第九章
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海夜と三成の関係は、穏やかな速度で知れ渡った
そんな大坂城に、一つの噂が立ち込める
――魔王の妹・お市の方が発見された
大坂城の地下牢に隔離されているらしい――
「――どう思う?」
「どう、とは?」
敗残兵の残党狩りをしつつ、質問を隣の石田三成に投げかける
案の定、質問を丸投げで返されてしまった
「だから、大坂城の地下牢にお市の方がいるって話よ」
「知らん」
「そこ右前方、一人いるわよ」
三成のバサラで潜んでいた敗残兵が絶命する
それには目もくれず、ようやくそこで二人の足が止まった
「片付いたか」
「ええ
ところでさっきの話だけど」
「気になるならば行けばいいだろう」
「それが、立ち入り禁止なのよ」
そこで初めて、三成が聞く耳を持ったようだ
「どういうことだ?」
「どうもこうもないわ、会ってやろうと思ったら立ち入れないって門前払いだったのよ
確かにお市の方は魔王の妹だし、底知れない力を持っていないとは限らないから……」
「魔王の妹を保護しているなど、私は聞いていない」
「……そうだったの?
あなたほどの立場なら、聞かされていそうなものだけど……
どういうことかしら、よほど秘密にしたいのか、それともただの噂なのか……」
「会いには行ったのだろう」
三成の言葉に、海夜は首を振った
「『知るか』と『帰れ』の繰り返しよ
話にならなくてね」
「気になる話はもう一つある
小早川のところに現れた天海とかいう僧、知っていたか」
「……いいえ、まったく」
「奴の見た目が、あの明智光秀にそっくりだという噂がある」
「……明智、光秀……」
懐かしい名前だ
本能寺でのあれ以来、とんと名前を聞かなかった
てっきり死んでいたと思っていたのだが
「明智光秀については、死んだという話だが」
「遺体は見つかっていない――そうよね」
「その通りだ」
「お市の方、天海……
今のところ、豊臣に危害を加えそうではないけれど
ほかには?」
「いや、他は特には――」
そのとき
こちらへ向かって、馬の蹄の音が聞こえてきた
見るとそれは、大坂城からの伝令役であった
「どうした」
「伝令でございます!
昨日、三河国某所にて、徳川軍と伊達軍が戦ったとの話が!」
「徳川だと……?」
「勝敗は?」
「だ……伊達の、勝利でございます」
海夜の脳裏に、伊達成実の顔が浮かぶ
そしてその隣に立つあの女も
「馬鹿な、戦国最強が敗れたというのか……!?」
「それで、徳川はどうなってるの?」
「は、それが……
領地は安堵されたようです
それゆえ、今後も変わらず豊臣家にお仕えすると
しかしながら敗戦国であるゆえ、しばらくは中立の立場を取りつつ情勢を見極める、と」
「情勢を見極めるだと?
つまり、豊臣が危なくなれば寝返ると、そう言ったのか!?」
「そういうことでしょうね」
いよいよまずい
すでに豊臣の背後はとられつつある
九州を押さえたとはいえ、四国と中国は、はるか北の伊達軍と軍事同盟を結んだと聞く
さらには強力な傭兵集団の雑賀衆ですらも自軍の戦力として取り込んだという話だ
北で残っているのは、加賀の前田と三河の徳川、それに付随する将たちだ
「刑部はどうした?」
「大谷様、ですか?
いえ、特に申されたことは……」
海夜の眉間にしわが寄る
これだけの窮地に立たされながら、竹中半兵衛が何の手も打たないことが気にかかる
それに、最近の大谷の様子も少し変だ
まるでこちら側に悟らせぬように、何かをしている……
そんな気がする
「だめ、難しいことは考えたくないわ
とにかく半兵衛様の指示を待ちましょう
大丈夫、豊臣の悪いようにはならないわ
大坂城へ伝えて
残党狩りは完了、帰還するわ」
「はっ!」
伝令役が来た道を急いで戻っていく
あたりを生ぬるい風が通り抜けた
「……きな臭くなってきたわね」
「すまない、海夜
気になる点がもう一つあった」
「なに?」
「残党狩りに、わざわざ私と貴様を指名したことだ」
「……言われてみればそうよね
私や三成は、いわば豊臣戦力の中核……
残党狩りなんかやるような立場じゃないもの
ねえ、これ、誰に言われたか知ってる?」
「私に命を下せるのは、秀吉様と半兵衛様だけだ」
「……つまり、半兵衛様の命令?」
「いや、そんなはずはない」
「……どうなってるの……」
「疑うわけではないが、刑部も近頃、姿を見せない」
「……難しいことは、考えたくないわね」
闇にお手上げだという意味を持たせ、海夜は歩き始めた
自分には、頭を使うより体を動かすほうが性に合っている
そんな大坂城に、一つの噂が立ち込める
――魔王の妹・お市の方が発見された
大坂城の地下牢に隔離されているらしい――
「――どう思う?」
「どう、とは?」
敗残兵の残党狩りをしつつ、質問を隣の石田三成に投げかける
案の定、質問を丸投げで返されてしまった
「だから、大坂城の地下牢にお市の方がいるって話よ」
「知らん」
「そこ右前方、一人いるわよ」
三成のバサラで潜んでいた敗残兵が絶命する
それには目もくれず、ようやくそこで二人の足が止まった
「片付いたか」
「ええ
ところでさっきの話だけど」
「気になるならば行けばいいだろう」
「それが、立ち入り禁止なのよ」
そこで初めて、三成が聞く耳を持ったようだ
「どういうことだ?」
「どうもこうもないわ、会ってやろうと思ったら立ち入れないって門前払いだったのよ
確かにお市の方は魔王の妹だし、底知れない力を持っていないとは限らないから……」
「魔王の妹を保護しているなど、私は聞いていない」
「……そうだったの?
あなたほどの立場なら、聞かされていそうなものだけど……
どういうことかしら、よほど秘密にしたいのか、それともただの噂なのか……」
「会いには行ったのだろう」
三成の言葉に、海夜は首を振った
「『知るか』と『帰れ』の繰り返しよ
話にならなくてね」
「気になる話はもう一つある
小早川のところに現れた天海とかいう僧、知っていたか」
「……いいえ、まったく」
「奴の見た目が、あの明智光秀にそっくりだという噂がある」
「……明智、光秀……」
懐かしい名前だ
本能寺でのあれ以来、とんと名前を聞かなかった
てっきり死んでいたと思っていたのだが
「明智光秀については、死んだという話だが」
「遺体は見つかっていない――そうよね」
「その通りだ」
「お市の方、天海……
今のところ、豊臣に危害を加えそうではないけれど
ほかには?」
「いや、他は特には――」
そのとき
こちらへ向かって、馬の蹄の音が聞こえてきた
見るとそれは、大坂城からの伝令役であった
「どうした」
「伝令でございます!
昨日、三河国某所にて、徳川軍と伊達軍が戦ったとの話が!」
「徳川だと……?」
「勝敗は?」
「だ……伊達の、勝利でございます」
海夜の脳裏に、伊達成実の顔が浮かぶ
そしてその隣に立つあの女も
「馬鹿な、戦国最強が敗れたというのか……!?」
「それで、徳川はどうなってるの?」
「は、それが……
領地は安堵されたようです
それゆえ、今後も変わらず豊臣家にお仕えすると
しかしながら敗戦国であるゆえ、しばらくは中立の立場を取りつつ情勢を見極める、と」
「情勢を見極めるだと?
つまり、豊臣が危なくなれば寝返ると、そう言ったのか!?」
「そういうことでしょうね」
いよいよまずい
すでに豊臣の背後はとられつつある
九州を押さえたとはいえ、四国と中国は、はるか北の伊達軍と軍事同盟を結んだと聞く
さらには強力な傭兵集団の雑賀衆ですらも自軍の戦力として取り込んだという話だ
北で残っているのは、加賀の前田と三河の徳川、それに付随する将たちだ
「刑部はどうした?」
「大谷様、ですか?
いえ、特に申されたことは……」
海夜の眉間にしわが寄る
これだけの窮地に立たされながら、竹中半兵衛が何の手も打たないことが気にかかる
それに、最近の大谷の様子も少し変だ
まるでこちら側に悟らせぬように、何かをしている……
そんな気がする
「だめ、難しいことは考えたくないわ
とにかく半兵衛様の指示を待ちましょう
大丈夫、豊臣の悪いようにはならないわ
大坂城へ伝えて
残党狩りは完了、帰還するわ」
「はっ!」
伝令役が来た道を急いで戻っていく
あたりを生ぬるい風が通り抜けた
「……きな臭くなってきたわね」
「すまない、海夜
気になる点がもう一つあった」
「なに?」
「残党狩りに、わざわざ私と貴様を指名したことだ」
「……言われてみればそうよね
私や三成は、いわば豊臣戦力の中核……
残党狩りなんかやるような立場じゃないもの
ねえ、これ、誰に言われたか知ってる?」
「私に命を下せるのは、秀吉様と半兵衛様だけだ」
「……つまり、半兵衛様の命令?」
「いや、そんなはずはない」
「……どうなってるの……」
「疑うわけではないが、刑部も近頃、姿を見せない」
「……難しいことは、考えたくないわね」
闇にお手上げだという意味を持たせ、海夜は歩き始めた
自分には、頭を使うより体を動かすほうが性に合っている
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