28章
夢小説設定
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さて王女様は一階へ降りていかれた。
私達も一階へ向かうべきなんだろうけど、メダル王を前にして挨拶もしないのは、さすがに不敬では?
目線だけでエイトにそう言うと、エイトはこくりと頷いた。
「お目にかかれて光栄です」
丁寧にお辞儀をするエイトの後ろで、ゼシカはスカートをつまんでカーテシーをした。
ククールも形式的な礼を見せ、ヤンガスは不器用にぺこり。
私は近衛兵の所作しか分からないので、左胸に手を当てて頭を下げた。
「わしはメダル王。我が一族は代々、世界中に散らばるちいさなメダルを集めることを使命としてきた。わしがこんな身体でなければ、まだ年若き王女に王家の使命を背負わせることもなかったのだが……」
そうは言うけど、王族である以上はいずれ使命を背負うことになるわけだしな。
王女様が立派に公務を行えるのなら、それはそれでありなんでは?
そう考えるのは、私が王族ではなくて、ただの近衛兵だからかもしれないけど。
「そなたたち。旅をしているのなら、どうか王女のメダル集めを手伝ってはもらえまいか!? 最近では、この地を訪れる旅人も少なくて、頼める者もおらず……うっ! ゴホッゴホッ!」
「メダル王!」
大きく咳をしたメダル王の元へ、メイドがさっと駆け寄ってくる。
病人の前で長話はまずかったな……。
どのみち、ちいさなメダルは今後も集まるだろうし、協力しない理由はない。
別にこれ、価値があるもの……というか、店で売れるものでもないしね。
「まあ王様、そんなに興奮なさってはお身体に障りますわ。どうか安静にしていてくださいませ」
「……と、とにかく、そなたたち。どこかでちいさなメダルを見つけたら、王女のもとへ……ゴホッゴホッ、ゴホッ!」
何度も咳き込むメダル王は、本当にお辛そうだ。
王女様が王様の代わりにと張り切る理由も分かる。
でもまずは、これ以上ここにいてはいけないな!
メイドの目が怖い!
「王様はご病気なんですから、あんまり興奮させないように気を付けてくださいね!」
「は、はい! すみませんでした!」
失礼します、と何度も頭を下げ、私たちはメダル王のお部屋から退出した。
メイドさんがめちゃくちゃ怖かった……!
姫様の侍女だったあの子とは大違いだ……。
「えらく怒られちまいやしたね、兄貴」
「病気を患っている人の前で長話は、怒られても仕方ないわね。王女様のお話を聞きに行きましょ」
「ああいう気の強い女も、まぁ懐柔する甲斐はあるな。……冗談だよ、さすがに」
「冗談じゃないとさすがにドン引きだよ……」
全員から一歩距離を置かれ、ククールはスンとした顔で口を閉ざした。
言わなきゃいいのに学ばないんだよな、こいつは。
なぜお前はいつもそうなのか。
さて玉座の間へと戻ると、メダル王女様は既にお座りになられていた。
私たちの顔を見て王女様がぱっと微笑む。
そうしてこほんと小さく咳払いをした。
「よく来てくださいました。わたくしはメダル王女。世界中に散らばるちいさなメダルを集めております。旅の方。不躾ではありますが、旅先でメダルを見つけたならば、どうかお持ち頂けませんか? わたくしの元へちいさなメダルを持ってきてくだされば、様々な褒美と交換致しましょう」
「え! ご褒美があるんですか!?」
「レイラ、シッ!」
エイトがそう言ったのと同時に、ゼシカとククールが私の口を手で塞いだ。
何度目だ、このやり取り。
喋るなってことか、そうなのか!?
じゃあもう喋らないもんね!
「メダルなら、ちょうどここにたくさんあって……」
エイトが袋からジャラっと音を立ててメダルを取り出す。
頑張って集めたよな、私たち。
盗賊の鍵と魔法の鍵で開けられる宝箱は全部開けたし、ツボやタルや押し入れに袋、探れるところは全部探った!
不法侵入じゃないからセーフだ、メタな発言はやめておこう。
「まぁっ! 早速メダルを持ってきてくださったのですね。それではお預かり致します」
王女様にメダルを預けると、王女様は丁寧に枚数を数えた。
その数なんと三十五枚。
けっこう集まってたんだな……。
ヤンガスが盗賊の鼻でお宝を見逃さなかったおかげと、私とエイトの寄り道精神のおかげだ。
せっかく世界中を旅してるんだし、ちょっとくらい寄り道してもよくない? と思ったわけである。
あちこち寄り道して良かったー!
そんなわけで、網タイツをもらった。
私の手にある網タイツを前に、五人全員が「どうしよっか」と無言のまま、目で会話をしている。
「どう考えたってゼシカかレイラしか……」
「考えるまでもなくそうだろ。それともエイトお前、履くか?」
「冗談キツいでがすよ」
何一つ進展しなかったメンズの会話を無視して、私とゼシカは無言で顔を見合わせた。
いや……だってこれ、ねぇ……?
肉弾戦特化の私が、網タイツなんて履いてみなさいよ。
一発で破れるよ絶対。
「ゼシカってさぁ、えっと……私より打たれ弱いから……。ちょっとでも防御力あるほうがいいと思うんだぁ……」
「……」
「なんならここにバトルロードの景品でもらったバニースーツもあるよ……」
「今のは火に油だろ」
私もそんな気がする。
ゼシカの眉間のシワが凄いことになってるもん。
でも現状からいくと、ゼシカの現時点での装備としてはありだったりする。
ゼシカもそれが分かっているから、渋っているのだ。
でもバニーで動き回るのは嫌だって気持ちはすごく分かる!
私も嫌だもん!
「……む、無理にとは言わないから、えっと……」
「……西の大陸で、バニースーツより良い装備が早く見つかるよう祈るわ」
「エッ」
「船に戻ったら着替えるから、覗かないでよね」
バニースーツと網タイツを受け取って、ゼシカはスタスタと船のある方へ歩いていく。
慌てて追いかけながら、なんだかキュンとしてしまった。
「ゼシカ〜! ありがとう! 大好き!」
「急に抱き着かないで、危ないじゃない! それにそのセリフ、言う相手が違うわよ」
「違わないよ、ゼシカのこと大好きだもん」
「……そう」
お、ゼシカが照れた。
背後のククールを見てニタリと笑ってみせる。
ククールさんには一生かかっても出来ないことでしょうねぇ!!
私とゼシカはマブですからね!!
「さて、それじゃあ改めて、西の大陸に出発しよう!」
「オッサンも船の中で待ちくたびれてるでがしょうな。早いとこ西に向かったほうがいいでげすよ」
「ドルマゲスを見失ってからかなり時間が経ってる。急がねぇと、また犠牲者が出るぜ」
男性陣のそれに私とゼシカは真剣な顔で頷いた。
船に乗り込んで、錨を上げる。
そうして船は小島からゆっくりと離れ、西へと進み始めた。
はたして西の大陸で、ドルマゲスに追いつけるだろうか。
……ううん、絶対に追いついてみせる。
そのために苦労して船まで手に入れたんだから。
天気は快晴、絶好の旅日和。
遠くなっていく南の大陸にほんの少しの寂しさと、まだ見ぬ西の大陸へのちょっとした高揚感を抱えて、私たちは船に揺られていた。
私達も一階へ向かうべきなんだろうけど、メダル王を前にして挨拶もしないのは、さすがに不敬では?
目線だけでエイトにそう言うと、エイトはこくりと頷いた。
「お目にかかれて光栄です」
丁寧にお辞儀をするエイトの後ろで、ゼシカはスカートをつまんでカーテシーをした。
ククールも形式的な礼を見せ、ヤンガスは不器用にぺこり。
私は近衛兵の所作しか分からないので、左胸に手を当てて頭を下げた。
「わしはメダル王。我が一族は代々、世界中に散らばるちいさなメダルを集めることを使命としてきた。わしがこんな身体でなければ、まだ年若き王女に王家の使命を背負わせることもなかったのだが……」
そうは言うけど、王族である以上はいずれ使命を背負うことになるわけだしな。
王女様が立派に公務を行えるのなら、それはそれでありなんでは?
そう考えるのは、私が王族ではなくて、ただの近衛兵だからかもしれないけど。
「そなたたち。旅をしているのなら、どうか王女のメダル集めを手伝ってはもらえまいか!? 最近では、この地を訪れる旅人も少なくて、頼める者もおらず……うっ! ゴホッゴホッ!」
「メダル王!」
大きく咳をしたメダル王の元へ、メイドがさっと駆け寄ってくる。
病人の前で長話はまずかったな……。
どのみち、ちいさなメダルは今後も集まるだろうし、協力しない理由はない。
別にこれ、価値があるもの……というか、店で売れるものでもないしね。
「まあ王様、そんなに興奮なさってはお身体に障りますわ。どうか安静にしていてくださいませ」
「……と、とにかく、そなたたち。どこかでちいさなメダルを見つけたら、王女のもとへ……ゴホッゴホッ、ゴホッ!」
何度も咳き込むメダル王は、本当にお辛そうだ。
王女様が王様の代わりにと張り切る理由も分かる。
でもまずは、これ以上ここにいてはいけないな!
メイドの目が怖い!
「王様はご病気なんですから、あんまり興奮させないように気を付けてくださいね!」
「は、はい! すみませんでした!」
失礼します、と何度も頭を下げ、私たちはメダル王のお部屋から退出した。
メイドさんがめちゃくちゃ怖かった……!
姫様の侍女だったあの子とは大違いだ……。
「えらく怒られちまいやしたね、兄貴」
「病気を患っている人の前で長話は、怒られても仕方ないわね。王女様のお話を聞きに行きましょ」
「ああいう気の強い女も、まぁ懐柔する甲斐はあるな。……冗談だよ、さすがに」
「冗談じゃないとさすがにドン引きだよ……」
全員から一歩距離を置かれ、ククールはスンとした顔で口を閉ざした。
言わなきゃいいのに学ばないんだよな、こいつは。
なぜお前はいつもそうなのか。
さて玉座の間へと戻ると、メダル王女様は既にお座りになられていた。
私たちの顔を見て王女様がぱっと微笑む。
そうしてこほんと小さく咳払いをした。
「よく来てくださいました。わたくしはメダル王女。世界中に散らばるちいさなメダルを集めております。旅の方。不躾ではありますが、旅先でメダルを見つけたならば、どうかお持ち頂けませんか? わたくしの元へちいさなメダルを持ってきてくだされば、様々な褒美と交換致しましょう」
「え! ご褒美があるんですか!?」
「レイラ、シッ!」
エイトがそう言ったのと同時に、ゼシカとククールが私の口を手で塞いだ。
何度目だ、このやり取り。
喋るなってことか、そうなのか!?
じゃあもう喋らないもんね!
「メダルなら、ちょうどここにたくさんあって……」
エイトが袋からジャラっと音を立ててメダルを取り出す。
頑張って集めたよな、私たち。
盗賊の鍵と魔法の鍵で開けられる宝箱は全部開けたし、ツボやタルや押し入れに袋、探れるところは全部探った!
不法侵入じゃないからセーフだ、メタな発言はやめておこう。
「まぁっ! 早速メダルを持ってきてくださったのですね。それではお預かり致します」
王女様にメダルを預けると、王女様は丁寧に枚数を数えた。
その数なんと三十五枚。
けっこう集まってたんだな……。
ヤンガスが盗賊の鼻でお宝を見逃さなかったおかげと、私とエイトの寄り道精神のおかげだ。
せっかく世界中を旅してるんだし、ちょっとくらい寄り道してもよくない? と思ったわけである。
あちこち寄り道して良かったー!
そんなわけで、網タイツをもらった。
私の手にある網タイツを前に、五人全員が「どうしよっか」と無言のまま、目で会話をしている。
「どう考えたってゼシカかレイラしか……」
「考えるまでもなくそうだろ。それともエイトお前、履くか?」
「冗談キツいでがすよ」
何一つ進展しなかったメンズの会話を無視して、私とゼシカは無言で顔を見合わせた。
いや……だってこれ、ねぇ……?
肉弾戦特化の私が、網タイツなんて履いてみなさいよ。
一発で破れるよ絶対。
「ゼシカってさぁ、えっと……私より打たれ弱いから……。ちょっとでも防御力あるほうがいいと思うんだぁ……」
「……」
「なんならここにバトルロードの景品でもらったバニースーツもあるよ……」
「今のは火に油だろ」
私もそんな気がする。
ゼシカの眉間のシワが凄いことになってるもん。
でも現状からいくと、ゼシカの現時点での装備としてはありだったりする。
ゼシカもそれが分かっているから、渋っているのだ。
でもバニーで動き回るのは嫌だって気持ちはすごく分かる!
私も嫌だもん!
「……む、無理にとは言わないから、えっと……」
「……西の大陸で、バニースーツより良い装備が早く見つかるよう祈るわ」
「エッ」
「船に戻ったら着替えるから、覗かないでよね」
バニースーツと網タイツを受け取って、ゼシカはスタスタと船のある方へ歩いていく。
慌てて追いかけながら、なんだかキュンとしてしまった。
「ゼシカ〜! ありがとう! 大好き!」
「急に抱き着かないで、危ないじゃない! それにそのセリフ、言う相手が違うわよ」
「違わないよ、ゼシカのこと大好きだもん」
「……そう」
お、ゼシカが照れた。
背後のククールを見てニタリと笑ってみせる。
ククールさんには一生かかっても出来ないことでしょうねぇ!!
私とゼシカはマブですからね!!
「さて、それじゃあ改めて、西の大陸に出発しよう!」
「オッサンも船の中で待ちくたびれてるでがしょうな。早いとこ西に向かったほうがいいでげすよ」
「ドルマゲスを見失ってからかなり時間が経ってる。急がねぇと、また犠牲者が出るぜ」
男性陣のそれに私とゼシカは真剣な顔で頷いた。
船に乗り込んで、錨を上げる。
そうして船は小島からゆっくりと離れ、西へと進み始めた。
はたして西の大陸で、ドルマゲスに追いつけるだろうか。
……ううん、絶対に追いついてみせる。
そのために苦労して船まで手に入れたんだから。
天気は快晴、絶好の旅日和。
遠くなっていく南の大陸にほんの少しの寂しさと、まだ見ぬ西の大陸へのちょっとした高揚感を抱えて、私たちは船に揺られていた。
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