27章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌朝。
ポルトリンクで必要なものを手分けして揃えている間に、ククールが僕の傍にやってきた。
いつもはゼシカと一緒にいることが多いのに、とゼシカのほうを見やると、そっちはレイラが一緒だ。
またバカリスマとか何とか言われて追い払われたのかな。
「エイト」
「ククール。必要なものは揃った?」
「粗方な。ところで聞いておきたいことがあるんだが、あんたらはトロデーンで近衛兵だったんだろ」
「うん、そうだよ。それがどうかした?」
「……アイツ、人を殺したことがあるだろ」
ククールのそれは、ひやりと僕の喉を潰すようだった。
アイツとは誰のことか──確認するまでもなく、レイラのことだ。
はく、と言葉を飲み込んでから、僕は笑って首を傾げた。
「どうしてそんなふうに思ったんだよ」
「……パルミドで、トロデ王が酔いどれキントを斬り捨てろと命じた時の反応さ。エイトはその命令を本気と捉えちゃいなかったが、レイラは違ったように見えた」
「……というと?」
「雰囲気が揺らがなかったんだよ」
ククールはただ一言、そう言った。
人を殺せと言われたとき、僕はそれがその場の勢い任せだったとしても、多少は狼狽える。
人を殺すなんてこと、今までで一度だってやったことがないからだ。
でもレイラは違う。
何人もの人をその手にかけてきた。
一人や二人じゃない──両手で数えられる程の人を。
だからレイラは躊躇わない。
殺せと命じられたら、あの子はその命令を忠実にこなす。
「……僕らは兵士だ。主君に殺せと命じられれば、従うよ」
「でもお前はあの時それに従わなかっただろ」
「その場の勢いだって分かってたから」
「……否定しないんだな。レイラは人を殺したことがあるってところは」
「……」
「何人殺した?」
ククールの瞳は、僕を試すような色をしていた。
その瞳を真正面から見つめ返して、僕は──静かに首を振った。
「レイラが言いたがらないことを、僕が勝手に喋るわけにはいかないだろ」
「……」
「たしかにレイラは、酔いどれキントを斬ろうとした。トロデ王の命令だから。でもそれは僕らにとって当然の話だ。人を殺すのを躊躇って、トロデ王やミーティア姫に危害が及ぶなんて、それこそ最悪の事態だろ」
「……」
「僕らは両方とも孤児で、これ以外に生き方を知らない。殺せと言われれば人だって殺すよ」
ククールはそんな僕を静かに見つめていた。
レイラのことは否定しない、肯定もしないけれど。
にっこりと笑って、僕はククールとすれ違った。
「買い物が終わったら、みんなと合流しよう。西の大陸を目指して出発しなきゃ、だろ?」
「……そうだな」
ククールの視線が僕からレイラに向けられる。
道具屋の店先で薬草を買い込んで、ゼシカと笑っている姿からは、彼女が血なまぐさい世界に身を置いたことがあるなんて、到底思えない。
……でもレイラは未だに苦しんでいる。
命令だったとはいえ、自分が他人の命を奪ったことを忘れてはいないし、レイラは奪った人間の顔を全部覚えている。
あの子が笑えなくなったことだってあった。
……あんなに笑顔が似合う子だったのに。
「ククール。分かってると思うけど……」
「言われなくても分かってるよ。今の話をレイラにするなって言うんだろ?」
「レイラだけじゃない。誰にもしないでほしい。今でも夢に見るくらい、レイラは苦しんでるんだ。きっとみんなに知られたくないから、黙っているんだと思う」
「随分とお優しいことで。惚れた弱みか?」
「どうかな。……あの子のほうが優しいよ」
自分はもう優しくなくなった、とレイラはあの夜、僕に言ったけれど。
それでもレイラは優しい子だと思う。
優しくなかったら、夢に見るくらいまで悩まない。
任務だからと割り切れないその優しさは──底抜けに明るかった彼女を、変えてしまった。
だから僕はあの子の傍にいたい。
僕が隣にいることで、少しでもあの子が心安らぐなら。
(それでも、いつか壊れてしまいそうに見えるのに)
こちらに気がついて手を振るレイラに手を振り返す。
……今日は殊更に笑顔だ。
あの日の夢を見てしまったのかな。
昔からそうだった──嫌なことがあった時、レイラはいつも以上に明るく振る舞う。
こちらに心配をかけさせまいと、いつも通りを装って。
「買い物は終わった?」
「私は終わったわ。それより見てよエイト! レイラったら、山ほど薬草を買い込むんだもの」
「ちょっと錬金釜の実験用にと思ったら、なんか予想外に大量になっちゃった」
「何する気なんだよ、お前……」
「薬草系統の錬金レシピはどこまで続いているのかを解明したいです!」
「特薬草までは作れたんでがしたっけ?」
「そう。その先があるのか知りたい」
やれやれと苦笑いして、みんなで船着場へと降りていく。
レイラは「楽しみだねぇ!」とうきうきしていて、見た目だけならいつも通りだ。
僕にはそれが恐ろしく思える。
いつだって「底抜けに明るいレイラ」を演じて……本当のレイラはどこに行ってしまったんだろうって、不安になる。
「おはようございます、陛下、姫様!」
「レイラは相変わらず底抜けに元気じゃのう……。ともあれ、いよいよ西の大陸へ向かう日が来たぞ! ここで奴を追い詰めるのじゃ!」
「ええ! 必ず追い付きましょう!」
進路を西に向けて、僕らの船は出航した。
天気は快晴、潮風が心地よく吹く、穏やかな海の上。
わぁ、と目を輝かせるレイラが、僕を見て屈託なく笑っている。
そんな彼女に微笑んで、僕たちは甲板から、きらきら光る水面を見つめ続けていた。
ところで小島にある城は何なんだろう。
ここに来るまでに集めてきた、ちいさなメダルを掲げているようだけど……?
「あの島って何があるんだろうね」
「お城みたいなものも見えやすな」
「あれ、私も気になってたのよね。何があるのかしら」
「行ってみるか?」
「西の大陸を目指すと言った矢先じゃぞ」
でも僕ら全員揃って、あの島にある謎の城が気になってしまっている。
これをスルーして……次にここを通ることがあるのか。
レイラじゃないけど、気になった時に行くべきだと、僕も思った。
ポルトリンクで必要なものを手分けして揃えている間に、ククールが僕の傍にやってきた。
いつもはゼシカと一緒にいることが多いのに、とゼシカのほうを見やると、そっちはレイラが一緒だ。
またバカリスマとか何とか言われて追い払われたのかな。
「エイト」
「ククール。必要なものは揃った?」
「粗方な。ところで聞いておきたいことがあるんだが、あんたらはトロデーンで近衛兵だったんだろ」
「うん、そうだよ。それがどうかした?」
「……アイツ、人を殺したことがあるだろ」
ククールのそれは、ひやりと僕の喉を潰すようだった。
アイツとは誰のことか──確認するまでもなく、レイラのことだ。
はく、と言葉を飲み込んでから、僕は笑って首を傾げた。
「どうしてそんなふうに思ったんだよ」
「……パルミドで、トロデ王が酔いどれキントを斬り捨てろと命じた時の反応さ。エイトはその命令を本気と捉えちゃいなかったが、レイラは違ったように見えた」
「……というと?」
「雰囲気が揺らがなかったんだよ」
ククールはただ一言、そう言った。
人を殺せと言われたとき、僕はそれがその場の勢い任せだったとしても、多少は狼狽える。
人を殺すなんてこと、今までで一度だってやったことがないからだ。
でもレイラは違う。
何人もの人をその手にかけてきた。
一人や二人じゃない──両手で数えられる程の人を。
だからレイラは躊躇わない。
殺せと命じられたら、あの子はその命令を忠実にこなす。
「……僕らは兵士だ。主君に殺せと命じられれば、従うよ」
「でもお前はあの時それに従わなかっただろ」
「その場の勢いだって分かってたから」
「……否定しないんだな。レイラは人を殺したことがあるってところは」
「……」
「何人殺した?」
ククールの瞳は、僕を試すような色をしていた。
その瞳を真正面から見つめ返して、僕は──静かに首を振った。
「レイラが言いたがらないことを、僕が勝手に喋るわけにはいかないだろ」
「……」
「たしかにレイラは、酔いどれキントを斬ろうとした。トロデ王の命令だから。でもそれは僕らにとって当然の話だ。人を殺すのを躊躇って、トロデ王やミーティア姫に危害が及ぶなんて、それこそ最悪の事態だろ」
「……」
「僕らは両方とも孤児で、これ以外に生き方を知らない。殺せと言われれば人だって殺すよ」
ククールはそんな僕を静かに見つめていた。
レイラのことは否定しない、肯定もしないけれど。
にっこりと笑って、僕はククールとすれ違った。
「買い物が終わったら、みんなと合流しよう。西の大陸を目指して出発しなきゃ、だろ?」
「……そうだな」
ククールの視線が僕からレイラに向けられる。
道具屋の店先で薬草を買い込んで、ゼシカと笑っている姿からは、彼女が血なまぐさい世界に身を置いたことがあるなんて、到底思えない。
……でもレイラは未だに苦しんでいる。
命令だったとはいえ、自分が他人の命を奪ったことを忘れてはいないし、レイラは奪った人間の顔を全部覚えている。
あの子が笑えなくなったことだってあった。
……あんなに笑顔が似合う子だったのに。
「ククール。分かってると思うけど……」
「言われなくても分かってるよ。今の話をレイラにするなって言うんだろ?」
「レイラだけじゃない。誰にもしないでほしい。今でも夢に見るくらい、レイラは苦しんでるんだ。きっとみんなに知られたくないから、黙っているんだと思う」
「随分とお優しいことで。惚れた弱みか?」
「どうかな。……あの子のほうが優しいよ」
自分はもう優しくなくなった、とレイラはあの夜、僕に言ったけれど。
それでもレイラは優しい子だと思う。
優しくなかったら、夢に見るくらいまで悩まない。
任務だからと割り切れないその優しさは──底抜けに明るかった彼女を、変えてしまった。
だから僕はあの子の傍にいたい。
僕が隣にいることで、少しでもあの子が心安らぐなら。
(それでも、いつか壊れてしまいそうに見えるのに)
こちらに気がついて手を振るレイラに手を振り返す。
……今日は殊更に笑顔だ。
あの日の夢を見てしまったのかな。
昔からそうだった──嫌なことがあった時、レイラはいつも以上に明るく振る舞う。
こちらに心配をかけさせまいと、いつも通りを装って。
「買い物は終わった?」
「私は終わったわ。それより見てよエイト! レイラったら、山ほど薬草を買い込むんだもの」
「ちょっと錬金釜の実験用にと思ったら、なんか予想外に大量になっちゃった」
「何する気なんだよ、お前……」
「薬草系統の錬金レシピはどこまで続いているのかを解明したいです!」
「特薬草までは作れたんでがしたっけ?」
「そう。その先があるのか知りたい」
やれやれと苦笑いして、みんなで船着場へと降りていく。
レイラは「楽しみだねぇ!」とうきうきしていて、見た目だけならいつも通りだ。
僕にはそれが恐ろしく思える。
いつだって「底抜けに明るいレイラ」を演じて……本当のレイラはどこに行ってしまったんだろうって、不安になる。
「おはようございます、陛下、姫様!」
「レイラは相変わらず底抜けに元気じゃのう……。ともあれ、いよいよ西の大陸へ向かう日が来たぞ! ここで奴を追い詰めるのじゃ!」
「ええ! 必ず追い付きましょう!」
進路を西に向けて、僕らの船は出航した。
天気は快晴、潮風が心地よく吹く、穏やかな海の上。
わぁ、と目を輝かせるレイラが、僕を見て屈託なく笑っている。
そんな彼女に微笑んで、僕たちは甲板から、きらきら光る水面を見つめ続けていた。
ところで小島にある城は何なんだろう。
ここに来るまでに集めてきた、ちいさなメダルを掲げているようだけど……?
「あの島って何があるんだろうね」
「お城みたいなものも見えやすな」
「あれ、私も気になってたのよね。何があるのかしら」
「行ってみるか?」
「西の大陸を目指すと言った矢先じゃぞ」
でも僕ら全員揃って、あの島にある謎の城が気になってしまっている。
これをスルーして……次にここを通ることがあるのか。
レイラじゃないけど、気になった時に行くべきだと、僕も思った。
3/3ページ
