第六話 初陣
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──それは、突然のことだった
喜多さんのお作法教室が臨時休業になり、成実さんと過ごしていた午前中
ここ最近で聞き慣れてしまった足音と共に
「成実!
いつまでモタモタしてやがる!!」
成実さんのお部屋に、奥州筆頭の怒鳴り声が響いた
「ぼ、梵?
どうしたんだよ、そんなに青筋立ててさ?」
「さっさと支度しろ!」
「支度?
なんでまた急に……」
「に、兄様?
一体どうしたんですか?」
苛立たし気にため息をついた兄様、その格好は、散々ゲームで見慣れた蒼の装束だ
腰にはまだ六爪が差されていないけれど、兄様がこの格好
……ということは、もしかして
「お前、忘れたんじゃねぇだろうな?
明日からどことPartyだ?」
「明日ー……
……あぁぁあー!!!」
いきなり耳元で叫ばれてびっくりした……
「明日は上杉んとこに攻め込むんだろうが
忘れてんじゃねぇよ馬鹿」
「いや、だってみんないつもみたいにバタバタしてないし……
夕華のことで頭の中からすっ飛んでた……」
「何やってんだお前」
本当だよ、なんでそんな一大事を忘れてるんだろう、成実さん……
「あの、兄様……
上杉と戦なんですか?」
「ああ、これはお前が帰ってくる前から決まってた
悪かったな、伝えてなくて」
「いえ……」
上杉、か……
頭の中で、かすがと謙信の掛け合いがフラッシュバックした
「あー……
にしても、俺って奴はなんで戦なんて大事なもの忘れてたんだろうな……」
「確かに珍しいな
どうした?」
「もう年か?」
「いや、成実さんまだ十代ですよね」
「とにかくさっさと支度しろよ、小十郎に雷落とされたくなけりゃあな」
「うっわそれは勘弁だわ、分かった」
部屋の前から去っていく兄様に成実さんがそう言って、「よっこらせ」と立ち上がる
戦……か
今までは、ゲームの中のことだから、と何も思わなかったけど
いざ、自分が実際にこうして戦国の世に身を置くと……痛いほど思い知る
この時代は、文字通り命懸けなんだって
「……私も行けたら……」
いや、私が行っても足手まといになるだけだろう
けれど、その呟きは聞こえていたようで
「絶対ダメ
連れて行かないからな」
「……分かってます
でも、みんなが心配で……」
「心配すんなよ
無事に帰ってくるって!」
「相手はあの軍神なんですよ!
成実さんだって、無傷で帰って来られるか分かんないんですよ?」
「……じゃあ、信じろ」
成実さんの茶色の瞳が、私の瞳を捉える
「絶対帰ってくる
約束するから
そりゃ……無傷は難しいかもしれねぇけど
とりあえず、ちゃんとここに帰ってくる」
「………」
「だからさ、夕華
お前は、俺たちが帰って来られる場所を守っててくれねぇか?」
「帰って来られる場所を……?」
「うん
つまりはここなんだけど」
「……城を守るのも、戦の一つですよね」
「お、よく分かってるじゃねぇか
ここが落とされちまったら、俺たちがたとえ軍神を倒したとしても、勝利は敗北に変わる」
分かっている……それも立派な、大事な役目だって、分かってるけど
「……でもやっぱり、私は戦場で皆さんを見守りたいです」
「ダメだって」
「兄様も反対しますかね……」
「確実にな」
……総大将が否と言うなら、諦めるしかないよね
「……分かりました
じゃあ、私は部屋を出るので、成実さんは着替えてください」
「ありがと」
成実さんを残して、私は部屋を出た
とはいえ、城のみんなが戦の支度に追われている今、何もできない私は、ぶっちゃけ暇なわけで
成実さんのお部屋を出て、鍛練場へ向かおうとしたところで、小十郎さんと出くわした
「あ、小十郎さん」
「これは夕華様
ちょうど良かった、夕華様を探しておりまして」
「私をですか?」
「はい
どうぞ、こちらの部屋に
義姉上がお待ちしております」
「喜多さんが?」
訝しみつつ部屋に入ると、中には喜多さんが座っていた
その横には、細長い桐箱が一つ置いてあって
「ご苦労様でした、小十郎
それをこちらへ」
「お任せいたしました、義姉上」
小十郎さんが、持っていた大きな桐箱を下に置いた
一体何が起きているんだろうか、全く状況が分からない
喜多さんのお作法教室が臨時休業になり、成実さんと過ごしていた午前中
ここ最近で聞き慣れてしまった足音と共に
「成実!
いつまでモタモタしてやがる!!」
成実さんのお部屋に、奥州筆頭の怒鳴り声が響いた
「ぼ、梵?
どうしたんだよ、そんなに青筋立ててさ?」
「さっさと支度しろ!」
「支度?
なんでまた急に……」
「に、兄様?
一体どうしたんですか?」
苛立たし気にため息をついた兄様、その格好は、散々ゲームで見慣れた蒼の装束だ
腰にはまだ六爪が差されていないけれど、兄様がこの格好
……ということは、もしかして
「お前、忘れたんじゃねぇだろうな?
明日からどことPartyだ?」
「明日ー……
……あぁぁあー!!!」
いきなり耳元で叫ばれてびっくりした……
「明日は上杉んとこに攻め込むんだろうが
忘れてんじゃねぇよ馬鹿」
「いや、だってみんないつもみたいにバタバタしてないし……
夕華のことで頭の中からすっ飛んでた……」
「何やってんだお前」
本当だよ、なんでそんな一大事を忘れてるんだろう、成実さん……
「あの、兄様……
上杉と戦なんですか?」
「ああ、これはお前が帰ってくる前から決まってた
悪かったな、伝えてなくて」
「いえ……」
上杉、か……
頭の中で、かすがと謙信の掛け合いがフラッシュバックした
「あー……
にしても、俺って奴はなんで戦なんて大事なもの忘れてたんだろうな……」
「確かに珍しいな
どうした?」
「もう年か?」
「いや、成実さんまだ十代ですよね」
「とにかくさっさと支度しろよ、小十郎に雷落とされたくなけりゃあな」
「うっわそれは勘弁だわ、分かった」
部屋の前から去っていく兄様に成実さんがそう言って、「よっこらせ」と立ち上がる
戦……か
今までは、ゲームの中のことだから、と何も思わなかったけど
いざ、自分が実際にこうして戦国の世に身を置くと……痛いほど思い知る
この時代は、文字通り命懸けなんだって
「……私も行けたら……」
いや、私が行っても足手まといになるだけだろう
けれど、その呟きは聞こえていたようで
「絶対ダメ
連れて行かないからな」
「……分かってます
でも、みんなが心配で……」
「心配すんなよ
無事に帰ってくるって!」
「相手はあの軍神なんですよ!
成実さんだって、無傷で帰って来られるか分かんないんですよ?」
「……じゃあ、信じろ」
成実さんの茶色の瞳が、私の瞳を捉える
「絶対帰ってくる
約束するから
そりゃ……無傷は難しいかもしれねぇけど
とりあえず、ちゃんとここに帰ってくる」
「………」
「だからさ、夕華
お前は、俺たちが帰って来られる場所を守っててくれねぇか?」
「帰って来られる場所を……?」
「うん
つまりはここなんだけど」
「……城を守るのも、戦の一つですよね」
「お、よく分かってるじゃねぇか
ここが落とされちまったら、俺たちがたとえ軍神を倒したとしても、勝利は敗北に変わる」
分かっている……それも立派な、大事な役目だって、分かってるけど
「……でもやっぱり、私は戦場で皆さんを見守りたいです」
「ダメだって」
「兄様も反対しますかね……」
「確実にな」
……総大将が否と言うなら、諦めるしかないよね
「……分かりました
じゃあ、私は部屋を出るので、成実さんは着替えてください」
「ありがと」
成実さんを残して、私は部屋を出た
とはいえ、城のみんなが戦の支度に追われている今、何もできない私は、ぶっちゃけ暇なわけで
成実さんのお部屋を出て、鍛練場へ向かおうとしたところで、小十郎さんと出くわした
「あ、小十郎さん」
「これは夕華様
ちょうど良かった、夕華様を探しておりまして」
「私をですか?」
「はい
どうぞ、こちらの部屋に
義姉上がお待ちしております」
「喜多さんが?」
訝しみつつ部屋に入ると、中には喜多さんが座っていた
その横には、細長い桐箱が一つ置いてあって
「ご苦労様でした、小十郎
それをこちらへ」
「お任せいたしました、義姉上」
小十郎さんが、持っていた大きな桐箱を下に置いた
一体何が起きているんだろうか、全く状況が分からない
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