第六章
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二日後、豊臣軍は九州へ向けて大軍を送り込んだ
先鋒となる部隊には、石田三成と大谷義継、そして水城海夜が配属された
――最南端・薩摩
敵方が陣として使っていた寺に、豊臣の先鋒軍は布陣した
燭台の明かりが本堂の中を照らす
槍の手入れを終えた海夜は、ふと本堂の正面に張られた陣幕の外に目を向けた
「入るぞ」
「三成ね、いいわよ」
幕をめくって三成が入ってくる
その手には、あの居合刀はなかった
「敵の様子はどうだった」
「大したことないわ
おそらく、今日ぶつかった敵は、向こうの先鋒ね
気をつけなければいけないとすれば、明日、もしくは明後日……
どちらかで確実に、敵の大将である島津義弘と戦うことにはなるでしょうね」
「そうか
気をつけろ
島津義弘と戦う可能性が高いのは貴様だ」
「分かってるわ
負ける気はないけれど、警戒するに越したことはないものね」
三成と合っていた目が、逸らされる
視線を追いかけた先を見て、海夜は槍の柄の先で三成の額を小突いた
「どこを見てるのよ」
三成の視線の先は、海夜の太腿
そこにはうっすらと切り傷があった
「貴様も怪我を負うのだな」
「かすり傷よ、怪我の内には入らないわ」
「痛むか」
「いいえ
心配は無用よ
衛生兵に手当てをしてもらっているしね」
そうか、と三成が呟く
そこに微かな安堵が乗せられていることに海夜は気付いた
長い付き合いとは言えないが、行動を共にすることが多いせいか、三成のことも少しは分かるようになったらしい
そこへまたしても、ふわりと幕がめくられた
「ぬしの兄は悪運が強い」
しゃがれた声は、大谷義継のものだ
台座に乗って入ってきた義継は、目を細めて気味悪く笑った
「どういうこと?」
「独眼竜の姫が献身的に介護をしたらしい
今では起き上がっているとのことよ」
「強い毒を穂先に塗っていたはずだけど……
忍びの解毒剤は効果覿面ね」
そのまま死ぬとは思わなかったが、もう少しくらいは苦しんでほしかった
面白くない結果なだけに、海夜は落胆のため息をつくほかない
「半兵衛様はなんて?」
「ヒヒッ、独眼竜あてにわざわざ礼状を書いておられたわ
ご丁寧に毒針付きでな」
「ふうん、いいじゃない
でも独眼竜のことだもの、そう簡単には死なないと思うけれどね」
「なに、ほんの少しの挨拶よ
半兵衛様とて、本気で毒針を用いて独眼竜を殺そうなどとは思うまい」
「現実的じゃないもの
まあ、向こうが深く勘繰りを入れてくる可能性はあるでしょうけれど」
「分かっておられる
これは単なる礼状にすぎぬと笑っておられた」
ひらひらとゆれる台座の布
改めて思うが、この台座の仕組みが全く分からない
「ずっと思ってたんだけど、この台座、どうやって飛んでるの?」
「それは言えぬことよ……ヒッヒッヒ」
「気持ち悪い笑い方をしないでくれる?」
どこかへとふわふわと飛んでいく
やはり不気味だ
大谷義継の腹の底が、まったくもって分からない
半兵衛や三成は、豊臣秀吉への忠誠心がある
主君のためなら何でもやる、彼らはそういう人間だ
……大谷吉継に、そういったものを感じたことはない
付き合いが短いからなのか、また別の目的があってここにいるのか
どちらにせよ、信用しすぎないほうがいい
海夜の直感はそう言っていた
「明日も出陣だ
貴様も寝ろ」
「ええ、そうするわ
おやすみなさい」
三成の手が伸び、ぽんと頭を撫でられる
瞬間、その場の空気が固まりついた
「……なに?」
「な、なんでもない」
「頭を撫でられるほど子供じゃないんだけど、私」
「分かっている!
早く寝ろ!」
「何を怒ってるのよ……」
三成の不可解な行動に疑問符を飛ばす
慌てて立ち去る三成の背を見送り、海夜は首をひねると、「まあいいか」と呟き、敷かれた布団に身を横たえた
先鋒となる部隊には、石田三成と大谷義継、そして水城海夜が配属された
――最南端・薩摩
敵方が陣として使っていた寺に、豊臣の先鋒軍は布陣した
燭台の明かりが本堂の中を照らす
槍の手入れを終えた海夜は、ふと本堂の正面に張られた陣幕の外に目を向けた
「入るぞ」
「三成ね、いいわよ」
幕をめくって三成が入ってくる
その手には、あの居合刀はなかった
「敵の様子はどうだった」
「大したことないわ
おそらく、今日ぶつかった敵は、向こうの先鋒ね
気をつけなければいけないとすれば、明日、もしくは明後日……
どちらかで確実に、敵の大将である島津義弘と戦うことにはなるでしょうね」
「そうか
気をつけろ
島津義弘と戦う可能性が高いのは貴様だ」
「分かってるわ
負ける気はないけれど、警戒するに越したことはないものね」
三成と合っていた目が、逸らされる
視線を追いかけた先を見て、海夜は槍の柄の先で三成の額を小突いた
「どこを見てるのよ」
三成の視線の先は、海夜の太腿
そこにはうっすらと切り傷があった
「貴様も怪我を負うのだな」
「かすり傷よ、怪我の内には入らないわ」
「痛むか」
「いいえ
心配は無用よ
衛生兵に手当てをしてもらっているしね」
そうか、と三成が呟く
そこに微かな安堵が乗せられていることに海夜は気付いた
長い付き合いとは言えないが、行動を共にすることが多いせいか、三成のことも少しは分かるようになったらしい
そこへまたしても、ふわりと幕がめくられた
「ぬしの兄は悪運が強い」
しゃがれた声は、大谷義継のものだ
台座に乗って入ってきた義継は、目を細めて気味悪く笑った
「どういうこと?」
「独眼竜の姫が献身的に介護をしたらしい
今では起き上がっているとのことよ」
「強い毒を穂先に塗っていたはずだけど……
忍びの解毒剤は効果覿面ね」
そのまま死ぬとは思わなかったが、もう少しくらいは苦しんでほしかった
面白くない結果なだけに、海夜は落胆のため息をつくほかない
「半兵衛様はなんて?」
「ヒヒッ、独眼竜あてにわざわざ礼状を書いておられたわ
ご丁寧に毒針付きでな」
「ふうん、いいじゃない
でも独眼竜のことだもの、そう簡単には死なないと思うけれどね」
「なに、ほんの少しの挨拶よ
半兵衛様とて、本気で毒針を用いて独眼竜を殺そうなどとは思うまい」
「現実的じゃないもの
まあ、向こうが深く勘繰りを入れてくる可能性はあるでしょうけれど」
「分かっておられる
これは単なる礼状にすぎぬと笑っておられた」
ひらひらとゆれる台座の布
改めて思うが、この台座の仕組みが全く分からない
「ずっと思ってたんだけど、この台座、どうやって飛んでるの?」
「それは言えぬことよ……ヒッヒッヒ」
「気持ち悪い笑い方をしないでくれる?」
どこかへとふわふわと飛んでいく
やはり不気味だ
大谷義継の腹の底が、まったくもって分からない
半兵衛や三成は、豊臣秀吉への忠誠心がある
主君のためなら何でもやる、彼らはそういう人間だ
……大谷吉継に、そういったものを感じたことはない
付き合いが短いからなのか、また別の目的があってここにいるのか
どちらにせよ、信用しすぎないほうがいい
海夜の直感はそう言っていた
「明日も出陣だ
貴様も寝ろ」
「ええ、そうするわ
おやすみなさい」
三成の手が伸び、ぽんと頭を撫でられる
瞬間、その場の空気が固まりついた
「……なに?」
「な、なんでもない」
「頭を撫でられるほど子供じゃないんだけど、私」
「分かっている!
早く寝ろ!」
「何を怒ってるのよ……」
三成の不可解な行動に疑問符を飛ばす
慌てて立ち去る三成の背を見送り、海夜は首をひねると、「まあいいか」と呟き、敷かれた布団に身を横たえた
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