第九話 難航
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大森城の城門を通って、成実さんが馬を降りる
伸ばされた腕に掴まって、私も馬を降りた
「ここが大森城……」
「青葉城よりは手狭だけどな
こっちだ、ついてこい」
成実さんとお城の中を歩いていく
まず最初に、お父さんとお母さんにご挨拶をするそうで
「成実さんのお父さんって、どんな人なんですか?」
「どこにでもいる息子思いの親だよ
特別厳しかったり甘やかしすぎたりとかは無かったかな」
「へぇ……」
「ただまあ、母親の方がさ……」
「……?」
「はやく正室娶れってうるせぇのなんの」
「でも成実さん、結婚はまだいいって言ってましたよね?」
「だから本当は帰りたくなかった、かも
絶対に俺の縁談話が出てくるぞ……」
ため息をついた成実さんが、それきり口を閉ざしてしまって
そばらくして、成実さんの足が止まった
そして、広間の前で膝をついた
「藤五郎成実、ただ今戻りました」
「うむ、入れ」
「はっ」
成実さんが広間の中へ入って、私もそれに続く
……そういえば、成実さんって藤五郎だった
「お久しゅうございます、父上」
「久しいな、藤五郎
元気にしておったか?」
「はい
父上こそ、お元気そうで何より
母上も……」
「よく戻りましたね、成実」
違和感がしっかり仕事してる……
普段がものすっごく砕けた口調だからな……
「さ、堅苦しいのはここまで
藤五郎、そちらは?」
「ああ、この方は梵……筆頭の妹君の……」
「夕華と申します、以後お見知りおきを」
成実さんの一歩後ろで手をついて頭を下げる
ありがとうございます喜多さん、お作法教室の成果です
「ああ、先日見つかったという分家の!」
「はい」
「どうぞお顔をお上げくだされ、我々は夕華様を敬うべき立場にありますれば」
そう実元殿に言われ、顔を上げる
……人の良さそうな顔をされている
成実さんは、どちらかと言うとお母さんにお顔が似たらしい
目元は実元殿に似てるけど
「政宗様はどうなさっておる?」
「筆頭なら布団の中だよ
織田軍が侵攻してくるのも時間の問題で、迎え撃たなきゃって言ってたけど……」
「片倉殿に止められたか」
「いや、今回は綱元がブチギレた」
「……鬼庭を怒らせるのは、血筋か?」
「そういや、大殿もよく左月様を怒らせてたなー……」
親子が揃って遠い目をする
……やっぱり、成実さんの性格はお父さん譲りみたいだ
「ところで成実
夕華様をお連れしたということは……?」
「いえ、特に深い意味はありません」
成実さんは、お母さんにだけ敬語
……もしかして、お母さんと仲が悪いんだろうか
「そうですか
成実、お前に縁談が来ています」
「母上、何度も言っているように、俺はまだ嫁をとるつもりはありません」
「ですが、お前は将来この家を継ぐ者
もう正室がいなくては──」
「ご心配なく
いずれは正室は娶ります
ただし、己の目で見て選びますので
これだけは譲れません」
「ならば、夕華様を娶ればよいのではないか?」
「「……は?」」
実元殿の発言に、私と成実さんが固まった
それはもう綺麗に2人で固まった
「ちょ、ちょっと待てよ親父!
何がどう転がって俺と夕華が!」
「お前こそ何を言っておる?
お前が幼き頃より夕華様に惚れておったことは知っておるぞ」
「あーあーあー!!!」
成実さんが叫んで、私の耳を塞いだもんだから、実元殿が何て言ったか聞こえなかった
何を焦っているんだろう
「それはようございます!」
「よくないですよ!!
絶対よくない!
だって夕華は、まだこっちに戻ってきたばっかだぜ!?
それに、俺のこと好きなのかも分かんないし……
嫌いな奴とくっつくとか、そういうことだけはさせたくねぇよ」
「そうか?
妙案だと思ったのだがな」
「どこがだ……」
成実さんがボソッと呟いた
……どうも、私と成実さんが結婚すればいいのでは?という話のようだ
それは……どうなんだろう……
「……はっ!
成実さん、本題!」
「あっ、そうだった!!
親父、折入って話がある!」
「ん?
なんだ?」
「さっきもちらっと言ったけど、織田軍がこっちに向かおうとしてる
とてもじゃないけど伊達一軍じゃ太刀打ちできない
それで、親父の伝で、上杉殿に援軍を頼めないか?」
「上杉……
謙信公にか?」
「うん
でも、上杉殿も先の戦でけがを負ってるし、もしこっちが負けた場合には間違いなく越後が攻められる
だから、上杉軍の援軍は正直言って期待出来ねぇ」
「ではなぜ?」
「上杉殿から甲斐の虎に話をつけてもらおうと思うんだ
上杉殿が、噂通りに義に生きる人なら、休戦状態で勝敗つかずの伊達軍を放ってはおかない
きっと、向こうも再戦を望んでるはずだろ?」
「……なるほど」
実元殿が腕を組んで唸り
「あい分かった、わしから書状を出してみよう」
「ありがとう
俺からも上杉殿に書状を出そうと思う
もちろん、安房守成実としてだけど
あと、甲斐の虎にも直接と、真田家にも」
「真田?」
「真田幸村なら、筆頭の窮地を黙って見過ごさないと思う
甲斐の虎も、愛弟子の好敵手が命を落とすのは避けたいだろうし……
あとは四国の長曾我部
元親なら二つ返事で援軍出してくれるはずだ
出来れば毛利の援軍も欲しいけど多分無理
ひとまず、これで何とかやれると思うんだ
筆頭が参陣できないっていうのが痛手だけど」
「それらが全て整うとは限らんぞ」
「承知の上だ」
成実さんが即答する
「もし伊達一軍で迎え撃つことになった場合は?」
「多分、俺が筆頭の代わりになるだろうな」
「お前が命を落とすことになるぞ」
「それは……」
そこでようやく、成実さんが言葉に詰まった
青葉城を出る時は、「俺の命は好きに使え」と小十郎さんに言っていたのに
「……それも、覚悟はしてる」
「………」
「覚悟はしてるけど……
死にに行く覚悟は決めてない」
「そうか……やれやれ、考えたものだな」
「……いや、これくらいはあの小十郎だって考えてるさ」
「そうか、そうであろうな」
実元殿が頷いて、成実さんが立ち上がった
「そうと決まればさっそくだ
悪いけど、あんまり悠長に構えてるわけにもいかないんでな」
「分かっている
それに、ここだと指示が通りやすいから帰ってきたのだろうしな」
「なんだ、分かってたのか」
「伊達に十数年もお前を育てていない」
実元殿がそう言って、豪快に笑った
伸ばされた腕に掴まって、私も馬を降りた
「ここが大森城……」
「青葉城よりは手狭だけどな
こっちだ、ついてこい」
成実さんとお城の中を歩いていく
まず最初に、お父さんとお母さんにご挨拶をするそうで
「成実さんのお父さんって、どんな人なんですか?」
「どこにでもいる息子思いの親だよ
特別厳しかったり甘やかしすぎたりとかは無かったかな」
「へぇ……」
「ただまあ、母親の方がさ……」
「……?」
「はやく正室娶れってうるせぇのなんの」
「でも成実さん、結婚はまだいいって言ってましたよね?」
「だから本当は帰りたくなかった、かも
絶対に俺の縁談話が出てくるぞ……」
ため息をついた成実さんが、それきり口を閉ざしてしまって
そばらくして、成実さんの足が止まった
そして、広間の前で膝をついた
「藤五郎成実、ただ今戻りました」
「うむ、入れ」
「はっ」
成実さんが広間の中へ入って、私もそれに続く
……そういえば、成実さんって藤五郎だった
「お久しゅうございます、父上」
「久しいな、藤五郎
元気にしておったか?」
「はい
父上こそ、お元気そうで何より
母上も……」
「よく戻りましたね、成実」
違和感がしっかり仕事してる……
普段がものすっごく砕けた口調だからな……
「さ、堅苦しいのはここまで
藤五郎、そちらは?」
「ああ、この方は梵……筆頭の妹君の……」
「夕華と申します、以後お見知りおきを」
成実さんの一歩後ろで手をついて頭を下げる
ありがとうございます喜多さん、お作法教室の成果です
「ああ、先日見つかったという分家の!」
「はい」
「どうぞお顔をお上げくだされ、我々は夕華様を敬うべき立場にありますれば」
そう実元殿に言われ、顔を上げる
……人の良さそうな顔をされている
成実さんは、どちらかと言うとお母さんにお顔が似たらしい
目元は実元殿に似てるけど
「政宗様はどうなさっておる?」
「筆頭なら布団の中だよ
織田軍が侵攻してくるのも時間の問題で、迎え撃たなきゃって言ってたけど……」
「片倉殿に止められたか」
「いや、今回は綱元がブチギレた」
「……鬼庭を怒らせるのは、血筋か?」
「そういや、大殿もよく左月様を怒らせてたなー……」
親子が揃って遠い目をする
……やっぱり、成実さんの性格はお父さん譲りみたいだ
「ところで成実
夕華様をお連れしたということは……?」
「いえ、特に深い意味はありません」
成実さんは、お母さんにだけ敬語
……もしかして、お母さんと仲が悪いんだろうか
「そうですか
成実、お前に縁談が来ています」
「母上、何度も言っているように、俺はまだ嫁をとるつもりはありません」
「ですが、お前は将来この家を継ぐ者
もう正室がいなくては──」
「ご心配なく
いずれは正室は娶ります
ただし、己の目で見て選びますので
これだけは譲れません」
「ならば、夕華様を娶ればよいのではないか?」
「「……は?」」
実元殿の発言に、私と成実さんが固まった
それはもう綺麗に2人で固まった
「ちょ、ちょっと待てよ親父!
何がどう転がって俺と夕華が!」
「お前こそ何を言っておる?
お前が幼き頃より夕華様に惚れておったことは知っておるぞ」
「あーあーあー!!!」
成実さんが叫んで、私の耳を塞いだもんだから、実元殿が何て言ったか聞こえなかった
何を焦っているんだろう
「それはようございます!」
「よくないですよ!!
絶対よくない!
だって夕華は、まだこっちに戻ってきたばっかだぜ!?
それに、俺のこと好きなのかも分かんないし……
嫌いな奴とくっつくとか、そういうことだけはさせたくねぇよ」
「そうか?
妙案だと思ったのだがな」
「どこがだ……」
成実さんがボソッと呟いた
……どうも、私と成実さんが結婚すればいいのでは?という話のようだ
それは……どうなんだろう……
「……はっ!
成実さん、本題!」
「あっ、そうだった!!
親父、折入って話がある!」
「ん?
なんだ?」
「さっきもちらっと言ったけど、織田軍がこっちに向かおうとしてる
とてもじゃないけど伊達一軍じゃ太刀打ちできない
それで、親父の伝で、上杉殿に援軍を頼めないか?」
「上杉……
謙信公にか?」
「うん
でも、上杉殿も先の戦でけがを負ってるし、もしこっちが負けた場合には間違いなく越後が攻められる
だから、上杉軍の援軍は正直言って期待出来ねぇ」
「ではなぜ?」
「上杉殿から甲斐の虎に話をつけてもらおうと思うんだ
上杉殿が、噂通りに義に生きる人なら、休戦状態で勝敗つかずの伊達軍を放ってはおかない
きっと、向こうも再戦を望んでるはずだろ?」
「……なるほど」
実元殿が腕を組んで唸り
「あい分かった、わしから書状を出してみよう」
「ありがとう
俺からも上杉殿に書状を出そうと思う
もちろん、安房守成実としてだけど
あと、甲斐の虎にも直接と、真田家にも」
「真田?」
「真田幸村なら、筆頭の窮地を黙って見過ごさないと思う
甲斐の虎も、愛弟子の好敵手が命を落とすのは避けたいだろうし……
あとは四国の長曾我部
元親なら二つ返事で援軍出してくれるはずだ
出来れば毛利の援軍も欲しいけど多分無理
ひとまず、これで何とかやれると思うんだ
筆頭が参陣できないっていうのが痛手だけど」
「それらが全て整うとは限らんぞ」
「承知の上だ」
成実さんが即答する
「もし伊達一軍で迎え撃つことになった場合は?」
「多分、俺が筆頭の代わりになるだろうな」
「お前が命を落とすことになるぞ」
「それは……」
そこでようやく、成実さんが言葉に詰まった
青葉城を出る時は、「俺の命は好きに使え」と小十郎さんに言っていたのに
「……それも、覚悟はしてる」
「………」
「覚悟はしてるけど……
死にに行く覚悟は決めてない」
「そうか……やれやれ、考えたものだな」
「……いや、これくらいはあの小十郎だって考えてるさ」
「そうか、そうであろうな」
実元殿が頷いて、成実さんが立ち上がった
「そうと決まればさっそくだ
悪いけど、あんまり悠長に構えてるわけにもいかないんでな」
「分かっている
それに、ここだと指示が通りやすいから帰ってきたのだろうしな」
「なんだ、分かってたのか」
「伊達に十数年もお前を育てていない」
実元殿がそう言って、豪快に笑った
1/4ページ