29章
夢小説設定
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や、やだな、なんて笑って手の甲で涙を拭う。
でも涙は引っ込まなくて、ポロポロ出てくるばっかりだ。
「……何かあったの?」
「ううん、何もない、はずなんだけど……」
早く泣き止まないと。
モタモタしてたらエイトが戻ってきてしまう。
エイトは心配性だから、私が泣いてるのなんて見たら、大騒ぎするに決まってる。
ゼシカだって心配してくれてる、早く涙を止めて、いつもの私に戻らないと……。
そうしないと、私──。
(あれ……そうしないと、私どうなるんだっけ)
背後で教会の扉が開く。
あ、とゼシカが顔を上げ、つられて私もそちらを振り向いてしまった。
そこにいるのは──もちろんエイトだ。
泣いている私を見るなり、エイトの顔色がさっと変わった。
「エイト、あの、これは──」
弁解に走る私の手を掴んで、エイトがすごい力で私を教会の外に引っ張り出した。
そのまま裏手に回って、私をガバッと抱き竦めて……エイトは無言でそうしていた。
「ね、ねぇエイト。どしたの」
「……ごめん」
エイトが悔しそうに呟く。
謝られた理由がよく分からなくて、私は首を傾げ……たかったけど、頭をエイトの手ががっちり固定しているから無理だった。
「もういい。もう無理して笑わないで。ごめん」
「へ? えっと、エイト、あの──」
エイトは私をぎゅうっと抱き締めたまま、ごめんねと呟いた。
……そりゃあ、正直に言えば、疲れてしまってるところはある。
みんなの中にある『理想のレイラ』を演じることが、苦しくなってきたのは否めない。
でも、もしそれをやめてしまったら……私はどうなってしまうんだろう?
「レイラの思った通りにしていいんだ。僕らのイメージなんて気にしなくていい」
「や、あの、エイト」
「それでも僕はレイラと一緒にいるって約束する。絶対に置いていったりしない」
「ちょっ、エイト、人の話をだな」
「だから、レイラも自分を偽るのは──」
「いい加減離れんかーい!!」
「ゔッ!」
渾身の頭突きが綺麗にエイトの顎に決まってしまった。
痛みと衝撃で離れたエイトの腕をすり抜ける。
そうして起きていた姫様に抱き着いた。
「うっうっ、姫様、エイトのやつひどくないですか! 全然ひとの話聞かない!」
「えっ、ごめん! なんか言ってた!?」
「聞こえてもいねぇ!! あーあ! もう知りません! 姫様が見てたから離れてほしかったのに! 人の話聞かないエイトくんはもう知りません!!」
「ごめんって! ただ僕は心配で……」
「どうしてくれましょうかね姫様」
「ブルゥ……」
姫様は「まったくエイトは……」と言わんばかりに首を振った。
可哀想に、エイトの株が下がってしまったかもしれない。
……でも心配してくれてたのは嬉しいから、そこは素直にお礼を言わなければ。
「うそうそ、冗談。心配してくれてありがと。でも大丈夫だよ」
「……」
「無理してでも笑いたいんだ。そうじゃなきゃ、本当にこの先、笑えなくなりそうでさ」
「無理はしてほしくないよ」
エイトは切ない声でそう言った。
そんな顔をされると、何も言えなくなる。
姫様はエイトから私に視線を向け、そっと顔を擦り寄せた。
「笑えなくなってもいいと思う。レイラが背負ってきたことを思えば、そうなってもおかしくない。もしそうなっても、僕はレイラと一緒にいるよ」
「……」
「ごめんね。自分を演じないでって、もっと早く伝えてあげられればよかった」
「……謝んないで」
ようやく返せたのはそれだけだった。
エイトには謝られたくない──姫様や陛下、他のみんなにも。
だって私が、私の意思でそうしてきたんだもん。
みんなに心配をかけたくないから。
そして……私が私でいられるために。
笑うことをやめてしまったら、もう私では居られなくなってしまう気がする。
誰かの求める私で構わないから、『私はこういう性格なんだ』って知りたかった。
そうすれば、自分を見失うことはない気がするから。
「本当の本当に笑えなくなった時は、ちゃんとエイトに言うからさ。そん時はまた胸貸してよ」
「……うん」
「それにさ、ちょっとは無理やり笑ってるかもしれないけど、でも割と素で笑ってるよ、今」
「……さっきは泣いてただろ」
「あれね、なんで泣いてたのか自分でも分かんないんだよ。なんでなんだろうね? 別に悲しいことがあったわけでもないのにさ」
エイトはなおも言いたげな顔をしていたけど、陛下が起きてきたことで、この時間は終わってしまった。
そろそろ教会の中に戻らないと、ゼシカもきっと心配してる。
ククールとヤンガスも起きてるだろうし。
「戻ろ、エイト」
「……うん」
「それでは陛下、姫様、また後程!」
「焦って転ばんようにな」
「転びません! エイトも陛下も私をいくつだと思ってるんですか!」
「お前たち、本当に同い年なのか?」
「……落ち着きのあるレディに、なってみせる……」
陛下の憐れむような眼差しが一番効いた。
同い年だよ、残念なことに。
このパーティーで一番やかましい奴だけど、エイトと同い年だよ。
ぷんすかと起こりながら教会の扉を開く。
背後から追いかけてきたエイトは、可笑しそうに笑いながら、教会に入ってきて扉を閉めたのだった。
でも涙は引っ込まなくて、ポロポロ出てくるばっかりだ。
「……何かあったの?」
「ううん、何もない、はずなんだけど……」
早く泣き止まないと。
モタモタしてたらエイトが戻ってきてしまう。
エイトは心配性だから、私が泣いてるのなんて見たら、大騒ぎするに決まってる。
ゼシカだって心配してくれてる、早く涙を止めて、いつもの私に戻らないと……。
そうしないと、私──。
(あれ……そうしないと、私どうなるんだっけ)
背後で教会の扉が開く。
あ、とゼシカが顔を上げ、つられて私もそちらを振り向いてしまった。
そこにいるのは──もちろんエイトだ。
泣いている私を見るなり、エイトの顔色がさっと変わった。
「エイト、あの、これは──」
弁解に走る私の手を掴んで、エイトがすごい力で私を教会の外に引っ張り出した。
そのまま裏手に回って、私をガバッと抱き竦めて……エイトは無言でそうしていた。
「ね、ねぇエイト。どしたの」
「……ごめん」
エイトが悔しそうに呟く。
謝られた理由がよく分からなくて、私は首を傾げ……たかったけど、頭をエイトの手ががっちり固定しているから無理だった。
「もういい。もう無理して笑わないで。ごめん」
「へ? えっと、エイト、あの──」
エイトは私をぎゅうっと抱き締めたまま、ごめんねと呟いた。
……そりゃあ、正直に言えば、疲れてしまってるところはある。
みんなの中にある『理想のレイラ』を演じることが、苦しくなってきたのは否めない。
でも、もしそれをやめてしまったら……私はどうなってしまうんだろう?
「レイラの思った通りにしていいんだ。僕らのイメージなんて気にしなくていい」
「や、あの、エイト」
「それでも僕はレイラと一緒にいるって約束する。絶対に置いていったりしない」
「ちょっ、エイト、人の話をだな」
「だから、レイラも自分を偽るのは──」
「いい加減離れんかーい!!」
「ゔッ!」
渾身の頭突きが綺麗にエイトの顎に決まってしまった。
痛みと衝撃で離れたエイトの腕をすり抜ける。
そうして起きていた姫様に抱き着いた。
「うっうっ、姫様、エイトのやつひどくないですか! 全然ひとの話聞かない!」
「えっ、ごめん! なんか言ってた!?」
「聞こえてもいねぇ!! あーあ! もう知りません! 姫様が見てたから離れてほしかったのに! 人の話聞かないエイトくんはもう知りません!!」
「ごめんって! ただ僕は心配で……」
「どうしてくれましょうかね姫様」
「ブルゥ……」
姫様は「まったくエイトは……」と言わんばかりに首を振った。
可哀想に、エイトの株が下がってしまったかもしれない。
……でも心配してくれてたのは嬉しいから、そこは素直にお礼を言わなければ。
「うそうそ、冗談。心配してくれてありがと。でも大丈夫だよ」
「……」
「無理してでも笑いたいんだ。そうじゃなきゃ、本当にこの先、笑えなくなりそうでさ」
「無理はしてほしくないよ」
エイトは切ない声でそう言った。
そんな顔をされると、何も言えなくなる。
姫様はエイトから私に視線を向け、そっと顔を擦り寄せた。
「笑えなくなってもいいと思う。レイラが背負ってきたことを思えば、そうなってもおかしくない。もしそうなっても、僕はレイラと一緒にいるよ」
「……」
「ごめんね。自分を演じないでって、もっと早く伝えてあげられればよかった」
「……謝んないで」
ようやく返せたのはそれだけだった。
エイトには謝られたくない──姫様や陛下、他のみんなにも。
だって私が、私の意思でそうしてきたんだもん。
みんなに心配をかけたくないから。
そして……私が私でいられるために。
笑うことをやめてしまったら、もう私では居られなくなってしまう気がする。
誰かの求める私で構わないから、『私はこういう性格なんだ』って知りたかった。
そうすれば、自分を見失うことはない気がするから。
「本当の本当に笑えなくなった時は、ちゃんとエイトに言うからさ。そん時はまた胸貸してよ」
「……うん」
「それにさ、ちょっとは無理やり笑ってるかもしれないけど、でも割と素で笑ってるよ、今」
「……さっきは泣いてただろ」
「あれね、なんで泣いてたのか自分でも分かんないんだよ。なんでなんだろうね? 別に悲しいことがあったわけでもないのにさ」
エイトはなおも言いたげな顔をしていたけど、陛下が起きてきたことで、この時間は終わってしまった。
そろそろ教会の中に戻らないと、ゼシカもきっと心配してる。
ククールとヤンガスも起きてるだろうし。
「戻ろ、エイト」
「……うん」
「それでは陛下、姫様、また後程!」
「焦って転ばんようにな」
「転びません! エイトも陛下も私をいくつだと思ってるんですか!」
「お前たち、本当に同い年なのか?」
「……落ち着きのあるレディに、なってみせる……」
陛下の憐れむような眼差しが一番効いた。
同い年だよ、残念なことに。
このパーティーで一番やかましい奴だけど、エイトと同い年だよ。
ぷんすかと起こりながら教会の扉を開く。
背後から追いかけてきたエイトは、可笑しそうに笑いながら、教会に入ってきて扉を閉めたのだった。
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