第三章
夢小説設定
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二週間後、織田全軍は本能寺へと入った
目的は奥州征討
海夜はその先発部隊を任されている
それとは別に、信長は別働隊を作り、近江・小谷城を攻めた
浅井氏の居城・小谷城は一夜にして落城
当主の浅井長政は討たれ、妻のお市の方は、織田方に引き取られた
別働隊の合流を待ったのち、織田全軍は、奥州への出陣を明日に控えることとなった
今夜は出陣前夜の決起集会が催され、巻き込まれた海夜は隙を見て早々に退散した
夜の境内は静かだ
だが嵐の前の静けさのようで、どうにも落ち着かない
境内を通って用意された部屋へ向かう時、遠くから気色の悪い笑い声のようなものが聞こえた
どこか聞き覚えのある高笑いのような気がしたが、気のせいだろうか
「……今のは笑い声……?
そういえば明智がいないわね……
あいつ、どこに行ったのかしら」
別働隊を率いた明智光秀は安土城の留守役で、奥州への出陣は予定されていない
祝勝会に姿がないのも分からないわけではないが、それにしてもこの奇妙な違和感は何だろうか
「おい、海夜!」
思案に耽る海夜の後ろから、森蘭丸が声をかけた
蘭丸の後ろにはやはり濃姫もいる
二人は、明智と共に浅井攻めの一員として出陣し、小谷城から戻ってきたのだった
ということは別働隊もようやく合流したということだろう
「どうしたのよ、蘭丸」
「へへっ、お前、明日から奥州に行くんだろ?
信長様が、蘭丸も奥州に行けってよ!
濃姫様も行くんだぜ!」
先発部隊は海夜が率いる話だったが、どうやらそこに蘭丸と濃姫も組み込まれたようだ
本軍が到着する頃には戦が終わっているかもしれない
「明智以外はみんな奥州に行くわけね
まあいいんじゃない?
手数が多ければ多いほどこちらが有利になるのだもの
でも、伊達成実には手を出さないでよ
アイツは私の獲物なんだから」
軽い口調と共に発された名前に蘭丸も濃姫もどう返したものかと顔を見合わせた
この復讐は海夜自身のためと知っている
しかし――その果てで、この人は何を得るのだろう
「海夜……
今日はもう寝ましょう
明日から出陣だもの」
「お気遣いありがとうございます、濃姫様
では、お言葉に甘えて
……そうだ、明智を知りませんか?」
「光秀は分からないわ」
「そうですか
では、お休みなさい」
自分にあてがわれた部屋がある建物へと歩いていく
信長がいる棟を過ぎ去ろうとして、足を止めた
「ああ、寝る前に信長公に一言声を掛けなければ……」
広間からは光が漏れており、信長がまだ起きていることがわかる
明日に向けて英気を養っているのか、はたまた別の意図があるのか
どちらにせよ、それは海夜には関係のないことだ
「信長公、水城海夜でございます」
「どうした」
「一足先に就寝させていただきます
お休みなさいませ」
「明日からの貴様の働き、期待しておる」
「はっ――」
障子越しに挨拶を述べ、その場から下がる
月が雲に隠れたのか、僅かに境内が暗くなった
光秀の家紋である水色桔梗の旗印は、どこにも見当たらない
ここには来ない手筈になっているのだから、それが当然なのだが……
「……まさか、ね」
光秀が今、信長に対して事を起こすとは考えにくい
……が、相手は異常快楽者
何が起きても不思議ではない
「念のため、準備はしておいた方がいいようね……」
そう呟き、部屋へと入った
荷造りは済ませている
元々が私物も無いに等しい人間だ、傭兵とはそういうものだと知っている
敷かれている布団へ入ると、海夜は静かに目を閉じた
本能寺の門が破壊される音が響いたのは、それから数刻後の事だった
元から深く寝ていたわけではなかった海夜は、やはりかと舌打ちをした
手早く槍と荷物を掴み、部屋を飛び出る
向かった先は厩
愛馬を引っ張りだし、混乱の中を駆けていく
濃姫や蘭丸の声が聞こえたような気もするが、すべて気のせいだ
本能寺が見下ろせる高台まで来ると、海夜は馬を降りた
眼下の本能寺は炎に包まれ、剣戟の音がひっきりなしに続いている
「まさか、織田が明智なんかにやられるとはね……
見当が外れたわ、使えない駒……」
そう呟くと、海夜は愛槍を携え、馬にまたがった
「はっ!」
馬を東の方に向け、走り去る
織田との協力関係は切れた
とすれば、自分は自由の身、向かう先など決まっている
「別に織田なんてどうでもいいわ
伊達成実をこの手で倒すことが出来さえすればそれでいい」
目指すは奥州・大森城
まだ見ぬ兄たちへの復讐劇が始まる
自然と、海夜の口元には笑みが浮かんでいた
目的は奥州征討
海夜はその先発部隊を任されている
それとは別に、信長は別働隊を作り、近江・小谷城を攻めた
浅井氏の居城・小谷城は一夜にして落城
当主の浅井長政は討たれ、妻のお市の方は、織田方に引き取られた
別働隊の合流を待ったのち、織田全軍は、奥州への出陣を明日に控えることとなった
今夜は出陣前夜の決起集会が催され、巻き込まれた海夜は隙を見て早々に退散した
夜の境内は静かだ
だが嵐の前の静けさのようで、どうにも落ち着かない
境内を通って用意された部屋へ向かう時、遠くから気色の悪い笑い声のようなものが聞こえた
どこか聞き覚えのある高笑いのような気がしたが、気のせいだろうか
「……今のは笑い声……?
そういえば明智がいないわね……
あいつ、どこに行ったのかしら」
別働隊を率いた明智光秀は安土城の留守役で、奥州への出陣は予定されていない
祝勝会に姿がないのも分からないわけではないが、それにしてもこの奇妙な違和感は何だろうか
「おい、海夜!」
思案に耽る海夜の後ろから、森蘭丸が声をかけた
蘭丸の後ろにはやはり濃姫もいる
二人は、明智と共に浅井攻めの一員として出陣し、小谷城から戻ってきたのだった
ということは別働隊もようやく合流したということだろう
「どうしたのよ、蘭丸」
「へへっ、お前、明日から奥州に行くんだろ?
信長様が、蘭丸も奥州に行けってよ!
濃姫様も行くんだぜ!」
先発部隊は海夜が率いる話だったが、どうやらそこに蘭丸と濃姫も組み込まれたようだ
本軍が到着する頃には戦が終わっているかもしれない
「明智以外はみんな奥州に行くわけね
まあいいんじゃない?
手数が多ければ多いほどこちらが有利になるのだもの
でも、伊達成実には手を出さないでよ
アイツは私の獲物なんだから」
軽い口調と共に発された名前に蘭丸も濃姫もどう返したものかと顔を見合わせた
この復讐は海夜自身のためと知っている
しかし――その果てで、この人は何を得るのだろう
「海夜……
今日はもう寝ましょう
明日から出陣だもの」
「お気遣いありがとうございます、濃姫様
では、お言葉に甘えて
……そうだ、明智を知りませんか?」
「光秀は分からないわ」
「そうですか
では、お休みなさい」
自分にあてがわれた部屋がある建物へと歩いていく
信長がいる棟を過ぎ去ろうとして、足を止めた
「ああ、寝る前に信長公に一言声を掛けなければ……」
広間からは光が漏れており、信長がまだ起きていることがわかる
明日に向けて英気を養っているのか、はたまた別の意図があるのか
どちらにせよ、それは海夜には関係のないことだ
「信長公、水城海夜でございます」
「どうした」
「一足先に就寝させていただきます
お休みなさいませ」
「明日からの貴様の働き、期待しておる」
「はっ――」
障子越しに挨拶を述べ、その場から下がる
月が雲に隠れたのか、僅かに境内が暗くなった
光秀の家紋である水色桔梗の旗印は、どこにも見当たらない
ここには来ない手筈になっているのだから、それが当然なのだが……
「……まさか、ね」
光秀が今、信長に対して事を起こすとは考えにくい
……が、相手は異常快楽者
何が起きても不思議ではない
「念のため、準備はしておいた方がいいようね……」
そう呟き、部屋へと入った
荷造りは済ませている
元々が私物も無いに等しい人間だ、傭兵とはそういうものだと知っている
敷かれている布団へ入ると、海夜は静かに目を閉じた
本能寺の門が破壊される音が響いたのは、それから数刻後の事だった
元から深く寝ていたわけではなかった海夜は、やはりかと舌打ちをした
手早く槍と荷物を掴み、部屋を飛び出る
向かった先は厩
愛馬を引っ張りだし、混乱の中を駆けていく
濃姫や蘭丸の声が聞こえたような気もするが、すべて気のせいだ
本能寺が見下ろせる高台まで来ると、海夜は馬を降りた
眼下の本能寺は炎に包まれ、剣戟の音がひっきりなしに続いている
「まさか、織田が明智なんかにやられるとはね……
見当が外れたわ、使えない駒……」
そう呟くと、海夜は愛槍を携え、馬にまたがった
「はっ!」
馬を東の方に向け、走り去る
織田との協力関係は切れた
とすれば、自分は自由の身、向かう先など決まっている
「別に織田なんてどうでもいいわ
伊達成実をこの手で倒すことが出来さえすればそれでいい」
目指すは奥州・大森城
まだ見ぬ兄たちへの復讐劇が始まる
自然と、海夜の口元には笑みが浮かんでいた
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