26章
夢小説設定
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もうこれは、誤魔化せないな。
……なにかの嘘だったら良かったのに。
私がそんな聖人の末裔だなんて話、あっちゃいけない。
「……何かの間違いだよ」
「おいレイラ、それはさすがに言い訳が苦しいだろ──」
「ま、間違いじゃなきゃおかしいでしょ。そんな、そんなさぁ……わ、私が……なんて、あっちゃいけないよ……」
霊導者は、人の魂を天へ導く力を持った人。
そんな力を受け継いでおきながら、私はトロデーンで何をしてきた?
人の命を奪うことしか出来ない人間が、そんな聖女の末裔だなんて……。
「ずっとそう思ってたから、黙ってたんだね?」
「……っ」
「レイラがやってきたことは、聖人の血を引く人間に相応しくないから……。そう思ってしまって」
「……それだけじゃないよ。エイトと私の共通点でもあったでしょ、親も記憶もない孤児だって……。その共通点があったからエイトと仲間で居られたのに、私だけ急にご先祖様が見つかる、とか……そんなの」
ハープを握り締める手が震えている。
だってこれはどう見たってエイトへの裏切りだ。
私たちは、身寄りがない孤児だからこそ、一緒にトロデーンを守ろうって約束して、ここまで生きてきた。
親のことが分からなくても、城に来るまでの記憶がなくても、私たちは同じ境遇にあったから、お互いを支えにしていられた。
……なのに、私だけ生まれが判明してしまったら。
「……レイラ」
「ち、違う、私は違う、私じゃない」
「レイラ」
「違うの、きっとヨシュアが間違えただけ、私じゃない、そんなはずない。エイト、嫌いになんないで……」
「──やっと分かったんだね、レイラ」
エイトの優しい声。
は、と口を閉ざして顔を上げると、エイトは嬉しそうに笑っていた。
……なんで、なんでそんなふうに笑えるの。
「ずっと言ってただろ? いつか自分の家族のことが分かればいいなって。親じゃなくて、ご先祖様だったけど、でも良かったじゃないか」
「……怒んないの」
「どうして?」
「だってエイトも、家族のこと見つけたいって言ってた……」
「うん、いつか見つかるといいなって思ってる。でもだからって、レイラの家族が見つかって裏切られたなんて思ったりしない。むしろ、ちゃんとレイラの家族が見つかって良かったって思ってるよ」
「……エイト」
「それに、こんなに世界中を旅してるんだ。僕だっていつか、自分の家族を知るかもしれない。もしその時にレイラは、自分が霊導者の末裔だって知らなかったとしたら、僕のことを怒る?」
「怒んない! 見つかって良かったって思う……!」
「僕も今、同じ気持ちだよ。残る問題は、レイラのご両親が健在かどうかだけど……」
うーん、と軽く唸って、エイトはにっこりと微笑んだ。
エイトの視線が背後に向けられて、私もおずおずとそちらを見やる。
仲間たちの視線が、なんというか、温かい眼差しになっていた。
わ、わぁ、恥ずかしいなこれ!
「ともあれ結局、レイラはあの霊導者サマの末裔だったってことだろ?」
「……うん。黙っててごめんね。私は霊導者ヨシュア・ロアナスの末裔──レイラ・ロアナス」
シャツの下に隠していたネックレスを引っ張り出して、それを外す。
瞬間、自分でも感じたことがないくらい、大きな力を感じた。
魔力のようだけど、少し違う、でも体内に留めておけないほどの力が溢れて、みんなが固まる。
ちょっとだけ笑って、私はまたネックレスをつけた。
溢れていた力が抑えられて、元の私の力に戻っていく。
「固まるのも無理ないよね、私もビックリしたもん。こんな馬鹿みたいな力があるのもそうだけど、自分がすごい人の末裔だったなんてさ」
未だにそんな感覚はないけど、私が霊導者の血を引いているのは事実だ。
このネックレスがあるから抑えられているだけで、これさえなければ私は力に呑まれて死んでいたかもしれない。
「でも、すごいのは私の先祖であって、私が偉い訳じゃない。だからお願い、私のことはただのレイラとして、これからも……」
「何を言ってるのよ?」
私を遮ったのはゼシカだった。
……やっぱり駄目か、そうだよね。
ゼシカにとって私の力は予想外だろうし、魔法使いの卵でもある彼女にしてみれば、羨むくらいの魔力の量だ。
なにより、ずっと隠し事をしてきたんだもん。
何を言われても仕方ない。
「あなたが何者であろうと、そんなこと関係ないわ。霊導者の末裔だとしても、レイラはレイラでしょ」
ゼシカが腕を組んでそう言う。
言葉に詰まって何も言えないでいると、ヤンガスやククールもゼシカに同意するように頷いてくれた。
「そうでがすよ、ゼシカの姉ちゃんの言う通りだ。姉貴がどんな偉い人の末裔だとしても、アッシにとっちゃあ変わらず姉貴は命の恩人で、アッシの親分でげすよ」
「むしろ、そんなこと思ってたのかって感じだぜ?」
「だ、だって……」
三人はまだ、私がトロデーンで負っていた役目を知らないから、そういう言えるだけで……。
本当はそんな綺麗な人間じゃないのに。
「ってこたぁつまり、モグラたちが姉貴を攫ってったのも、姉貴が霊導者の力を持ってたからってことでげすかい?」
「言われてみれば、これまでにも不自然なことはあったわよね。ほら、剣士像の洞窟の時とか」
「それにドルマゲス本人も、修道院で妙な事を言ってやがったな。レイラに向かって、自分の血に定められた歴史を理解していない……とか何とか。あれは霊導者のことを言ってやがったのか?」
……たしかにそんなことを言われたような気もする。
だとしても、霊導者とドルマゲスの関係が分からないから、なんとも言えない。
「とにかく、エイトが魔物に狙われやすい理由は分かった。だけど、大丈夫だよ。レイラは僕が守るから」
「エイト……」
エイトの力強い言葉に頷く。
もちろん私だって守られてばかりになるつもりはない。
これまで通り、みんなで一緒に戦っていくんだ。
ドルマゲスを倒して、城を取り戻すために。
「ありがとう、みんな……」
感極まって泣きそうになりながら頭を下げる。
顔を上げた先で、みんなは笑ってくれていた。
私の力についてはまだまだ分からないことだらけだけど、いつかひょっとすると、霊導者の力が必要なことがあるかもしれない。
この力で、もっとみんなの役に立てたらいいな。
ハープを携えて、リレミトで洞窟を出る。
そのままトロデーンに行っても良かったけど、ハープを取り返したことをパヴァン王に報告すべきだということになって、私達は一旦、アスカンタに戻ることにしたのだった。
……なにかの嘘だったら良かったのに。
私がそんな聖人の末裔だなんて話、あっちゃいけない。
「……何かの間違いだよ」
「おいレイラ、それはさすがに言い訳が苦しいだろ──」
「ま、間違いじゃなきゃおかしいでしょ。そんな、そんなさぁ……わ、私が……なんて、あっちゃいけないよ……」
霊導者は、人の魂を天へ導く力を持った人。
そんな力を受け継いでおきながら、私はトロデーンで何をしてきた?
人の命を奪うことしか出来ない人間が、そんな聖女の末裔だなんて……。
「ずっとそう思ってたから、黙ってたんだね?」
「……っ」
「レイラがやってきたことは、聖人の血を引く人間に相応しくないから……。そう思ってしまって」
「……それだけじゃないよ。エイトと私の共通点でもあったでしょ、親も記憶もない孤児だって……。その共通点があったからエイトと仲間で居られたのに、私だけ急にご先祖様が見つかる、とか……そんなの」
ハープを握り締める手が震えている。
だってこれはどう見たってエイトへの裏切りだ。
私たちは、身寄りがない孤児だからこそ、一緒にトロデーンを守ろうって約束して、ここまで生きてきた。
親のことが分からなくても、城に来るまでの記憶がなくても、私たちは同じ境遇にあったから、お互いを支えにしていられた。
……なのに、私だけ生まれが判明してしまったら。
「……レイラ」
「ち、違う、私は違う、私じゃない」
「レイラ」
「違うの、きっとヨシュアが間違えただけ、私じゃない、そんなはずない。エイト、嫌いになんないで……」
「──やっと分かったんだね、レイラ」
エイトの優しい声。
は、と口を閉ざして顔を上げると、エイトは嬉しそうに笑っていた。
……なんで、なんでそんなふうに笑えるの。
「ずっと言ってただろ? いつか自分の家族のことが分かればいいなって。親じゃなくて、ご先祖様だったけど、でも良かったじゃないか」
「……怒んないの」
「どうして?」
「だってエイトも、家族のこと見つけたいって言ってた……」
「うん、いつか見つかるといいなって思ってる。でもだからって、レイラの家族が見つかって裏切られたなんて思ったりしない。むしろ、ちゃんとレイラの家族が見つかって良かったって思ってるよ」
「……エイト」
「それに、こんなに世界中を旅してるんだ。僕だっていつか、自分の家族を知るかもしれない。もしその時にレイラは、自分が霊導者の末裔だって知らなかったとしたら、僕のことを怒る?」
「怒んない! 見つかって良かったって思う……!」
「僕も今、同じ気持ちだよ。残る問題は、レイラのご両親が健在かどうかだけど……」
うーん、と軽く唸って、エイトはにっこりと微笑んだ。
エイトの視線が背後に向けられて、私もおずおずとそちらを見やる。
仲間たちの視線が、なんというか、温かい眼差しになっていた。
わ、わぁ、恥ずかしいなこれ!
「ともあれ結局、レイラはあの霊導者サマの末裔だったってことだろ?」
「……うん。黙っててごめんね。私は霊導者ヨシュア・ロアナスの末裔──レイラ・ロアナス」
シャツの下に隠していたネックレスを引っ張り出して、それを外す。
瞬間、自分でも感じたことがないくらい、大きな力を感じた。
魔力のようだけど、少し違う、でも体内に留めておけないほどの力が溢れて、みんなが固まる。
ちょっとだけ笑って、私はまたネックレスをつけた。
溢れていた力が抑えられて、元の私の力に戻っていく。
「固まるのも無理ないよね、私もビックリしたもん。こんな馬鹿みたいな力があるのもそうだけど、自分がすごい人の末裔だったなんてさ」
未だにそんな感覚はないけど、私が霊導者の血を引いているのは事実だ。
このネックレスがあるから抑えられているだけで、これさえなければ私は力に呑まれて死んでいたかもしれない。
「でも、すごいのは私の先祖であって、私が偉い訳じゃない。だからお願い、私のことはただのレイラとして、これからも……」
「何を言ってるのよ?」
私を遮ったのはゼシカだった。
……やっぱり駄目か、そうだよね。
ゼシカにとって私の力は予想外だろうし、魔法使いの卵でもある彼女にしてみれば、羨むくらいの魔力の量だ。
なにより、ずっと隠し事をしてきたんだもん。
何を言われても仕方ない。
「あなたが何者であろうと、そんなこと関係ないわ。霊導者の末裔だとしても、レイラはレイラでしょ」
ゼシカが腕を組んでそう言う。
言葉に詰まって何も言えないでいると、ヤンガスやククールもゼシカに同意するように頷いてくれた。
「そうでがすよ、ゼシカの姉ちゃんの言う通りだ。姉貴がどんな偉い人の末裔だとしても、アッシにとっちゃあ変わらず姉貴は命の恩人で、アッシの親分でげすよ」
「むしろ、そんなこと思ってたのかって感じだぜ?」
「だ、だって……」
三人はまだ、私がトロデーンで負っていた役目を知らないから、そういう言えるだけで……。
本当はそんな綺麗な人間じゃないのに。
「ってこたぁつまり、モグラたちが姉貴を攫ってったのも、姉貴が霊導者の力を持ってたからってことでげすかい?」
「言われてみれば、これまでにも不自然なことはあったわよね。ほら、剣士像の洞窟の時とか」
「それにドルマゲス本人も、修道院で妙な事を言ってやがったな。レイラに向かって、自分の血に定められた歴史を理解していない……とか何とか。あれは霊導者のことを言ってやがったのか?」
……たしかにそんなことを言われたような気もする。
だとしても、霊導者とドルマゲスの関係が分からないから、なんとも言えない。
「とにかく、エイトが魔物に狙われやすい理由は分かった。だけど、大丈夫だよ。レイラは僕が守るから」
「エイト……」
エイトの力強い言葉に頷く。
もちろん私だって守られてばかりになるつもりはない。
これまで通り、みんなで一緒に戦っていくんだ。
ドルマゲスを倒して、城を取り戻すために。
「ありがとう、みんな……」
感極まって泣きそうになりながら頭を下げる。
顔を上げた先で、みんなは笑ってくれていた。
私の力についてはまだまだ分からないことだらけだけど、いつかひょっとすると、霊導者の力が必要なことがあるかもしれない。
この力で、もっとみんなの役に立てたらいいな。
ハープを携えて、リレミトで洞窟を出る。
そのままトロデーンに行っても良かったけど、ハープを取り返したことをパヴァン王に報告すべきだということになって、私達は一旦、アスカンタに戻ることにしたのだった。
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