28章
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私の顔を見つめていたエイトは、小さくため息をついた。
そりゃあ私のイカタコ嫌いは筋金入りだ。
あのヌメヌメした手足は一生かかっても得意になる気がしない。
だけどドルマゲスを追い掛ける中で、もしオセアーノンみたいな奴と戦わなきゃいけなくなったら?
みんなに戦いを任せて、私は逃げ回る──なんて、そんな格好悪い真似、出来るわけない。
ため息をついて見せたエイトは、困ったように笑って、ぽんと頭を撫でてくれた。
「昔から意地っ張りだよね、レイラは」
「……え、そうだっけ」
「そうだよ」
「それは……なんかごめんね……?」
「謝らなくていいよ。レイラが苦手を克服しようと頑張るなら、僕らは協力するだけだ」
エイトが私の手を取って、引っ張り上げた。
座り込んでいた足が立ち上がる。
エイトの顔を真正面から見上げたとき、不覚にも胸の奥が小さく音を立てた。
「えっと、エイト……」
「少しずつでいいから、いけるって思ったときだけ攻撃してくれる?」
エイトはもう困ったような顔はしていなかった。
いつもの優しい笑顔だ。
「……うん! 頑張る!」
「でも、あんまり無茶はしないでね。見てて肝が冷えるから」
「うっ……はい」
さすがエイトさん、私のことをよく御存じでいらっしゃる……。
でも大丈夫だと思う。
イカタコに関しては立ち向かうだけで相当な勇気が必要だから、無茶なんかしようがない。
さて、船はいよいよあの小島に到着した。
船着場があったので船を寄せ、錨を降ろす。
そうして島へ上陸すると、城はすぐ近くにあった。
「この辺りを治めてるお城なのかな?」
「いや、聞いたこともないぜ。マイエラ修道院の辺りは、俺の生家が領主として治めてた。それにあの辺の国と言えば、アスカンタしかない」
「ポルトリンクもアルバート家の領地よ」
「んん……? じゃあ尚更、あのお城って何……?」
全員で首を傾げながら、お城へと近付く。
お城の扉は開かれているようで、私たちはお城の中へと足を踏み入れた。
入ってすぐが玉座、右手にはゴールド銀行、左手には道具屋。
大臣らしき人が一人と、またもや喋る無害なスライムが一匹……。
「滝の洞窟にいた奴とは別個体なのかな」
「たぶん……」
エイトは曖昧に頷いて、さっと玉座の間に視線を巡らせた。
城としてはかなり小ぢんまりしている。
使用人も少ないようだ。
そのとき、大臣が私たちを見て、「おお!」と目を輝かせた。
え、なに、私たちってもしかして有名?
そりゃあアスカンタを復活させたり、アスカンタの国宝をモグラから取り返したりしたもんね!
どんだけ問題を抱えてたんだ、あの国。
「この城に旅の者が来るなど、何年ぶりのことだろうか。……ということはお前たち、アレを持ってきたというわけだな?」
「アレ?」
「……ってなんでがすか?」
「たぶん、ちいさなメダルのことかなとは……」
エイトが共有の袋から、ちいさなメダルをジャラっと取り出す。
数えて三十二枚のちいさなメダルは、私たちの努力の結晶だ。
「ならばぜひ王女様に会っていってくれ。王女様は今、二階にいらっしゃるはずだ」
「王女様……?」
不思議に思いつつも、言われた通りに二階へ進む。
扉を開けると、天蓋付きのベッドの前に、白いドレスを着た女性が立っていた。
ウィンプルの上に白い帽子を被り、ピンクのレースを流す後ろ姿。
恐らく王女様だ。
「わしがこのような身体でなければ、王家の務めをお前ひとりに背負わせることもないのだが……。本当にわしのせいで、お前には苦労ばかりかけるのう」
「お父様、それは言わない約束ですわ」
……メダル王女のお父上、ということは当代のメダル王か。
いやまあ、このメダルがどういう意味を持つものなのかも、よく分かってないんだけどね、私たち。
「それに、わたくしこれでも、由緒正しき我が王家の務めに誇りを感じていますのよ。ですから、そんなこと気になさらずに、どうかご自分のお身体のことだけを考えて、養生してくださいましね」
うっうっ、なんていい娘さんをお持ちになられて……。
見たところ我らがミーティ姫よりちょっとだけ年上のようだ。
心根の綺麗さ、優しさならうちの姫様も負けてないけどね!
トロデーン王家が誇る、自慢の美しい姫様だ。
全力で推させていただく。
「あの、すみません……」
エイトが控えめに声をかけ、王女とメダル王が私たちにようやく気付いてくれた。
こちらこそ家族団欒の時間を邪魔してしまい申し訳ございません!
「あらっ、お客様……?」
「お部屋まで入ってしまってすみません。一階におられた大臣閣下より、こちらにおられるメダル王女を訪ねるよう仰せつかりまして……」
さすが皆の期待に応えてきた近衛兵!
言葉遣いも完璧だ!
私? 私は丁寧な言い回しが苦手です。
「……もしかして……もしかして、あなた方は、ちいさなメダルをお持ちくださったのではありませんか?」
王女様の瞳が期待に揺れている。
そうです、と私が頷くと、王女様はぱぁっと顔を輝かせた。
「やはりそうでしたのね! ああ、わたくし、ついに王家の使命を果たすことができますわ。ねぇ皆さん。ここでは何ですから、詳しい話は一階でいたしませんか? お父様、失礼致しますね」
王女様はそうおっしゃると、私たちに頭を下げてお部屋を出て行かれた。
その姿を見送って、ククールにそっと尋ねる。
「バ……カリスマ騎士のククールさん、王女様をご覧になって、いかがですか?」
「バカって言ってるじゃねーかアホ。だが、あのお姫様。ああいう健気で可憐なタイプも悪くない。何か、取り入る手段でも探しておくか」
「やっぱバカじゃん」
「まぁまぁ。妄想は個人の自由だからさ……」
「お前が一番ひどいこと言ったからな、今。分かってるかエイト」
「え? 何の話だよ?」
「バカにつける薬はないわよ」
「お前ら……」
ゼシカの一言がトドメだった気がする。
四面楚歌のククールは、本当に分かってなさそうなエイトの顔を見て、反論する気を失ったらしい。
肩の辺りで両手を広げ、ククールはやれやれと首を振った。
そうしたいのはこっちなんだが。
そりゃあ私のイカタコ嫌いは筋金入りだ。
あのヌメヌメした手足は一生かかっても得意になる気がしない。
だけどドルマゲスを追い掛ける中で、もしオセアーノンみたいな奴と戦わなきゃいけなくなったら?
みんなに戦いを任せて、私は逃げ回る──なんて、そんな格好悪い真似、出来るわけない。
ため息をついて見せたエイトは、困ったように笑って、ぽんと頭を撫でてくれた。
「昔から意地っ張りだよね、レイラは」
「……え、そうだっけ」
「そうだよ」
「それは……なんかごめんね……?」
「謝らなくていいよ。レイラが苦手を克服しようと頑張るなら、僕らは協力するだけだ」
エイトが私の手を取って、引っ張り上げた。
座り込んでいた足が立ち上がる。
エイトの顔を真正面から見上げたとき、不覚にも胸の奥が小さく音を立てた。
「えっと、エイト……」
「少しずつでいいから、いけるって思ったときだけ攻撃してくれる?」
エイトはもう困ったような顔はしていなかった。
いつもの優しい笑顔だ。
「……うん! 頑張る!」
「でも、あんまり無茶はしないでね。見てて肝が冷えるから」
「うっ……はい」
さすがエイトさん、私のことをよく御存じでいらっしゃる……。
でも大丈夫だと思う。
イカタコに関しては立ち向かうだけで相当な勇気が必要だから、無茶なんかしようがない。
さて、船はいよいよあの小島に到着した。
船着場があったので船を寄せ、錨を降ろす。
そうして島へ上陸すると、城はすぐ近くにあった。
「この辺りを治めてるお城なのかな?」
「いや、聞いたこともないぜ。マイエラ修道院の辺りは、俺の生家が領主として治めてた。それにあの辺の国と言えば、アスカンタしかない」
「ポルトリンクもアルバート家の領地よ」
「んん……? じゃあ尚更、あのお城って何……?」
全員で首を傾げながら、お城へと近付く。
お城の扉は開かれているようで、私たちはお城の中へと足を踏み入れた。
入ってすぐが玉座、右手にはゴールド銀行、左手には道具屋。
大臣らしき人が一人と、またもや喋る無害なスライムが一匹……。
「滝の洞窟にいた奴とは別個体なのかな」
「たぶん……」
エイトは曖昧に頷いて、さっと玉座の間に視線を巡らせた。
城としてはかなり小ぢんまりしている。
使用人も少ないようだ。
そのとき、大臣が私たちを見て、「おお!」と目を輝かせた。
え、なに、私たちってもしかして有名?
そりゃあアスカンタを復活させたり、アスカンタの国宝をモグラから取り返したりしたもんね!
どんだけ問題を抱えてたんだ、あの国。
「この城に旅の者が来るなど、何年ぶりのことだろうか。……ということはお前たち、アレを持ってきたというわけだな?」
「アレ?」
「……ってなんでがすか?」
「たぶん、ちいさなメダルのことかなとは……」
エイトが共有の袋から、ちいさなメダルをジャラっと取り出す。
数えて三十二枚のちいさなメダルは、私たちの努力の結晶だ。
「ならばぜひ王女様に会っていってくれ。王女様は今、二階にいらっしゃるはずだ」
「王女様……?」
不思議に思いつつも、言われた通りに二階へ進む。
扉を開けると、天蓋付きのベッドの前に、白いドレスを着た女性が立っていた。
ウィンプルの上に白い帽子を被り、ピンクのレースを流す後ろ姿。
恐らく王女様だ。
「わしがこのような身体でなければ、王家の務めをお前ひとりに背負わせることもないのだが……。本当にわしのせいで、お前には苦労ばかりかけるのう」
「お父様、それは言わない約束ですわ」
……メダル王女のお父上、ということは当代のメダル王か。
いやまあ、このメダルがどういう意味を持つものなのかも、よく分かってないんだけどね、私たち。
「それに、わたくしこれでも、由緒正しき我が王家の務めに誇りを感じていますのよ。ですから、そんなこと気になさらずに、どうかご自分のお身体のことだけを考えて、養生してくださいましね」
うっうっ、なんていい娘さんをお持ちになられて……。
見たところ我らがミーティ姫よりちょっとだけ年上のようだ。
心根の綺麗さ、優しさならうちの姫様も負けてないけどね!
トロデーン王家が誇る、自慢の美しい姫様だ。
全力で推させていただく。
「あの、すみません……」
エイトが控えめに声をかけ、王女とメダル王が私たちにようやく気付いてくれた。
こちらこそ家族団欒の時間を邪魔してしまい申し訳ございません!
「あらっ、お客様……?」
「お部屋まで入ってしまってすみません。一階におられた大臣閣下より、こちらにおられるメダル王女を訪ねるよう仰せつかりまして……」
さすが皆の期待に応えてきた近衛兵!
言葉遣いも完璧だ!
私? 私は丁寧な言い回しが苦手です。
「……もしかして……もしかして、あなた方は、ちいさなメダルをお持ちくださったのではありませんか?」
王女様の瞳が期待に揺れている。
そうです、と私が頷くと、王女様はぱぁっと顔を輝かせた。
「やはりそうでしたのね! ああ、わたくし、ついに王家の使命を果たすことができますわ。ねぇ皆さん。ここでは何ですから、詳しい話は一階でいたしませんか? お父様、失礼致しますね」
王女様はそうおっしゃると、私たちに頭を下げてお部屋を出て行かれた。
その姿を見送って、ククールにそっと尋ねる。
「バ……カリスマ騎士のククールさん、王女様をご覧になって、いかがですか?」
「バカって言ってるじゃねーかアホ。だが、あのお姫様。ああいう健気で可憐なタイプも悪くない。何か、取り入る手段でも探しておくか」
「やっぱバカじゃん」
「まぁまぁ。妄想は個人の自由だからさ……」
「お前が一番ひどいこと言ったからな、今。分かってるかエイト」
「え? 何の話だよ?」
「バカにつける薬はないわよ」
「お前ら……」
ゼシカの一言がトドメだった気がする。
四面楚歌のククールは、本当に分かってなさそうなエイトの顔を見て、反論する気を失ったらしい。
肩の辺りで両手を広げ、ククールはやれやれと首を振った。
そうしたいのはこっちなんだが。
