第一話 邂逅
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時は、戦国が終わりを告げた泰平の世──
かつて天下を争い、熾烈を極めた日の本の、北の大地に
「影日向の氷竜」と呼ばれる男がいた
この物語は、彼がそう呼ばれるに至るまでの話
一人の主君と、一人の最愛の女性のために、生涯の全てを懸けた、数年間の記録
──遡ること数年
時は、群雄割拠の戦国時代
場所は……奥州・伊達氏領内──
* * *
鬨の声が上がる
クルリと手の中にある得物を回して、一気に大地を蹴った
向かってくるのは、敵の一団
「──上等だ!
竜の領域に踏み入ったこと、後悔しやがれ!!」
敵の将が俺に気付く
その表情が慄いたが、もう遅い
「よぉ、ここまで来て怯えることねぇだろ?
ちょいと相手してくれよ、ここまでの敵じゃあ物足りねぇんだ」
「ひ、き……貴様は」
「名乗るくらいならお安い御用だ」
空を切る音と共に、馬上の将へと詰め寄る
そして、鎧の隙間から刃先を刺し込んだ
「が、はっ!」
「……奥州筆頭、伊達政宗
その名を覚えておきな」
引き抜いた瞬間、名も知らぬ将が落馬する
統率も取れず慌てふためく足軽兵なんざ、俺の敵じゃない
──右目を隠しただけで信じやがるたぁな
阿呆なのか何なのか……ま、そんなことを考えるのは俺の領分じゃあねぇ
「全員まとめて相手してやる!」
猛然と斬りかかる兵の首を刎ねて、的確に鎧の繋ぎ目を狙う
ったく、あの野郎も無茶言いやがって
俺が得意なのは刀じゃなくて──槍だっつーの!
「──じゃあな」
「ひ、ひぃぁぁぁ!」
転がるように走り出した最後の兵
敵前逃亡とはいい度胸だ、気に入らねぇ
ひらりと兵の前へと回り込んで
問答無用で首を獲った
「……ふー、おしまいっと」
あーあ、返り血だらけ
手にしていた刀を振って、付着した血を払う
鞘に納めた時──
「おごっ!?」
後頭部に打撃、次いでため息
「『戻って』きたか?」
「……ん、ああ
悪いな、毎回」
「そう思っているのなら、いい加減やめたらどうだ」
「そりゃあ無理じゃねぇかなぁ」
右目を覆っていた布を取り外す
うん、両目とも視界良好
「政宗様は窮地を脱した
我々にも帰還の下知が出ている、戻るぞ」
「りょーかい」
死屍累々の戦場を後にする
──俺は、奥州筆頭なんかじゃない
「オメェら、無事だったか」
「はい、この通りかすり傷一つで済みました」
「俺が遅れなんざ取るわけねぇだろ」
俺は……
「──伊達三傑ッ、覚悟ぉぉぉ!!!」
「「!!」」
瞬間、生き残りの兵が絶命する
「……悪ぃが、俺たちはこれくらいの奇襲じゃ倒せねぇ」
俺は──伊達三傑、武の……伊達成実だ
* * *
時は平成──都内某所
私、森川夕華は自転車をマッハで漕いでいた
なぜなら、早く家に帰りたいから
そして伊達軍で天下統一したいから!!
むしろこれ以外に私が急いで帰るようになる理由があるなら、ぜひとも教えてほしいぐらいだ
「待っててくださいひっとぉぉぉおおおう!!
絶対に天下統一しますからー!!」
近所のおばちゃんがぎょっとした顔で私を見るが、そんなの知ったことか!
とにかく私は、伊達軍で天下を統一するべく、家路を急いでいたのだった
そこ、理由がアホとか言わない!
──ただいま、とリビングに向かって言ってからすぐさま自分の部屋に駆け込む
そこには小さいテレビとプレステさんが置いてあって
「待ってろよ豊臣秀吉ゴリラコノヤロー!」
叫んで、プレステさんの電源をポチッと入れた
コントローラーを持ってうずうずしながら待つ
プレステのロゴが出た!
「よっしゃこいオープニング!!」
何を隠そう、私は毎回律儀にオープニングを観てしまう人間である
だってオープニングの筆頭めちゃくちゃかっこいいじゃん、というのが理由だったりする
「まだかなー、まだかなー!」
……しかし待てども待てども、画面が真っ黒のままで
「ってちょっと待てぇぇえ!!
なぜ画面が現れない!?
壊れるにはまだ早いぞプレステ!」
コントローラーを持ったまま立ち上がろうとしたとき
視界がぐらりと揺れた
何かで刺されたような痛みが頭を襲う
「っつぁ……
何……?
うええぇぇ!?
私なんか光ってるぅぅぅ!?」
いやもう、オーラが~とかそういうのじゃなくて、本当に、物理的に光っている
人間って自然発光するっけぇ!?
かろうじて自然発火は聞いたことある気が……ってそれはどうでもいいんだった!
グイ、と引っ張られたような気がした
最後に聞いたのは
コントローラーが床に落ちる音
私の視界は真っ白になって
私の意識は、真っ暗闇に落ちて行った──
かつて天下を争い、熾烈を極めた日の本の、北の大地に
「影日向の氷竜」と呼ばれる男がいた
この物語は、彼がそう呼ばれるに至るまでの話
一人の主君と、一人の最愛の女性のために、生涯の全てを懸けた、数年間の記録
──遡ること数年
時は、群雄割拠の戦国時代
場所は……奥州・伊達氏領内──
* * *
鬨の声が上がる
クルリと手の中にある得物を回して、一気に大地を蹴った
向かってくるのは、敵の一団
「──上等だ!
竜の領域に踏み入ったこと、後悔しやがれ!!」
敵の将が俺に気付く
その表情が慄いたが、もう遅い
「よぉ、ここまで来て怯えることねぇだろ?
ちょいと相手してくれよ、ここまでの敵じゃあ物足りねぇんだ」
「ひ、き……貴様は」
「名乗るくらいならお安い御用だ」
空を切る音と共に、馬上の将へと詰め寄る
そして、鎧の隙間から刃先を刺し込んだ
「が、はっ!」
「……奥州筆頭、伊達政宗
その名を覚えておきな」
引き抜いた瞬間、名も知らぬ将が落馬する
統率も取れず慌てふためく足軽兵なんざ、俺の敵じゃない
──右目を隠しただけで信じやがるたぁな
阿呆なのか何なのか……ま、そんなことを考えるのは俺の領分じゃあねぇ
「全員まとめて相手してやる!」
猛然と斬りかかる兵の首を刎ねて、的確に鎧の繋ぎ目を狙う
ったく、あの野郎も無茶言いやがって
俺が得意なのは刀じゃなくて──槍だっつーの!
「──じゃあな」
「ひ、ひぃぁぁぁ!」
転がるように走り出した最後の兵
敵前逃亡とはいい度胸だ、気に入らねぇ
ひらりと兵の前へと回り込んで
問答無用で首を獲った
「……ふー、おしまいっと」
あーあ、返り血だらけ
手にしていた刀を振って、付着した血を払う
鞘に納めた時──
「おごっ!?」
後頭部に打撃、次いでため息
「『戻って』きたか?」
「……ん、ああ
悪いな、毎回」
「そう思っているのなら、いい加減やめたらどうだ」
「そりゃあ無理じゃねぇかなぁ」
右目を覆っていた布を取り外す
うん、両目とも視界良好
「政宗様は窮地を脱した
我々にも帰還の下知が出ている、戻るぞ」
「りょーかい」
死屍累々の戦場を後にする
──俺は、奥州筆頭なんかじゃない
「オメェら、無事だったか」
「はい、この通りかすり傷一つで済みました」
「俺が遅れなんざ取るわけねぇだろ」
俺は……
「──伊達三傑ッ、覚悟ぉぉぉ!!!」
「「!!」」
瞬間、生き残りの兵が絶命する
「……悪ぃが、俺たちはこれくらいの奇襲じゃ倒せねぇ」
俺は──伊達三傑、武の……伊達成実だ
* * *
時は平成──都内某所
私、森川夕華は自転車をマッハで漕いでいた
なぜなら、早く家に帰りたいから
そして伊達軍で天下統一したいから!!
むしろこれ以外に私が急いで帰るようになる理由があるなら、ぜひとも教えてほしいぐらいだ
「待っててくださいひっとぉぉぉおおおう!!
絶対に天下統一しますからー!!」
近所のおばちゃんがぎょっとした顔で私を見るが、そんなの知ったことか!
とにかく私は、伊達軍で天下を統一するべく、家路を急いでいたのだった
そこ、理由がアホとか言わない!
──ただいま、とリビングに向かって言ってからすぐさま自分の部屋に駆け込む
そこには小さいテレビとプレステさんが置いてあって
「待ってろよ豊臣秀吉ゴリラコノヤロー!」
叫んで、プレステさんの電源をポチッと入れた
コントローラーを持ってうずうずしながら待つ
プレステのロゴが出た!
「よっしゃこいオープニング!!」
何を隠そう、私は毎回律儀にオープニングを観てしまう人間である
だってオープニングの筆頭めちゃくちゃかっこいいじゃん、というのが理由だったりする
「まだかなー、まだかなー!」
……しかし待てども待てども、画面が真っ黒のままで
「ってちょっと待てぇぇえ!!
なぜ画面が現れない!?
壊れるにはまだ早いぞプレステ!」
コントローラーを持ったまま立ち上がろうとしたとき
視界がぐらりと揺れた
何かで刺されたような痛みが頭を襲う
「っつぁ……
何……?
うええぇぇ!?
私なんか光ってるぅぅぅ!?」
いやもう、オーラが~とかそういうのじゃなくて、本当に、物理的に光っている
人間って自然発光するっけぇ!?
かろうじて自然発火は聞いたことある気が……ってそれはどうでもいいんだった!
グイ、と引っ張られたような気がした
最後に聞いたのは
コントローラーが床に落ちる音
私の視界は真っ白になって
私の意識は、真っ暗闇に落ちて行った──
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