第五話 散策
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その日、私は政宗さん……もとい、兄様に呼ばれていた
ちなみに成実さん付きで呼ばれていた
──この世界へ帰ってきてから、早くも1週間程が過ぎ、私もなんとか順応しようと悪戦苦闘している今日
小十郎さんと綱元さんのことは、呼び捨てにしようにも出来るような年の差ではないので、諦めてもらった
というか、頑張ったけど「こ、小十郎!……さん!」みたいになるから、諦められたと言った方が早い
最近では、兄様の私への態度も様変わり──いや、元通りなのかもしれない
とにかく、溺愛されている
「んで?
執務をまるっと放棄して、俺たちを呼んだ理由は何だよ」
「放棄なんかしてねぇ、このあとやる
成実、夕華を城下に連れてってやれ」
「城下に?」
「まだ行ったことねぇだろ?
ついでに、何着か夕華に似合う着物を買ってやれ」
「そんな、いいです、着物なんて!
私はこれで充分ですから」
「けどそれ、女中がよく着てるやつだぜ?
姫なんだし、もっとましな格好した方がいいって」
「今まで姫なんてこと知らなかったんです
だからこのままの方がかえって落ち着きます」
そう反論すると、兄様が「あー」と唸って私を見つめた
「夕華、奥州筆頭たる俺の実妹がそんな格好じゃ、民の心は離れていく
お前の気が引けるってんなら、俺のためだと思ってくれ」
そっか
確かに、一国の主の妹がこういう格好してるのはだめだよね
「分かりました」
「よっしゃ!
着物はいくつぐらいありゃいいの?」
「似合うだけ買ってこい
……と言いてぇところだが……
ンなことしてっと原田の奴に色々言われるのはお前だからな
上等な着物は三、四つくらいがbestだろ
あとは普段着用にいくつか……だな」
「りょーかい」
三、四つって……
着物って、この時代でも高い物のはずだよね?
「お前は何も心配しなくていいの
懐を広く構えてるのも、男の条件の一つなんだからさ」
「成実さん……」
ヤバい、惚れそう
向こうの世界に生存するすべての男に、今のセリフを聞かせてやりたいものだ
「じゃあ、今から行ってくる
真面目に執務しねぇと、あとで綱元がキレるぞ?」
「分かった分かった
さっさと行ってこい」
しっしっ、と追い払うように手を振る兄様
成実さんの視線が私に向けられた
一種の懇願とも取れる視線が何を表すのか
そんなものはすぐに察せられるわけで
「兄様、ちゃんと執務をやってくださいね」
「OK.
夕華の頼みってんならやるしかねぇな」
「ちょっ!!
おまっ、今俺が言ったときは適当な返事返したくせに!」
「野郎に言われるよりも、妹に言われる方がやる気も出るってもんだ」
「あぁ!?」
散々な言われようの成実さんは、ため息をついた後
「行こうぜ、夕華!」
「はい!」
ギュッと手を握ってくれた
お部屋を出る前に兄様に一礼して、用意してもらっていた草履に足を入れる
そして、城門から城下町へと降りた
「はぁ……
あの野郎、自分のことになると途端に鈍くなりやがる……」
そういう奥州筆頭のボヤキがあったのは、誰も知らない
* * *
城下町は、私が想像していた以上にとても賑やかだった
「どうよ、この賑わい!
楽しそうだろ!」
「うわぁ……!
たくさんお店がありますね!」
大きな道の両側に、いろんなお店が軒を連ねる城下町
行き交う人達の喧騒と、店員の呼び込みの威勢のいい声が混ざり合っている
喧しいというほどではなく、むしろ心地のいい活気の良さだ
「月に一回は、ここで市が開かれたりもするんだぜ
奥州の商人はもちろん、甲斐、越後、羽州に武蔵とか……
結構遠いとこから来てたりもするかな」
「へぇ……!」
背中に籠を背負った人とすれ違う
その背中には、一杯に食材が詰め込まれていた
「とりあえず、まずは呉服屋だ」
「はい!」
手を引かれ、大通りを歩いていく
城下の人たちは、成実さんが腰に刀を差しているためか、さっと道を開けてくれる
けれど、不必要に恐れている風でもなくて、敬意を感じられる程度のものだ
特に気にする風でもない成実さんは、そのまま一つの呉服屋さんに入っていった
「ここは……?」
「俺たち伊達家御用達の呉服屋」
「御用達……」
「ま、俗に言う御用商人ってやつかな
本来なら、商人のほうから城に出向いてもらわなきゃいけないんだけど、今回は急だったから特例だ」
成実さんがそう教えてくれて、お店の奥に向かって「おーい」と声をかけた
ちなみに成実さん付きで呼ばれていた
──この世界へ帰ってきてから、早くも1週間程が過ぎ、私もなんとか順応しようと悪戦苦闘している今日
小十郎さんと綱元さんのことは、呼び捨てにしようにも出来るような年の差ではないので、諦めてもらった
というか、頑張ったけど「こ、小十郎!……さん!」みたいになるから、諦められたと言った方が早い
最近では、兄様の私への態度も様変わり──いや、元通りなのかもしれない
とにかく、溺愛されている
「んで?
執務をまるっと放棄して、俺たちを呼んだ理由は何だよ」
「放棄なんかしてねぇ、このあとやる
成実、夕華を城下に連れてってやれ」
「城下に?」
「まだ行ったことねぇだろ?
ついでに、何着か夕華に似合う着物を買ってやれ」
「そんな、いいです、着物なんて!
私はこれで充分ですから」
「けどそれ、女中がよく着てるやつだぜ?
姫なんだし、もっとましな格好した方がいいって」
「今まで姫なんてこと知らなかったんです
だからこのままの方がかえって落ち着きます」
そう反論すると、兄様が「あー」と唸って私を見つめた
「夕華、奥州筆頭たる俺の実妹がそんな格好じゃ、民の心は離れていく
お前の気が引けるってんなら、俺のためだと思ってくれ」
そっか
確かに、一国の主の妹がこういう格好してるのはだめだよね
「分かりました」
「よっしゃ!
着物はいくつぐらいありゃいいの?」
「似合うだけ買ってこい
……と言いてぇところだが……
ンなことしてっと原田の奴に色々言われるのはお前だからな
上等な着物は三、四つくらいがbestだろ
あとは普段着用にいくつか……だな」
「りょーかい」
三、四つって……
着物って、この時代でも高い物のはずだよね?
「お前は何も心配しなくていいの
懐を広く構えてるのも、男の条件の一つなんだからさ」
「成実さん……」
ヤバい、惚れそう
向こうの世界に生存するすべての男に、今のセリフを聞かせてやりたいものだ
「じゃあ、今から行ってくる
真面目に執務しねぇと、あとで綱元がキレるぞ?」
「分かった分かった
さっさと行ってこい」
しっしっ、と追い払うように手を振る兄様
成実さんの視線が私に向けられた
一種の懇願とも取れる視線が何を表すのか
そんなものはすぐに察せられるわけで
「兄様、ちゃんと執務をやってくださいね」
「OK.
夕華の頼みってんならやるしかねぇな」
「ちょっ!!
おまっ、今俺が言ったときは適当な返事返したくせに!」
「野郎に言われるよりも、妹に言われる方がやる気も出るってもんだ」
「あぁ!?」
散々な言われようの成実さんは、ため息をついた後
「行こうぜ、夕華!」
「はい!」
ギュッと手を握ってくれた
お部屋を出る前に兄様に一礼して、用意してもらっていた草履に足を入れる
そして、城門から城下町へと降りた
「はぁ……
あの野郎、自分のことになると途端に鈍くなりやがる……」
そういう奥州筆頭のボヤキがあったのは、誰も知らない
* * *
城下町は、私が想像していた以上にとても賑やかだった
「どうよ、この賑わい!
楽しそうだろ!」
「うわぁ……!
たくさんお店がありますね!」
大きな道の両側に、いろんなお店が軒を連ねる城下町
行き交う人達の喧騒と、店員の呼び込みの威勢のいい声が混ざり合っている
喧しいというほどではなく、むしろ心地のいい活気の良さだ
「月に一回は、ここで市が開かれたりもするんだぜ
奥州の商人はもちろん、甲斐、越後、羽州に武蔵とか……
結構遠いとこから来てたりもするかな」
「へぇ……!」
背中に籠を背負った人とすれ違う
その背中には、一杯に食材が詰め込まれていた
「とりあえず、まずは呉服屋だ」
「はい!」
手を引かれ、大通りを歩いていく
城下の人たちは、成実さんが腰に刀を差しているためか、さっと道を開けてくれる
けれど、不必要に恐れている風でもなくて、敬意を感じられる程度のものだ
特に気にする風でもない成実さんは、そのまま一つの呉服屋さんに入っていった
「ここは……?」
「俺たち伊達家御用達の呉服屋」
「御用達……」
「ま、俗に言う御用商人ってやつかな
本来なら、商人のほうから城に出向いてもらわなきゃいけないんだけど、今回は急だったから特例だ」
成実さんがそう教えてくれて、お店の奥に向かって「おーい」と声をかけた
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