴンハートを受け取るのをな。あやつは王家の山へ行かなかったのか?」
「……ご覧になっておいでだったんですね」
答えるエイトの声も覇気はない。
私たちだって、アルゴングレートから手に入れたアルゴンハートをクラビウス王に差し出すなら、何も思わなかった。
トカゲが大の苦手なチャゴス王子が、まったく力にならなかったとはいえ、一度は立ち向かったんだもん。
「チャゴス王子と僕らは、王家の山でアルゴリザードを何度か相手にしました。今朝はアルゴングレートまで出てきて、それも相手にして……。その時のアルゴンハートが、こちらです」
エイトが袋から、今朝のアルゴンハートをクラビウス王へ差し出す。
「チャゴス王子も、ちゃんと立ち向かわれたんです」と添えて渡されたその宝石は、クラビウス王の手の中で輝いていた。
「……そうだったのか。自分一人の力ではなくとも、己で戦ってこれを手にしたか。ならば素直にこれを差し出せばよいものを……未熟者めが。わしは大きさなど気にせんのに。こんな有様では、王位を継ぐのはおろか、妻を娶ることすらまだまだ早いようだな」
……なんていうか、これを機にチャゴス王子と姫様の婚約が破談になってくれないかな、なんて、意地の悪いことを思ってしまった。
こんなことをする人に姫様が嫁いで、幸せになんてなれるはずない。
そうなるくらいだったら、エイトが姫様と結ばれたほうが──。
(……また胸が痛いや)
ズキンと痛む胸を無視して、私は何を言うことも出来ずに俯いた。
なんだか、とっても後味が悪い。
私たちにまだ出来ることがあるなら──。
「だがこれはチャゴスの問題だ」
クラビウス王の毅然とした声で、私はハッと気付かされた。
そうだ、これはあくまでサザンビーク王家の問題だ。
成り行きで関わることになっただけの旅人が首を突っ込んでいい話じゃない。
私たちにできるのは、ここまでなんだ。
「そなた達は見事、依頼を果たしてくれた。約束通り、魔法の鏡はくれてやろう。魔法の鏡は四階の宝物庫にしまってある。話はつけてあるから、好きな時に持っていくがいい。その代わり、チャゴスが取ったこのアルゴンハートは貰っておくぞ。チャゴスが忘れた頃に、これをネタにして叱ってやるのだよ。いつになるか分からんがな……」
クラビウス王は再び私たちに背を向け、ガラス越しに城下町を見つめた。
語ることはもうないと背中が告げている。
お世話になりました、とクラビウス王に頭を下げて、私たちは広間を出た。
「うーん、なんだか……スッキリしないな」
「後味の悪い話だったな。まぁ切り替えていこう。宝物庫は四階だったっけな。さっさと取りに行こうぜ」
こういう時、ククールのドライさがありがたい。
私はどうしても引きずっちゃうから……。
エイトも割り切るのは苦手なほうだもんね。
昔からこういうところは似た者同士なんだ、私たち。
さて話題は先程のチャゴス王子の件である。
「あの風体の悪さからして、まともな商人じゃなさそうだけど。ヤンガスはどう思う?」
「兄貴の言う通り、あれは闇商人でがすよ」
「闇商人?」
「不法なルートで物を売り買いするんでがすよ。あのバカ王子が受け取ったものが、偽物でなきゃいいんでがすけどね」
「どっちにせよ、あのバカ王子はあれ目当てで、大きなアルゴンハートを俺たちに取らせようとしてたってわけだな」
「……そうなるね」
エイトが感情を押し込めたような声で頷く。
言葉にしなくても、エイトが心底頭に来ているのはみんな察していた。
そりゃあ、あれだけ頑張ってアルゴングレートを相手したのに、結果がこれなんだもん。
エイトじゃなくても怒り心頭だよ。
「レイラが傷ついてまで倒したのに……」
「エイト、しょうがないよ。あの王子だもん」
「……うん」
納得はできないけど、チャゴス王子ならそういうことだってやるだろうし。
実際やられちゃったから、もう何も言えない。
でも何はともあれ、私達も王子の護衛はやり通したんだから、鏡をもらいに行かないと。
「……城、行くか?」
「そうね……」
気遣わしげな視線を受けて、私もベッドから起き上がった。
まだ疲れてるけど、ちょっとだけ横になれたから、さっきよりはマシだ。
それに、みんなで行かなきゃ意味が無い。
宿屋を出て、お城へと向かっていく。
バザーの喧騒に心を惹かれることもなくて、ただ無言で町の中を歩いた。
やりきれない思いを浮かべながら、お城の中へ入る。
城内は当然だけれど騒然としていて、どうやら今から謁見の間で、チャゴス王子がアルゴンハートをお披露目するらしい。
見たければ謁見の間へ、と言われ、私達は気乗りしないながらも、謁見の間へと向かった。
謁見の間には、城内の人たちがそれは大勢詰めかけていた。
あのチャゴス王子が帰ってきただけでも大騒ぎなのに、とんでもなく大きいアルゴンハートを持ってきたんだから、ビッグニュースにもなるだろう。
「それではチャゴス王子。我らに、王子の持ち帰ったアルゴンハートをお見せ下さい」
大臣がそう言うと、チャゴス王子はやっぱり勿体ぶるように間を置いて、白い布を取った。
瞬間、謁見の間が大いにザワつく。
「なんて大きさだ」「これ程のものは見たことがないわ」と驚きの声が上がり、「歴代の王が持ち帰ったものの中でも一番大きいのでは」とサイズを比較する者もいる。
そのざわめきの中で、チャゴス王子は満足気な顔でふんぞり返っていた。
「ささ、チャゴス王子。あなたの勇気と力の証であるアルゴンハートを、グクラビウス王にお納めください」
「──いや、よい」
大臣を止めたのはクラビウス王だ。
クラビウス王は玉座から立ち上がると、そのままチャゴス王子の前へと歩み出た。
「チャゴスよ。これはお前が倒したリザードから得たものであると、神に誓えるだろうな?」
「も、もちろんです、父上」
……おや?
ひょっとしてクラビウス王は、お気付きでいらっしゃる?
目の前にあるものが、闇商人から手に入れたものだと。
「頷く王子も王子よね……」
逆に感心したらしいゼシカの呟きに、私は無言で頷いた。
凄いよあんた、さすがの私も神に嘘はつけないもん。
「仮に協力者がいたとしても、お前が戦ってこれを手に入れたのなら、わしはお前の力を認めるだろう。だがそれ以外の方法で手に入れたのなら、わしはお前を認めん。今一度問う。戦って得たのだな?」
「は、はい。その通りです! これは僕がアルゴリザードと戦って勝ち得た物です」
「……そうか。大儀であった。お前の力の証、しかと受け取ったぞ」
チャゴス王子の持ってきたアルゴンハートに手を触れ、クラビウス王は静かな声でそう労うと、窓辺へと歩いていった。
なんだか……痛々しいな。
チャゴス王子に裏切られたのは、私たちだけじゃなかったんだ。
お披露目式が解散になった頃合いを見て、私たちはそっとクラビウス王へ声をかけた。
力なく項垂れていたクラビウス王が、私たちを見るなり勢いよく振り向く。
その表情には怒りよりも悲しみが深く刻まれていた。
「待っておったぞ、エイト。いったいどういうことか説明しろ。わしは屋上から見ておったのだぞ! チャゴスがバザーの商人からアルゴンハートを受け取るのをな。あやつは王家の山へ行かなかったのか?」
「……ご覧になっておいでだったんですね」
答えるエイトの声も覇気はない。
私たちだって、アルゴングレートから手に入れたアルゴンハートをクラビウス王に差し出すなら、何も思わなかった。
トカゲが大の苦手なチャゴス王子が、まったく力にならなかったとはいえ、一度は立ち向かったんだもん。
「チャゴス王子と僕らは、王家の山でアルゴリザードを何度か相手にしました。今朝はアルゴングレートまで出てきて、それも相手にして……。その時のアルゴンハートが、こちらです」
エイトが袋から、今朝のアルゴンハートをクラビウス王へ差し出す。
「チャゴス王子も、ちゃんと立ち向かわれたんです」と添えて渡されたその宝石は、クラビウス王の手の中で輝いていた。
「……そうだったのか。自分一人の力ではなくとも、己で戦ってこれを手にしたか。ならば素直にこれを差し出せばよいものを……未熟者めが。わしは大きさなど気にせんのに。こんな有様では、王位を継ぐのはおろか、妻を娶ることすらまだまだ早いようだな」
……なんていうか、これを機にチャゴス王子と姫様の婚約が破談になってくれないかな、なんて、意地の悪いことを思ってしまった。
こんなことをする人に姫様が嫁いで、幸せになんてなれるはずない。
そうなるくらいだったら、エイトが姫様と結ばれたほうが──。
(……また胸が痛いや)
ズキンと痛む胸を無視して、私は何を言うことも出来ずに俯いた。
なんだか、とっても後味が悪い。
私たちにまだ出来ることがあるなら──。
「だがこれはチャゴスの問題だ」
クラビウス王の毅然とした声で、私はハッと気付かされた。
そうだ、これはあくまでサザンビーク王家の問題だ。
成り行きで関わることになっただけの旅人が首を突っ込んでいい話じゃない。
私たちにできるのは、ここまでなんだ。
「そなた達は見事、依頼を果たしてくれた。約束通り、魔法の鏡はくれてやろう。魔法の鏡は四階の宝物庫にしまってある。話はつけてあるから、好きな時に持っていくがいい。その代わり、チャゴスが取ったこのアルゴンハートは貰っておくぞ。チャゴスが忘れた頃に、これをネタにして叱ってやるのだよ。いつになるか分からんがな……」
クラビウス王は再び私たちに背を向け、ガラス越しに城下町を見つめた。
語ることはもうないと背中が告げている。
お世話になりました、とクラビウス王に頭を下げて、私たちは広間を出た。
「うーん、なんだか……スッキリしないな」
「後味の悪い話だったな。まぁ切り替えていこう。宝物庫は四階だったっけな。さっさと取りに行こうぜ」
こういう時、ククールのドライさがありがたい。
私はどうしても引きずっちゃうから……。
エイトも割り切るのは苦手なほうだもんね。
昔からこういうところは似た者同士なんだ、私たち。
