30章
夢小説設定
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部屋のある二階は、どうやらカジノと繋がっているらしかった。
カジノが開いていた頃は、この宿も人気だったんだろうけど、今は空室だらけみたいだ。
そのカジノの入口付近から、話し声が聞こえてきた。
「さぁ、そろそろ話してくださいよ。あの日、本当は何があったのかを」
どうやらそこにいるのは、カジノのディーラーと酒場のマスターみたいだ。
二人ともこちらに背を向けていて、私とエイトには気付いていない。
「……仕方がないな。絶対に誰にも言わないでくれよ。俺が漏らしたなんて知れたら……」
「絶対に口外しません。酒場のマスターというのは、口が固いものなんですよ」
「分かったから、でかい声出すなよ。あの日、ギャリング様の屋敷に強盗が押し入ったのは知ってるな? 実はな……あの時の強盗に、ギャリング様は殺されてしまったんだ」
「ええっ! ギャリング様が!?」
マスターの大声が響いて、私たちはとっさに壁際へと隠れた。
どうやら盗み聞きしていることはバレていないらしい。
それにしたって、そのギャリングという人が、まさか強盗に殺されていたなんて……。
「バカッ、でかい声を出すな。ギャリング様が屋敷から出てこないのは、もう死んでこの世にいないからだよ」
「その強盗は何者なんです? あのお強いと評判のギャリング様を、こ、殺してしまうなんて……」
「俺もその場にいたわけじゃないから、詳しいことは分からんが、その強盗は道化師の格好をしていたそうだ」
私とエイトは思わず息を呑んで、それから互いに顔を見つめあった。
道化師の格好をした強盗──間違いない、ドルマゲスだ。
やっぱり、もう遅かったか……。
「道化師の格好ですか……」
「でも変なんだよ、その強盗。金目の物には一切手をつけず、ギャリング様を殺して出ていったそうだ。まるで最初からギャリング様を殺すのが目的だったみたいだぜ」
リーザス像の塔で、サーベルトさんを殺した時もそうだった。
奴は最初からサーベルトさんを殺すことを目的にしていて、リーザス像には目もくれなかった。
奴が何かを目的にして人殺しを続けているのは分かるのだけれど、肝心の目的については何も分からない。
「そんでよ、フォーグ様とユッケ様が、ギャリング様の仇を討つために、追っ手を放ったらしいんだ」
「あわわわ……とんでもないことを聞いてしまったぞ。こっ、このことは、口が裂けても人には言えませんね。……おっと! いかんいかん、店を放ったらかしにしたまんまだった。そろそろ戻らないと。それじゃ」
ドルマゲスの師匠マスター・ライラス、リーザス村の名士アルバート家のサーベルトさん、マイエラ修道院のオディロ院長。
そして今回はカジノのオーナーであるギャリングさん……。
狙った相手の一貫性がなくて、ドルマゲスの目的が全く見えてこない。
ふと顔を上げると、エイトは私以上に難しい顔をして考え込んでいた。
声を掛けようと口を開いた瞬間、カジノの入口方向から人影がぬっと現れた。
「うおっ!」
「うわぁ!!」
「えっ何、うわ!!」
上から酒場のマスター、私、そしてマスターと私につられたエイトの悲鳴である。
化け物を見たような反応をしてしまって、さすがに申し訳なかった。
そんなつもりは一切なくってだな……。
「すみませんすみません! いきなり現れたんでビックリして」
「いえこちらこそ、いきなり現れてビックリしました」
「こら」
私の後ろでエイトがそう言って小さく咳払いをする。
こちらこそいきなり現れてすみませんと言いたかったんだ。
うっかり本音と建前が逆になってしまった、反省。
「……あ、あなた達まさか! ずっとここにいたんじゃ!?」
ギクゥ!! と私たち二人の間に微妙な空気が漂った。
嘘がつけない近衛兵二人で、にっこりと微笑んだまま首を傾げる。
何を言ってもボロが出そうなので、何も言うまいというポーズだ。
私はともかく、エイトもこういう時に誤魔化すのヘタクソだもんね。
「って、そんなはずないか。すみませんね、おかしなこと言って。さぁて、酒場に戻らないと」
そう言ってマスターは地下の酒場へと戻るべく、階段を降りて去っていった。
盗み聞きしていたのはバレなかったみたいだ。
それにしても、いやぁ……引いちゃったな、当たり……。
「……エイト、今の話ってさ」
「うん。……ドルマゲスの仕業で間違いなさそうだ」
「……」
これ以上の犠牲は出したくなかったのに。
私たちって実は、ドルマゲスを追い詰めているようで、何も出来ていないのかもしれない。
……悔しい、こんなにも無力だなんて。
「……レイラ」
「わっ! な、なに?」
ぽん、と背中を叩かれて、思わず肩が跳ねた。
隣にいるエイトは私を見て微笑んで、それから今度は私の頭をぽんぽんと撫でた。
「今回ばかりは仕方がない話だよ。マイエラ修道院でドルマゲスを見失ってからここに辿り着くまで、かなり時間が経ってしまったから」
「……うん、でも」
「レイラの気持ち、分かるよ。悔しいよね。僕らはドルマゲスを追いかけてばかりで、その凶行を一度だって止められたことがないんだ」
寂しそうに笑って、エイトは階段へ向かっていく。
私もその後ろ姿を追いかけて、階段を降りた。
……エイトだって悔しいはずなのに。
それでもここで立ち止まっちゃ駄目だって、エイトは前に進もうとする。
「……エイトが一緒に旅をしてくれてて良かった」
「え?」
「私ひとりだったら、もっと早い段階で心が折れてた気がするや」
「……ひとりだったら、僕もとっくに心折れてたと思うよ」
階段を降りてフロントに戻りながら、エイトはそう言って小さく微笑んだ。
それからエイトの手が宿屋の扉を開く。
外に出た私たちは、そのままカジノの横にあるベンチに座って、三人を待つことにした。
カジノが開いていた頃は、この宿も人気だったんだろうけど、今は空室だらけみたいだ。
そのカジノの入口付近から、話し声が聞こえてきた。
「さぁ、そろそろ話してくださいよ。あの日、本当は何があったのかを」
どうやらそこにいるのは、カジノのディーラーと酒場のマスターみたいだ。
二人ともこちらに背を向けていて、私とエイトには気付いていない。
「……仕方がないな。絶対に誰にも言わないでくれよ。俺が漏らしたなんて知れたら……」
「絶対に口外しません。酒場のマスターというのは、口が固いものなんですよ」
「分かったから、でかい声出すなよ。あの日、ギャリング様の屋敷に強盗が押し入ったのは知ってるな? 実はな……あの時の強盗に、ギャリング様は殺されてしまったんだ」
「ええっ! ギャリング様が!?」
マスターの大声が響いて、私たちはとっさに壁際へと隠れた。
どうやら盗み聞きしていることはバレていないらしい。
それにしたって、そのギャリングという人が、まさか強盗に殺されていたなんて……。
「バカッ、でかい声を出すな。ギャリング様が屋敷から出てこないのは、もう死んでこの世にいないからだよ」
「その強盗は何者なんです? あのお強いと評判のギャリング様を、こ、殺してしまうなんて……」
「俺もその場にいたわけじゃないから、詳しいことは分からんが、その強盗は道化師の格好をしていたそうだ」
私とエイトは思わず息を呑んで、それから互いに顔を見つめあった。
道化師の格好をした強盗──間違いない、ドルマゲスだ。
やっぱり、もう遅かったか……。
「道化師の格好ですか……」
「でも変なんだよ、その強盗。金目の物には一切手をつけず、ギャリング様を殺して出ていったそうだ。まるで最初からギャリング様を殺すのが目的だったみたいだぜ」
リーザス像の塔で、サーベルトさんを殺した時もそうだった。
奴は最初からサーベルトさんを殺すことを目的にしていて、リーザス像には目もくれなかった。
奴が何かを目的にして人殺しを続けているのは分かるのだけれど、肝心の目的については何も分からない。
「そんでよ、フォーグ様とユッケ様が、ギャリング様の仇を討つために、追っ手を放ったらしいんだ」
「あわわわ……とんでもないことを聞いてしまったぞ。こっ、このことは、口が裂けても人には言えませんね。……おっと! いかんいかん、店を放ったらかしにしたまんまだった。そろそろ戻らないと。それじゃ」
ドルマゲスの師匠マスター・ライラス、リーザス村の名士アルバート家のサーベルトさん、マイエラ修道院のオディロ院長。
そして今回はカジノのオーナーであるギャリングさん……。
狙った相手の一貫性がなくて、ドルマゲスの目的が全く見えてこない。
ふと顔を上げると、エイトは私以上に難しい顔をして考え込んでいた。
声を掛けようと口を開いた瞬間、カジノの入口方向から人影がぬっと現れた。
「うおっ!」
「うわぁ!!」
「えっ何、うわ!!」
上から酒場のマスター、私、そしてマスターと私につられたエイトの悲鳴である。
化け物を見たような反応をしてしまって、さすがに申し訳なかった。
そんなつもりは一切なくってだな……。
「すみませんすみません! いきなり現れたんでビックリして」
「いえこちらこそ、いきなり現れてビックリしました」
「こら」
私の後ろでエイトがそう言って小さく咳払いをする。
こちらこそいきなり現れてすみませんと言いたかったんだ。
うっかり本音と建前が逆になってしまった、反省。
「……あ、あなた達まさか! ずっとここにいたんじゃ!?」
ギクゥ!! と私たち二人の間に微妙な空気が漂った。
嘘がつけない近衛兵二人で、にっこりと微笑んだまま首を傾げる。
何を言ってもボロが出そうなので、何も言うまいというポーズだ。
私はともかく、エイトもこういう時に誤魔化すのヘタクソだもんね。
「って、そんなはずないか。すみませんね、おかしなこと言って。さぁて、酒場に戻らないと」
そう言ってマスターは地下の酒場へと戻るべく、階段を降りて去っていった。
盗み聞きしていたのはバレなかったみたいだ。
それにしても、いやぁ……引いちゃったな、当たり……。
「……エイト、今の話ってさ」
「うん。……ドルマゲスの仕業で間違いなさそうだ」
「……」
これ以上の犠牲は出したくなかったのに。
私たちって実は、ドルマゲスを追い詰めているようで、何も出来ていないのかもしれない。
……悔しい、こんなにも無力だなんて。
「……レイラ」
「わっ! な、なに?」
ぽん、と背中を叩かれて、思わず肩が跳ねた。
隣にいるエイトは私を見て微笑んで、それから今度は私の頭をぽんぽんと撫でた。
「今回ばかりは仕方がない話だよ。マイエラ修道院でドルマゲスを見失ってからここに辿り着くまで、かなり時間が経ってしまったから」
「……うん、でも」
「レイラの気持ち、分かるよ。悔しいよね。僕らはドルマゲスを追いかけてばかりで、その凶行を一度だって止められたことがないんだ」
寂しそうに笑って、エイトは階段へ向かっていく。
私もその後ろ姿を追いかけて、階段を降りた。
……エイトだって悔しいはずなのに。
それでもここで立ち止まっちゃ駄目だって、エイトは前に進もうとする。
「……エイトが一緒に旅をしてくれてて良かった」
「え?」
「私ひとりだったら、もっと早い段階で心が折れてた気がするや」
「……ひとりだったら、僕もとっくに心折れてたと思うよ」
階段を降りてフロントに戻りながら、エイトはそう言って小さく微笑んだ。
それからエイトの手が宿屋の扉を開く。
外に出た私たちは、そのままカジノの横にあるベンチに座って、三人を待つことにした。
