27章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
再びイシュマウリがハープを弾いて、曲を奏でる。
そこに姫様が歌声を重ねていく。
でも姫様は今、馬のお姿。
歌うことは──という私の懸念も無駄だった。
荒野に響き渡るのは、美しい歌声。
姫様の──ハープに合わせて歌う、声だった。
「元々、ミーティア姫は歌うことが好きだった」
エイトが寂しそうに呟く。
「……うん。そうだったよね」
澄んだ声が響く中で、私とエイトは同じような痛みを心に抱えながら、姫様を見つめていた。
姫様はピアノを弾くことや歌うことが好きで、陛下によく聞かせていた。
姫様のお部屋近くでの勤務時間と、姫様のプライベートな時間が被れば、私たちにも聞かせてくれて……。
その時だけは姫と近衛兵じゃなくて、幼馴染み同士でいられた。
私もエイトも、あの時間が大好きだった。
再びイシュマウリの足元から海水の幻が湧き出る。
それは先程の比ではなく、どんどん湧き出てきて──そうして高い水柱を上げ、船を飲み込む高さにまでなった。
「昔はここも海だった……って事なのかな」
「うん。きっとそうなんだと思う」
「不思議ね。海の中なのに息ができるわ」
「本物の海じゃなく、この辺りが海だった『記憶』を再現してるだけだからじゃないか?」
そんなふうに言い合っているうちに、船が重い音を立てて、ゆっくりと大地から浮き上がった。
同時に私たちの体もふわりと浮いていく。
「あわわわ……」
「この数秒でどうやったら上下が逆さまになるのよ!?」
「レイラはバランス感覚がちょっと悪いから……」
「ちょっとか?」
「喧しいんだよバカリスマ!!」
エイトがちょっとって言うんだからちょっとだよ!!
なんでこんなにゼシカと私で態度が違うんだってーの!!
遥か頭上にある船へと、イシュマウリが透明な階段を掛けてくれた。
その階段を歩いて、ゼシカと姫様たちが船へと上がっていく。
私たちも階段まで泳いで、船へと歩いていった。
全員が乗船して、私とゼシカは船の手すりから下を見下ろした。
海の幻影の中で、地上に残ったイシュマウリが私たちを見上げている。
「さあ、別れの時だ。旧き海より旅立つ子らに、船出を祝う歌を歌おう……」
イシュマウリはそう言ってハープを奏で、その姿は光と共に消えていった。
……本来なら一度だけしか会えない人だったんだから、きっともう会うことはないんだろう。
手すりから離れて、みんなの所へと戻る。
船は海の幻影の上をゆっくりと進んでいた。
「なにがなんだか、アッシにはどうにも分からないでげすが……」
ヤンガスが呟いた瞬間、陛下の飛びかかりながらの拳が後頭部に落ちた。
可哀想に……。
「寝ぼけた事を言うな! すべてわしの可愛いミーティアのおかげじゃわい!!」
「まっ、ようやく船が手に入ったって事だけは確かでがすね! 兄貴、姉貴!」
「喜ぶのはまだまだ先よ。私達にはやるべき事がある。ドルマゲスを追わなくちゃ。そのために苦労してこの船を手に入れたんだもの」
「オレ達がいた東側の大陸には、もうドルマゲスはいなかった。となれば、だ。海を西に進めば、どこかで奴の足取りが掴める。だろ? エイト」
「いい加減、ドルマゲスを追い詰めて、呪いを解かなくちゃ。再出発だね、みんな!」
私たちの言葉にエイトが真剣な顔で頷く。
「よしっ! 西じゃ! 皆の者、西を目指すぞ!!」
陛下の号令で私たちの向かうべき進路は決まった。
西の大陸へ向けて──出発だ!
記憶の海は、本物の海へ向けて下降していく。
そうして海と混ざりあった瞬間、大きく揺れて船は着水した。
「きゃあ!」
「わっとと……。大丈夫、ゼシカ?」
揺れに耐えきれなかったゼシカを慌てて支える。
ゼシカはびっくりしたような顔で私を見上げ、それから「大丈夫よ」と頷いた。
船は一度そこで進むのをやめ、海上で漂流している。
「これからどこ行こうか?」
「ぼんやりと西だってことは決まったけど、明確な目的地は必要だよね」
「……ゼシカの姉ちゃん、どうしたんでげすか?」
ヤンガスに問われて、ゼシカがぱっと私から離れる。
そういえば今まで私に掴まったままだったな。
「あんなに大きく揺れたのに、レイラはふらついたりもしないのかと思って、驚いちゃって……」
「あっはは、そりゃあね! これでもトロデーンの近衛兵ですよ」
「信じてないわけじゃないが、改めて見るとちゃんと鍛えてはいるんだよな」
「鍛えてないと、いざって時に陛下や姫様を守れないじゃん」
そんなに意外か、まあ意外だろうな。
性格のせいだとは思うけど、この性格は直しようがないし。
なにより、エイトや姫様がそのままでいいって言ってくれて今の私がいるから、直すのはちょっと違うなと思ったのだ。
「姉貴は剣が得意なようでげすが、それ以外には何が扱えるんでがすか?」
「んー、剣以外だと、槍と短剣かな。槍はほら、見張りの時に必要だし、短剣は懐に入られたときに応戦できるじゃん?」
もちろん短剣が得意武器である理由はそれだけではない。
なんと言っても『夜勤』で頻繁に使ったからだ。
言えるわけがないので、それは秘密だけど。
「意外と……ちゃんと近衛兵なんだな」
「おおい! 意外とって何だよ! ちゃんと近衛兵だよ!」
「はは……。レイラはミーティア姫のお部屋近くを守ることが多かったかな。近衛隊では唯一の女性兵だったから」
さて、とエイトが場を仕切り直す。
なにせずっと同じところを漂っているのだ、そろそろどこかに上陸したい。
夜の海を進むのか、どこかで一夜を明かすのか、いい加減決めないと。
「ここからなら、ポルトリンクが一番近いかしら」
「そうだな。ドルマゲスを追うのも大事だが、不慣れなうちは夜に船を動かすのはやめておこうぜ」
「船ってルーラで飛んでったらどうなるの?」
「近くに停泊してくれるんじゃないかな。さすがに海のど真ん中に置き去りにはならないだろうし……」
「なるほど。じゃあルーラでポルトリンクに向かおう」
私のそれにゼシカが頷く。
ククールがルーラを唱えてくれて、私たちは船の上からポルトリンクの入口まで戻った。
街の中に入ってみると、船着場のところに船が停泊している。
……無断で寄港したみたいになってるな、怒られないだろうか。
ともあれ今日はここまで。
明日からは西を目指す旅が始まる。
皆でベッドに寝転がっておやすみを言い合い、目を閉じる。
夜は静かに更けていった。
そこに姫様が歌声を重ねていく。
でも姫様は今、馬のお姿。
歌うことは──という私の懸念も無駄だった。
荒野に響き渡るのは、美しい歌声。
姫様の──ハープに合わせて歌う、声だった。
「元々、ミーティア姫は歌うことが好きだった」
エイトが寂しそうに呟く。
「……うん。そうだったよね」
澄んだ声が響く中で、私とエイトは同じような痛みを心に抱えながら、姫様を見つめていた。
姫様はピアノを弾くことや歌うことが好きで、陛下によく聞かせていた。
姫様のお部屋近くでの勤務時間と、姫様のプライベートな時間が被れば、私たちにも聞かせてくれて……。
その時だけは姫と近衛兵じゃなくて、幼馴染み同士でいられた。
私もエイトも、あの時間が大好きだった。
再びイシュマウリの足元から海水の幻が湧き出る。
それは先程の比ではなく、どんどん湧き出てきて──そうして高い水柱を上げ、船を飲み込む高さにまでなった。
「昔はここも海だった……って事なのかな」
「うん。きっとそうなんだと思う」
「不思議ね。海の中なのに息ができるわ」
「本物の海じゃなく、この辺りが海だった『記憶』を再現してるだけだからじゃないか?」
そんなふうに言い合っているうちに、船が重い音を立てて、ゆっくりと大地から浮き上がった。
同時に私たちの体もふわりと浮いていく。
「あわわわ……」
「この数秒でどうやったら上下が逆さまになるのよ!?」
「レイラはバランス感覚がちょっと悪いから……」
「ちょっとか?」
「喧しいんだよバカリスマ!!」
エイトがちょっとって言うんだからちょっとだよ!!
なんでこんなにゼシカと私で態度が違うんだってーの!!
遥か頭上にある船へと、イシュマウリが透明な階段を掛けてくれた。
その階段を歩いて、ゼシカと姫様たちが船へと上がっていく。
私たちも階段まで泳いで、船へと歩いていった。
全員が乗船して、私とゼシカは船の手すりから下を見下ろした。
海の幻影の中で、地上に残ったイシュマウリが私たちを見上げている。
「さあ、別れの時だ。旧き海より旅立つ子らに、船出を祝う歌を歌おう……」
イシュマウリはそう言ってハープを奏で、その姿は光と共に消えていった。
……本来なら一度だけしか会えない人だったんだから、きっともう会うことはないんだろう。
手すりから離れて、みんなの所へと戻る。
船は海の幻影の上をゆっくりと進んでいた。
「なにがなんだか、アッシにはどうにも分からないでげすが……」
ヤンガスが呟いた瞬間、陛下の飛びかかりながらの拳が後頭部に落ちた。
可哀想に……。
「寝ぼけた事を言うな! すべてわしの可愛いミーティアのおかげじゃわい!!」
「まっ、ようやく船が手に入ったって事だけは確かでがすね! 兄貴、姉貴!」
「喜ぶのはまだまだ先よ。私達にはやるべき事がある。ドルマゲスを追わなくちゃ。そのために苦労してこの船を手に入れたんだもの」
「オレ達がいた東側の大陸には、もうドルマゲスはいなかった。となれば、だ。海を西に進めば、どこかで奴の足取りが掴める。だろ? エイト」
「いい加減、ドルマゲスを追い詰めて、呪いを解かなくちゃ。再出発だね、みんな!」
私たちの言葉にエイトが真剣な顔で頷く。
「よしっ! 西じゃ! 皆の者、西を目指すぞ!!」
陛下の号令で私たちの向かうべき進路は決まった。
西の大陸へ向けて──出発だ!
記憶の海は、本物の海へ向けて下降していく。
そうして海と混ざりあった瞬間、大きく揺れて船は着水した。
「きゃあ!」
「わっとと……。大丈夫、ゼシカ?」
揺れに耐えきれなかったゼシカを慌てて支える。
ゼシカはびっくりしたような顔で私を見上げ、それから「大丈夫よ」と頷いた。
船は一度そこで進むのをやめ、海上で漂流している。
「これからどこ行こうか?」
「ぼんやりと西だってことは決まったけど、明確な目的地は必要だよね」
「……ゼシカの姉ちゃん、どうしたんでげすか?」
ヤンガスに問われて、ゼシカがぱっと私から離れる。
そういえば今まで私に掴まったままだったな。
「あんなに大きく揺れたのに、レイラはふらついたりもしないのかと思って、驚いちゃって……」
「あっはは、そりゃあね! これでもトロデーンの近衛兵ですよ」
「信じてないわけじゃないが、改めて見るとちゃんと鍛えてはいるんだよな」
「鍛えてないと、いざって時に陛下や姫様を守れないじゃん」
そんなに意外か、まあ意外だろうな。
性格のせいだとは思うけど、この性格は直しようがないし。
なにより、エイトや姫様がそのままでいいって言ってくれて今の私がいるから、直すのはちょっと違うなと思ったのだ。
「姉貴は剣が得意なようでげすが、それ以外には何が扱えるんでがすか?」
「んー、剣以外だと、槍と短剣かな。槍はほら、見張りの時に必要だし、短剣は懐に入られたときに応戦できるじゃん?」
もちろん短剣が得意武器である理由はそれだけではない。
なんと言っても『夜勤』で頻繁に使ったからだ。
言えるわけがないので、それは秘密だけど。
「意外と……ちゃんと近衛兵なんだな」
「おおい! 意外とって何だよ! ちゃんと近衛兵だよ!」
「はは……。レイラはミーティア姫のお部屋近くを守ることが多かったかな。近衛隊では唯一の女性兵だったから」
さて、とエイトが場を仕切り直す。
なにせずっと同じところを漂っているのだ、そろそろどこかに上陸したい。
夜の海を進むのか、どこかで一夜を明かすのか、いい加減決めないと。
「ここからなら、ポルトリンクが一番近いかしら」
「そうだな。ドルマゲスを追うのも大事だが、不慣れなうちは夜に船を動かすのはやめておこうぜ」
「船ってルーラで飛んでったらどうなるの?」
「近くに停泊してくれるんじゃないかな。さすがに海のど真ん中に置き去りにはならないだろうし……」
「なるほど。じゃあルーラでポルトリンクに向かおう」
私のそれにゼシカが頷く。
ククールがルーラを唱えてくれて、私たちは船の上からポルトリンクの入口まで戻った。
街の中に入ってみると、船着場のところに船が停泊している。
……無断で寄港したみたいになってるな、怒られないだろうか。
ともあれ今日はここまで。
明日からは西を目指す旅が始まる。
皆でベッドに寝転がっておやすみを言い合い、目を閉じる。
夜は静かに更けていった。
